マーベル「ホワット・イフ…?」全9話感想 | 新たなアベンジャーズが切り拓いたマルチバースの夜明け

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2021年8月11日(水)、ディズニープラスにて「ホワット・イフ…?」の配信が開始されました。

「ホワット・イフ…?」はマーベル・スタジオ初の公式アニメシリーズ。
これまでのMCU作品のパラレルワールドを描いた外伝的ストーリーとなり、数名のキャラクターの声も実写版と同じキャストが務めています。

過去のMCU作品とは一味違う物語でありながら、今後のシリーズにも少なからぬ影響をもたらすと言われている本作。そんなアニメシリーズの魅力を、小ネタやトリビアも交えながら1話ずつ徹底解説します。

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目次

・「ホワット・イフ…?」とは

・第1話 もしも…キャプテン・カーターがファースト・アベンジャーだったら?

・第2話 もしも…ティ・チャラがスター・ロードになったら?

・第3話 もしも…世界が最強のヒーローたちを失ったら?

・第4話 もしも…ドクター・ストレンジが手の代わりに恋人を失ったら?

・第5話 もしも…ゾンビが出たら?

・第6話 もしも…キルモンガーがトニー・スタークを救ったら?

・第7話 もしもソーがひとりっ子だったら?

・第8話 もしも…ウルトロンが勝ったら?

・第9話 もしも…ウォッチャーが誓いを破ったら?

・「ホワット・イフ…?」をより楽しむためには

・「ホワット・イフ…?」作品情報へ

「ホワット・イフ…?」とは

「ホワット・イフ…?」はマーベル・スタジオ初の公式アニメシリーズです。
本作では過去に製作されたMCUの物語を軸にしながら、「もしも……」なアナザーストーリーが展開。
“案内人”を名乗るストーリーテラー・ウォッチャーをレギュラーキャラクターとして、パラレルワールドで起きるMCUの新たな物語が紡がれていきます。

本作の特徴は、本流シリーズでは実現できない予測不可能なストーリーと言えるでしょう。
時には人気キャラクターたちがバタバタと倒されてしまったり、救いようのないバッドエンドになってしまったりと、長年続いてきたシリーズだからこそ難しい突飛な展開が繰り広げられていきます。

また、本作の直前に配信されたドラマ「ロキ」では、MCUにおけるマルチバース(平行世界)の概念が語られ、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』や『ドクター・ストレンジ』の続編などでも、その要素が軸となる予定。

そのため、今回のシリーズで初登場となったパラレルワールドのヒーローたちや、初めて明かされる新たな設定などが、今後の実写映画シリーズでも大きな影響をもたらすことは製作陣のコメントからも示唆されています。

果たして、「ホワット・イフ…?」は、MCU世界にどのような変化をもたらすのか。
過去作では、あり得なかったヒーローたちの奇跡のコラボレーションや、分岐していく意外な展開。

MCUファンにはたまらない、随所随所に隠された小ネタにも注目して、ぜひ、皆様にもシリーズを楽しんでいただきたいです!

第1話 もしも…キャプテン・カーターがファースト・アベンジャーだったら?

あらすじ

“キャプテン・アメリカ”の恋人・ペギー・カーターがヒーローに⁉
不測の事態により、超人血清を使って”キャプテン・カーター”へと変身した彼女が大活躍!!
“キャプテン・アメリカ”になり損ねた兵士・スティーブ・ロジャースにも、予想外のセカンドチャンスが訪れる⁉


感想

ついに始まったマーベル・スタジオ初の公式アニメシリーズ「ホワット・イフ…?」。

正直、放送開始までは、役者陣の演技を見ることが出来ないアニメという形式、現行シリーズとは関連性が薄いパラレルワールドの物語に、いまいちテンションが上がりきらなかったのですが、蓋を開けてみると、これが予想を上回る内容で楽しい。

お馴染みのマーベルロゴが徐々にアニメーションに変化していく冒頭の遊び心から、過去の実写映画に寄せたリアルな描写のアニメーション、マニアックな小ネタまで、シリーズのファンにはたまらない要素も多数。

そのため、異なる展開でありながらも過去作の総集編といった趣もあり、長年続いてきたMCUだからこそ出来るオリジナリティあふれる物語に、ワクワクが止まらない第1話でした。

※以下、本編のネタバレがありますのでお気をつけください。

元ネタ

記念すべき第1話の元ネタはMCU第5作『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』でした。

超人血清を使い、強靭な肉体を手に入れる”スーパーソルジャー計画”。
映画では、その実験当日、正義感の強いひ弱な兵士・スティーブ・ロジャース“がヴァイタ・レイ”照射機に乗り込み、”キャプテン・アメリカ”に変身します。

しかし、今回のエピソードではヒロイン・ペギー・カーターの些細な行動が変わったことで、実験直前にスティーブが負傷。その結果、彼女が”キャプテン・カーター”としてヒーローに変身します。

今回の物語では、基本の展開は映画版に沿いつつも、”キャプテン・カーター”の誕生により、大きく以下のような変更点が見られます。

・ヒーローが”キャプテン・アメリカ”から”キャプテン・カーター”へ。
・スティーブが”キャプテン・アメリカ”から”ヒドラ・ストンパー”へ。
・列車での任務の末、雪山に落ちる人物がバッキー(スティーブの親友)からスティーブへ。
・悪役・レッドスカルによる四次元キューブの扱い方がエネルギー源から別次元の扉へ。
・70年後の未来に行く人物がスティーブからカーターへ。

