<孤独のグルメ>最終回まで全話の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】

国内ドラマ

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2021年7月9日より、テレビ東京金曜深夜枠で放映中の「孤独のグルメ」。

原作・久住昌之、画・谷口ジローの同名人気コミックをもとにドラマ化した本作は、松重豊演じる輸入雑貨商を営む主人公・井之頭五郎が営業先で見つけた食事処にふらりと立ち寄り、食べたいと思ったものを自由に食す、至福の時間を描いたグルメドキュメンタリードラマで好評のシリーズである。

cinemas PLUSでは毎話公式ライターが感想を記しているが、本記事ではそれらの記事を集約。1記事で全話の感想を読むことができる。

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もくじ

・第1話ストーリー&レビュー

・第2話ストーリー&レビュー

・第3話ストーリー&レビュー

・第4話ストーリー&レビュー

・第5話ストーリー&レビュー

・第6話ストーリー&レビュー

・第7話ストーリー&レビュー

・第8話ストーリー&レビュー

・第9話ストーリー&レビュー

・第10話ストーリー&レビュー

・第11話ストーリー&レビュー

・第12話ストーリー&レビュー

・「孤独のグルメ」作品情報

第1話ストーリー&レビュー

第1話のストーリー

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井之頭五郎(松重豊)は数年振りに横浜・白楽のキッチン友に訪れ空腹を満たす。満腹でボーとする中、滝山に紹介された商談相手・村井美咲(りょう)が待つ神奈川県の宮前平に向かう。商談中に突然、「滝山さんが言っていた通り」となぜか話が脱線し、村井が独身の五郎にお互いフリーだと突然アプローチをかけてくる。五郎は愛想笑いで誤魔化し、何とか商談を終える。気づけば夕方の5時になり、空腹を満たすべく店を探すことに。しかし、進んだ先がまさかの長い上り坂で、次第に暑さと空腹で息が荒くなりバテバテになる。やっとの思いで坂を登りきった五郎の目の前に現れたのは雰囲気漂う「とんかつ屋」。渡に船と入店したが五郎を新たに悩ます難問、王道のロースと目覚めのヒレが立ちはだかる…。

第1話のレビュー

大人気シリーズ「孤独のグルメ Season9」が始まった。2012年にスタートしてから9年。自他ともに認める“深夜グルメドラマの金字塔”である。

このドラマの何がすごいって、それまで若者のためのエッジな作品が多かった深夜ドラマを、中高年の男性がリラックスして観られる枠に変えてしまったところである。その後、数多くのグルメドラマ、あるいは趣味ドラマが放送されてきたが、すべて「孤独のグルメ」の成功あってのことだと言っても過言ではない。

主演はもちろん松重豊。井之頭五郎といえば、この人をおいて他にいない。58歳になっても元気いっぱい。始まる前は「老けました。もう痛々しいから辞めろという声が聞こえてきたら、辞める覚悟は出来ています」と恒例の(?)ネガティブなコメントを出していたが、始まったらモリモリ食べる。

今回のお店は「とんかつ しお田」。ひれかつ御膳をガッツリ行ったかと思うと、魚介クリームコロッケと巨大な海老フライも追加でオーダー。全部ぺろっとたいらげてしまった。「孤独のグルメ」の影響で、たまにランチが1000円を超えても平気になってしまった人もいるんじゃないだろうか。ドラマの中で五郎はロースとひれを迷ってひれをチョイスするのだが、松重豊は撮影の後、どうしてもロースが食べたくなって店を訪れたそう。やっぱりまだまだ元気だ。

「孤独のグルメ」にもコロナ禍は直撃している。五郎さんもマスクをして、店に入るときはしっかり消毒。もともと一人だし、黙食だし、お酒も飲まない(飲めない)ので、コロナ禍での外食には非常に適している。そして、五郎さんはいつも通りにバクバク食べる。その姿は、苦境にある飲食店を勇気づけるかのようだ。きっと今シーズンも、いつもどおり、いやいつも以上に食べてくれるんじゃないかと期待している。

※この記事は「孤独のグルメ」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第2話ストーリー&レビュー}–

第2話ストーリー&レビュー

第2話のストーリー

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仕事で神奈川県の二宮駅に訪れた五郎(松重豊)は商談までまだ時間が有り喫茶店で仕事をすることに。お店のメニューには、自由に組み合わせが選べるオリジナルパフェの文字が!仕事どころではなくなった五郎。悩みに悩み決められ無い五郎は店員に紙を貰い、ある作戦でパフェを決める事に。しっかりパフェを満喫した五郎は喫茶店を後にし、商談先に向かう。取引相手の南(松尾諭)は、奥さんのいないところでは口が達者だが、奥さんが来ると急に黙り込んでしまうのだ。南と商談を終えた五郎は気づけばすっかり空腹に。店を探すことにするが、なかなか店が見当たらず、さっきの喫茶店に戻ることを考える。すると、はるか前方に「金目の煮付」と書かれたのぼりを発見する。心惹かれた五郎はその店にむかうことに!海沿いに建つ『魚料理屋』で五郎は新たな食べ方を開発する…!?

