新感覚ホラー<映像エンタメ『ROOOM』>体験速報!|※ホラー苦手な方は最後の最後は読み進めないでください!

映画コラム

1990年代後半、『リング』シリーズ(98~)、『呪怨』シリーズ(03~)で一気に花開いたJホラー。

しかし、その後は徐々に粗製濫造気味になり、映画のクオリティもスケール感も尻つぼみになりいつしか大掛かりなホラー映画はスクリーンから遠ざかっていきました。

しかし! 2010年代後半から今年にかけて『リング』の中田秀夫監督による『事故物件-恐い間取り-』(20)、『呪怨』清水崇監督の“実録!恐怖の村シリーズ”(『犬鳴村』(20)『樹海村』(21)『牛首村』)がそれぞれスマッシュヒットを記録、日本のホラーは新たなステージに入りつつあります。

そんな中で『リング』『スクリーム』(96~)『ソウ』(04~)『戦慄迷宮3D』(09)(清水崇監督作品)を配給してきたアスミックエースが、オンライン進行型コーリングホラーの「イキサキ探し」や対話型推理劇体験コンテンツ「マーダーミステリー」を手掛けるBAKERUと新たな恐怖体験のために最恐タッグを結成。“指殺人型ステイルームホラー”『ROOOM』を創り上げました。

また『ROOOM』の体験設計とプロデュースを「イキサキ探し」などのオンライン型ホラーコンテンツを手掛けてきたホラープロデューサーでアーティストの夜住アンナが担当していることにも注目です。

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※記事の途中、一部構成についてネタバレを含みます。

今までにない体験型ホラー映像の『ROOOM』の幕が開く!!

チケットをオンライン上で購入した観客は指定された時間に送付されたURLから映像リンクに飛びます。

と同時に個人のLINEアカウント内に上演時間限定のチャットルーム“スポットルーム”への招待が届き観客は各々入室して、『ROOOM』の開演を待ちます。

そこで、同じ時間帯に『ROOOM』を観客たちとコミュニケーションをとりながら、目の前で進行していく物語に様々な推理や感想を展開していくことになります。

やがて、見ている側“だけ”のもののはずの“スポットルーム”のやり取りが目の前で展開されていく物語と深くリンクしていくことになります。

こちらからの何気ない一言、些細な行動が『ROOOM』の物語と登場人物の運命に大きな変化を与えていく構造になっています。

体験型エンターテイメント・イベントとホラー映画ファンの両方を全く新しいスタイルの恐怖が作り出され、それが直接、観客の部屋・手元のPCやタブレットにダイレクトに届きます。

–{『ROOOM』のあらすじ<ネタバレなし>}–

『ROOOM』のあらすじ<ネタバレなし>

舞台はありふれたマンションの一室。

引っ越してきたばかりの新婚夫婦の矢口徹と妻の遥香。遥香のお腹には新たな命が宿っています。

オーナーは車いす生活という不便な生活を送っているものの、矢口夫妻には親切に接し、二人にとっては申し分のない新生活と言える環境が整っています。

しかし、矢口家の寝室の上の部屋から響く怪音をきっかけに幸せな日々に影を落としていきます。

足音のようにも聞こえますが、上の階に住んでいるのは車いす生活のマンションのオーナー、足音というには不自然です。

そんな遥香の元に「不幸になる心霊チャットルームの噂話」という迷惑メールが届きます。その後、スマホが繋がった場所は、幽霊がいるチャットルームでも、悪意に満ちたチャットルームでもなく、知らない誰かと繋がる“スポットルーム”でした。

怪奇現象が続く中、周りに相談するものの、事態が解決に向かわないことで、遥香は徐々に精神的に追い詰められ、孤立していきます。

そして“スポットルーム”の中で親切心からコメントをくれる参加者の言葉に頼るようになっていきます。

徐々に“スポットルーム”に依存していくようになる遥香、しかし、これは恐怖の序章でしかありませんでした…。
 
この後、一部構成についてネタバレを含みます。

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–{『ROOOM』を体験して<一部、構成についてネタバレあり>}–