その他、様々な部分で映画版からの変化が見受けられた第1話ですが、映像的な構図や大まかなストーリーなど、公式アニメらしい”過去作へのリスペクト”が滲み出た名作エピソードになっていました。

小ネタ・トリビア

今回の作品の小ネタとしては”ジョン・フリン”と”ヒドラ・ストンパー”の登場が挙げられます。

ジョン・フリンとは、劇中で超人化直後のカーターに厳しい言葉を投げかけていた大佐のこと。

実は彼、スピンオフ短編シリーズ”マーベル・ワンショット”の一編『エージェント・カーター』では、主人公・カーターが働くSSR(戦略科学予備軍。秘密組織シールドの前身)の上司として、登場していました。

捜査官だった前回とは異なり、軍人という形で再登場した彼ですが、「男尊女卑」的な思想を持った人物というのは共通。
カーターに立ちはだかる”男性優位社会”を象徴するキャラクターとして、両作に欠かせない名悪役となっていました。

また、今回のエピソードで初登場となった新ヒーロー”ヒドラ・ストンパー”にも要注目です。
カーターがヒーローになったことで活躍の場が奪われてしまったかのように見えたスティーブですが、今回のエピソードでは友人・ハワード・スタークが開発したスーツを身にまとい、”ヒドラ・ストンパー”として大活躍!

“アイアンマン”ことトニー・スタークの父親・ハワードが作った兵器だけあり、”アイアンマン マーク1″にも似たビジュアルとなっており、ファンとしても大興奮でした。

ちなみに、『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』のジョー・ジョンストン監督は、過去に『ロケッティア』という作品を製作しています。

アメコミ原作(マーベルではない)となった本作では、第二次世界大戦直前を背景に空飛ぶヒーローの活躍が描かれており、”40年代の空飛ぶヒーロー”という点では、どことなく”ヒドラ・ストンパー”と通ずるような気も……?

そんな『ロケッティア』は、現在ディズニープラスのオリジナル映画としてリメイク企画が進められており、今後、再評価されることが期待されています。

予想を上回る楽しい幕開けとなったマーベル初の公式アニメシリーズ「ホワット・イフ…?」。

次回は、どんなヒーローが活躍するのか、今後の展開にも乞うご期待です!

–{第2話 もしも…ティ・チャラがスター・ロードになったら?:あらすじ&感想}–

第2話 もしも…ティ・チャラがスター・ロードになったら?

あらすじ

とある惑星で伝説の財宝・オーブを盗み出そうとしている男。
彼の正体は宇宙人に誘拐された平凡な地球人・ピーター・クイルではなく、”ブラックパンサー”ことワカンダ国の皇子・ティ・チャラだった……?


感想

『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』を軸としたパラレルストーリーだった前回に比べ、より複数の作品からの要素が散りばめられた今回のエピソード。そのため、シリーズのファンにとっては嬉しい展開が続きます。

おバカながらも愛らしい主人公・ピーター・クイルが落ちこぼれメンバーを組織した映画版とは異なり、知性的で人徳のあるティ・チャラが主人公に変わったことで、物語は思いもしない方向に……。

物語の骨格は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』、『ブラックパンサー』をオマージュしつつも、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』や、『マイティ・ソー』シリーズなどのリスペクトに溢れた小ネタの数々には、興奮が止まりませんでした!

※以下、本編のネタバレがありますのでお気をつけください。

元ネタ

今回の元ネタはMCU第10作『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』と第18作『ブラックパンサー』でした。

物語の本筋は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』を踏襲しているものの、人徳者・ティ・チャラが主人公になったことにより、もはや彼一人で”銀河の守護者”として成り立ってしまうという矛盾した展開には、つい笑ってしまいました。

また、シリーズを追いかけたファンにとっては衝撃のサプライズゲストの登場も!!
その部分を踏まえたジョークの数々や、映画版とのキャラクターのギャップには、クスリとさせられました。

小ネタ・トリビア

終盤に登場するコレクターの倉庫では、シリーズファン熱狂の様々な武器(以下を参照)が登場しました。

・クローナン(コーグの種族)の死骸から作ったグローブ(『マイティ・ソー バトルロイヤル』)
・ダーク・マターの短剣(『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』)
・ソーのハンマー
・キャプテン・アメリカの盾
・ダークエルフのヘルメット(『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』)

劇中での発言によると、この世界のコレクターは武器の持ち主を倒すことでコレクションの収集をしていることが想定されます。
映画版の世界では、サノスの襲撃を受け、敗れてしまったことが予想されるコレクターですが、この世界線での彼は、とんでもなく強いのかもしれません……。
また、本作ではシリーズ最強の悪役・サノスが主人公側の仲間になっているため、コレクターは最強アイテム・インフィニティ・ストーンに最も近い人物になっているとも言えます。
はたして、この世界線のコレクターが、どのような人生を歩んできたのかにも、興味が湧きました。

また、今回のエピソードは、去年の8月に病気で他界したチャドウィック・ボーズマンの死後、初めて公開された『ブラックパンサー』出演エピソードでもあり、エピソードの最後には、彼を追悼する文言が映し出されていました。

最期の時まで自身の病気についての公表は避け、近親者のみに事情を伝えていたというチャドウィック・ボーズマン。

撮影中でも常に周囲の人々を気にかけ、優しさを振りまいていたという撮影裏話が残っており、彼の生き様そのものが本作における人徳者・ティ・チャラ王子とピッタリ重なっていると言えるのです。

シリーズ第2回となり、より過去作との繋がりやサプライズ要素が増えた今回のエピソード。

公式が作る二次創作とでも言うべき自由度の高い展開も興味深く、ますます今後の題材が楽しみになる名エピソードでした。

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–{第3話 もしも…世界が最強のヒーローたちを失ったら?:あらすじ&感想}–

第3話 もしも…世界が最強のヒーローたちを失ったら?