第2話のレビュー

松重豊主演の「孤独のグルメ Season9」。猛暑や世の中のゲンナリする出来事で食欲をなくしても、これを観れば食欲モリモリ間違いなし。

第2話は神奈川県中郡二宮町へ。これまであまり聞いたことのない地名だったが、大磯ロングビーチで有名な大磯町と小田原市に挟まれた海岸線にある町とのこと。なるほど、海のものが美味いわけだ。

井之頭五郎(松重)がまず向かったのは喫茶店。そこで出会ったのは、9種のアイス、9種のフルーツ、10種のソース、3種のトッピングから、一つずつ選んで作るオリジナルパフェ。仕事そっちのけで真剣に選びはじめる五郎さんが可愛らしい。さすが甘党。厳正なるあみだくじ(最近やってないなー)の末、「アイス:宇治抹茶、フルーツ:パイン、ソース:マロン、トッピング:コーンフレーク」に決定。味は予測不能だったが、「合う合う!」と喜び勇んで食べ進める。「ああすればよかった、こうすればよかった」といちいち悩まないのが五郎さんのいいところ。

続いては海沿いに立つ魚料理屋へ。通り一面にはためく「金目の煮付」ののぼりが合戦のように勇ましい。五郎は親父ギャグが冴え渡る大将(小堺一機)の言う通り、「金目の煮付け定食」をオーダー。こんなの美味いに決まってるよ! 追加で、刺身5点の舟盛りがメインの定食までかっ食らう。両方で「恋人セット」というのだが、一人で全部食べるなんて乱暴狼藉が過ぎるでしょ! でも、いいのだ。好きなものを、好きなときに、好きなように味わうのが「孤独のグルメ」の醍醐味なのだから。「うおォン、俺はひとり魚市場だ!」という原作ファンが喜ぶセリフもあり。

店内で帽子を被り、縦横無尽な言動を繰り広げる大将だが、「ふらっとQusumi」に登場した本物の大将のほうがインパクト大(ちゃんと帽子も被っていた)。ちなみに二宮町には小堺一機の師匠である萩本欽一(通称「大将」)の自宅があるが、そんな理由でキャスティングされたかどうかは不明。

しかし、こんなに美味そうな魚料理を前に、ビールも日本酒も封印された久住昌之さんがつらそうだ。早く思う存分、美味い魚を食べて、美味い酒が飲める世の中に戻りますように。

※この記事は「孤独のグルメ」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第3話ストーリー&レビュー}–

第3話ストーリー&レビュー

第3話のストーリー

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大きな荷物を抱えた井之頭五郎(松重豊)。たどり着いた先は東麻布にある「パナマ大使館」。五郎は取引相手の大使館職員(原沙知絵)と商談を終えたものの、ついでにパナマのコーヒーを飲んで感想を聞かせてほしい、と言われるのであった。日本人男性の代表としてのコメントと、圧をかけられながらも、なんとかその場を乗り切り大使館を後にする。

広い公園で雨が降る中、五郎は缶コーヒーを片手に、久しく海外に行ってないことを考える。「ガイコク飯」が恋しくなり、気が付けばすっかり空腹になっていた。店を探していると、お宝が発掘できそうな雰囲気漂う「東京タワーwith東麻布商店街」を見つける。商店街には数々の料理屋が並んでいる。そんな中、五郎の目に留まったのは、「ギリシャ料理」。まさに、さっきまで考えていた「ガイコク飯」である。心奪われた五郎は、ギリシャ料理店の中へ足を踏み入れるのであった…。

第3話のレビュー

今週、井之頭五郎(松重豊)が訪れたのは港区東麻布。昔ながらの商店が続く下町の風情と、各国の大使館が立ち並ぶ異国情緒がミックスされた街だ。

パナマ大使館のエキゾチックな顔立ちの職員(原沙知絵)に高級コーヒーを出され、感想を求められて戸惑う五郎さん。美味しいスイーツを食べながら飲めば美味しさはわかるけど、コーヒー単体では味なんてよくわからないよね。五郎さんの気持ちはよくわかる。

大使館を出て、海外旅行に思いを馳せる五郎さん。ドラマでは台湾や韓国ぐらいにしか出かけていないが、原作ではヨーロッパに足を運んでいた描写が何度か出てくる。高級輸入雑貨の貿易商なんだから、ヨーロッパに行くのは当たり前といえば当たり前。

「メニューがちっともわかんないような外国メシ、したいなぁ」

いつものような定食の白めしに甘辛いタレをぶっかけて食べるわかりやすいメシばかりでなく、「メニューがちっともわかんないような外国メシ」だって楽しんでしまうのが五郎さんのいいところ。いつも同じようなメシを頼んで「やっぱりこれに限る」なんて言っているおじさんたちとはぜんぜん違う。まったく保守的じゃないのだ。ちょっとした冒険心や心細さだって、美味しさのスパイスになることをよく知っている。

五郎さんが飛び込んだのはギリシア料理のお店。あ、この店知ってる。入ったことないけど。店では、ムサカやドルマーデスなど、名前を見ても何もわからないけど、食べれば美味い料理を次々とたいらげていく。前菜三種盛りやデザートも含めて、結局5皿ぐらい頼んでいたよう。相変わらず、すさまじい食べっぷりだ。

「そういえばギリシアはオリンピック発祥の地。この店を選んだ俺、金メダルだ」

なるほど! 東京五輪が開幕した日だったからギリシア料理を選んだのか。こういう慎ましい祝い方、俺は好きだな。

※この記事は「孤独のグルメ」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第4話ストーリー&レビュー}–

第4話ストーリー&レビュー

第4話のストーリー

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仕事で国分寺駅を訪れる井之頭五郎(松重豊)。商談先のカフェについた五郎は、取引相手の小谷武雄(尾美としのり)と話を始める。小谷は開始早々、「これにします」と、まさかの即決。決断の早さに五郎は、思わず関心する。しかし、話を進めるうちに、小谷は他のデザインに目移りし、最終的には持ち越しになり、まさかの長期戦となってしまった。長い商談を終え、カフェを後にした五郎はすっかり空腹に。

