<お耳に合いましたら。>最終回まで全話の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】

国内ドラマ

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2021年7月8日より放送開始した「お耳に合いましたら。」。

テレビ東京が音楽ストリーミングサービス「Spotify」と共に、ポッドキャスト番組と連動させたオリジナルドラマである本作は、伊藤万理華演じる会社員の高村美園が、とあることをきっかけにポッドキャストを始め、人気のパーソナリティ目指して奮闘する物語。

cinemas PLUSでは毎話公式ライターが感想を記しているが、本記事ではそれらの記事を集約。1記事で全話の感想を読むことができる。

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もくじ

・第1話ストーリー&レビュー

・第2話ストーリー&レビュー

・第3話ストーリー&レビュー

・第4話ストーリー&レビュー

・第5話ストーリー&レビュー

・第6話ストーリー&レビュー

・第7話ストーリー&レビュー

・第8話ストーリー&レビュー

・第9話ストーリー&レビュー

・第10話ストーリー&レビュー

・第11話ストーリー&レビュー

・第12話ストーリー&レビュー

・「お耳に合いましたら。」作品情報

第1話ストーリー&レビュー

第1話のストーリー

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高村美園(伊藤万理華)は、とある漬物会社に勤める会社員。彼女の楽しみはお気に入りのポッドキャスト番組を聴き、会社帰りに“チェンメシ”(チェーン店グルメ)を買って、ひとり自宅で満喫すること。

大勢の前で自らを表現することが苦手な美園であったが、「好きなこと」を語るときだけ熱量が溢れる美園の姿を見ていた同僚・亜里沙(井桁弘恵)に、ポッドキャスト配信をやってみることを勧められる。

そして美園はある夜、大好きなチェンメシを片手に、はじめてのポッドキャスト配信に挑戦することに。トークのルールもわからない美園であったが、その気持ち溢れる、実に“おいしそうな配信”が徐々に反響を呼んでいく。

そして、会社の後輩で“音オタク”の佐々木(鈴木仁)もそこに加わり、美園は仲間とともに、番組「お耳に合いましたら。」の人気パーソナリティを目指して、成長していく…。

第1話のレビュー

「この番組は! 番組……でいいのかな? 私が、私が好きなものをいつまでも好きでいられるように始めました!」

好きで好きでたまらないものがある人は幸せだ。さらに、その好きなものを自分の言葉で表現して、誰かに届いたときの幸せったらない。そこから予想もしなかったことが起こることだってある。

元乃木坂46の伊藤万理華主演「お耳に合いましたら。」は、そんな楽しさをギュッと凝縮して伝えてくれるドラマだ。テーマは流行の兆しを見せているポッドキャストと、どこの街にもある馴染みのチェーン店グルメ、通称“チェンメシ”。これまでテレビ東京が得意にしてきた趣味ドラマに、“好きを伝える”という要素を合盛りさせた、松屋のカレギュウのようなドラマである。

見どころは松屋のメニューのようにたくさんある。まずは何かを表現するのが苦手だけど、チェンメシとラジオと氷川きよしが大好きな主人公・高村美園を演じる伊藤万理華。とても地上波連ドラ初主演とは思えないほど、のびのびと演技している。美少女に見られなくてもまったく平気。どこにでもいる漬物会社のOLを演じるため、あえてオーラを引っ込めているように感じる。でも、おどおどしたり、早口になったり、あごを突き出したり、ぴょこぴょこ動いたりする姿がとても愛らしい。エンディングの「お耳にダンス」も素晴らしい。このダンスが毎回変わるというのだからゼイタクな話である。

もちろん、チェンメシによる飯テロも炸裂する。第1話は松屋。食べたことがある人なら味や匂いがくっきり思い出せるし、食べたことがない人でも次に街を歩いたときに店が気になるのは間違いない。なんなら、ドラマを観終わったら家を飛び出して、黄色い看板めがけて突撃したくなる。松屋はいつでも我々を待っていてくれる。

そしてポッドキャストの楽しさ。制作に協力しているSpotifyは音楽を楽しむためのサービスだと思われがちだが、近年力を入れているのが音声コンテンツであるポッドキャスト。ラジオと似ているのだが、プロが作ったラジオ番組よりもっとゆるい印象がある。美園のように一般人が自分の好きなことについて、ゆるゆる喋っている番組も少なくないから、いつでもどこでもゆるゆるとした気分で聴くことができる。何を隠そう、筆者もポッドキャストをSpotifyで配信している。だから、美園の気持ちも使っているAnchorというアプリのこともよーくわかるのだ。

毎回登場するレジェンドパーソナリティーにも注目したい。第1話に登場したのは吉田照美。この道45年以上の超ベテランがこんな言葉で美園を後押ししていた。

「何かを好きになる感情っていうのは、言葉にして誰かにちゃーんと伝えないと、心が麻痺してしまうらしいよ」

吉田照美の言葉を受け取った美園が自分でポッドキャストを始めるときに最初に言ったのが、冒頭に掲げた言葉である。

グルメと車中泊と人情話をかけ合わせた傑作ドラマ「絶メシロード」の生みの親である博報堂の畑中翔太が仕掛け人で(だから濱津隆之も登場する)、脚本は「絶メシロード」も手がけた才人・マンボウやしろ(彼もラジオパーソナリティー)、監督は『青葉家のテーブル』の松本壮史が務めている。花澤香菜のOP曲、にしなのED曲も含めて、まったく隙のない布陣で描かれる「好き」にまつわる物語。どんな展開を見せるのか楽しみだ。

※この記事は「お耳に合いましたら」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第2話ストーリー&レビュー}–

第2話ストーリー&レビュー

第2話のストーリー

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高村美園(伊藤万理華)の楽しみは、お気に入りのポッドキャスト番組を聴くことと、週に何度かチェンメシ(チェーン店グルメ)を堪能すること。亜里沙(井桁弘恵)の勧めがきっかけで、好きなものを好きと伝えるために初めて自分自身でポッドキャスト配信をした美園。恥ずかしがりながらも、配信を聴いてくれた人が少しずつ増えることに喜びを感じていた。
そして、配信の音質を上げるため、亜里沙と、会社の後輩で音に詳しい佐々木(鈴木仁)と三人でマイクや機材の買い出しをすることに。