あらすじ

地球の平和を守るため、秘密諜報機関・シールドの長官・ニック・フューリーは、ヒーローチーム・アベンジャーズの結成に乗り出した。しかし、そんな矢先、ヒーローたちが次々に死亡。一体、彼らの周りで何が起こっているのか……?


感想

本流の実写シリーズでは確実に不可能なヒーロー殺害事件という題材を選んだことで、外伝的ドラマの強みを明確にした第3回。

『インクレディブル・ハルク』(シリーズ2作目)、『アイアンマン2』(シリーズ3作目)、『マイティ・ソー』(シリーズ4作目)と、MCUの初期作を跨ぐエピソードを下敷きにしたエピソードゆえ、懐かしい展開を振り返りつつ、イメージが裏切られていくブラックな展開の爽快感がありました。

また、シリーズ初期作を中心とした話運びにより、謎解きとしてのミスリードも生まれ、単体のミステリー作品としても面白いエピソードとなっていました。

※以下、本編のネタバレがありますのでお気をつけください。

元ネタ

本作の元ネタとなったのは、『アベンジャーズ』の前日譚を描いたMCUによる公式コミック『アベンジャーズ:プレリュード』。

こちらの作品は、秘密諜報機関・シールドの長官・ニック・フューリーを主人公に、彼とその部下が経験する激動の7日間を描いたシリーズのスピンオフエピソードとなっていました。

このコミックでは『アイアンマン2』、『インクレディブル・ハルク』、『マイティ・ソー』といった作品群の裏側が描かれ、それぞれの補足となるエピソードを展開しながら、『アベンジャーズ』へと繋がる物語が描かれます。

今回の第3話では、この物語を下敷きに次々とヒーローが殺害されていくミステリー調の物語を展開。
シリーズに思い入れが強ければ強いほど、全く予想が出来ない衝撃的なストーリーに翻弄され、外伝だからこそ描くことの出来るビターなラストには、今回のアニメシリーズならではの可能性を感じました。

小ネタ・トリビア

今回のエピソードでは、元ネタとなった3作品(『アイアンマン2』、『インクレディブル・ハルク』、『マイティ・ソー』)の登場人物に加え、劇中の構図を再現した場面が多数登場し、その展開を裏切る形で初代アベンジャーズたちが死亡していきます。

また、ゲストキャラクターとしては、ブロック・ラムロウ(『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』)や初代アントマンことハンク・ピムも登場。

『マイティ・ソー』の”イザベラズ・ダイナー”や、『インクレディブル・ハルク』の”スタンリーズ・ピザ・パーラー”など、マニアックな店名に至るまで、映画版の設定を踏襲しており、それらのディティールのこだわりにも注目していただきたいです!

ちなみに、作品後半では、シールドの諜報員・コールソンが長官・フューリーと夜のダイナーで相談するシーンがあり、これはスピンオフ短編シリーズ”マーベル・ワンショット”の一編『相談役』でのコールソンと同僚・シットウィルの会話シーンを再現していると言えるでしょう。

前2回と比べ、ヒーローが次々と死んでいくストーリー、これまでにないビターな結末と、「ホワット・イフ…?」の新たな方向性を提示してくれた今回のエピソード。

映画版では簡単に出来ないバッドエンドも実現可能という点で、今後の物語の可能性を大きく広げてくれた問題作でした。

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–{第4話 もしも…ドクター・ストレンジが手の代わりに恋人を失ったら?:あらすじ&感想}–

第4話 もしも…ドクター・ストレンジが手の代わりに恋人を失ったら?

あらすじ

天才外科医・スティーヴン・ストレンジ。
彼が失ったのは、自分の腕ではなく、愛する恋人・クリスティーンだった⁉
思わぬ運命のイタズラで変えられない過去に囚われてしまった彼は、闇の魔術師としての道を歩み始めてしまい……。


感想

これまでのエピソードの中では、最もダークなエピソードで観終わった後には、かなり、ぐったりとした気持ちが残る衝撃のエピソードでした。

悪の道に落ちていくドクター・ストレンジの悲劇と、そこから、もう一捻り加えた意外な展開。

これまでのエピソードとは異なり、少しずつ孤立していく主人公の物語を深めるため、後半に登場する意外な人物とのバトルシーンは、とても興味深かったです。

これまで「世界に干渉しない」と発言していたストーリーテラーのウォッチャーが、しれっと、干渉する描写には、すかさず「するんかいっ」と、自然に関西弁でツッコミたくなってしまったけれど、今回は”一人”だけの世界ということで、例外的にOKだったのか……。謎は深まるばかり。

とはいえ、内容的にも結末としても、今後のシリーズ作品に、もっとも繋がりそうな気配を感じたので、ファンは必見と言えるエピソードだと思いました。

※以下、本編のネタバレがありますのでお気をつけください。

元ネタ

今回の元ネタとなった作品は、MCU第14作『ドクター・ストレンジ』でした。

映画版では交通事故の結果、腕のマヒが残り、外科医を断念した彼。
しかし、こちらの世界では愛する恋人を失ってしまい、大きな精神的ダメージを抱えることになってしまいました……。