駅まで空腹じゃもたない、迷うのはこりごりと考えた五郎は、最初に見つけた店に入るという短期決戦に挑む!しかし、たまたま見つけた商店街の中を探したが、店がなかなか見当たらない。駅まで戻ろうと考え直したその時、五郎の前に現れたのは「中国料理」の看板。迷うことなく即決し短期決戦に挑むが200種以上のメニューが五郎を悩ませ…。

第4話のレビュー

五郎さん(松重豊)ならずとも、最近は「長期戦」という言葉にイライラしがち。いつになったら今の状況は終わるんだ! 為政者は尾美としのりみたいに適当なことばかり言ってるんじゃないぞ! 解決する気あるのか! と思いつつ、やっぱり我々の腹は減る(尾美としのりさんは悪くありません。役柄の話です)。

そんなこんなで『孤独のグルメ Season9』第4話は、府中市新町の住宅街にある中華料理「Sincerity(しんせらてぃ)」に突入。「Sincerity」とは「誠意」という意味。いい店名だ。

メニューには200種類以上の料理がズラリ。「とめどないぞ、底なし中華沼だ」「んー、まいったなぁ。中華地獄にズブズブ飲み込まれて頭が麻痺してきた」と何を頼むか迷いまくる五郎さんだが、こういう長期戦は楽しい。「ああ、今、俺が4人いたら片っ端から頼みまくるだけなんだが」という気持ちもよくわかる。

五郎さんがチョイスしたのは、「蒸し鶏のピリ辛和え」「カキとニラの辛し炒め」「割包(カーポー)」「ウナギの蒲焼チャーハン」「本日のスープ」と5品。すごい。普通の人ならランチメニューか飯もの、麺ものの単品で済ませるところを5品もいっちゃう。さすが五郎さんだ。山椒油をきかせたウナギの蒲焼きチャーハンが美味そう。

そしたら「ナスの冷麺」がやってきて驚いた! どれだけ食べるの、五郎さん! そして、デザートの「3倍杏仁」! もう笑っちゃう。いつも以上の食べっぷりじゃないの。その上、テイクアウトまでするのがコロナ禍の『孤独のグルメ』スタイル。昼飯代がかかりすぎてる気がするけど、五郎さんは酒を飲まないし、夜は外食できないのでノー問題。何より全部食べちゃうんだから。次から次へとやってくるメニューを、実にうれしそうに食べる松重豊もさすが。

「また来よう。俺の知らない中華の美味さに出会うために」

家にこもりきりになっていたり、家と会社の単調な往復になっていたりすると、ついつい食べるもののチョイスも保守的になってしまいがちだけど、冒険心を失わないのが五郎さん。知らないものだってどんどん注文しよう。食べて個人店を応援! これでいいのだ。

※この記事は「孤独のグルメ」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第5話ストーリー&レビュー}–

第5話ストーリー&レビュー

第5話のストーリー

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井之頭五郎(松重豊)は数年ぶりに静岡県河津町を訪れ、かどやのわさび丼を食べていた。昔と変わらない主人のわさび愛に笑みをこぼす五郎。久しぶりに本場のわさび丼を満喫した五郎は、商談のため伊東市宇佐美駅に移動する。商談先の相手は、知り合いの美容師・横山綾香(野波麻帆)。商談中に回覧板を持ってきた近所のおばちゃんと横山の会話にどこか和まされつつ、商談を終え五郎は、美容室をあとにする。宇佐美のきれいな空気を味わいながら海を眺める五郎は気づけばすっかり空腹に。海沿いにある宇佐美の旨い魚料理の店を探すことに決めた五郎は歩き出す。しかし、魚料理どころか、のどかすぎて飲食店が一軒も見当たらず、ギラギラと照り続ける太陽に体力を奪われて次第に五郎はバテバテになる。するとそこに現れたのは「焼肉」の看板。精肉店と隣接する「お肉屋さんが営む焼き肉」五郎は喜び勇み店に入り…。

第5話のレビュー

ドラマの冒頭で井之頭五郎(松重豊)が食べているのは、静岡県賀茂郡河津町にある「わさび園かどや」の「わさび丼」。ここはSeason3の第三話で訪れた店。

このわさび丼、店主が2年かけて丹念に自家栽培した生わさびをすりおろして食べるもの。わさびの味は「甘い」のだという。原作者の久住昌之も書籍『「孤独のグルメ」巡礼ガイド』のインタビューで思い出の店として真っ先に挙げており、「孤独のグルメ」ファンには人気の店だ。まだ元気に営業しているみたいで良かった。五郎さんは軽く完食して、すかさずおかわりをオーダー。さすがだ。

ところは変わって、静岡県伊東市宇佐美。思わず五郎さんも「のどかだなぁ~」と言ってしまうのどかさだ。しかし、「のどかすぎて、店もない」。暑さと空腹にやられながら、隠れた場所にある「焼肉ふじ」を見つけたときの目がすごかった。さっそく飛び込んで、名物の「豚焼きしゃぶ」「牛焼きしゃぶ」をはじめ、「野菜スープ」「上ハラミ」「キムチ」「ライス」をオーダー。

今回のモノローグで好きなのは、「見ただけで胃袋がせり上がってくる」(初めて聞いた表現。だいたい、せり上がってくるのは胃液)、「安定ハラミ、焼肉界の中継ぎエース」(よくわかる)、「よーし、焼肉ふじロックフェスティバル2021だ」(ここから音楽ネタが続く)、「俺と肉とのコール&レスポンス」(肉と真摯に向き合っている感じ)。

さらに「石焼ビビンバ」と「赤身カルビ」を追加オーダーして食べ終わると、「俺の夏フェス、終了。至福の放心状態。この興奮を胃袋は忘れない」。まさに真夏の肉フェスといった感じだった。それにしてもよく食べる。店主(綾田俊樹)も思わず感嘆するほど。

