<シェフは名探偵>最終回まで全話の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】

国内ドラマ

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西島秀俊が主演のテレビ東京系新ドラマ「シェフは名探偵」が2021年5月31日より放送開始となった。

本作は、小さなフレンチレストラン「ビストロ・パ・マル」のシェフ・三舟忍(西島秀俊)が、人並み外れた洞察力と推理力で、訪れた客たちの巻き込まれた事件や不可解な出来事の謎を解いてくグルメミステリー。

cinemas PLUSでは毎話公式ライターが感想を記しているが、本記事ではそれらの記事を集約。1記事で全話の感想を読むことができる。

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もくじ

・第1話ストーリー&レビュー

・第2話ストーリー&レビュー

・第3話ストーリー&レビュー

・第4話ストーリー&レビュー

・第5話ストーリー&レビュー

・第6話ストーリー&レビュー

・第7話ストーリー&レビュー

・第8話ストーリー&レビュー

・第9話ストーリー&レビュー

・「シェフは名探偵」作品情報

第1話ストーリー&レビュー

第1話のストーリー

「シェフは名探偵」画像ギャラリー

高築智行(濱田岳)はひょんなことから、三舟忍(西島秀俊)がシェフを務めるレストラン『ビストロ・パ・マル』のギャルソンになるが、働き始めて早々、迷惑な客が次々と来店し困惑する。例えば、好き嫌いが激しく何かと注文をつけてくる粕屋孝一、恋人らしき川出恵子と口論した挙句デザートにダメ出しする鶴岡正…そんな彼らの背後にある真実を、三舟はお節介と洞察力で解き明かしていく。

第1話のレビュー

「珈琲いかがでしょう」ではなく今回は「自家製のヴァン・ショー(ホットワイン)いかがでしょう」だ。

「珈琲いかがでしょう」に続きテレビ東京ドラマプレミア23の第2弾として登場したのが「シェフは名探偵」だ。主演はドラマ「きのう何食べた?」でシロさん役を演じた西島秀俊。自宅のキッチンではなく、今度はシェフ・三舟忍としてフレンチレストラン「ビストロ・パ・マル」で腕を振るう。

シェフとして一流の腕を持つ三舟が、人並外れた洞察力と推理力で店に訪れたお客さんにまつわる事件や謎を解いていくグルメミステリードラマだ。ちなみに、潜入捜査ではないようである。

穏やかな笑顔を浮かべ、冷静な判断で仕事をこなす三舟だが、ちょっとおせっかい。いつの間にか事件に巻き込まれるというよりは、自分から巻き込まれに行っているところがある。要はおせっかいなのだ。そんな三舟に時に呆れつつ、時に感嘆しつつ見守る面々も個性的。強面で短気だが涙もろいスーシェフの志村(神尾佑)、ワイン好きが高じてソムリエになった金子(石井杏奈)、そしてリストラされたその日に三舟にスカウトされ、ギャルソンとして働くことになった高築(濱田岳)だ。なんだか強そうだな、このレストラン……。

好き嫌いが激しく注文の多い客・粕屋の連れ、百合子に突然、声をかけたかと思えば、2人の不倫関係を指摘する三舟に、動揺しつつも特に止めもしないのがちょっとおもしろい。そして起こる事件が、人の心理や思い出に隠されている中に真実があるので思わず考えさせられるものがある。

たとえば、百合子は不倫相手の粕屋が妻とうまくいっていない、というが三舟は、それは違うという指摘。百合子は粕屋の妻の料理を食べたときに、食材の下処理がちゃんとされていなくておいしくなかった、それは愛情が足りないからだと主張するが、実はそれは逆。偏食家で外食の多い粕屋のために、自宅ではできるだけ栄養がたっぷりと詰まった状態で料理をしていた。

その代わり、本来なら粕屋が食べられないはずのサバの味噌煮などは下処理をしっかりとし、味噌も自分で仕込んでいたから妻が作るサバの味噌煮だけは食べられたのでと推理する。指摘にハッとした百合子だが、粕屋のしていることがなかなかにクズである。不倫相手に妻の手料理を自宅で食べさせているのってなかなかの地獄では? おまけに妻とは仲睦まじいって……。そういうところは指摘しないのも説教臭くなくて良い。