今回のエピソードの興味深い点は、主人公が映画『ドクター・ストレンジ』の物語を踏まえた上で、それでも恋人の死を変えようと努力する点。

これまでは映画版と分岐した展開が描かれた「ホワット・イフ…?」でしたが、本作では、ある種、映画版の先を行く物語とも言えるため、パラレルストーリーでありながら、一種、『ドクター・ストレンジ2』といった印象のエピソードが展開されていきます。

ちなみに、恋人の死を変えるために過去の出来事をやり直すという展開は、時間系SFの王道ともいえるストーリー。

『バタフライ・エフェクト』『ミッション:8ミニッツ』『オール・ユー・ニード・イズ・キル』などなど、類似の構造を有するSF映画には名作の多い印象があります。

小ネタ・トリビア

今回のエピソードでは、悪の魔術師を目指すストレンジが様々な怪物を吸収していきます。

そんな中には、とても強力な存在として、”タコ”のような怪物が登場していましたが、こちらのキャラクター、今回のアニメシリーズを初回から追いかけてきた方であれば、何か思い当たる節があるのでは……?

というのも、この怪物、第1話のクライマックスに登場した謎のモンスターとそっくりなのです(第1話では四次元キューブの力で並行世界の扉を開いたレッドスカルが、この怪物を召喚し、返り討ちにあっていました)。

現在、公開されている予告編でも、第1話と今回のエピソードを繫ぐとされる衝撃なカット(ちょうど、予告編の1分13秒あたり)が登場しており、ひょっとすると、これは後々のエピソードに繋がる重要な布石なのかも……。

ちなみに、『ドクター・ストレンジ』の原作エピソードでは、”タコ”のような見た目をした数多の別次元を支配する魔物・シュマゴラスが登場しているそうで、今回、登場した怪物も、こちらである可能性が高いと言えます。

また、『ドクターストレンジ』の続編タイトルは『ドクター・ストレンジ・イン・マルチヴァース・オブ・マッドネス(原題)』と発表されており、今回のエピソード、もしくは、登場した魔物が続編と関わってくる可能性も高いのでは?

意外なラストも含めて謎が多かった今回のエピソードですが、そのことも含め、間違いなく、今後、重要な意味合いを持つことになる衝撃の物語でした!

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–{第5話 もしも…ゾンビが出たら?:あらすじ&感想}–

第5話 もしも…ゾンビが出たら?

あらすじ

強敵・サノスの襲撃を受け、地球に降り立ったハルクことブルース・バナー。
しかし、そこに人影はなく、不安を抱えながら、町を徘徊することに。
ようやく仲間を見つけたと思った彼が遭遇したのは、ゾンビの姿になったスーパーヒーローの仲間たちだった……。


感想

ここにきて、まさかのゾンビ回が登場。
ゾンビ映画が好きな自分としては、大好物な名作エピソードでした。

意外なメンバーが集結するチームものとしての面白さはもちろん、ニッチな脇役たちが大活躍する展開は、まさしく『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』のアナザーバージョンとも言えるでしょう。

※以下、本編のネタバレがありますのでお気をつけください。

元ネタ

今回の元ネタは、原作の『マーベルゾンビーズ』シリーズとMCU第19作『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』でした。

冒頭、地球に墜落したブルース・バナーや複数のキャラクターが一致団結する展開は『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』を踏襲しています。
それ以外の部分では『マーベルゾンビーズ』のゾンビ化したヒーローたちが登場し、荒廃した世界で知恵を絞ってサバイバルしていく展開は、まさしく王道のゾンビ映画と言えるでしょう。

物語のクライマックスでは、ゾンビ化した恋人を助けるため、ある人物が非道な行為に出ますが、この辺りの展開は名作ゾンビ映画のリメイク『ドーン・オブ・ザ・デッド』に通ずるものがあります。

ちなみに、こちらの映画を製作したのが、アメコミ映画界ではお馴染み、監督・ザック・スナイダー(『ジャスティス・リーグ:ザック・スナイダーカット』)&脚本・ジェームズ・ガン(『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』)のコンビでした。

小ネタ・トリビア

今回の作品では、過去のMCU作品で脇役として登場したキャラクターたちも含め、異色のサバイバルチームが組まれていたのが印象的でした(以下、参照)。

・ゾンビハンター・スパイダーマン/ピーター・パーカー
・ハルク/ブルース・バナー
・ハッピー・ホーガン(『アイアンマン』シリーズ)
・カート(『アントマン』シリーズ)
・ウィンター・ソルジャー/バッキー・バーンズ(『キャプテン・アメリカ』シリーズ)
・シャロン・カーター(『キャプテン・アメリカ』シリーズ)
・オコエ(『ブラックパンサー』シリーズ)
・ワスプ/ホープ・ヴァン・ダイン (『アントマン』シリーズ)

また、彼らの紹介シーンでは、スパイダーマンによる自撮り映像が登場します。
これは『スパイダーマン:ホームカミング』の1シーンにも通じていると言えます。

クライマックスには巨大化したワスプが登場しますが、この辺りの場面は『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』でジャイアントマンが大暴れするシーンのオマージュと言えるでしょう。

ちなみに、今回登場したスパイダーマンは、ドクター・ストレンジが残したと思われる赤いマントを身に着けており、“ゾンビハンター・スパイダーマン”という名称で呼ばれている新キャラクター。
両手にシルバーの腕輪をつけているため、スーツ本体のデザインはMCU版というよりもディズニーランドのアトラクション版スパイダーマンに近いです。

絶大な支持を受け、一説には映画化も進んでいるという『マーベルゾンビーズ』。
『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』では、主人公が見る幻覚の中でゾンビ化したアイアンマンも登場していたため、実現する未来は、そう遠くないのかもしれません。

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–{第6話 もしも…キルモンガーがトニー・スタークを救ったら?:あらすじ&感想}–

第6話 もしも…キルモンガーがトニー・スタークを救ったら?