「いやぁ、奮発しちゃったなぁ。でも、今年、初焼肉だもんな」

最後のセリフに「ああ、健啖家の五郎さんでも、今年は夏まで焼肉を食べる機会がなかったんだなぁ」と不意に胸をつかれる。「ふらっとQUSUMI」では久住さんがビールを飲んでいたが、8月8日からは「蔓延防止等重点措置」が適用されて伊東市でも酒類の提供は終日自粛を要請されることになった(産経新聞 8月6日)。誰もがのびのびとビールを飲みながら焼肉を食べられる世界が早く来ますように。

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–{第6話ストーリー&レビュー}–

第6話ストーリー&レビュー

第6話のストーリー


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仕事で落合南長崎にやってきた井之頭五郎(松重豊)。今回の商談相手のアプリ開発会社CEOの森本(日向丈)はカタカナやビジネス用語を混ぜるタイプの人であった。いまだガラケーを使っている五郎からしたら、新しい言葉やシステムにはついていけるわけもなく、話が噛み合わない。商談を終えると五郎は疲労ですっかり空腹になっていた。そこで五郎は新しいシステムや言葉にごまかされないまっとうな食事で空腹を満たすことに。路地で迷っていると、目の前に現れたのはKPでもTSでもなく雰囲気「良」の【割烹・定食】の文字。五郎は探していた真っ当な食事がここにあると、悩むことなく定食屋へ足を踏み入れるのであった…。

第6話のレビュー

今日は豊島区南長崎にやってきた井之頭五郎(松重豊)。商談では、アジェンダ、アジャスト、KPI、MTG、ASAP……などと横文字を並べて喋るアプリ会社のCEO(日向丈)に辟易とさせられる。うーん、わかるなぁ。こういう言葉をまくしたてられると、ついつい知らないことを恥だと思ってしまいがちだが、これからは五郎さんのように堂々としていたい。だって使わなくても話はできるんだもの。

今でもスマホを持たず、ガラケーを使う五郎さん。スマホは便利かもしれないが、スマホを持たない人が対応しようとすると不便が発生する。「ひとつ便利になると、ひとつ不便が生まれる。便利と不便の総数は一定なのではないか」という五郎さんの哲学にも納得させられる。

脳の疲れと空っぽの胃袋を癒すための「まっとうな店」を探し、たどりついたのが「割烹・定食 さがら」。「KPでもTSでもなく、割烹・定食」という五郎さんの言葉がおかしい。最初、何のことを言っているのかわからなかったよ。

大人気のランチは、ベーコンエッグとカツオのたたきのセット。さらにメニューには無数のセット定食が。餃子とマグロ刺身の組み合わせ定食なんて初めて見た!

五郎さんが選んだのは、肉とナスの醤油炒め定食と鳥唐揚げ単品。セットにはないメニューだが、自分のインスピレーションを押し通す様が気持ちいい。当然のようにガツガツ(でも上品に)食べ進めていく。「『普段使い』という単語の挿絵はこの店で決まりだ」「このしょうゆだれ、日常の奇跡かもしれない」というモノローグがお気に入り。「ソースも良い良い、ヨヨイのヨイ」はオープニングに登場する「なくてけっこう、コケコッコー」の類似パターンと見た。

注文をとる息子(「MIU404」でエトリを演じた水橋研二)の丁寧な対応を見た五郎さんは、心の中で頭を下げる。

「ただでさえ大忙しなのに、このご時世、やることが増えて、本当に飲食店のみなさんの努力には頭が下がる。毎日毎日、ご苦労様です」

2年ぶりの新シリーズとなる「孤独のグルメ Season9」は、コロナ禍で苦しむ個人経営の飲食店へのエールをテーマにしているように見える。今回はそれが強く表れていたエピソードだと感じた。五郎さんは追加注文した冷やし中華をたいらげながら(いつもながら驚きの健啖ぶり!)、こんなことを思う。

「大衆のための、昔ながらの安くて美味い店。いつものみんながいて、笑顔が見える。それ以上の幸せは、ない」

安くて美味くて、みんなの笑顔が見える店。今の非日常のような毎日にあって、それこそが大切な「日常の奇跡」だ。感染対策をしっかりして黙食を心がけつつ、あらためてこのような店を応援していきたい。

この記事は「孤独のグルメ」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第7話ストーリー&レビュー}–

第7話ストーリー&レビュー

第7話のストーリー


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小岩で打ち合わせを終えた井之頭五郎(松重豊)。久しぶりにほど近い「珍々」を訪れたが、ドアの張り紙には「17時~20時」の時短営業の文字が。「珍々」の味を惜しみながらも、次の商談のため、隣の駅の新小岩まで歩くことに。しかし、五郎が想像していた以上に距離が遠く、何とか商談相手の武田(佐野岳)がいるトレーニングジムに到着する。商談を始めた五郎だが、せっかく来たから、と、武田にウォーキングマシンを進められ、また歩くことに。ここに来るまでかなり歩いてきたのに、さらに歩かされ商談を終えると、すっかり空腹になっていた。
空腹を満たすべく、店を探していると、五郎の目の前に飛び込んできたのは「麻辣火鍋」!五郎は、もう一汗かこう、と入店するが…。

第7話のレビュー

松重豊演じる井之頭五郎が食べまくる「孤独のグルメ Season9」。第7話は小岩からスタート。

五郎さんが立ち寄ったのは、Season2の第6話に登場した激辛四川料理の店「珍々」。「ちんちん」ではなくて「ぜんぜん」と読む。Season9では以前登場した個人経営の飲食店が、コロナ禍でも元気に営業しているか確かめるくだりが恒例になっている。みなさんもしばらく行っていない馴染みの店があったら、営業しているかどうかぜひ確かめてみてほしい。営業していたらテイクアウトなどで応援しよう。