第2話のレビュー

「好き」を前にした人は誰もが光り輝く。そして何よりも尊い。

伊藤万理華主演のドラマ「お耳に合いましたら。」がとてもいい。第2話は「チェンめし(チェーン店グルメ)」についてのポッドキャストを始めた高村美園(伊藤)が、同僚の亜里沙(井桁弘恵)と「音」マニアの会社の後輩・佐々木(鈴木仁)とともにマイクやヘッドフォンを買いに行くというお話。

自分のポッドキャストのために同僚と後輩が協力してくれるというシチュエーションに戸惑って、最初はぎこちなかった美園だが、やがて亜里沙も佐々木も「好き」で集まっていたことがわかっていく。音マニアの佐々木は高性能でお得なヘッドフォンやマイクを探すのが「好き」。亜里沙はどうやら美園のお世話をするのが「好き」。

美園も3人での行動が「好き」になり、買い物の終わりには大好きな「餃子の王将」で打ち上げをする。まだ何の屈託もなかった中学の頃、部活帰りに寄った思い出の「チェンめし」である。というわけで、今回のポッドキャスト「お耳に合いましたら。」のテーマは「餃子の王将」。単に店の説明に終始するのではなく、こうやって自分ごとを交えて話すと、聞いているほうもぐっと身近に感じる。

ちなみに佐々木のアドバイスに従って美園が揃えた機材は、ヘッドフォンがSONYの「h.ear on 2 MDR-H600A NC」(ペールゴールド)、マイクが「sE Electronics X1S」(ポップシールドを含むVocal Pack)、ミキサーがRoland の「GO:MIXER PRO」と思われる。美園たちは中古を探していたが、新品で揃えようとすると、なかなかの金額になる。なお、ドラマと同時にSpotifyで配信されている美園のポッドキャストが、この機材で収録されているかどうは謎(1本目とあまり音質の違いを感じなかった)。

美園、亜里沙、佐々木の3人のバランスを見ていると、まるで『映像研には手を出すな!』のようだと思えてくる(伊藤万理華の浅草みどり感もさることながら、井桁弘恵の金森さやか感がすごい)。そういえば、『映像研』も「好き」にまつわる物語だった。

「好き」といえば、美園の恋人の内山(井上想良)は「水源」が好きなようだ。美園は内山のフェイスラインが好きで、お互いにお互いの「好き」を温かく見守っている感じが良い。

第2話は、アルコ&ピースの平子祐希、オズワルドの伊藤俊介、レジェンドパーソナリティーとしてエレキコミックのやついいちろうが出演していて芸人濃度が高かったが、なかでもオズワルド伊藤のカリスマ社長っぷりがすごかった。決めゼリフは「お前も漬物にしてやろうか」。さすが漬物会社のポリシーを「NEW WORLD ORDER」にする男だ。

※この記事は「お耳に合いましたら」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第3話ストーリー&レビュー}–

第3話ストーリー&レビュー

第3話のストーリー

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チェンメシ愛を語るポッドキャスト配信を始めた高村美園(伊藤万理華)。最近、隣の部屋から聞こえてくる不思議な音楽が心地よく、病みつきになってしまい配信ができないでいた。しかし、配信は続けたい気持ちもあるため、佐々木(鈴木仁)からアドバイスをもらい、配信をするときだけマットレスを壁に立て掛け防音対策を試みるが、勢い余って壁にぶつけてしまう!それ以降、静かになってしまった隣人。誤解を解きたい美園は…

第3話のレビュー

壁越しに聞こえるシタールの音、漬物会社の俳句キャンペーン、「富士そば」のコロッケそば、ポッドキャストと「好き」を伝えること。

一見、何の脈絡もない事柄がより合わさって、ひとつの物語になったドラマ「お耳に合いましたら。」第3話「壁越しの関係」。

こよなく愛する「チェンめし」についてのポッドキャストを始めた高村美園(伊藤万理華)だが、引っ越してきたばかりの隣室から聞こえるシタールの音のせいで新しいポッドキャストを更新できずにいた。だけど、美園は困っているわけではなく、むしろシタールの音色が好きなのだという。ほかにも、時折聞こえてくる隣人の声や生活音に勝手にシンパシーを抱いていく美園。不思議な子。

隣人に「好き」だと伝えたい。だけど、伝えられない。そんなとき、美園が勤める漬物会社の俳句キャンペーンについての会議が行われる。効果に疑問を呈する社員に対して、猛然と反論する“音オタク”の佐々木(鈴木仁)。彼は大好きな投稿者に直接会いに行ってしまったのだという。いろいろアウトなのだが、佐々木の情熱に感動した美園は、隣人に直接会うことを決意する。佐々木の「好き」という情熱が美園に飛び火したのだ。

美園が手土産に選んだのは、「富士そば」のコロッケそば。24時間営業でBGMは演歌、サラリーマンたちが手早くそばを啜る「富士そば」は、美園のような女性ひとり客にはややハードルが高い。「富士そば」へのハードルの高さと、隣人への挨拶のハードルの高さと引っかけてあるのだろう。さらに、そばは食べどきが短い。持っていくと決めたら、すぐに実行しなければならない。「富士そば」の店員となったレジェンドパーソナリティのクリス・ペプラーも美園を後押ししてくれる。

結局、美園は隣人の高杉(濱田マリ)に、彼女が出すシタールの音が「好き」だと伝えることができた。ポッドキャストで自分の「好き」を伝えることと、隣人に「好き」と伝えることはとても親しい。他人の「好き」を肯定することで、シタールの音のような良いヴァイヴスが広がっていく。ここで美園の一句。

秘めし思い
蕎麦を通じて
壁越える

「飯テロ」ドラマでありながら、「好き」のパウダーをこっそり街に噴霧する「好きテロ」ドラマでもある「お耳に合いましたら。」来週も楽しみ。

※この記事は「お耳に合いましたら」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第4話ストーリー&レビュー}–

第4話ストーリー&レビュー

第4話のストーリー

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チェンメシ愛を語るポッドキャスト配信を始めた高村美園(伊藤万理華)。突然、彼氏の内山郁人(井上想良)から別れ話をされ困惑する美園は、自分の気持ちに整理がつかないでいた。仕事帰りに亜里沙(井桁弘恵)と佐々木(鈴木仁)を誘い、ダーツや居酒屋、カラオケで発散する美園。その帰り、隣人の高杉紗江子(濱田マリ)と遭遇し悩みを話したことで少し気が晴れた美園は、配信の力を借りて自分の気持ちを探そうと決め….