あらすじ

謎のテロリスト集団の襲撃を受け、絶対絶命のピンチに追い込まれた兵器会社の金持ち社長・トニー・スターク。
そんな彼を救ったのは、のちにブラックパンサーの宿敵となる革命家・キルモンガーだった……⁉
謎に包まれた彼の正体に、社長秘書のペッパー・ポッツは疑念を抱き始めるが……。

感想

エピソードも後半に差し掛かった本作で描かれたのは、シリーズ初期からの看板ヒーロー・アイアンマンことトニー・スタークと、『ブラックパンサー』で屈指の人気を誇った伝説的ヴィラン(悪役)・キルモンガーとの夢の競演でした。

両キャラクターの出番は映画シリーズでは一旦の一区切りを終えており、新旧マーベルを代表する意外な二人が共演できたのは、このシリーズならではといえるでしょう。

父親との確執を持ち、好戦的な性格でもある二人(映画版のトニーはのちに考えを改めますが……)の共通点を提示しながらも、その違いをストーリーの転換点に持っていく脚本は秀逸。

また、映画版では実現しなかったキルモンガー主役のスピンオフとしても魅力的なため、「ロキ」に続いてMCUでは珍しい“悪役が主人公”のエピソードとなりました。

※以下、本編のネタバレがありますのでお気をつけください。

元ネタ

今回の元ネタはMCU第1作『アイアンマン』と第18作『ブラックパンサー』でした。

特に冒頭の場面は、そっくりそのまま『アイアンマン』アニメ版リメイクと言える内容で、その再現度には驚かされますが、キルモンガーの登場からは物語が大きく改変されていきます。

トニー・スタークの命を救ったことでアイアンマンの誕生は幻と消え、トニーのメカニックな才能や金銭的な権力は、キルモンガーに利用されてしまいます……。

ほんの些細な人助けから自分好みの世界へと作り変えようとする彼の様子は、まさに名悪役。
彼の暗躍の結果、引き起こされる様々な悲劇に放心してしまうエピソードでした!

小ネタ・トリビア

今回のエピソードの小ネタとしては、「機動戦士ガンダム」と「ロス大佐」、「ユリシーズ・クロウ」が挙げられます。

本エピソードの序盤では、キルモンガーがトニーにメカの開発を依頼し、その設計図を見たトニーが「ガンプラ」(『機動戦士ガンダム』のプラモデル)を踏まえた皮肉を発します。

MCUの物語では基本的に実在の人物やキャラクターが存在しており、過去にも『スターウォーズ』、サーティワンアイスクリーム、『ドラゴンボール』などといった固有名詞が登場してきましたが、本作では、ついに『機動戦士ガンダム』の存在が明らかに……。

だからといって、シリーズに大きな影響があるというわけでもないですが、日本のアニメファンには、少し嬉しいジョークになっていました(ちなみに、キルモンガーのスーツは、ベジータのスーツにそっくりであることがファンの間で話題になっており、今回のセリフを踏まえると、ひょっとして、彼はかなりの日本アニメ好きなのかも?)。

また、今回のエピソードでは第3話に引き続き、「ロス大佐」が再登場します。
映画版MCUでは『インクレディブル・ハルク』に始まり、全5作品に出演した彼ですが、これまでと同様に、あくまでヒーロー側というよりは軍隊側と言えるポジションのため、何ともグレーなキャラクター。

今回もトニーの味方というよりは、自分好みの兵器を手に入れたキルモンガーの様子を祝福するような立ち位置で登場していました。

今回のアニメシリーズで初登場となったのが「ユリシーズ・クロウ」。
『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』に初めて登場した際には、武器商人として、貨物船に物品を残していた彼ですが、その点は本作でも共通していました。

『アイアンマン』と『ブラックパンサー』というMCUの中でも、かなり、幅広い観客層に認められた代表作をフィーチャーした今回のエピソード。

シリーズ屈指の名悪役・キルモンガーが大活躍する展開のため、彼のファンは必見と言えるエピソードでした。

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–{第7話 もしもソーがひとりっ子だったら?:あらすじ&感想}–

第7話 もしもソーがひとりっ子だったら?:あらすじ&感想

あらすじ

共に育てられた弟・ロキとの間に抱える確執から、これまで様々な戦いを巻き起こしてきた神々の国アスガルドの王子・ソー。
そんな彼が、もし、ひとりっ子として育てられていたら……?
わがまま王子・ソーが繰り広げる地球でのハチャメチャ大騒動。




感想

 

シリーズも終盤に入り、シリアスなエピソードが続いていたところで、ついに、「ホワット・イフ…?」屈指のコメディ回が誕生。

今回のエピソードでは、とにかく、おバカなソーが大暴走します。
世界遺産をおもちゃにしたり、宇宙からの仲間を連れてきたりと、諜報機関・シールドも大迷惑。
しまいには、意外な救世主を呼びだして事態を収拾しようとする超展開にも笑ってしまいました。