さて、営業先のトレーニングジムで必要以上に歩かされた五郎さんが腹をすかせて飛び込んだ店は「貴州火鍋」。中国の貴州地方の料理らしいのだが、筆者は貴州という地名を聞くのも初めて。調べてみると、中国南西部に位置し、四川省に隣接していることから、四川料理の系統に含まれるのだという。

貴州火鍋は、多種多様な発酵食品と唐辛子を組み合わせた料理が特徴。「豆豉(トウチ)」と呼ばれる納豆とよく似た発酵食品もよく使われる。第7話のタイトルは「納豆火鍋」と記されているが、これは「豆豉火鍋」のこと。五郎さんが見ているメニューにも「豆豉火鍋(干し納豆の火鍋)」と記されていた。

よくわからない料理でも、興味を持ったらガンガン注文するのが五郎さん流。今回は、シェフお任せ貴州の前菜三種盛り(ハーフ)、ライス、ウーロン茶、厚揚げの回鍋肉、納豆火鍋をオーダー。

面白いのは、五郎さんのモノローグ。あまり馴染みのない料理をどう言葉で表現するかに注目していたのだが、「あ、辛い。でもウマい」「何だろうコレ」「謎」「これ、かなり好き」「最強」「大好き」「熱っ、辛っ、でもウマい、ウマいぞ!」などと、いつも以上に少ないボキャブラリーで押し切っている。だけど、しっかり美味しそうに見えるのは、松重豊の食べっぷりの良さと満足げな表情が素晴らしいからだろう(たまに「?」という顔もしていたけど)。

ライスと納豆火鍋のお肉をおかわりして、しっかり完食。この上、まだ「甘いものでも入れてから戻るか」なんて言っているのがすさまじい。なお、「貴州火鍋」は8月いっぱい休業中とのこと。営業再開したら行ってみたいなぁ。納豆、好きなんです。

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–{第8話ストーリー&レビュー}–

第8話ストーリー&レビュー

第8話のストーリー


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群馬県高崎市にて「焼きまんじゅう」のお店の席に座っている五郎(松重豊)。運ばれてきたのは、タレがたっぷりかかった、アンイリの焼きまんじゅう。さらにアンナシも食べ、小腹を満たした五郎は店を後にし、商談相手の藤山(田中俊介)が待つ事務所に向かう。藤山と一緒にいた事務員・白川(磯野貴理子)に五郎は手土産の洋菓子を渡すと、藤山は白川に耳打ちをし、お願いする…。商談も終わりかけ「焼きまんじゅう」を白川が買って戻り、五郎に藤山が進めるが、既に食べてきたことを五郎が話すと、藤山は白川に「皆で食べて」とすぐに下げられてしまう。さっき食べてきたものの、まだまだ焼きまんじゅうを食べたかった五郎。おかげで一気に空腹になり、店を探すことに。すると、五郎の前に現れたのは「おにぎり処」。この出会いは何かの縁だ、と入店するが…。

第8話のレビュー

松重豊演じる井之頭五郎が“黙食”で食べまくる「孤独のグルメ Season9」。なんと8月25日に原作版「孤独のグルメ」公式ツイッターが始動! 連載開始後27年目で公式アカウントができるなんて聞いたことがない。最初のツイートには「飲食業界の皆様に経緯を込めて、今こそ“黙食”を――」と記されていた。今、世の中で求められているのは五郎さんスタイルだ。

さて、第8話で五郎さんがやってきたのは群馬県高崎市にある焼きまんじゅうの「オリタ」。原作ファンならおなじみだが、実はドラマ版には初登場のお店。ちゃんと元気に営業しているんだなぁ。「ん? これは複雑な甘さだ。いや、すごい甘さだと言っていい」という五郎さんのセリフも原作どおり。原作ではちょっと複雑な表情を浮かべていたが、ドラマの五郎さんはとっても満足そうなのもいいね。

五郎さんが仕事で向かったのは、高崎電気館。大正2年にできた高崎市初の映画館なのだそう。場内は趣があって素晴らしい。ここはぜひ行ってみたい! 建物にかかっていた映画の看板のタイトルは「美食道ロンリネス」。これは「劇場版 孤独のグルメ」? 主演になっている赤松比呂志は、「孤独のグルメ」の「映像」としてクレジットされているスタッフさん。赤松氏の写真を確認したら、ちゃんと看板の絵と一致していた。芸が細かい!

高崎の飲み屋街をさまよった五郎さんが入ったのは、おにぎり処「えんむすび」。大将が三宅裕司で客が阿佐ヶ谷姉妹って、この店、濃すぎる! おしゃべり好きの店主を演じる三宅裕司がめちゃくちゃ似合っているのは、さすがの芸達者ぶり。「えんむすび」はカウンターでネタを頼むと、おにぎりが出てくる寿司屋のようなおにぎり屋さん。おにぎりは少し小ぶりで、いろいろな味を楽しめるのが嬉しい。

五郎さんがオーダーしたのは、「うに」「いか明太」「ねぎ味噌」「なめこ汁」「鮎塩焼き」「かずのこ」「しょうが」「あなご」「大海老にんにく炒め」「しゃけ」「たらこ」「まぐろ〈づけ〉」「川のり」「山椒」。おにぎり11個ってすごすぎ!