そんなクズみのあるエピソードがあったかと思えば、親子の温かな物語が展開されたりと、1話の中でもふり幅が大きく、つい見入ってしまう。

しかし、次々と出てくる料理がどれもおいしそうで、ついつられて夜食を頬張ってしまわないように気をつけたいところである。

※この記事は、「シェフは名探偵」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第2話ストーリー&レビュー}–

第2話ストーリー&レビュー

第2話のストーリー

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常連客・御木本遥から予約の連絡が。メインは“ガチョウのコンフィのカスレ”希望だという。同席する人気エッセイスト・寺門小雪のリクエストらしいが、なぜガチョウなのか…?また原杏子と大島圭一が来店したある夜。食事中に大島がプロポーズした。無事成功するがその後思わぬトラブルが――。そんな小雪と大島の苦悩に何かを感じた三舟忍(西島秀俊)は、またもお節介を焼く。

第2話のレビュー

今夜もフレンチレストラン『ビストロ・パ・マル』にはクセのあるお客様がご来店だ。
 
恋人・杏子と共にパ・マルへ訪れた大島。緊張して食事が進まず、水ばかり飲んでいた大島の異変に気がついた三舟はシャンパンを用意するようにすばやく指示を出す。なんと、サプライズでプロポーズをしようとしていたのだ。無事にプロポーズは成功。2人はシャンパンで乾杯をする。しかし、数日後、別の客と訪れた大島の様子がまだおかしい。

明かされたのは、杏子の元カレのこと。プロポーズは成功したが、杏子が元カレのところに戻ってしまったのではないかと悩んでいたのだ。

もう一組は常連客の御木本からの予約だった。同席する人気エッセイスト・寺門小雪のリクエストで「ガチョウのコンフィのカスレ」を希望される。実は、その料理は寺門がパリに住んでいたころの悲しい思い出の料理だった。

なぜ悲しい思い出のはずのガチョウの料理を注文するのか? パ・マルの面々は首を傾げるが……。

今回もおせっかいを焼いて、お客さんたちの悩みを解決する三舟。食に関するものに限られるが、思わず「へえ!」と言ってしまうような着眼点で興味深い。シェフとしての知識の深さによるものだが、お客さんをよく見ていること、自身も言っていた記憶力の良さが推理には大切なポイントとなっている。何より、あれだけの料理を作りながら、店内にいるお客さんを把握しているとはどういうことなのか。聖徳太子なのか。

また、濱田岳演じる高築の立ち位置がなんだかいい。大島のプロポーズサプライズに、ハッと両手を口に当てて驚くところがなんとも微笑ましい。また、三舟がおせっかいを焼こうとすると前回登場した「バン・ショーか? バン・ショー出るか?」と小声で実況している辺りもいい(今回はバン・ショーは登場しなかった)。

ギャルソンとしてはシェフと客を繋ぎ、ドラマの語り部としてはドラマと視聴者を繋いでくれているように思う。高築がいることで、ドラマへの理解度が深まっているのではないか。

視聴者が疑問に思うことをぶつけ、しっかりと解消することで、スッキリ度も上がる。視聴者にとってはとても優しいドラマなのかもしれない。週の始め、おいしそうな料理とホッとするストーリー展開。
月曜の深夜にはぴったりなドラマなのだと改めて思う。

※この記事は、「シェフは名探偵」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第3話ストーリー&レビュー}–

第3話ストーリー&レビュー

第3話のストーリー

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『パ・マル』でブイヤベースを注文した新城鈴加(映美くらら)は、その日をきっかけにたびたび来店するように。頼むのはいつでもブイヤベースだ。だがそれは三舟忍(西島秀俊)を巻き込んだ事件の始まりだった――。そんな中、三舟は志村洋二(神尾佑)に、店の3周年記念を盛り上げるため、シャンソン歌手である妻・麻美(シルビア・グラブ)にライブをして欲しいと依頼する。しかし志村は恥ずかしいと拒否。口論となってしまう。

第3話のレビュー

『パ・マル』に恋の風が吹いた?