ところで、コメディ要素に全振りしたようにも思える今回のエピソードですが、おバカな”男性”・ソーと彼を止めようとする知性的な”女性”たちという対立構造そのものは、近年のマーベルらしい社会的な視点を感じなくもありません。

特にMCUでは、『アイアンマン2』のブラック・ウィドウの登場を起点として、『キャプテン・マーベル』での女性ヒーロー単独初主演や、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』と『アベンジャーズ/エンドゲーム』における女性ヒーローたちの団体プレーなどなど、シリーズが進むごとに”戦う女性”の描写に磨きがかかっている印象を受けるのも事実。

今回のアニメシリーズは第1話から男性ヒーローを女性ヒーローに作り変える挑戦を行っており、この展開自体もその延長線上に位置しているように感じました。

※以下、本編のネタバレがありますのでお気をつけください。

元ネタ



今回の元ネタはMCU第4作『マイティ・ソー』でした。
本来であれば、ある因縁を抱えた兄弟・ソーとロキが壮大な兄弟ゲンカを繰り広げていたはずの本作ですが、今回のエピソードでは、ソーがひとりっ子として育てられたばっかりに、超わがまま王子として地球に君臨。

さらには『マイティ・ソー』シリーズのみならず、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』、『キャプテン・マーベル』といった作品に登場した様々な種族を地球に招待し、どんちゃん騒ぎを決行していました。

映画版のソーは、第1作の”おバカで優しい紳士”から、次第に心に傷を負ったシリアスな人物としてイメージが変化していきましたが、今回の物語のソーは特に成長していないため、逆に懐かしい気持ちが……。

何はともあれ、現在の実写映画シリーズでは、いまや描くことが難しいおバカ王子の大暴走や、神様設定ならではの地球人との異文化交流ギャグ、”母は強し”と言える展開など、見どころは多数。

シリアスな展開が続いていた「ホワット・イフ…?」だけに、肩の力が少し抜ける素晴らしいコメディ回でした。

小ネタ・トリビア

今回の物語は、まさしくバカ騒ぎといった印象で過去史上最大級に出演キャラクターが多かったエピソードと言えるでしょう。

以下では、今回登場したゲストキャラクターを、順不同に羅列してみます。

■『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』陣営
・ヨンドゥ
・ハワード・ザ・ダック
・ネビュラ
・マンティス
・ドラックス
・ロケット
・ソヴリン人
ほか

■『マイティ・ソー』陣営
・グランドマスター
・スカージ
・コーグ
・ヴァルキリー
・スルト
ほか

■シールド陣営
・コールソン
・マリア・ヒル
・ブロック・ラムロウ
ほか

■『キャプテン・マーベル』陣営
・キャプテン・マーベル
・スクラル人
ほか

そして、なぜか、結婚式の神父役として、エルヴィス・プレスリーも登場。
彼が持っているのは聖書ではなく、彼の楽曲のタイトルでもある『love me tennder』(日本語では、『やさしく愛して』とも訳される)という文字が記された本でした。

ちなみに上記のキャラクター以外にも、これまでの『マイティ・ソー』シリーズにはなじみの深い有名な観光地も登場。

シリーズ2作目『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』を彷彿とさせる場所が多数登場し、イギリスの観覧車・ロンドンアイやストーンヘンジを破壊していく、破天荒なソーと仲間たちの暴走具合には、自然と笑みがこぼれてしまいました。

劇中で繰り広げられる”ソー”vs”キャプテン・マーベル”のバトルシーンは、それぞれのパワーがハンパなさ過ぎて、もはや『ドラゴンボール』のようになっていましたが、それもご愛敬。

謎の深まるラストシーンと予告編の映像を見る限り、まだまだ、今後の展開へと繋がっていきそうなエピソードでした!

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–{第8話 もしも…ウルトロンが勝ったら?:あらすじ&感想}–

第8話 もしも…ウルトロンが勝ったら?

あらすじ


アイアンマンことトニー・スタークが、世界平和を目指して開発した人工知能・ウルトロン。予想外の暴走を始め、人類の脅威となるロボット軍団を組織した彼らに、アベンジャーズは壮絶な戦いを繰り広げた。そんな時、ヒーローたちの救世主として現れた有機生命体・ヴィジョン。彼が、もし敵になってしまっていたら……。史上最大の事件にパラレルワールド崩壊のピンチが迫る!

 感想

これまで、オムニバスの1話完結アニメとして構成されてきたシリーズですが、最終回目前の第8話で、まさかの繫がりが発覚しました!

第7話のラストに登場した悪のヴィジョン。
その起源が明かされ、アベンジャーズのみならず、これまで登場してきたヒーローたち全員が脅威にさらされるという衝撃的なエピソードになっていました!

『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』の初登場時から、チートキャラと言っても過言ではない程に圧倒的な強さを見せつけていたアベンジャーズの一人・ヴィジョン。
彼が、もし、ヴィランになってしまっていたらという展開の絶望感がハンパではない。
過去のシリーズに登場した舞台や登場人物をバタバタとなぎ倒し、破壊の限りを尽くす彼の暴走には唖然とさせられました……。

まさかの最強キャラクターまでもが瞬時に撃退され、野望を実現するために行動する彼の驚くべき悪行の数々。

その衝撃の内容から、最終回が気になってたまらなくなるエピソードでした!