今回のナイスモノローグは、「食いたいものを食いたように食えばいいんだけどさ。フン」「まずは心のドローンを飛ばし、全貌を把握してから攻めるべしだ」「おむすび、いい名前だ。米と海苔、それだけでおかずを握り込む。それだけ。作る人と食べる人を結ぶ」「同じ日本人でも多種多様な心が、この小さな丸くて三角の食べ物に、優しく握られている」。

おにぎりって、多様性を優しく受け止めてくれる食べ物だったんだ! と改めて気づかせてくれるモノローグだった。お腹がすいたのでおにぎり買ってこようっと。

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–{第9話ストーリー&レビュー}–

第9話ストーリー&レビュー

第9話のストーリー


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仕事で福島県郡山市にやってきた井之頭五郎(松重豊)。郡山駅まで五郎を迎えに来た商談相手の木村(渡辺大知)の車に乗り、デコ屋敷が建ち並ぶ民芸品の工房へ向かう。工房にて、商談を終えた五郎と木村は車で市内に帰るはずが…。たどり着いた先は舞木町にある木村の実家であった。お昼ご飯を食べていかないかと木村に誘われるが、五郎は、このあと仕事で宇都宮に行く用事もあり、お腹も空いていないから、と誘いを断る。
木村の実家を後にした五郎は、駅にたどり着く。お腹が空いていない、と木村の誘いを断ったが、本当は空腹であった五郎は、電車を待っていられず、駅を出て店を探すことに。しかし駅前には店がなく、国道を目指して歩く。すると五郎の目には「ドライブイン」の文字が!入口まで行くと営業しているのがわかり、迷うことなく店に入るが、そこは…。

第9話のレビュー

ひとりで黙食! グルメドラマの金字塔「孤独のグルメ Season9」。今週の井之頭五郎(松重豊)は出張で福島県郡山市へ。毎回思うけど、個人の輸入雑貨商がこんなに忙しいのってすごい。五郎さんは“冴えない中年男”なんかじゃなくて、やり手のビジネスマンだ。

「こんなご時世だから何もできないと諦めるんじゃなく、今できることをやんなきゃなんないと思ってるんです!」

郡山の商談相手、木村(渡辺大知)の熱いセリフ。五郎さんも力強く同意していた。“コロナ禍で苦しむ個人経営の飲食店へのエール”というのが「孤独のグルメ Season9」の大きなテーマである。

昼めしを食べるため、木村の実家へ連れていかれそうになった五郎さんは咄嗟に嘘をついて、その場を離れる。初対面の人たちに囲まれて気を遣いながら食べるより、ひとりで気ままに食べるほうが好き。それが五郎さんのスタイル。さっそく舞木駅周辺で飲食店を探し始める。こんなところに店があるのか? と思ったら、あった! 外見が渋すぎる「舞木ドライブイン」だ。

高速道路にあるパーキングエリアやサービスエリアではなく、街道筋にあるのが「ドライブイン」。昭和の時代に隆盛を極めたが、現在は徐々に消えつつある。お店に入った五郎さんが「俺は今、得体の知れないノスタルジアに包まれている」と思うのはそのせい。「舞木ドライブイン」が面する国道288号は、郡山市と浜通り地方を結ぶ最短ルート。この店は昭和の時代から、多くの長距離トラックドライバーたちのお腹を満たしてきたのだろう。

五郎さんがオーダーしたのは「焼肉定食」。豚肉を甘辛いタレにからめて焼いたものだ。「濃い目のタレに舌が踊り、めしが走る」とは五郎さん。野球で「球が走っている」という表現があり、「めしが走る」という表現も直感的に理解できる。さらに「和風オイル焼肉定食」の単品(おかずのみ)を追加オーダー。注文するとき、いちいちマスクをする五郎さんが律儀だ。隣の若者が頼んだ大盛りは常軌を逸していた。あんな丼、持っているだけで手が疲れそうだ。

今週の秀逸なモノローグは、「このパンチ力、汗をかいたカラダが歓喜している」「濃厚タレ味にガツンとやられ、和風味に優しくされて、豚のツンデレ食いだ」「食って働く、それが人間の基本だ」などなど。ドライブインは今でも働く人々のお腹を満たし続けているのだろう。

※この記事は「孤独のグルメ」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第10話ストーリー&レビュー}–

第10話ストーリー&レビュー

第10話のストーリー


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郡山の商談を終え、次の商談のため宇都宮にやってきた井之頭五郎(松重豊)。商談相手の小坂里美(若月佑美)が働いているホテルの披露宴会場へたどり着く。早速商談を始めるが、小坂は「初めて任された企画なのでなんとしても成功させたい」と張りきり、五郎に次々と案を出す。小坂の熱意に押されながらもなんとか商談を終え、結婚式場を後にする。すっかり空腹になった五郎は、店を探すことに。すると現れたのは赤提灯の居酒屋。昔し訪れた門前仲町の居酒屋を思い出し、どこか運命を感じた五郎。久しく食べてない居酒屋メニューに心踊らせ店に入る…。

第10話のレビュー

いつだってひとりで黙食、だけど外食の楽しさを思う存分伝えてくれるドラマ「孤独のグルメ Season9」。

第10話で井之頭五郎(松重豊)が訪れたのは、栃木県宇都宮市。商談先の担当者・小坂(若月佑美)の張り切り具合に翻弄された五郎さんは、いつものように空腹を抱えて街をさまよい歩く。宇都宮に来たから餃子を食べる、という固定概念にとらわれることなく、「俺は今、何が食いたい?」と自問自答して自分の欲求に素直に従おうとするのが五郎さんの流儀。

なんてことを言いつつ、記念すべきSeason1の第1話で訪れた門前仲町の居酒屋と同じ名前の「居酒屋庄助」を見つけて、「運命、うんめーかもしれん」と入店。店選びの決め手はダジャレだった。