『パ・マル』にやってきた女性、新城鈴加。いつもブイヤベースを頼む彼女に三舟はどこか楽しそうです。

更に三舟が金子に相談を持ち掛けているのを聞いて、高築と志村は三舟が新城に恋をしているのでは? と予想します。

一方、『パ・マル』では3周年記念のためにシャンソン歌手がやってくることに。なんとその歌手というのが志村の妻、麻美でした。ライブのあとは麻美を交えて「ガレット・デ・ロワ」を食べることに。これはフランスの伝統菓子で、中にはフェーブが仕込まれており、フェーブが入っているピースを引き当てた人はその日の王様・女王様になれるというもの。そのガレット・デ・ロワをきっかけに志村夫妻の思い出話に花が咲きますが、翌日、麻美とケンカしたらしい志村は店の事務室に泊まると言い出します。

志村夫妻のケンカと、ブイヤベースの女性と三舟の恋? が話題の中心となった今回。

実は新城は別の店のシェフで、三舟のブイヤベースが気に入ってその味を勉強するために通っていたのです。そのことを知った三舟は親切にもブイヤベースの作り方を手ほどきすると申し出ます。

その中で、「オーナーとはいつ結婚されるのですか?」と、新城と店のオーナーとの関係を言い当てる三舟。オーナーにプロポーズされていた新城。しかし、彼女には迷いがありました。ブイヤベースを食べに来ているうちに、三舟に恋をしてしまっていたから。三舟も彼女のことを魅力的だとは言っていましたが、あなたの方法は誠実ではない、と一刀両断。プロポーズを断らないうちに三舟に想いを伝えるのは確かに保険がある状態。

それに、その前に彼女はブイヤベースの味を勉強したいからと言って、残った料理を持ち帰りたいとタッパー持参で店を訪れています。た、たしかにこの行動もちょっと誠実ではない気がしてきます。

三舟にフラれてしまった新城はそのまま店を飛び出します。フッた三舟もその後動揺が隠せず。新城のアプローチの仕方が違っていれば、違う結末になっていたのかも?

一方、志村と麻美は三舟のおせっかいで仲直りへ。
2人のためにガレット・デ・ロワを焼き、フェーブが麻美に当たるように細工をしていたのです。
これはかつて、別の男性の麻美への告白をしようとしたのを志村が阻止した方法と一緒でした。実は麻美のことが好きで好きでたまらないという志村。麻美に片想いをしている男性にフェーブが当たれば、アプローチのきっかけになってしまう。だから、自分か麻美にフェーブが当たるようにしていたのです。これも誠実でないと言えばそうなのかも?

好きという気持ちは時として自分のことだけしか見えなくなってしまう場合も。
そしてそれが吉と出るか凶と出るかもわかりません。ただ、誠実でいたほうが、恋に破れても後悔は少ないはず……なんてことを考えさせられる第3話なのでした。

※この記事は、「シェフは名探偵」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第4話ストーリー&レビュー}–

第4話ストーリー&レビュー

第4話のストーリー

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偶然にも三舟忍(西島秀俊)の知り合い2人が来店。1人はフランスから帰国後に働いた店の見習いだった南野。近くにオーナーシェフとして店を出したといい三舟は祝福するが、南野の本心は…。もう1人はリヨン時代に同じ店で修行していた羽田野鈴子。今は経営にまわっていて、食事相手も羽田野の店のパティシエ岸部彩香だ。ソムリエの金子は料理人とは思えぬ岸部の雰囲気に違和感を覚える。

第4話のレビュー

今回、店に訪れたのはいずれも三舟の知人である南野と羽田野。南野は三舟がフランスでの修行を終えて帰国後に働いていた店の見習い。そして羽田野は三舟がリヨン時代に同じ店で修行していた。

南野はオーナーシェフとして店を出すことになり、羽野田はすでに3軒の店を経営するようになっていた。それぞれが飛躍しての再会は嬉しいものだ。しかし、すぐに不穏な空気が……。

 
第4話のキーワードになったのが「プライド」。SNSで「パ・マル」に関する「最低だった」「ラタ・トゥイユは食べられたもんじゃない」というネガティブなコメントを見つけた高築。志村や金子もそのコメントに憤るが、三舟は「その人はそう思ったんだろ」と、あっさり。その様子に高築は納得がいかない。

また、予約のお客さんからヴィーガン用の料理を作ってほしい、という要望が入り、それに応えたことも高築は疑問だった。乳製品が使えないため、バターが使えない。志村も豆乳を使うとフランス料理ではないというが、三舟はお客さんを受け入れる。「フランス料理人としてのプライドがないのかもしれない」と高築。