第4話のレビュー

大好きな「チェンめし」を食べまくりながら、ポッドキャストで「好き」について喋りまくる高村美園(伊藤万理華)の物語「お耳に合いましたら。」。

第4話は、いきなり美園が恋人の郁人(井上想良)にフラれてしまうところから始まる。別れを告げられた場所が、北関東一円に展開するハンバーグが名物のチェーン店「FLYING GARDEN」なのが美園らしい。東京には店舗がないので、美園たちはわざわざデートで訪れているのだろう。

「水源」にこだわる郁人に移住を誘われても、今の仕事が好きな美園はとりあわない。目の前のハンバーグに夢中になっているうちにフラれてしまったというわけ。慰めに来てくれた亜里沙(井桁弘恵)に「水に負けた女」とからかわれ、自分の気持ちに整理がつかない美園は「水恐怖症」になってしまう。心がバグっているのだ。

気晴らしに亜里沙、涼平(鈴木仁)と居酒屋とボウリングとカラオケに繰り出すも、効果なし。家の前で会った隣人の紗江子(濱田マリ)に「無心になること」の大切さを教わった美園は、大好きな「FLYNG TIGER」のハンバーグを無心で食べて、ポッドキャストで無心で喋ってみることを決意する。配信を通して「わからなくなった自分の気持ち」を探すつもりだと言う美園。レジェンドパーソナリティのグランジ遠山からは、「難しく考えないで、叫んじゃえ!」とのアドバイスを受ける。なお、グランジ遠山と脚本のまんぼうやしろは、ラジオ「SCHOOL OF LOCK!」で校長と副校長の関係だった。

「泣いたんですけど、泣いてる自分に違和感があって、その違和感を認めたくなくって。でも、こうして喋ったら、素直にイヤな自分を外に出せそうで!」

無心に「好き」なものに打ち込み、無心にアウトプットし続けることで、素直な自分に向き合うことができるのだろう。美園はこれまで目を逸らしていたことに次々と気づいていく。

「私、自分のことばっかりで、私の“好き”、軽い……」
「私の恋愛が幼稚だっただけなのかもしれない」
「“好き”が幼稚だったら、その好きは偽物なの?」
「仕事好き、郁人好き、ハンバーグも好き。でも……その好きがどう違うのか、私にはわからない」
「けれども、今、郁人に“ごめんなさい”ってすごく思ってる」

亜里沙のアドバイスどおり、ハンバーグをおかわりして頬張るたびに、美園からどんどん言葉があふれてくる。普段はチェンめしを食べて、にへら~と笑っていることが多い美園だけど、真剣に自分と向かっているのがよくわかる。「好き」をアウトプットすることには、こんな効用もある。そこには、居酒屋やカラオケで発散するだけでは得られないサムシングがあるのだろう。

※この記事は「お耳に合いましたら」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第5話ストーリー&レビュー}–

第5話ストーリー&レビュー

第5話のストーリー

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チェンメシ愛を語るポッドキャスト配信を始めた高村美園(伊藤万理華)。前回の配信では彼への気持ちと向き合った美園。翌朝、寝ぼけながらSNSで自分の配信を検索すると、たくさんの好評なコメントが寄せられていた。恥ずかしながらも嬉しくてエゴサが止まらない美園だったが、その中で不評なコメントを見つけ落ち込んでしまう。そこで亜里沙(井桁弘恵)は「ネガティブなコメントはミュートすればいい」とアドバイスするが…

第5話のレビュー

主演映画『サマーフィルムにのって』も大好評の伊藤万理華の魅力がたっぷり堪能できるドラマ「お耳に合いましたら。」。チェーン店グルメ、通称「チェンメシ」が大好きなOLが、新しく始めたポッドキャストで「好き」を伝えるストーリー。第5話はSNS社会につきものの「エゴサーチ」がテーマ。

前回の失恋した話をしながらチェンメシを食べるポッドキャストが大反響を呼んだ結果、エゴサにハマってしまう高村美園(伊藤)。褒めてくれるコメントを見ればテンションが上がるが、ネガティブなコメントを見ると気分が下がる。これ、ものすごくよくわかる。何かクリエィティブなことをしている人なら、みんなそうだと思う。

「もう、これ沼だ。意識すればするほど」

そんな折、美園の会社で新製品のらっきょうの消費者グループインタビューが行われる。集まった人たちの意見をマジックミラー越しに美園ら会社側の人間が見るというものだが、出てくる意見はだんだん支離滅裂なものに。それにいちいち応えようとしてパニックになる開発担当者(今井悠貴)。ラッキョウの冷蔵期間が短すぎるという声には「宇宙食の技術を取り入れれば何とか!」。今井悠貴はまだ22歳なのに、芸歴18年だけあって芝居がすごくベテランっぽい。

その後、忘れ物を取りに来て美園と鉢合わせた老婦人がこんなことを言う。

「なんかごめんなさいね〜。顔が見えないからって好き勝手なことばっかり言っちゃってねぇ。ほかの人がいると、ついついつられちゃうのよ。誤解しないでね」

つまり、マジックミラー越しに発せられる無責任な意見=匿名で好き勝手につぶやかれるコメントということ。なるほど、上手い!

「つまり、さっきまでここにいた人の意見は、全部が全部本心からの意見じゃない。この顔が見えない、フェアじゃないシステムに言わされてるんですよ!」という美園の指摘も非常に鋭い。

今回登場するチェンメシは回転寿司チェーンの「くら寿司」なのだが、ここではレーンに流れてくる寿司が、タイムラインに流れてくるコメントに例えられていた。これも上手い!

「顔が見えない相手に想いを伝えるとき、人ってたぶん、過剰に、乱暴に、雑になるみたいなんです。だったら、意見をもらうこっちから、優しく受け止めればいいじゃないですか」と語る美園がたどりついた結論は「意見のサビ抜き」。顔が見えない相手の雑なコメントを好意的に読み替えて受け取ろうというわけ。

「結局、何言いたいか謎…」という意見をサビ抜きすると「何を言い出すかわからないから気になる」に。ポジティブ! 「いや、食べ終わってから喋ろう(笑)」という嘲笑は「落ち着いて食べてね」に。優しい〜。「シンプルにつまらない」……はスルーして自分の体をあたためる。店員に扮して登場したレジェンドパーソナリティは生島ヒロシ。ちっとも偉そうなことを言ったりしないのが面白い。

「こんな風に流れてるコメントもお寿司と一緒! 流れてくるのが多ければ多いほど、きっとみんな楽しいはず! 私はそう信じてます」

エゴサーチと無責任なディスコメントの本質を描きつつ、その受け取り方まで提案してくれて、さらに「くら寿司」の魅力まで伝えてくれる、アクロバティックな脚本が見事に決まった傑作回だった。