一滴もお酒を飲めないが、居酒屋のメニューは全部好きという五郎さん。ウーロン茶を飲みつつ、「枝豆(お通し)」、「庄助ギョウザ」、「もつ煮」、「ハムカツ」、「納豆信田」、「焼き鳥(つくね・皮・ねぎ間)」をやっつけていく。もちろん、「ご飯(お新香付き)」はマスト。五郎さんは、ギョウザを酢だけで食べる模様(本当はコショウを入れたかったらしい)。

酒に合いそうな「ゆずみそ」、日頃の行いが悪いと辛いのに当たる「唐辛子焼き」、栃木名物のキノコを使った「ちたけそうめん」を完食してごちそうさまでした。宇都宮の名所的な餃子専門店を外すことで、餃子とご当地のものを同時に食べるファインプレーをやってのけてみせた。

今回は印象的なモノローグが少なかった代わりに、店主のママ(銀粉蝶)や客同士のやりとりが多かった。U字工事の出番が他のエピソードに登場したアイデンティティや阿佐ヶ谷姉妹より多かったのは、彼らが栃木のご当地タレントだからという他に、そもそも居酒屋は客同士の会話が多い場所だからだろう。ちなみに「居酒屋庄助」は緊急事態宣言にともなって現在休業中とのこと(営業再開は未定)。こういう居酒屋に気楽に行ける日を心待ちにしたい

※この記事は「孤独のグルメ」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第11話ストーリー&レビュー}–

第11話ストーリー&レビュー

第11話のストーリー


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ボードゲームができるカフェで、真剣な表情で悩む五郎。12歳の女の子・あやめ(川上凛子)相手にチェスをしていた。さっきルールを教えてもらったばかりの五郎は、長考した割にあっさり負けてしまう。その後、商談相手のあやめの父・野川(山中崇史)が帰って来て商談を終えると、あやめにまたチェスを誘われてしまう。しかし、五郎はこれから仕事があるから、と逃げるように商談先を後にする。気が付けば、すっかり空腹になっていた五郎。店を探すが、全く見当たらず、駅まで戻ることを考える。すると、五郎の目の前に現れたのは馬の絵と羊メニュー多めの看板。先ほどのチェスで、あやめちゃんに教わった【守るより、攻めろ】の言葉を思い出し、思い切って店に入るが…。

第11話のレビュー

コロナ禍でも食べて食べて食べまくる「孤独のグルメ Season9」。今回、井之頭五郎(松重豊)が訪れたのは巣鴨。「おばあちゃんの原宿」というイメージが強いが、今回舞台になっているのは「とげぬき地蔵商店街」とは駅を挟んで反対側のエリア。

「守るだけじゃなくて、攻めなきゃ」

チェスの達人少女・あやめ(川上凛子)から金言をもらった五郎さんがプレイしているのは、ボードゲームカフェ「有明亭」。筆者は以前この近辺に住んでおり、この店が喫茶店だった頃によく通っていた。その後、一度訪れたときはタイ創作料理の店になっていたが、今はボードゲームカフェになっているんだなぁ。特徴のある構造の店内だから、ひと目でわかるんだよね。

コロナ禍でボードゲームカフェもピンチだが、家で過ごす時間が増えたことでボードゲーム自体の売れ行きはいいという。ボードゲームの楽しさを知ったお客さんがいつか店に来てくれるときのために、新しいゲームを購入した店長(山中崇史)の努力に、「そうだな、守るより攻めろだよな」と励ます五郎さん。優しい。

腹が減った五郎さんは駅と反対方向の住宅街に突進。そこで見つけたのがモンゴル料理も「シリンゴル」。かつては朝青龍や白鵬も通ったという有名店だ。とはいえ、食べたことのない人にとってはハードルが高く感じるのも確か。「守るより攻めろ!」とあやめの言葉を思い出して店に飛び込む五郎さん。そうでなくっちゃ。

メニューを眺めつつオーダーしたのは、「チャンサンマハ」「シリンゴルサンド」「ジャガイモとピーマンの冷菜」「ミルクティ」。お通しは甘くないドーナツ風の「ボルック」。

「シリンゴルサンド」のテロップ「皮は土俵 具は力士 いざ はっけよい!」がいいね。モンゴルの代表的な料理「チャンサンマハ」は骨付き羊肉の塩ゆで。骨から肉を削ぎ落としてかぶりついた五郎さんのモノローグは「うまっ! 脂うまっ! 羊うまい!」と大変シンプル。本当にうまそうだ。「シリンゴルサンド」の皮に「チャンサンハマ」肉を巻けば「必殺技誕生、五郎のモンゴリアンチョップ」。うーん、食べてみたい。

さらに「ジャージャー麺」「羊肉のボーズ(蒸しまん)」「ウーロン茶」を追加して平らげると、店内で生演奏される馬頭琴の調べに乗って、デザートの「ごま団子」までオーダーして完食。今回も見事な食べっぷりだった。

ステイホーム期間中は食べるものもついつい保守的になりがちだけど、未知の食べ物にもガンガン攻め込んでいく五郎さんは見ていて気持ちいい。モンゴル料理、ぜひ一度食べに行ってみたい。

※この記事は「孤独のグルメ」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第12話ストーリー&レビュー}–

第12話ストーリー&レビュー

第12話のストーリー


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仕事で伊勢佐木長者町にやってきた井之頭五郎(松重豊)。古い街並みを通り、商談相手の伊藤良介(飯尾和樹)が経営するお米屋さんにたどり着く。中に入ると、伊藤の妻の寛子(大浦理美恵)が出て来て、五郎は何故か怒られてしまう。実は、夫の釣り仲間が営業マンのフリをして、夫を釣りに連れ出そうとしに来ていると勘違いされていたのだ。なんとか誤解が解け、商談を始めるがお米屋さんで売っている【おむすび】が気になり商談に集中できない。なんとか商談を終え、お目当ての【にんにくおむすび】を買おうとするが、売り切れてしまっていた。すっかり空腹の五郎は店を探すために歩き出す。すると目の前に「パスタ&ピザ」さらに「ファミリーレストラン」の文字が。一度は迷ったが表のランチメニューに惹かれて中に入る…。