そして、そのお客さんの父は南野の店の出資者だということが発覚。同じ料理ながら、南野が作るもののほうがおいしかったと言われてしまい……。

実は南野はヴィーガンを希望した出資者の娘に、豚の背油を使用した料理を出していたのだ。ファッションでヴィーガンを好む人たちに食べさせたところで、味なんか分からないだろうというのが南野。事実を確認した三舟は憤る。

「その人が食べたくないと思っているものを食べさせた」

三舟にとって料理人としてのプライドは目の前のお客さんが望むものを精いっぱいの気持ちを込めて作るということ。だから、まずいというお客さんに対しても憤ることはないのだ。

一方、羽野田は――。彼女が経営する店には肉料理メインのお店、ゴージャスなコースを提供するお店、そして従業員が全員女性というお店……とそれぞれの特徴がある。羽野田はその女性ばかりの店でパティシエとして働く岸部を伴って「パ・マル」を訪れた。おいしい料理をいただき勉強をするため、そして、岸部にメイクをもう少し薄くするように、香水をつけないように、と注意するためでもあったのかもしれない。

しかし、その数日後、岸部は実家に戻るための休暇を取り、そのまま音信不通になってしまう。「マカロンはマカロン」というメッセージと共に「マカロン・ダミアン」を贈って。

困った羽野田は三舟を頼る。もしかしてリヨン時代にも名探偵ぶりを発揮していたのだろうか。期待に応えるように、見事に三舟はその謎を解いて見せる。三舟の推理は岸部がトランスジェンダーではないか、ということ。
日本でマカロンと言えば、色とりどりで美しいマカロン・パリジャンだが、マカロン・ダミアンはシンプルながらもこれもマカロンであることは違いない。「マカロンはマカロン」。「女は女」。「わたしはわたし」。

美しく飾ったマカロンだけがマカロン。美しく装った女性だけが女性であるかのように言うが、でもそうじゃない。直接は言えないけれど、知ってほしい、伝えたい思いが岸部にはあったということだろう。

大切なのはお互い尊重し合える人同士で作っていくことが大事。話を聞いていた金子が発した言葉に、羽野田もまた経営者としての「プライド」を確認する。

プライドは自分の行動の指針になるもののひとつだ。どこに自分のプライドがあるのか。それが明らかにされたことによって、三舟というシェフの理解が深まったように思える。更には、探偵に失踪した父親の行方を捜すことを依頼しているなど、新たな事実も。このことが今後の物語にどのように関わってくるのか、気になるところだ。

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–{第5話ストーリー&レビュー}–

第5話ストーリー&レビュー

第5話のストーリー

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金子ゆき(石井杏奈)が恋人の転勤を理由に辞めてしまう。三舟忍(西島秀俊)が引き留めなかったことを知った高築智行(濱田岳)は怒りを露わにする。そんな金子を欠いた『パ・マル』に元常連の館野が来店。再婚するという。また2日連続来店した脇田は妻の由美子が家出して落ち込んでいた。新たに家庭を築く者、音信不通の妻に悩む者――三舟は2組の家族に極上の料理で救いの手を差し伸べる。

第5話のレビュー

家族のことを考えさせられた第5話だった。

今回、店に訪れたのは再婚をするという元常連客の館野と、妻が家出をして落ち込む脇田。

肉嫌いだった息子が突然、肉を進んで食べるようになったという館野の謎と、脇田の妻が家出をした理由を今回も三舟は見事に解き明かした。

一方、『パ・マル』は非常事態に。金子が恋人の転勤についていくことを理由に店を辞めたのだ。人手不足のところにオーナーの小倉がヘルプとして入るが、逆に高築の仕事を増やしてしまうばかり。小倉……その感じだとサラッと登場してサラッとなんでもこなしてしまうのかと思いきや、違ったのか……愛されキャラだな……。

また、高築は、三舟が店にとって大切な存在である金子を引き留めなかったことに怒っていた。おまけに、恋人にフラれて戻ってきた金子をあっさりと受け入れたことにも納得ができていないよう。

「所詮、従業員は従業員でしかない」

そんなふうに不信感を膨らませてしまう。

でも、実は三舟の行動は金子の幸せを一番に考えてのことだった。金子がいないことは店にとっては大きな痛手だ(確かに、彼女の働く姿は無駄がなく、見ていてとても気持ちがいい)。しかし、恋人と一緒にいるのが金子にとっての幸せだと思っていたから送り出した。そして、もしダメだったとしても何も言わずに迎え入れよう。それが三舟と志村が申し合わせていたことだった。『パ・マル』が金子の帰る場所であればいい。

