主人公はシングルファーザーで、ガソリンスタンドでアルバイトしている牧師さんです。
この作品、コメディではありませんが、この主人公をムロツヨシが演じていることで、それだけで不可思議かつ好もしい笑いがもたらされ、映画全体のトーンをも決定づけていきます。
牧師とムロツヨシ、はまっているのかはまっていないのかも定かではない設定を妙味と思うか否かで本作の評価は分かれるかもしれません。
(でも奇妙な味が出ているのは確かです)
一方でこのお父さん、難病に侵された愛娘のために一大奮闘していくわけですが、映画が進行していくに従って、どんどんイケメンに見えていきます!
(いや、日頃オバカな役ばかり楽しそうに演じてますけど、実は彼、よくよく見るとけっこう二枚目なんですよね)
これこそが、ストーリーそのもの以上に本作がもっとも感動的なところでもあるでしょう。
そんなムロツヨシの存在感に引きつけられるように、周囲のキャストたちもどんどん役にはまっていきます。
サイテー男を演じさせたら今や右に出る者のいない毎熊克哉は、今回もファンの期待を裏切りませんし(でもどこかしら憎めない、ある意味普通の男なのが良いです)、娘役の中田乃愛ちゃんは初々しく、そして今年は一体何本の映画に出てるんだ?と映画ファンを毎回嬉しく驚嘆させ続けるほどに大活躍の奈緒が、ここでも映画の星ひとつ増やしてくれるほどの印象深い好演を示してくれています。
(臼田あさ美も加えてこの作品、女性たちが魅力的に映えているのも長所ですね)
これもそれもすべて、今回が初主演映画だというムロツヨシがいてこその賜物のように思えてなりません。
正直、キャラクターそのものの動かし方とかまだまだギクシャクしたところを感じないではないのですが、キャストそれぞれがちゃんと役の立場をわきまえながら立ち回っているのが見てとれるのと、ストーリー展開もこの手の作品の中ではヒネリが利かされている割に気持ちよく見ていられるのも、好感度をアップさせてくれている感があります。
よくよく考えると深刻なお話なのに、全体的に明るいトーンが貫かれた、まさにムロツヨシのオーラがもたらした悲喜こもごもの人生讃歌、憂さまみれの昨今、ちょっと良い気分になりたい方にオススメします。
(文:増當竜也)
–{『マイ・ダディ』作品情報}–
『マイ・ダディ』作品情報
【あらすじ】
小さな教会の牧師・御堂一男は、中学生になる一人娘のひかりとふたり暮らし。一男は、優しくて、面白くて、お人好しで、誠実な人。8年前に最愛の妻を亡くしてから、“苦労がない”と言ったら嘘になるし、“すごく裕福”とも言えないけれど、娘とふたりで穏やかな日々を送っている。“牧師”というみんなから慕われる仕事もあって(儲からないけど……)、自分を頼りにしてくれる職場もあるし(バイトだけど……)、そして何より、可愛い娘が素直な子に育ってくれている(今はちょっぴり難しい年頃だけど……)。だから一男は、幸せだった。娘が病に侵されるまでは……。
【予告編】
【基本情報】
出演:ムロツヨシ/奈緒/毎熊克哉/中田乃愛 /臼田あさ美/徳井健太(平成ノブシコブシ)/永野宗典/光石研
監督:金井純一
脚本:及川真実、金井純一
主題歌:「それは愛なんだぜ!」