第12話のレビュー

毎週見ていたいドラマナンバーワン(自分比)、「孤独のグルメ Season9」が最終回を迎えた。“コロナ禍で苦しむ個人営業の飲食店へのエール”というテーマを打ち出していた今シーズンだが、最終回にもそれが鮮明に表れていた。

井之頭五郎(松重豊)が降り立ったのは、横浜の下町、伊勢佐木長者町。商談相手の伊藤(飯尾和樹)は大の釣り好きらしく、釣りの話題になると妻(大浦理美恵)に烈火のごとく怒られるのだが、懐中時計を買う趣味はセーフなのが不思議。釣りにかかるお金より懐中時計のほうが遥かに高そうなのに。店から離れなければいいってことなのかな?

腹をすかせた五郎さんが入ったのは「ファミリーレストラン トルーヴィル」。ここ数年、本格中華料理でもなければラーメン屋でもない、ざっくばらんでオムライスなんかも出す街の中華料理屋のことを「町中華」と呼んでブームになっているが、ここは五郎さん曰く「町洋食」。手作りのおいしいハンバーグやナポリタン、ポークジンジャー(生姜焼き)なんかを
もりもり食べさせてくれるお店だ。フォークやナイフではなく、箸を使って食べる。

五郎さんのオーダーはランチの「ハンバーグステーキチーズのせ」と「牛ヒレの生姜焼き」。ランチには和の「かきたま汁」がついてくるし、ライスにかけるごま塩も置いてある。箸でバクバク食べている五郎さんは、「子どもの頃、家族で行ったデパートの大食堂を思い出す」と物思いにふける。お母さん(市毛良枝)の優しさも嬉しい。

「たまたま見つけた店がこんな風に美味しいと幸せな気持ちになる。平凡な今日という日に鮮やかな色彩が加わっていく」
「なんてことない店の風景が、今の俺にはかけがえのない大切なものに見える」

時代とともに失われつつある街洋食に、突如として新型コロナウイルスが襲いかかってきた。こんな店の風景をいつまでも見ていたい。そう思ったのかどうかわからないが、五郎さんは敢然と追加オーダー「ナポリタン」と「チキンのシャリアピン」をキメる。ナポリタンも途中から箸で食べちゃうのが町洋食の醍醐味だ。

「ファミリーレストラン。その言葉には、お店の家族と客の家族の深いあたたかみが込められていたんだな」

店のお母さんと客の夫婦の交流を見て、そんなことを思う五郎さん。そういえば、筆者の通う町洋食(チーズハンバーグが名物でちゃんとワサビふりかけもテーブルにある)のお母さんも、毎回ウチの子どもに声をかけてくれてるな。なんだか優しいんだよなぁ。

「ゆったり、ゆったり心を穏やかに。こういう時間、大事にしなきゃ。今は、特に」

店のお母さんも優しければ、五郎さんも優しい。最後に登場する原作者の久住昌之さんの言葉も優しい。いろいろ心がすさむ時期ではあるけど、せめてランチタイムぐらいはこういう時間を過ごしたいもの。やっぱり「孤独のグルメ」は毎週見たいドラマだ。

※この記事は「孤独のグルメ」の各話を1つにまとめたものです。

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(文:シネマズ編集部)

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–{「孤独のグルメ」作品情報}–

「孤独のグルメ」作品情報

数々の話題作を生み出しているテレビ東京金曜深夜の代名詞『ドラマ24』。
この度、7月から松重豊主演、人気グルメドキュメンタリードラマの第9弾「孤独のグルメ Season9」が、連続ドラマとしては約2年ぶりに放送スタートすることが決定しました。
「孤独のグルメ」は原作・久住昌之、画・谷口ジローの同名人気コミックをもとにドラマ化。

輸入雑貨商を営む主人公・井之頭五郎(松重豊)が営業先で見つけた食事処にふらりと立ち寄り、食べたいと思ったものを自由に食す、至福の時間を描いたグルメドキュメンタリードラマです。2012年1月、深夜にひっそりと放送がスタートするや、食欲をそそる料理と松重豊が演じる五郎の大胆な「食べっぷり」や「心の声」が話題となり、ハマる人が続出!さらに、2017年から2020年と4年連続で大晦日の夜にスペシャルドラマを放送し、本作の続編を待ち望む声が高まる中、ついに最新シーズンが始動!

今回のSeason9では、家族経営などの小さなお店をメインに、コロナ禍で再注目&再評価される【独り飯】をさらに掘り下げ、お腹も心も満たしてくれる飲食店と主人公の物語を構成!選りすぐりのお店と共に、かつて訪れた懐かしのお店も再訪。果たして五郎はどんな街で、どんな絶品グルメと出会うのか!?そして、深夜だからこそ、お腹が空くこと間違いなしの絶品グルメシーンに五郎のたべっぷりと番組9年の歴史、今昔物語にも是非、ご注目ください!

出演:松重豊

原作:『孤独のグルメ』 作/久住昌之・画/谷口ジロー(週刊SPA!)

脚本:田口佳宏、児玉頼子

音楽:久住昌之 ザ・スクリーントーンズ

チーフプロデューサー:阿部真士

プロデューサー:小松幸敏(テレビ東京)、 吉見健士(共同テレビ)、 菊池武博(共同テレビ)

演出:井川尊史、北畑龍一、北尾賢人、佐々木豪

制作協力:共同テレビジョン

製作:テレビ東京

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