家族とは、なんだろうか。夫婦に血の繋がりはない。他人同士だ。そんな2人が意思を確認し合い、家族になる約束をする。ならば、家族になれる可能性はいろんなところにあるのでは……ということを今回の第5話を観ていて思ってしまう。恋人と別れて戻ってきた金子にとって、『パ・マル』は間違いなく救いになっただろうし、三舟と志村は(もちろん高築も)金子には笑っていてほしい、と思ったはずだ。

脇田は自分を喜ばせたいという妻の気持ちを聞き流していて怒らせた。妻の気遣いに気づき、反省をしたときに2人に笑顔が戻った。

館野は知らないところで再婚相手と息子が秘密を持ち、2人は笑顔になっていた。そしてその秘密を知ったときに、館野も笑顔を共有することができた。

「人が仲良くなるには秘密を共有すること。そしてその秘密がなくなったときに本当の家族になるのかもしれない」そんなセリフがあったけれど、その人の「笑顔が見たい」「笑顔にしたい」という気持ちを持てたときもまた、家族への第一歩なのかもしれない。

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–{第6話ストーリー&レビュー}–

第6話ストーリー&レビュー

第6話のストーリー

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常連客の西田が婚約者と現れる。お相手の串本法子は小劇団の人気俳優だ。幸せな時を過ごすが、そんな2人に不穏な影が忍び寄る――。店には三舟忍(西島秀俊)がフランスで知り合った川本淳吾の姿も。そして思い出話と共に、三舟が作るヴァン・ショーの誕生秘話が明かされる。そんな中、三舟は高築智行(濱田岳)の不審な行動に気づく。真夜中の店に忍び込む様子が防犯カメラに映っていて…。

第6話のレビュー

今回の事件は少しばかりきな臭い。

常連客の西田が女性・法子と一緒に「パ・マル」にやってきた。先日、婚約したばかりだという2人に、三舟をはじめとした「パ・マル」の面々は祝福の言葉をかける。

しかし、西田から「午前3時ごろまで仕事をしていたのか」と問われ、三舟は首を傾げる。西田は店の灯りがついていたのでてっきり三舟だと思った、という西田。不思議に思った三舟は防犯カメラを確認する。するとそこには高築の姿が……。

そのあとからさまざまな不審な出来事が頻発する。三舟のレシピノートがなくなったり、志村のロッカーに「コロス!!」と書かれた手紙が挟み込まれたり……。高築はヴァン・ショーのレシピを知りたがっていた。秘密のレシピだと三舟は断ったが、だから高築はこっそりレシピノートを盗んだのか? など、三舟の中に疑念が渦巻く。

一方、西田は、法子が作ったフランス料理を食べすぎたため、おなかの具合が悪いと言い……。

盗難騒ぎ? 殺人予告? はたまた殺人未遂……!? と穏やかではなかった第6話。今回は三舟が大活躍というよりは、自然とひとつずつ謎が解けていった、という感じだ(レシピは大輔が契約関連の書類と一緒に持ち出しており、志村への手紙は妻からだった)。

大きかったのは西田の腹痛の原因解明だろう。実は料理は法子ではなく、法子の熱狂的なファンが作ったものだった。西田の料理にだけ、こっそり下剤を入れていたのだ。法子が結婚して役者を辞めることが許せなかったから。

「あんな人死んじゃえばいいんだ」「こんな素敵な人を私たちから奪ってしまうなんて」

ファンというより気持ちよりも一歩進んでしまった気持ち。三舟が気づかなかったら、西田はさらに大きな傷を負うことになっていたかもしれない。いや、彼だけではなく、法子もファン当人も。

三舟はスイーツを出してこう語り掛ける。

「君はほかに夢を見られるものを探すことができる」
「串本様の力を借りなくても君は必ず幸せになれるよ」

何かを一生懸命応援している人、いわゆる「推し」がいる人にとってはいろいろ考えさせられる言葉かもしれない。

ヴァン・ショーの誕生秘話が明かされたことだろう。留学中にある悩みを推理・解決したことでレシピを教えてもらえたのだという。やっぱり留学先でもその推理力を発揮していたか……三舟、推理力で得ているものが多そうだ。芸は身を助ける……(?)