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–{第6話ストーリー&レビュー}–

第6話ストーリー&レビュー

第6話のストーリー

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らっきょう子ちゃん(駒井蓮)のラジオ収録の立会いを任された美園(伊藤万理華)たち。ラジオ局に着くや否や様子のおかしい美園に、亜里沙(井桁弘恵)は理由を問い詰めると、就活でギクシャクしてから一度も連絡をとっていない親友・香澄(桜井玲香)が番組スタッフとして働いているという。そして、ラジオ放送が始まったとたん、らっきょう子ちゃんが体調不良になってしまい、急遽代役として美園が喋ることになる…

第6話のレビュー

伊藤万理華主演のチェンメシ&ポッドキャストドラマ「お耳に合いましたら。」。第6話は伊藤と同じく乃木坂46の1期生で元キャプテンの桜井玲香が、グループ卒業後初共演ということで話題を呼んだ。

単に共演しただけでなく、ストーリーも2人にバッチリハマっていたので、乃木坂46を知らない人でも楽しめるのはもちろん、乃木坂46から2人を追ってきた人ならさらに楽しめる見事な内容だった。あらためて振り返ってみよう。

まつまる漬物のキャンペーンガール、25代目「らっきょう子ちゃん」(駒井蓮)のラジオ出演が決まり、高村美園(伊藤)が付き添いでラジオ局へ行くことに。ラジオ好きの美園だから喜ぶかと思いきや、すさまじい拒否反応を示す。らっきょう子ちゃんが出演するラジオTOKIOには、大学時代の親友だったがギクシャクしてしまい、卒業後は連絡を断っていた今井香澄(桜井)が勤務していたのだ。

久しぶりに顔を合わせた2人だが、打ち合わせでも険悪な雰囲気に。そんな中、ドラマの前半の画面をさらっていったのが、らっきょう子ちゃん役の駒井蓮だ。美園と香澄に挟まれてオロオロしながら愛想笑いしたり、緊張しすぎて倒れてしまったり、ものすごい勢いで再挑戦させてほしいと頼む(生放送だから無理)。くるくる変わる表情やオーバーアクションがとても楽しい。駒井蓮は映画『いとみち』で初主演して高い評価を得たが、今後の活躍にも期待したい。

なんだかんだあった収録も無事に終わった帰り道、美園と香澄は偶然「ジョナサン」の前で出会う。というわけで、今週のポッドキャスト「お耳に合いましたら。」は香澄がゲスト。大学時代の2人は「ラジオ研究会」でたくさんの時間を一緒に過ごした仲だった。その思い出の場所が、ネタ会議をやっていたジョナサンだった。

楽しかった季節が過ぎ、やがて就活の季節がやってきて、2人の感情は行き違いになる。香澄が取ったラジオ局の内定一緒に喜んであげられなかった美園、美園とのラジオ収録を「遊び」と言ってしまった香澄。ラジオ局で生き生きと働く香澄がうらやましい美園、ラジオのトークで人を惹きつける美園がうらやましい香澄。

でも、思い出のジョナサンのポテトを食べながら、ポッドキャストでお互いの気持ちを吐露することで、やっと心を寄せ合うことができた。好きなことでギクシャクすることもあるけど、好きなことを通じて和解もできる。レジェンドパーソナリティ、「たまむすび」でおなじみ赤江珠緒の「結びよければすべてよし。また始めればいいよ」の言葉もしみるね。

終盤の2人の掛け合いは、本当に長い時間、同じグループの中で過ごしてきたんだな、と伝わってくる迫真のもの。会話の中に出てくる「卒業」という言葉も、乃木坂46を追ってきた人たちならどうしてもグループの「卒業」とオーバーラップさせてしまうだろう。

そしてエンディングのダンスで伊藤が桜井の手をとり、一緒に踊りはじめる演出が本当に素晴らしかった。仲違いしていた親友同士が手を取って踊るというだけでもグッと来るのだから、乃木坂46時代からの2人のファンなら号泣ものだったんじゃないだろうか。予告後にカットがかかった後の表情を見せてくれるのも、実にサービスが行き届いていた。またいつか2人の共演を見てみたくなるエピソードだった。

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–{第7話ストーリー&レビュー}–

第7話ストーリー&レビュー

第7話のストーリー

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雑誌の「イマ聴くべきPodcast10選」に「お耳に合いましたら。」が選ばれた美園(伊藤万理華)は徐々に認知されてきていることに、喜びが隠せないでいた。そんな中、営業部エースの桐石(中島歩)と取引先のスーパーへ営業をする事に。
何事もそつなくこなす桐石の営業テクニックを見て感銘をうけていたが、スーパーの店長・大門(松尾諭)にはテクニックが通じず、壁にぶち当たってしまう。やる気を失くしてしまった桐石を励まそうと、美園は声をかけるが…

第7話のレビュー

好きなものを、好きなように食べて、好きなように語る。

伊藤万理華主演のポッドキャスト&チェンメシストーリー「お耳に合いましたら。」。元乃木坂46桜井玲香と共演した第6話がとても良かったのだが、第7話「ヘタレ王子と八本の矢」も実に気持ちの良いお話だった。

高村美園(伊藤)は取引先のスーパーに直接、営業に行くよう命じられる。バディは営業部エースの桐石(中島歩)。桐石は「八本の矢」と呼ばれる武器を持っていた。スマイル、自信、データとマーケティング(以下略)。ところが店長の大門(松尾諭)には、まったく通用しない。あっという間に自信喪失してダメ男と化す桐石。美園にも「ガラスのエース」「ちっちぇえ……」と呆れられる始末。

すっかりやる気を失った桐石に、美園はスーパーの近所にあったチェンメシ・ドムドムバーガーを食べさせて励ます。ドムドムバーガーといえば、日本初のハンバーガーチェーン店として知られるが、最盛期の90年代には約400あった店舗が現在は27にまで減ってしまった“絶滅危惧種”。現在は、美園が食べていた「お好み焼きバーガー」や「はみでる!アジフライバーガー」など個性的なメニューで勝負をかけている。ピンチのときに食べるにはぴったりのチェンメシだ。桐石がかぶりついている姿を見て、ものすごくドムドムバーガーが食べたくなった人は少なくあるまい。

