女優・見上愛を観てほしい!2021年度「一度見たら忘れない女優」第1位

俳優・映画人コラム

(C)2021「プリテンダーズ」製作委員会

ハマりすぎておかしくなりそうな女優がいる。

見上愛、20歳(2021年10月9日現在)。2019年頃から少しずつ姿を現した、まさに新進気鋭の若手女優。ドラマ「ボイス 110緊急指令室」(日テレ)や「MIU404」などで、多くのドラマファンの目に留まった。「お?あの可愛い子は誰だ?」と思わせておいて、「きれいのくに」(NHK)、「箱庭のレミング」(ABEMA)で一気に注目を集めることに。

これから、確実に見上愛はもっともっと成長する。この感覚はそう、ホリプロタレントスカウトキャラバンでグランプリを受賞し、めくるめく大人気女優への階段を駆け上がった、あの石原さとみとの出会いを彷彿とさせる胸の高鳴り。

個人的に、見上愛は2021年度「一度見たら忘れらない女優」第1位であると声を大にして言いたい。

今回は、そんな女優・見上愛の魅力を伝えるのにふさわしい代表作4作を紐解く。

「裏整形」に惹かれる女子高生を好演!見上愛を観るならまずは「きれいのくに」

(C)NHK

NHKドラマ「きれいのくに」(21)において、自身の容姿に悩む女子高生・凛役を好演した見上愛。彼女を役者として世に知らしめた作品のひとつとして、ご紹介したい。「見上愛が出ている作品で最初に観るとしたら?」と問われたら、この作品を挙げるだろう。

本作は、容姿の優劣によって人生が決まる世を正すため、希望者はまったく同じ「美しい顔(男性は稲垣吾郎、女性は加藤ローサの顔)」に整形できる日本が舞台。しかし、時代の流れによって整形が違法になってしまう。親世代は整形が合法だったのに、自分には許されていないことを、ひっそりと気に病む凛。

整形することを許されない凛は、ある日「裏整形」なる存在を知る。知り合った恵里(小野花梨)に病院を紹介してもらうも、幼馴染の誠也(青木柚)のことが気にかかり、すぐには整形へと踏み切れない……といったあらすじだ。

自身の容姿に対し悩みを抱えるのは、人類共通の性かもしれない。凛だって、外から見たら笑顔の素敵な可愛らしい子なのに、内心では整形を検討するほど容姿について悩んでいる。思春期特有の不安定な心の揺れうごきを、繊細な芝居で表現してみせた見上愛。

ぜひ観てほしいシーンは、やはり最終回のラストシーンである。

紆余曲折をたどり、一度は諦めた整形に再び一歩踏み出す凛。待合室で待つ誠也の緊張感ある居住まいと、ついに整形を終え彼と対面する凛の表情。きゅっと胸が締め付けられるけれど、きっとこのふたりはこれからも、不器用ながらに関係性を築いていくのだろうと予感させる。大好きなシーンだ。

ちなみに見上愛は、幼少の頃から役者を志していたわけではない。中学生の頃に家族で舞台を観たことがきっかけで観劇にハマり、高校では演劇部に入った(中学ではハンドボール部に入っていたという)。役者よりは演出や照明に興味があったらしい。おそらく、音響の仕事をしている父や兄の影響だろうと、本人が各インタビューにて語っている。

演出をやるなら演技のことも知っておくべきだろうと考え、現所属事務所のスクールへ。それがきっかけで役者デビューとなった。それが2019年のこと。NHKドラマ出演やW主演映画(2021年公開予定)が決まるなど、そのステップは最初から軽やかである。

–{肥大した自己承認欲求に揺れ動く女子高生を怪演}–

肥大した自己承認欲求に揺れ動く女子高生を怪演

(C)2021「プリテンダーズ」製作委員会

「きれいのくに」でも共演した小野花梨とのW主演映画『プリテンダーズ』(21)。自分を認めてほしい、自分で自分を好きになりたいと願う女子高生の悲痛な熱が感じられる本作。詳細なあらすじはぜひ以下レビュー記事をご参照、並びに主演ふたりへのインタビュー記事も合わせてご覧いただければ幸いである。

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本作で見上愛が演じるのは、学校に馴染めず引きこもり気味の女子高生・花田花梨(小野花梨)の友人役・仙道風子。「前へならえ!」「長いものには巻かれろ!」な日本の風潮を憂い、先生からどれだけ注意されても前へならえをしてみせなかった花梨。彼女を面白がり、行動を共にする役柄だ。

風子は両親が海外赴任している関係で一人暮らしをしている(それだけの経済的余裕がある)。これまで比較的、不自由なく育ってきたからこそ、王道から外れようとする花梨に興味をそそられたのだろう。家から出ようとしない花梨を外に連れ出す役割を、自ら買って出る。

その後、花梨と風子はふたりで「プリテンダーズ」というチームを組む。最初は花梨と同じように積極的に活動する風子だが、SNSでバズりたいがために暴走しだす花梨を見て、次第に現実をみるように……。

見上愛が「きれいのくに」で演じた凛というキャラクターは、自身の容姿が好きになれずに悩む役柄だった。しかし『プリテンダーズ』では、根本的に自分のことが好きになれない花梨を引っ張り、導く役柄である風子を演じている。本作について語ってもらったインタビューでは、「まったく違う関係性を演じたからこそ、お互いの印象が違って見えるようになったかもしれない」と口にしていた。

「きれいのくに」も『プリテンダーズ』も、自分という存在を捉えきれず、振り回され、感情のまま揺れ動く若い魂を、まさに熱演している。

見上愛本人は「生まれながらにして自己肯定感が高いタイプ」と自称。「他人の言葉で自分への評価が揺らぐことはない」と確固たる精神を持っている。ちょっとやそっとでは折れない軸があるからこそ、悩み、揺れる役だって存在感たっぷりに演じ切れるのかもしれない。

–{SNSの暗部を描いた「箱庭のレミング」で魅せた!見上愛の”闇”}–

SNSの暗部を描いた「箱庭のレミング」で魅せた!見上愛の”闇”

(C)AbemaTV, Inc.