 そんな三舟の推理力でも解き明かせなかったのは高築の行動だった。ある日、閉店後、忘れ物を取りに店へと戻った三舟。そこに女性が訪れる。高築の母だという女性は、三舟にある動画を見せたくて、と言う。動画に映っていたのは高築。仕事を辞めたことで心配をかけた母への、現職場、つまり「パ・マル」を紹介するための動画だった。これを撮るために高築は深夜に店に来ていたのだ。

動画の中で高築は「夢ができた」と語る。ギャルソンとして一人前になって、いつか「パ・マル」のような店をやりたい。そんな夢が持てたのは三舟と出会えたから――。その言葉がグッと来るし、母親にそんな動画を送るってなんていいやつなんだ、高築!

 次回は、ついに三舟の父親が見つかる? 物語が動きそうな予感だ。

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–{第7話ストーリー&レビュー}–

第7話ストーリー&レビュー

第7話のストーリー

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山下嗣麻子(宮下かな子)が持ち込みワインの相談で来店。まだ若いのに驚くほど高級な逸品だ。どうやら嗣麻子はお嬢様で、翌日集まった仲間は彼女の鼻に付く行動にうんざりしている様子。中でも遥香(鞘師里保)は特に嫌っているようで…。またメニューにない牛肉のタルタルステーキを食べるだけでなくメニューに載せてほしいという変わった予約が入る。しかも「タルタルステーキは置いてあるか」と尋ねる客・緒方(熊谷真実)が現れ…。

第7話のレビュー

友情って難しい。

パ・マルを若い男女のグループが訪れる。まだ到着していないひとりの女性について悪口を言っているようで……。その女性というのは山下嗣麻子。前日にワインを持ち込むために訪れていた。運転手付きでワインも高級品……お嬢様のようだ。

グループの中でも遥香は特に嗣麻子のことを嫌っているようで、「もう誘うのはやめないか」と言っている。気に入らないのはなぜか? というと、どうやら嗣麻子の態度が鼻につくらしい。ただ、彼女のおかげで彼らはいつも高級なワインが呑めている。要はそれだけが目当てだったのだ。そして、会計の際にはいつも嗣麻子に高く支払わせており……。おっと、こやつら最低である。

しかし、飲食店に勤めていると、聞かなくていい話もたくさん聞いてしまうんだろうな……。

もう一組は、「牛肉のタルタルステーキ」をメニューに載せてほしいという変わった予約を入れてきた福岡という客。当日3人で訪れるが、そのうちひとり、亜子はバッグにマタニティマークをつけている。妊娠中に生肉はよくないとされている。トキソプラズマに感染し、子どもに影響を与える可能性があるからだ。しかし、「一口食べてみて」と勧められて口にしてしまい……。

今回は思いやりが遠回しすぎて伝わりづらい、というのが感じられる回だった。

遥香は嗣麻子のことを嫌っていたのではなく、集まりに参加しなくて済むようにしようとしていたのだ。自分が嗣麻子をグループに誘ってしまったせいで嫌な思いをさせている。
昔から、いじめられた自分を助けてくれたのは嗣麻子だった。なのに自分は……。
三舟のアシストがなければ、2人の仲はいずれこじれることになっただろう。

タルタルステーキを注文した福岡の行動も実は友人である亜子のためだった。
トキソプラズマにかかったことを義母の緒方に言えない亜子を助けようとして、タルタルステーキを使った“隠ぺい工作”を実行する。しかし、緒方はすでに亜子の体調については知っていて……。緒方も亜子に負担をかけないようにと影でこっそりと動いていた。
知らなくていいことも世の中にはたくさんあるけれど、知っているほうがすれ違わないこともたくさんある。何が正しいか、何が間違っているかなんて結果論でしかないけれど、人を思う気持ちというのは、難しい。

 物語はいよいよ佳境へ。ついに三舟シェフの父親が「パ・マル」に訪れる……? 次週の展開を楽しみに待ちたい。

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–{第8話ストーリー&レビュー}–

第8話ストーリー&レビュー

第8話のストーリー

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三舟忍(西島秀俊)と父・英雄の再会の日。なぜか英雄の代理だという安倍実花(奥貫薫)が現れて――。小倉大輔(佐藤寛太)がパン屋を開店することになり三舟はメニュー考案を手伝う。だが店長の斎木(近藤笑菜)と副店長の中江(さとうほなみ)が方向性で対立。不穏な空気が流れる中、『パ・マル』に来店した大野和真(山本耕史)は、中江が試作したブリオッシュに目を留める。実はブリオッシュにまつわる切ない思い出が…。