桐石と美園は再びあの手この手を使って店長攻略を目指す。跳ね返されるたびに、ドムドムを食べて反省会を繰り返すふたり。桐石と美園の間に、いつしか会社の先輩と後輩、男女を超えた、ほのかな友情が生まれているのが微笑ましい。なんでも器用にこなすように見えた桐石が実は不器用な男だとわかるのだが、それを隠したり、誤魔化したりしないで、まるごと晒しているのがいいのかも(それを美園にポッドキャストの話のネタにされていたりするのだが)。最後は、ちゃんと美園のアドバイスにも従うようにもなっていた。

結局、営業に成功した桐石は鼻高々。実は成功したきっかけは「方言」だったというオチ(桐石と店長が青森出身だった)。エンディングダンスには桐石も登場して、本当の「バディ」になった感じがすごく良かったエピソードだった。やっぱり誰かと一緒に同じものを「うまい!」と思いながら食べていると、何か連帯感が生まれるんだろうなぁ。

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第8話ストーリー&レビュー

第8話のストーリー

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ある日突然社長(伊藤俊介)から「25代続いた広告塔らっきょう子ちゃんをこの夏で終わらせる」と全社員宛にメールが一斉送信された。反対の美園(伊藤万理華)は社長に抗議の連絡をすると、らっきょう子ちゃん存続派の人たちで新企画を考えてプレゼンするよう指示される。就業後、集まったのは佐々木(鈴木仁)、経理部の若林(臼田あさ美)、商品管理部の新木場(森本サイダー)。
4人で企画会議をするものの、なかなかアイデアが浮かばず苦戦する…

第8話のレビュー

伊藤万理華演じる主人公が、大好きなチェンメシをポッドキャストで語りまくるドラマ「お耳に合いましたら。」。今回も隅々まで行き届いた素敵なエピソードだった。

まつまる漬物の社長(伊藤俊介)が突然、大きな決断を下した。キャンペーンガールの「らっきょう子ちゃん」を25代目で打ち切ってしまうことにしたのだ。“青春”をテーマにしたCMもネタ切れで迷走気味。

社長に反対メールを送ったのは高村美園(伊藤万理華)と音マニアの佐々木涼平(鈴木仁)、いつも眠っている商品管理部の新木場(森本サイダー)、“アイアンウーマン”こと経理部の若林(臼田あさ美)の4人だけ。さっそく「らっきょう子ちゃん存続会議」を開いた4人は、CMのモチーフになりそうな“新しい青春”を探そうとするが、すぐに行き詰まってしまう。ホワイトボードに書かれた「AI戦争でディストピア化したTOKYOが舞台」の「らっきょう子2121」が気になる。

らっきょう子ちゃんに愛着のある美園、らっきょう子ちゃんが初恋の相手だという佐々木、ガチオタクの新木場に対して、今ひとつ反対理由がわからなかった若林だが、実は25代目らっきょう子ちゃんこと大泉凛子(駒井蓮)が彼女の姪っ子だということが判明する。そりゃ応援するに決まってるよね! 大いに盛り上がる一同。それまで同じ社内にいてもほとんど話さなかった4人(美園と佐々木は除く)が「好き」で通じ合った瞬間だった。

美園はその勢いでポッドキャストの収録をスタート! 今回のチェンメシは残業の夜食としてテイクアウトした「銀だこ」。たこ焼きは好きだけど「銀だこ」にこんなにいろいろな味があるって知らなかったよ。

「銀だこ」をつつきながら、“青春”の思い出話をする4人。美園はまわりと話が合わずに深夜ラジオばかり聴いていた青春、佐々木はひとりでバンド(?)をしていた青春、新木場は自転車に乗り続けた青春、そして若林は恋をしていた青春――。

大好きな彼が自分と釣り合わないと思うあまり、毎日お風呂で「(彼のことを)好きになりませんように」と祈っていた高校時代の若林(中尾百合音が臼田あさ美そっくりですごい)。文化祭の前日の思い出も甘酸っぱい。憧れの彼氏に文化祭の打ち上げに誘われたけど、結局打ち上げはなかった。本当は自分以外の人間たちはやっていたのかもしれないし、期待してしまった自分をバカみたいと思ったけど、それが若林にとって「一番青春っぽい瞬間」だったという。

若林の話を聞いて「青春なんて、そんなもんかも!」と叫ぶ美園。たしかに、青春なんて良いことばかりなんかじゃないし、孤独だし、苦しいし、何よりふわふわしていて手応えがないものだったりするんだよね。

大人になった今は、それぞれに「好き」ができて(若林はBTSのファンになったとか)、楽しいと語り合う4人は「らっきょう子ちゃん」存続が実現したら、あの日できなかった「打ち上げ」をやろうと約束する。4人がプレゼンしたのは青春が終わった「らっきょう子さん」。社長は感動してプレゼンは大成功! 打ち上げは4人で「銀だこ」ダンス。

これまではポッドキャストでリスナーに自分の「好き」を伝えていた美園だったが、今回は初めて一緒に語り合う4人で「好き」を伝え合っていた。何人に聞いてもらうかはどうでもよくて、ポッドキャストという手段を用いて身近な人たちと通じ合うことができる。それって、とっても素敵なことだと思う。

※この記事は「お耳に合いましたら」の各話を1つにまとめたものです。

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-{第9話ストーリー&レビュー}–

第9話ストーリー&レビュー

第9話のストーリー

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あることからひきこもりになってしまったお嬢様・西園寺ヒナミ(豊嶋花)は、最近美園(伊藤万理華)のポッドキャストにはまっていた。今まで家で出されるオーガニックな食事しか食べていなかったため、美園のチェンメシ愛を聞き、どうしてもジャンクフードが食べたくなってしまう。その思いを執事・松岡(嶋田久作)、家政婦・梅垣(小林きな子)、シェフ・竹森(山崎樹範)に訴えると、最初は反対されるも滅多にないヒナミのお願いに母(吉本菜穂子)に内緒で4人でピザ購入計画を実行することに…

第9話のレビュー

ポッドキャストとチェンメシをめぐる深夜ドラマ「お耳に合いましたら。」。第9話はちょっとした番外編。主人公・高村美園(伊藤万理華)のポッドキャストを愛聴している引きこもりのお嬢様、西園寺ヒナミ(豊嶋花)の物語だった。

西園寺家は使用人が3人もいる立派な家柄。ヒナミは健康のためにオーガニックな野菜料理しか口にしたことがなかったが、美園のポッドキャストを聴くようになってからチェンメシに憧れをいだくようになる。