『ROOOM』を体験して<一部、構成についてネタバレあり>

現在、解禁されている公式サイトの情報からは窺い知ることができませんが『ROOOM』はオンライン体験型×ホラー映画です。

LINEやスマホを通じて、観客どうしで繋がりあい、さらには主人公の遥香と繋がります。

ここでの繋がりによって発せられた言葉によって『ROOOM』の物語は分岐していき、別々の結末=マルチエンディングを迎えます。

サスペンスアドベンチャーゲームなどではときおり見られるマルチエンディング方式ですが、配信映像作品で取り入れられることはなかなか無いのではないでしょうか?

いつどこに、どんな分岐があって、何を選ぶべきで、何を選ばない方が良いのかについては、ここで記すことはしませんが、まさに見事な“初見殺し”のコンテンツとなっています。
 「イキサキ探し」「マーダーミステリー」を手掛けるBAKERUとその「イキサキ探し」などのオンライン型ホラーコンテンツを手掛けてきた夜住アンナが担当していることもあって、念入りに作りこまれた仕掛けがあることだけは言っても大丈夫でしょう。

映像部分をインディペンデント映画や乃木坂46の個人PVを手掛けるギークピクチャーズ所属の三重野広帆が監督し、脚本「世にも奇妙な物語」や「ソロキャンプ」を手掛けてきた諸橋隼人が担当しています。この若手クリエイターコンビがテンポの良さと“怪しさ”と“意味ありげ”に満ち満ちたドラマを展開させてきます。

LINEで観客どうしが物語の展開を読み合い、推理合戦をしあい、“ここが怪しいのでは!?”というところを指摘し合いながら、作品が見られるという“普通の見られ方をされない”難しい作品となりましたが、テンポの良さと程よいハッタリがメリハリよく配されていて最後まで目を離せません。

物語のヒロインを演じるのは、元乃木坂46&乃木坂46初代センターという肩書も、もう必要がなくなってきた生駒里奈。

映画・ドラマ・舞台とほぼ途切れなく新作に出演し続けていて、この10月(秋田は9月に先行公開)には故郷の秋田を舞台にした映画『光を追いかけて』が公開待機中です。

ホラー作品と言うことでも『コープスパーティー』シリーズ(15)で主演済みと言うこともあって、ジャンルへの適合ぶりを見ることができます。

共演には日中を股にかけて活躍する水間ロン、『カメラを止めるな!』(17)の秋山ゆずきなどが脇を固めています。

–{WITHコロナの新ライフスタイルに合わせた映像コンテンツの在り方となるか?}–

WITHコロナの新ライフスタイルに合わせた映像コンテンツの在り方となるか?

テレビのドラマやスポーツ中継を見ながら同時進行でSNSに感想を投稿して盛り上がるという人は少なくないと思いますが、映画館でそれをやったら周りの人に怒られてしまいます。『ROOOM』はそんな“禁断の楽しみ方”をできるものになっています。

しかも、そこに集まる人の意識は目の前で進んでいく『ROOOM』の物語にくぎ付けになっているので、一方通行のつぶやきではなく、非常に高い熱量のこもったコミュニケーションが成り立っています。しかもそれが物語を左右するというのですから、楽しさ倍増です。

『ROOOM』自体は新機軸を盛り込み過ぎて、売り出す側もちょっと情報の出し方などのバランスの悪さが目につくところもありますが、コロナ禍で配信で映像コンテンツを見るというライフスタイルは定着しつつあるので、しっかりと訴求させて『ROOOM』単発で終わらせることなく、このスタイルが続くことを期待します。8月以降も公演は続くとのことなので、裾野がどこまで拡がってくれるか楽しみです。

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(文:村松健太郎)