第8話のレビュー


連休明け、気が重い月曜日。人との絆は暖かいものなのだと、あらためて気がつかされた。

「パ・マル」のオーナー、小倉が新しくパン屋を開店することに。カフェも併設するので三舟にメニュー考案を手伝ってもらえないかと頼みに来たのだ。
快く引き受ける三舟。さっそく、パン屋の店長・斎木と副店長の中江が「パ・マル」に訪れるが、どのようなパンを置くかで対立していた。本格的なフランスのパンだけを出したい、メロンパンやパン・オ・レは出したくないと主張する中江。パン屋さんでメロンパンがないと個人的にちょっぴり寂しい気持ちになってしまうのだが……。と思っていると、彼女に主張には隠れた理由があった。中江たちの店のすぐそばに昔ながらのパン屋があり、メロンパンはそこの看板メニューだったのだ。更にその店は中江の実家だった。
自分たちの店のせいで、実家に迷惑をかけたくない。だからメロンパンなどを並べるつもりがなかった。差別化をして、客層がかぶらないようにしたいと考えていた。
しかし、中江の父親も、娘の仕事の邪魔をしてはいけない、と店をたたむ決意していたのだ。すれ違う親子。そんな親子を繋いだのが三舟だった。
実のところ、小倉のマーケティングで客を取り合うことはない、と検証されていた。中江の実家も店をたたむ必要はない。小倉ってノリだけ生きていそうなのに実業家としてはしっかりしているんだな……と初めて知ることができたように思う。

なにより、今回の物語で重要だったのが、親子の絆だ。パン屋をオープンすることになった娘に対して「ありがとう」という父親。
「自分の娘がパン屋になってくれて、自分のお店をもつなんてこれほど嬉しいことはない」
中江は申し訳なさがいっぱいだったが、両親からしてみれば、最高の親孝行をしてもらったのかもしれない。言葉がなくても、自分たちの姿をしっかりと見てくれていた証拠にもなるのだから。

一方、ようやく父親・英雄が見つかった三舟。しかし、再会の場に現れたのは父の代理の安倍という女性。父親は三舟に会う気はないという。英雄には娘のようにかわいがってもらっているという安倍だった。ただ会う気はないというなら探偵の上原に託してもよかったのではないか。にもかかわらず、わざわざ安倍に伝言を預けたのはせめてもの誠意か、それとも何か意味があるのか……。

次回、最終回。三舟と父の再会の場はあるのか、それとも……。三舟親子の結論をしっかりとラストまで見届けたい。

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–{第9話ストーリー&レビュー}–

第9話ストーリー&レビュー

第9話のストーリー

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三舟忍(西島秀俊)の父・英雄は生きていたが再会は叶わなかった。落胆する三舟に新たな悲劇が。英雄が手作りした思い出のスツールを、高築智行(濱田岳)が捨ててしまったのだ。事情を知らなかったとはいえ自責の念に駆られた高築は、スツール探しに奔走するが…。そんな折、安倍実花(奥貫薫)から予約の連絡が。フランス料理が食べられない安倍が一体なぜ?『パ・マル』をとりまく人々の“お節介”が、最後の奇跡を巻き起こす!

第9話のレビュー

月曜の夜、寝る前に観るならこんなドラマがいい。

父・英雄が生きていることはわかったものの、会うことを拒否された三舟。そんな中、父からもらったスツールが壊れ、高築が捨ててしまう。何も知らなかったこととは言え、高築の行動に落ち込む三舟。高築は、金子や志村と共にスツール探しに奔走する。

一方、店には英雄の代理として「パ・マル」にやってきた安倍が再び訪れる。乳製品が食べられないという彼女だったが、「フランス料理と和解したい」と言い、三舟にお任せ料理を注文する。
実は、安倍の父親はフランス料理のシェフだった。離れて暮らしており、あまり交流がなかった父と娘。和解できないまま父は亡くなり、安倍はわだかまりを抱えたままだった。安倍の事情を聞いた三舟は、「お父さんはあなたに歩み寄ろうとしていたのでは?」と問いかけ、いつものように解決の糸口を話す。