「牛めしやハンバーガーに立ち食いそば。もう食べてるのを聴いてるだけで、口から唾液が出て、胃がジャンクを求めて苦しくなるの!」

わかる、わかるよ、ヒナミお嬢様。彼女はポッドキャストでの美園の呼びかけに応え、執事の松岡(嶋田久作)、家政婦の梅垣(小林きな子)、シェフの竹森(山崎樹範)に向かって、7年3ヶ月ぶりにわがままを言う。

「私、明日、ドミノピザが食べたい!」

最初は「不祥事」「背信行為」と渋い顔をしていた松岡も、ヒナミが「私は、この4人でピザを食べたいの」「みんな、家族なんだもん」という言葉に思わず破顔。都合の悪い3人に代わってヒナミが一人でドミノピザを買いに行くことになる。お嬢様の大冒険だ。

ヒナミ役の豊嶋花は、数々のドラマで主要人物の子ども時代を演じてきた名子役。最近では「大豆田とわ子と三人の元夫」の娘・唄役が印象的。徐々に名子役から名女優へと脱皮しつつある感じがする。今回も使用人を演じた芸達者たちとのやりとりが楽しい。

いろいろありつつ(たいしたことではないんだけど)、無事にドミノピザを買ってきたヒナミは、美園のポッドキャストを聴きながら4人でピザにかぶりつく。「ああ、世界の色が変わるほど美味しすぎる!」とヒナミが叫ぶのだが、筆者もピザを一度も食べたことのない状態に戻って初めて食べてみたら、こんなことを叫ぶのかもしれない。

「ピザって無敵ですよね。どんなに悲しくても、どんなに空気が悪くても、ピザが来たら、そこが一気にパーティー会場になってしまって、誰もが笑顔になる。お寿司とピザは、もう世界最強の食べられるパーティーグッズだって私は思うんです」
「一人で食べている人は、ピザが空間を明るくしてくれるし、仲間や家族で食べている人は、何でも明るく話せそうな空気に包まれる。ビバ、ピザ!」

美園のポッドキャストの喋りもキレキレ。ピザを囲んだヒナミと使用人たちは、楽しいパーティーをしている家族のようでもあり、仲間のようでもある。そういえば、昔、会社勤めをしてるときの残業の夜食は上司が取ってくれたピザだったなぁ、と思い出したりした。あれは、陽気に仕事をしようぜ! という上司なりのメッセージだったのかもしれない。

ヒナミの初恋の予感も匂わせつつ、最後は厳格な母親(吉本菜穂子)が「開かずの冷蔵庫」からピザによく合うコーラを出してハッピーエンド。エンディングダンスは、途中から「ご本人登場!」みたいな感じで現れた美園に、驚きと喜びを隠せないヒナミの姿がキュート。

今回はレジェンドパーソナリティが登場しなかったが、シェフ役の山崎樹範は人気ラジオ番組「SCHOOL OF LOCK!」の“初代校長”で、そのとき“初代教頭”だったのが、今回の脚本を担当したマンボウやしろだった。

※この記事は「お耳に合いましたら」の各話を1つにまとめたものです。

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第10話ストーリー&レビュー

第10話のストーリー

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美園(伊藤万理華)のもとに、母・美由紀(美保純)が突然やってくる。まつまる漬物との商談があると聞かされ、幼い頃から母に振り回されてきた美園は困惑する。翌日、会社で亜里沙(井桁弘恵)と佐々木(鈴木仁)と過ごしていると、商談を終えた母がやってきて、ひょんなことから皆で一緒に夜ご飯を食べることに。用があって美園の部屋を訪れた紗江子(濱田マリ)も加わり、張り切って料理の準備をする美由紀だったが…

第10話のレビュー

「お母さんにかかわるとろくなことがない!」

チェンメシ&ポッドキャストドラマ「お耳に合いましたら。」第10話は、ちょっとほろ苦いけどスイートな母子の物語。「好き!」だけじゃなくて「好きだけど嫌いだけど好き」みたいな奥行きのある味わいのストーリーだった。

高村美園(伊藤万理華)の母、美由紀(美保純)が突然やってくる。美園が務める会社、まつまる漬物と商談をするためだ。24歳で起業し、女手ひとつで美園を育ててきた美由紀だが、これまで様々な商売に手を出しては失敗を繰り返してきた。だけど、転んでもタダでは起きないし、それなりに何とかなっているところがすごい。バイタリティの塊だと思う。

人との距離がとことん近く、周囲を振り回してばかりの美由紀は、美園が大人になっても相変わらず。まつまる漬物に持ちかけた商談はアイデアレベルで実態をともなわず、美園の友人たちを美園の部屋に招待したものの、騒ぎを起こすばかりでまともにもてなすこともできない。張り切りすぎると失敗してしまうのが美由紀のクセらしい。娘があきれてしまうのも無理はない。ちなみに部屋で美園がパジャマ代わりに着ていたのは人気番組「空気階段の踊り場」(TBSラジオ)のTシャツだった。さすが。

美園は母も聴いているポッドキャストで、母への想いを打ち明ける。テーマは母の仕事場でもあった「ドトール」。幼かった美園は、ドトールで商談する美由紀の姿をずっと見てきたのだ。

保育園や学童保育に預けるのではなく、自分の仕事場に連れてくるのは、母親の愛情でもあり、打算でもある。商談相手に謝罪するとき、美園に嘘泣きを強要していたのだ。自他ともに認める「反面教師」だった。だけど、美園にとっては嫌な思い出ばかりではない。

「苦い思い出ばっかりだけど、私、ドトールが好きです。大人の世界に入り込んで仕事をするお母さん。そんなキラキラするお母さんを側で見られたから」

良い思い出の象徴が、商談がうまくいったときに食べた、甘い甘いミルクレープ。何層にも重なったクレープ生地を1枚ずつ巻き取って食べる母親を真似して、一緒に笑ったこともあった。

「ミルクレープみたいに、いろんな経験を重ねて、大人になった今だから、気づけたことがあります。コーヒーも思い出も、味わうごとに苦みが深みになっていくんです」

好きでもあるし、嫌いなんだけど、やっぱり好き。そんな娘の複雑な感情を、コーヒーの苦みとミルクレープの甘さに例えた脚本が見事だった。脚本を担当した灯敦生は「イタズラなKiss」シリーズに出演する女優でもある。すごい人がどんどん出てくるね。