ここでいったん趣向を変えて、”陽”の見上愛ではなく、”陰”の見上愛をご紹介したい。

ABEMA「箱庭のレミング」(21)も必見な作品だ。SNSの暗部を表現した話題作であり、見上愛がメインで出演する「第1部:不純ないいね」がたまらなく良い。この物語で見られるのは、見上愛の”闇”の表現だ。

あらすじはこうだ。ルックスを売りにモデルをやっていてSNS人気も高い女子高生・みえ子(見上愛)。イメージダウンを避けるため、引きこもりの姉がいることを隠している。

ある日、姉が動画SNSにおいて「不純さん」というアカウント名で一躍有名になりつつあることを知った。「かわいい〜!」ともてはやされ、「いいね!」が万単位でつけられているが、いわゆる”キワモノ系”として面白がられているのだ。

姉が「不純さん」として有名になっても、実の姉妹だと言い出せないみえ子。姉の行動はどんどんエスカレートしていく。内心、姉のことを見下していたみえ子は、自分よりもチヤホヤされつつある「不純さん」に嫉妬し、アンチコメントを書き込んでしまう……。

「きれいのくに」や『プリテンダーズ』とはまた違い、今作で演じるみえ子という役柄は、バリバリに自分のことが好きで、ガンガンに自分のことを可愛いと思っているタイプだ。周りにチヤホヤされることに安心感を得ているし、だからこそ、たとえ”キワモノ系”だとしても有名になりつつある姉のことを、受け入れ難かったのだろう。

姉のアカウントに対し、匿名でアンチコメントを書き込み続けるみえ子。物語はその後、視聴者に息もつかせぬ展開へとなだれこんでいき、背筋が寒くなるラストシーンへと繋がっていく。

この瞬間の、見上愛の表現をぜひ観てほしい。”闇”の見せ方をぜひご覧になってほしい。

「きれいのくに」→『プリテンダーズ』の順で鑑賞し、本作を観た筆者は、すでに奪われていた心がさらに持っていかれてしまった。本当に彼女は2019年に役者デビューしたばかりなのだろうか。「ブレイク直前」というワードがここまで信憑性と説得力を持つのは、見上愛しかいないだろう。

「そんなにトップスピードで引き出しを開けちゃっても大丈夫なのか!?」と個人的に心配してしまうが、おそらく彼女の引き出しの中身が尽きることはない。

–{猟奇的殺人者役も!?クールビューティに銃撃戦をこなす「ガールガンレディ」}–

猟奇的殺人者役も!?クールビューティに銃撃戦をこなす「ガールガンレディ」

女子高生たちがパラレルワールドで銃撃戦を繰り広げるドラマ「ガールガンレディ」(21)。バンダイナムコグループ「BANDAI SPIRITS」が企画した特撮もので、プラモデル製のフィギュアや銃がたくさん登場する。

学校に馴染めない女子高生・小春(白石聖)が、あるきっかけでパラレルワールドへと迷い込むシーンから物語はスタート。「ガンファイト」と呼ばれる壮絶な銃撃戦へ参加することになる。

3名の女子高生プレイヤーが1チームを組み、計4チームで戦うガンファイト。見上愛が演じるのは、そのチームのひとつ「デルタ」に参加する北本レイだ。

メガネにベレー帽姿は品があり、女子高生役ではあるものの、これまで紹介したどの役柄とも雰囲気が異なる。育ちの良さを感じさせつつも、ひとたび銃を手にすると人が変わる様が見事だ。

見どころとして挙げたいのは、第4話「殺さない殺し合い」。

半ば強制的にパラレルワールドへ降臨させられる女子高生たち。しかし、たとえ銃撃戦を強制されても、誰も殺さないことをチーム同士で約束し合えばいいのではないか。そうすれば誰も死なずに済むのではないか……。そう考えた彼女たちは、銃を放棄し、お菓子パーティを始める。

たびたび「レイが真っ先に裏切るのでは……?」とビクビクさせるシーンが続く。2〜3話でも彼女は、華麗に銃を操り、狡猾に他プレイヤーを撃ち抜いてきた。しかし、お菓子やジュースを真っ先に用意したのはレイだし、なんだかんだ良い子なのかも……? 

と思わせたところでの、彼女の表情の変化にゾッとさせられる。「箱庭のレミング」に引き続き、見上愛は悪役を演じても”華麗”だと確信する作品だった。

作風に敬遠してしまう方もいるかもしれないが、各所に謎が散りばめられており、良質なミステリーとしても楽しめる。ドラマや映画で引っ張りだこの濱田岳や、元・E-girlsメンバーで女優としても活躍する石井杏奈など、キャストも豪華なのでぜひ観てみてほしい。

一年後には誰もが知るモンスター級の名役者に!見上愛の今後に期待が止まらない

見上愛の代表作4作をご紹介した。今後も映画『偽りのないhappy end』(2021年12月公開予定)、『衝動』(2021年公開予定)など公開待機作がある。

とくに『衝動』は倉悠貴とのW主演(『まともじゃないのは君も一緒』『うみべの女の子』などに出演)。あるトラウマによって声が出せなくなってしまった、失語症の女の子・アイを演じる。見上愛自身とファーストネームを共有しており、声を使った表現が封じられた役柄を、彼女はどのように演じるのか。期待が止まらない。

(文・北村有)

→見上愛『プリテンダーズ』画像ギャラリーへ

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