※以下、本編のネタバレがありますのでお気をつけください。

元ネタ


今回の元ネタはMCU第11作『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』でした。
映画であれば、アベンジャーズの最終兵器として、ウルトロンとの対決において、救世主となっていた有機生命体・ヴィジョン。
彼が悪の手に落ちるだけで、ここまで絶望的な展開が待っているのかと、ただただ驚かされる内容でした!

悪のヴィジョンが、次々に破壊の限りを尽くす場面では、
・アスガルド(『マイティ・ソー』など)
・ソヴリン(『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』)
・サカール(『マイティ・ソー バトルロイヤル』)
・エゴ(『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』)
・ザンダー(『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』)
が登場。

そして、上記の作品以外にも、大きくMCUの過去3作品の名場面がフィーチャーされていました!
例えば、劇中では生き延びたアベンジャーズメンバーであるブラック・ウィドウとホークアイが、最後の切り札とされるアーニム・ゾラ(悪の組織・ヒドラの科学者)の意識が眠るスーパーコンピューターのもとを訪れますが、この展開は、そのまま『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』を踏襲しています。

また、このデータが保存されていたシベリアの施設は『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』のクライマックスに登場した場所。
さらに、戦いの末にホークアイが自己犠牲を払い、ブラック・ウィドウを助けるという展開は『アベンジャーズ/エンドゲーム』の名場面をそれぞれの役割を入れ替えて再現したシーンになっています。

小ネタ・トリビア


過去回と同様に、映画ネタも豊富なエピソードでした!

ウルトロンを揶揄するブラック・ウィドウが、ターミネーター、スカイネット(『ターミネーター』シリーズに登場する架空のAIコンピュータの総称)という言葉を口走ったり、広大な資料庫を見たホークアイが『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』(『インディ・ジョーンズ』シリーズの1作目。政府機関による広大な地下倉庫が登場する)をジョークとして挙げたり……。

また、重要データを探すホークアイが全くみつからないことからデススターの設計図(スターウォーズシリーズの重要アイテム。『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』では、この地図のために寄せ集めチームが命がけの奪還作戦を繰り広げる)を例として挙げるシーンもありました!!

「私はウォッチャー。広大なる新たな現実の案内人」と高を括り、並行世界の様子を見守っていたストーリーテラーが、ついに物語に巻き込まれてしまう展開には、少し笑ってしまいましたが、なにはともあれ、最終回の展開が気になった今回のエピソード。

果たして、全並行世界を脅かす最大の強敵にヒーローたちは、どう立ち向かうのか?
「もしも……」の世界で生み出されたヒーローたちは、「アッセンブル!」(集結)できるのか??

最高のフィナーレに向けて加速する展開に、最終回が待ち遠しくなるエピソードでした!!

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–{第9話 もしも…ウォッチャーが誓いを破ったら?:あらすじ&感想}–

第9話 もしも…ウォッチャーが誓いを破ったら?

あらすじ


悪の道に落ちたヒーロー・ヴィジョンの暴走によって訪れた並行世界の危機。窮地に陥った時空の案内人・ウォッチャーは、別次元のヒーローたちに救いを求めることになり……。

感想

 

率直に最高の最終回でした!

オムニバスシリーズとして、少しづつ、その色合いを変えていった「ホワット・イフ…?」
今回は、その特性を活かして、並行世界のヒーローたちが集まる物語を描き、まさに有終の美を飾るシーズンフィナーレになっていました。

これまで約20作品が作られ、10年を超える歴史を築いてきたMCUですが、その魅力のひとつには、独立した物語が合流する楽しさがあると思っています。

今回のアニメシリーズでは、約30分×9話という短いスパンでそれが実現されていました。
また、既存キャラクターにおけるジェンダー描写を変化させるなど、スピンオフシリーズならではの試みに溢れていたのも見どころ。

『アベンジャーズ/エンドゲーム』でシリーズに一区切りが着いた今だからこそ、過去のMCU作品群を「もしも……」な設定で振り返り、今後のキーワードとなる”マルチバース”の概念を紹介するという、橋渡し的な要素も秀逸なアニメシリーズでした。

※以下、本編のネタバレがありますのでお気をつけください。

元ネタ

今回の冒頭はMCU第9作『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』をなぞる形でスタート。

映画版のキャプテン・アメリカのポジションが、そのままキャプテン・カーターに入れ替わる形で見事に再現されていました。
(また、アニメシリーズの第1話では、キャプテン・カーターが戦時中から現代の世界へやってくる場面で終了するため、今回はその続きにもなっています)

続いて、並行世界のヒーローたちが集まり、作戦会議をする場面では『アベンジャーズ/エンドゲーム』を、その中で行われる”インフィニティ・ストーン”の説明や、無人惑星でのヒーローと悪役のバトルシーンは『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』を、悪のヴィジョンとゾラ博士の人工知能がデータ上で戦うシーンでは『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』が再現されていました。

また、ポストクレジットシーンでは、カーターが死んだと思われていた恋人・スティーブと再会することが示唆されます。
これは『アベンジャーズ/エンドゲーム』で過去に戻り、亡きカーターと再会したスティーブの結末を入れ替えたものと言えるでしょう。

小ネタ・トリビア

 

今回の物語は、メタな視点と「もしも……」なハッピーエンドが印象に残るエピソードでした!
メタな視点という点では、シリーズのストーリーテラー・ウォッチャーが活躍する展開が挙げられます。