エンディングダンスは美保純も登場。伊藤万理華が怒ったふりをした直後に肩に顔を寄せてふたりで目を瞑るシーンは、なんだか本当の母子のように見えた。

※この記事は「お耳に合いましたら」の各話を1つにまとめたものです。

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第11話ストーリー&レビュー

第11話のストーリー

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佐々木(鈴木仁)はたまたま亜里沙(井桁弘恵)と田所(濱津隆之)が話しているのを盗み聞きしてしまう。すると、亜里沙の口から「運命の人」と言う言葉が…いてもたってもいられなくなった佐々木は美園(伊藤万理華)にそのことを告げる。美園が亜里沙に直接真相を聞こうとするが、ことごとく避けられてしまう。そのことにますます不安になった美園は、結婚するのか、それならなぜ教えてくれないのかなど勝手な想像が膨らみ…

第11話のレビュー

大好きなチェンメシ(チェーン店のごはん)をポッドキャストで語りまくる主人公を描いた「お耳に合いましたら。」。

最終回の1回前の11話は、高村美園(伊藤万里華)にポッドキャストを始めるきっかけを与えてくれた親友で同僚の須藤亜里沙(井桁弘恵)とのエピソード。一番深くつながってるように見えた二人だったけど、実は大きな違いがあった。あふれるぐらい「好き」なものがある人と「好き」なもののない人の違いである。

美園を大きなショックが襲った。亜里沙が転職するというのだ。ふたりはチェンメシ「串カツ田中」でビールをあおりながら、正面きって話し合う。

「ようやくわかったんだ。私には、具体的に好きなものがないってこと」

亜里沙は生き生きとポッドキャストで喋る美園を眩しく見つめながら、自分の「好き」を探していたが見つからなかった。「好き」なものがある人は幸せだ。じゃ、「好き」なものがない人はどうすればいい? そこで、亜里沙は何かが「好き」な人を応援するために、働きやすい環境を作る仕事をしたいと考えるようになったのだという。亜里沙を苦しませたり、美園に嫉妬させたりしないドラマ作りが優しいなぁ。

一方、美園は亜里沙を応援したいけど、つい取り乱してしまう。友達が新しい道に進むことを決意したら、笑って送り出すのが大人の建前かもしれないけど、美園はこれまでと同じく本音をポッドキャストで語っていく。

「好きなものを好きってちゃんと言わないと、本音をちゃんと外に出さないと、心が死んでしまうから」

ここで美園が言う「好きなもの」は亜里沙のこと。「本音をちゃんと外に出さないと、心が死んでしまうから」とは、1話で美園がポッドキャストを始めた動機を指している。だから、どうしても「亜里沙と離れたくない」という本音があふれてしまうのだ。

一度は「串カツ田中」で楽しく飲み明かした美園と亜里沙だけど、結局ふたりの関係は気まずいまま。そんな折、佐々木の急な転勤話が持ち上がる。みんなバラバラになってしまう⁉

ちなみに亜里沙がフリースタイルバトル(?)の中で持ち出した、心理学者、アルフレッド・アドラーの「課題の分離」とは、他者の課題に土足で踏み込まないことで、対人関係の悩みをなくしていくというもの。「他者はあなたの期待を満たすために生きているのではない」というのがアドラーの考えだが、美園は「わからない」と切り捨てた。このあたりが、ふたりの仲をこじらせてしまっているのだが……。どんな最終回が待っているのだろうか?

※この記事は「お耳に合いましたら」の各話を1つにまとめたものです。

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第12話ストーリー&レビュー

第12話のストーリー

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亜里沙(井桁弘恵)が退職、そして佐々木(鈴木仁)が転勤するため送別会が行われた。
送別会の後も3人で朝まで飲み明かし、3人で録音を楽しむ。3人で初めて配信機材を買いに行ったこと、美園(伊藤万理華)の配信のこと、これまでの3人での思い出を語り合った。そうして2人がいなくなった日常の中、美園は寂しさから配信ができないでいた。
さらに、マイクセットを落として壊してしまい…

第12話のレビュー

大好きなチェンメシをポッドキャストで語りまくるドラマ「お耳に合いましたら。」が最終回を迎えた。いろいろなドラマがあるけど、ここまで多幸感あふれるラストはなかなかないんじゃないかと思えるような最終回だったと思う。

高村美園(伊藤万理華)にポッドキャストを薦めた親友の須藤亜里沙(井桁弘恵)は、本人の希望通り転職が決まり、音響機材のアドバイスをくれていた佐々木涼平(鈴木仁)は鳥取支社に転勤が決まった。後輩の涼森(宮崎優)に引き継ぎが行われ、社内では盛大に送別会が行われる。

送別会に社長(伊藤俊介/オズワルド)をはじめ、みんながちゃんと顔を出しているのが良かった。桐石(中島歩)と田所(濱津隆之)が披露した「香水」はいかにも社員のかくし芸って感じの選曲だけど、歌詞は去りゆく亜里沙(と佐々木)に未練たらたらの美園の心境とよくマッチしている。

その後の美園は涼森に仕事を教え、一緒に苦労し、ミッションを乗り越える喜びも味わった。でも、生活から「好き」がはじけるような瞬間は遠のき、ポッドキャストの収録も休んでいた。美園が涼森に「次、行くよ」と促すのは、彼女自身の決意のあらわれだろう。

でも、そういう日は突然やってくる。美園の場合、ココイチのカレーをいつもの5辛から8辛にして(相当辛い!)、ソーセージとチーズとほうれん草をトッピングしたら、「好き」が大爆発してしまったのだ。美園はすぐさまポッドキャストを再開する。やっぱり「好き」は伝えなきゃ、心が死んでしまうからね。ココイチの店員役は氷川きよし! ずっとドラマにポスターなどで顔を出していたけど、やっぱり本人が登場するとプレミア感が違う。

「限界突破したら、そこに答えがあったんです!」

説明不要だと思うが、このセリフは氷川きよしのヒット曲「限界突破×サバイバー」とかけたもの。美園はココイチのカレーとともに、自分が今一番「好き」なものについて語る。それは亜里沙と佐々木のこと。そして、もちろんチェンメシのこと。隣人の高杉(濱田マリ)や親友の香澄(桜井玲香)、経理部の若林(臼田あさ美)、母の美由紀(美保純)らがみんなポッドキャストを聴いて微笑んでいるのがいい。西園寺ヒナミ(豊嶋花)と使用人たちが揃って聴いている姿にも嬉しくなってしまった。