三舟にわだかまりをほどいてもらった安倍は、英雄を連れてくるように説得することを約束する。それを聞いた高築たちはそれまでに必ずスツールを見つけようと誓い合う。
高築、志村、金子それぞれのコミカルなやりとりはこのドラマの醍醐味のひとつだった。が、最終話はそれぞれのキャラクターがよい具合にかみ合っていたように見える。個人的に、神尾佑さんは強面キャラのイメージだったのだが、今回のポップさにすっかりファンになってしまった。最終話でもいい具合におちゃらけていた。

そして、三舟と英雄の再会。弟子の保証人になって借金を抱え、その清算のために店も手放した。今は農家として野菜を育てている。三舟にとっても大切な場所だった店を手放したことについて、英雄はずっと申し訳なく思っていたのだろう。2人が、言葉を交わすごとに会わなかった時間を埋め、互いに対する理解を深めようと努めているように見えた。
三舟が英雄に食べてほしかったという料理をテーブルに出す。一口ほおばった英雄は「パ・マル」とつぶやく。悪くない、という意味だが、フランスでは「とてもいい」という意味なのだそうだ。昔、三舟が作った料理にも「パ・マル」と言っていた英雄。三舟はその言葉にショックを受けていたが、実はとっくに父親には認められていたのだ。自分はまだまだだ、という三舟に、英雄は「向上心があるからだ」とほめる。再会した2人がこれからどのような交流を深めていくのか。それはきっと、穏やかなものになるに違いない。

食べることは生きることだ。食べたものが、その人の体を作る。「パ・マル」の料理は生きるためだけではなく、少しだけ幸せになれるお手伝いもしているのかもしれない。

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(文:シネマズ編集部)

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「シェフは名探偵」作品情報

イントロダクション

極上の料理と自家製のヴァン・ショー(ホットワイン)が売りの小さなフレンチレストラン『ビストロ・パ・マル』。 ここの料理長である三舟忍(西島秀俊)は冷静沈着で穏やか、一見すると何を考えているか分からない。でも実は「……ちょっといいですか?」と、すぐにお節介を焼いてしまう優しさを持つ。そんなシェフの三舟が人並外れた洞察力と推理力で、お客様たちの巻き込まれた事件や不可解な出来事の謎を鮮やかに解き明かす。

原作:近藤史恵コメント

長年書き続けてきた思い入れのあるシリーズですし、ドラマ化という形で世界が広がって、原作者としてうれしく思っています。レストランという劇場で起こる小さな事件を描いた連作短編集なので、コロナ禍でレストランから少し足が遠のいている今、そのスペシャルな時間を多くの方に楽しんでいただければ幸せです。西島秀俊さんの演じる三舟シェフ、とても楽しみにしています。

番組概要

番組名
ドラマプレミア23「シェフは名探偵」

放送日時
月曜夜11時06分~12時00分(初回5分拡大)
※放送日時は変更となる場合がございます。

配信
動画配信サービス『Paravi』『ひかりTV』にて配信中

主演
西島秀俊

出演
濱田岳/神尾佑/石井杏奈/佐藤寛太/橋本マナミ ほか

第1話ゲスト
井上小百合/玉置玲央/冨手麻妙/奥田洋平 ほか

第2話ゲスト
松本若菜/山下リオ/浅野千鶴/西尾友樹/小野ゆたか ほか

第3話ゲスト
シルビア・グラブ/映美くらら/西原誠吾 ほか

第4話ゲスト
青柳翔 /イシヅカユウ /澤田育子/ 土居志央梨 /梶原ひかり 

第5話ゲスト
 利重剛 / 洞口依子 / 占部房子  /瓜生和成  /上矢晴太/めがね  ほか

第6話ゲスト
真飛聖/  新納慎也/  柿丸美智恵 ほか

原作
近藤史恵
「タルト・タタンの夢」「ヴァン・ショーをあなたに」「マカロンはマカロン」(創元推理文庫刊)

オープニングテーマ
all at once「マカロン」(Being)

エンディングテーマ
mihoro* 「ミヤコワスレ」 (ビクターエンタテインメント)

監督
木村ひさし/瀧悠輔/向井澄

脚本
田中眞一/西条みつとし

音楽
末廣健一郎/田ノ岡三郎

チーフプロデューサー
阿部真士(テレビ東京)

プロデューサー
滝山直史(テレビ東京)/長谷川晴彦(KADOKAWA)/平体雄二(スタジオブルー)

制作
テレビ東京/スタジオブルー

製作著作
「シェフは名探偵」製作委員会

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