これまでのエピソードを見守り、ヒーローたちを集め、多元宇宙の全ての世界と物語を守り抜くと断言したウォッチャー。その姿は、一種、MARVELファンの代表とも言えるものでした。(ちなみに、映画版では『アベンジャーズ/エンドゲーム』まで、MCU作品の原作を数多く手がけた人物・スタン・リーがカメオ出演。『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』では、彼がウォッチャーであることが示唆されていました。)

特に、近年のマーベル作品は、メタ視点の強い物語が続いています。
主人公・ワンダが支配する虚像の世界と現実世界の対比を描いた「ワンダヴィジョン」や、これまでのMCU作品を一つの物語として俯瞰する「ロキ」など、長年続いてきたシリーズだからこその変革が求められているのです。

今回は、そんな作品群を継承する内容にもなっていたのではないでしょうか。
また、「もしも……」なハッピーエンドという点では、映画シリーズで悲劇的な運命を迎えた登場人物たちに、救いのあるラストを与えているのも印象的でした。

『アベンジャーズ/エンドゲーム』では、ヒーローの仲間たちや人類を救うために自らを犠牲にしたブラック・ウィドウ。
本作では自身の世界を失ってしまったブラック・ウィドウが、彼女のいない「ホワット・イフ…?」第3話の世界に現れることで、一旦のハッピーエンドが描かれていました。

このほかにも、ブラックパンサー(演者であるチャドウィック・ボーズマンが急逝したことで再登場が難しくなった)や、サノスを倒したガモーラ(のちに再登場するものの、『アベンジャーズ/エンドゲーム』ではサノスに命を奪われてしまっている)など、エンディングには、シリーズを追ってきた人であればあるほど、グッとくる思いがあるのではないでしょうか。

実写シリーズでは難しい「もしも……」な展開を繰り広げ、ファンを楽しませたマーベル初の公式アニメシリーズ「ホワット・イフ…?」。

今回、登場しなかったヒーローたちも含めて、新たな物語が描かれるシーズン2の製作もすでに予定されているとのこと。

次回は、どんなヒーローたちの活躍を見ることができるのか。それを心待ちにしつつ、今後のシリーズも追いかけていきたいです。

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–{『ホワット・イフ…?』をより楽しむためには}–

「ホワット・イフ…?」をより楽しむためには

「ホワット・イフ…?」は初めて観る人でも楽しめる内容になっていますが、これまでのMCU作品を観ることでより楽しむことができます。

『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』
第1話の元ネタ。正義感溢れる兵士・スティーブの大活躍。そして、恋人・カーターとのロマンスに注目。“キャプテン”となったアニメ版のカーターと“エージェント”として活躍する本作の彼女を、是非、見比べていただきたいです!

『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』
第2話の元ネタ。ユーモア溢れるヤンチャ男・スターロードと、彼と冒険を共にする落ちこぼれ集団の活躍に注目!慈善的で知性のあるティ・チャラ版スターロードとは全く異なる、ピーター・クイルの振る舞いも面白いです!

『アベンジャーズ』
第3話に関連するエピソード。アニメ版とは異なるロキの暗躍に注目です!

『ドクター・ストレンジ』
第4話の元ネタ。アニメでも、ざっくりと語られていたドクターストレンジの誕生秘話が詳細に明かされています。

『アベンジャーズ/インフィニティー・ウォー』
第5話の元ネタ。ゾンビは登場しませんが、アベンジャーズの面々が強力な敵・サノス軍団と戦い、絶対、絶命のピンチに……。

○『アイアンマン』
第6話の元ネタ。冒頭の展開は、本作を観てみると、完コピされていることが分かるはず!!

『マイティ・ソー』
第7話の元ネタ。人気キャラクター・ロキが初登場し、愛憎入り乱れるシェイクスピア風兄弟ゲンカが繰り広げられます。傲慢だけれど紳士的な神様・ソーの魅力が抜群で。彼が成長していく物語にも注目です!

『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』
第8話の元ネタ。アベンジャーズメンバーでも屈指の強さを誇るキャラクター・ヴィジョンが初登場。おどろおどろしいウルトロンたちの暴走にも注目です!

『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』
第8話の元ネタ。アニメ版で見事に再現されていた冒頭シーンに注目!
主人公がキャプテン・アメリカの場合とキャプテン・カーターの場合、二つを見比べることで、新たな発見があるかも……。

いずれの作品もディズニープラスにて配信中。
「ホワット・イフ…?」の予習・復習として鑑賞することで、より、シリーズを楽しめること間違いなしです!

ディズニープラスについてはこちらの記事でも解説しているので、ぜひチェックしてみてください。

【関連記事】Disney+(ディズニープラス)の使い方|こういう人は絶対使うべき!

(文:大矢哲紀)

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–{「ホワット・イフ…?」作品情報}–

「ホワット・イフ…?」作品情報

【基本情報】
マーベル・スタジオが贈る初のアニメーション作品。もしもアベンジャーズたちに別の運命が待っていたとしたら…?想像を超えた驚くべき”もうひとつ”の物語

【予告編】

【基本情報】
監督:ブライアン・アンドリュース

脚本: アシュリー・ブラッドリー(『トロールハンターズ』、『ミッシング・スリー: アルカディア物語』)

出演:クリス・ヘムズワース(ソー役)、ジェレミー・レナー(ホークアイ役)、トム・ヒドルストン(ロキ役)、チャドウィック・ボーズマン(ティ・チャラ役)、サミュエル・L・ジャクソン(ニック・フューリー役)

>>>ディズニープラスで「ホワット・イフ…?」を観る