翌朝、美園のスマホには亜里沙と佐々木からメッセージが届いていた。いつもの延長のダメ出しなのだが、距離があってもつながれるのがポッドキャストのいいところ。1年後、亜里沙と佐々木はそれぞれ順調に仕事をこなしていて、美園は出張先の香港からポッドキャストを配信していた。エンディングはもちろん3人でダンス。絶対あるはずだと思っていたけど、ちゃんとあるのが嬉しい。

「好き」なことは人との距離を縮めるし、物理的な距離をものともしないポッドキャストは「好き」を発信するのにこれ以上ないツールだと思う。もし、あなたに何か「好き」なものがあったら、まずは誰かに伝えてみるといいんじゃないだろうか。きっと世界が広がっていくと思う。

(文:シネマズ編集部)

※この記事は「お耳に合いましたら」の各話を1つにまとめたものです。

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–{「お耳に合いましたら。」作品情報}–

「お耳に合いましたら。」作品情報

高村美園(伊藤万理華)は、とある漬物会社に勤める会社員。彼女の楽しみはお気に入りのポッドキャスト番組を聴き、会社帰りに“チェンメシ(チェーン店グルメ)”を買って、ひとり自宅で満喫すること。大勢の前で自らを表現することが苦手な美園であったが、「好きなこと」を語るときだけ熱量が溢れる美園の姿を見ていた同僚・亜里沙(井桁弘恵)に、ポッドキャスト配信をやってみることを勧められる。
そして美園はある夜、大好きなチェンメシを片手に、はじめてのポッドキャスト配信に挑戦することに。トークのルールもわからない美園であったが、その気持ち溢れる、実に“おいしそうな配信”が徐々に反響を呼んでいく。そして、会社の後輩で“音オタク”の佐々木(鈴木仁)もそこに加わり、美園は仲間とともに、番組「お耳に合いましたら。」の人気パーソナリティを目指して、成長していく。

出演:伊藤万理華/井桁弘恵/鈴木仁 ほか 

監督:松本壮史/杉山弘樹/松浦健志

脚本:家城啓之/大歳倫弘/灯敦生/松本壮史

原案・企画・プロデュース:畑中翔太(博報堂ケトル)

キャストコメント

伊藤万理華(高村美園 役)コメント 

主演ドラマ、というのがまったく聞き馴染まなくてドキドキしています。
ラジオレジェンドの大先輩の方々に見守られながら、撮影に奮闘しています。
Spotifyユーザーとして、このドラマを通してポッドキャストデビューできることがすごく嬉しいです!
私が演じる、高村美園の発する拙くも漏れ溢れ出るチェンメシ愛をどうかあたたかく聴き取って、
見守っていてください。木曜日のこの夜が明日のもうひとがんばりに繋がって、
それを終えてから食べるチェンメシはきっと最高に美味しいです。
美園と一緒にそんな楽しい習慣をつくっていきましょう。
お耳チーム一丸となって良い作品にしていきます!どうぞよろしくお願いします。

井桁弘恵(須藤亜里沙 役)コメント 

「音声コンテンツ」と「チェンメシ」どちらも身近で大好きな私にとってこのドラマはワクワクで楽しみでしかありません!
伊藤万理華さんが演じられる美園を亜里沙としてサポートしながら、私自身もこの作品を通して一緒に成長できたらいいなと思っています。
音声コンテンツとチェンメシのコラボはもちろん、美園と亜里沙、そして鈴木仁くん演じる佐々木とのほっこりするやりとりも楽しんでいただけると嬉しいです!

鈴木仁(佐々木涼平 役)コメント 

​佐々木涼平役を演じさせていただくことになりました。鈴木仁です。
後輩やオーディオマニア、他にも涼平の様々なキャラや武器をフル活用して作品の中に入り込んでいければと思います。
特に美園先輩、亜里沙先輩との掛け合いはこのドラマにおいて、重要になってきます。作品の空気感を大切にして、遊びも交えながら真剣に取り組んでいきます。よろしくお願いします。

スタッフコメント

〈原案・企画・プロデュース〉博報堂ケトル 畑中翔太

この企画は、自分自身が小学生の頃、CDコンポを並べてカセットテープに録音していた“自作のラジオ番組”がきっかけで生まれたものです。ポッドキャストなどの音声メディアの浸透とともに、今では「誰もがパーソナリティになれる時代」となりました。主人公の高村美園はごく普通の会社員ですが、ある日ポッドキャストとの出会いから、憧れだった“パーソナリティ”への道を歩んでいきます。それは今の時代、誰しもに起こるようなリアルストーリーだと思います。
そして主人公が配信するテーマ、それは牛丼、ハンバーガー、ラーメン、ピザ、お寿司などなど・・彼女が愛してやまない、魅惑のチェーン店グルメ・通称“チェンメシ”。
これから平日に疲れた木曜の深夜には、伊藤万理華さん演じる美園のほっこりするような「パーソナリティ成長記」と、テレ東ならではの「深夜グルメ」の“異色コラボ”をぜひお楽しみください。

〈プロデューサー〉テレビ東京 寺原洋平

キャンプ、サウナ、車中泊など今までライフスタイル系ドラマを作り出してきたテレビ東京が新しく挑戦するのは、最近まさに注目を浴びている“音声コンテンツ”!そこにテレビ東京が得意とするグルメエッセンスと、20代前半に誰もが経験する「大人の青春」を掛け合せたら、主演の伊藤万理華さん演じる美園がとても個性的でチャーミングなキャラクターに仕上がりました。今後、発表される絶対予想できないSpotifyさんとのメディア連動のパーソナリティ正体も併せて是非ご期待ください!

スポティファイ ジャパン株式会社  音声コンテンツ事業統括  西ちえこ

駆け出しのポッドキャストパーソナリティとして奮闘する女性を主人公にしたドラマというのは、これが初めてではないでしょうか。ポッドキャストはいつでもどこでも無料で楽しめる音声コンテンツで、毎日の生活の中で新しい世界や興味を広げてくれるだけでなく、専用アプリ「Anchor by Spotify」を使えば誰でも自分の考えや物語を簡単に世の中に届けることもできます。音声コンテンツは今かつてない盛り上がりを見せていますが、音声を介した表現方法は様々で、これからもフォーマットに縛られない新しい表現方法が日本のクリエイターによって生み出されていくことに期待しています。ドラマとこれに連動したSpotify上での展開を通じて、音声コンテンツの楽しさをより多くの方に知っていただければと願っています。

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