『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』レビュー | 「前作以上」な5つのポイントで徹底比較!!

映画コラム

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岡田准一演じる伝説の殺し屋“ファブル”が2年ぶりにスクリーンに還ってきます。

岡田准一を始め木村文乃、佐藤浩市、佐藤二朗、宮川大輔、井之脇海、安田顕、山本美月と言ったレギュラーメンバーも続投し、新たな“プロの普通の生活”の日々が描かれます。

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前作『ザ・ファブル』とは?

どんな相手でも6秒以内に殺す“ファブル”=寓話と呼ばれる謎の殺し屋(岡田准一)は、伝説の存在として恐れられ、その存在の有無すら訝しがられるほど。

そんな“ファブル”を育て上げたボス(佐藤浩市)はあまりにもハイペースで仕事をし続ける“ファブル”の姿を見て、「1年間、一般人として普通に暮らせ、休業中に誰かを殺したら俺がお前を殺す」と命じます。

佐藤アキラという偽名を使い相棒のヨウコ(木村文乃)と兄妹として大阪に渡った“ファブル”はプロの普通の生活を始めることに。

一方、“ファブル”を預かった大阪の海老原(安田顕)率いる真黒カンパニーでは出所してきたばかりの狂暴な小島(柳楽優弥)と現幹部の砂川(向井理)の間で確執が生まれ、また“ファブル”を伝説のレアキャラのように追い続ける殺し屋フード(福士蒼汰)が確実に“ファブル”=アキラのもとに近づいていました。

やがて、佐藤アキラとして勤め始めたバイト先のミサキ(山本美月)が小島のターゲットになったことから“ファブル”=アキラは“誰も殺さない”方法でミサキを救い、普通の生活を守ることになります…。

『ザ・ファブル』では“ファブル”が伝説の殺し屋としてボスに育て上げられる部分から描かれ、真黒カンパニーの内紛劇や、“ファブル”を追いかける殺し屋コンビなどが絡みあい、最初から最後まで密度と熱量の濃い映画に仕上がっていました。

監督は多くのCMなどを手掛けた江口カン、アクション監督に『ボーン・アイデンティティー』、『96時間』シリーズのアラン・フィグラルズが招聘され、主題歌にレディー・ガガの「ボーン・ディス・ウェイ」が起用されるなど邦画の枠組みを超えた映画でした。
ちなみに、岡田准一はアランと共にファイトコレオグラファーを務め、アクション設計も担当しています。

そして、2年の月日を経て“ファブル”『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』公開

監督の江口カンは続投、アクション監督には海外での経験も豊富で『東京喰種』シリーズなどを手掛けた横山誠が参加。岡田准一はファイトコレオグラファーとして作品全体のアクション設計を指導する立場になっています。

岡田准一がアクションというものに大きく舵を切ったのは2005年の『フライ、ダディ、フライ』の頃からでしょう。その後『SP』シリーズ、『図書館戦争』シリーズといったアクションを前面に押し出した作品で主演を張り、近年の『散り椿』や『燃えよ剣』と言った時代劇でも殺陣設計に関わるなどしています。

今回は木村文乃や安藤政信の他のキャストのアクション設計も積極的に行いました。

『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』にはこれまでも岡田准一と共演経験の多い堤真一がクセモノの悪役の宇津帆として登場。堤は実際にはバリバリに動ける人ですが、今回はアクションは極力封印して演技で岡田准一とぶつかり合います。

宇津帆の右腕となる殺し屋の鈴木に安藤政信、そして過去に“ファブル”と因縁のあるヒナコに平手友梨奈がキャスティングされました。
平手友梨奈は今年に入ってから映画『さんかく窓の外側は夜』、ドラマ「ドラゴン桜」と話題作への出演が続いていますね。

新型コロナウィルス感染拡大の影響で公開延期が続いたことで『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』は結果として2021年6月18日から公開されることになりました。

前作『ザ・ファブル』が2019年6月21日公開だったので丸2年が経ってしまいました。
今回の主題歌はレディー・ガガとアリアナ・グランデの「レイン・オン・ミー」という豪華仕様です。

–{徹底比較!!『ザ・ファブル』VS『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』}–

徹底比較!!『ザ・ファブル』VS『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』

アクション

前作『ザ・ファブル』のアクションシーンでは岡田准一の身体能力の高さ、アクション俳優としてスキルに多いに驚かされた反面、もったいなさも感じることがありました。

顔を見られるわけにいかないので目出し帽のようなマスクを被っているので、岡田准一本人かどうかが判別できないというのはまぁ仕方のないのですが、クライマックスのここぞというシーンで引きの絵になってしまったりしていました。岡田准一の体技がすごいのですから、そこはアップで大暴れをしているところ見せて欲しかった。

また、クライマックスのごみ処理場の中での戦闘は雰囲気はありましたが何せ暗がりが多くて良くわからないという部分もありました。全体的を見ても『ザ・ファブル』は暗い屋内のアクションシーンが多かった印象があります。

それに対して『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』ではアクションの見せ方が非常に上手くなっていて、アップで見せるべきところと引きの絵で見せるべきところの線引きが絶妙でした。

“団地パニック”と名付けられた団地とその周辺の足場を使った一対多数のアクションシーンは思わず息をのみます。こちらは思い切り真っ昼間の屋外での戦闘が中心になるのでとても映えます。その分騙しが効かないので作る側は大変だったと思いますが…。

また、前回アクション面では見せ場が少なかった木村文乃も今回はアクション全開の一方で、他の人物同士の戦いがなく“ファブル”のすごさをストレートに感じられるものになっています。

ドラマ

今回のキーパーソンは堤真一演じる宇津帆と平手友梨奈演じるヒナコ。

宇津帆はかつて“ファブル”の殺しのターゲットになっていながら、直前で命令が変わって生き残ったという男。

そしてヒナコはこの命令の中で巻き込まれる形で下半身に障害を追ってしまった女性です。

かつて救えなかった人間、殺すはずだった人間が“誰も殺してはいけない生活”を贈るファブルの前に現れます。

前作『ザ・ファブル』では“ファブル”を追い回す殺し屋コンビや、真黒カンパニーの内紛によって火の粉が“ファブル”に降ってきたという部分がありましたが、『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』は過去の因縁があると言うこともあって“ファブル”がより積極的に物語の芯に交わっていき、ドラマ性に深みを持たせています。

キャラクター

前作でヒロインの役割を担ったミサキは今回は、敢えて非アクションパートのみの登場で、どちらかというと物語をリラックスさせる役割を担っています。

代わりに平手友梨奈演じるヒナコがヒロインとして物語の中心の役割に。

また、前作ではどちらかというとサブ的な存在だった木村文乃演じるヨウコがしっかりと闘いの中に身を投じているのも新展開と言えるでしょう。

悪役というか敵役の宇津帆と鈴木も“自分たちがファブルには敵わない”とわかっていてなお、作戦を練るという面白い立ち位置にいます。

「“ファブル”はすごいけど、この方法なら何とかなるんじゃないか?」と思わせたうえで、それを“ファブル”が乗り越えていくというのは新しいヒーローの描き方と言えるのではないでしょうか?

安藤政信演じる鈴木もただの敵役では終わらない重要な判断を下すことになるキャラクターで終盤に向かってどんどん重みが増してきます。

『ザ・ファブル』の時の地震に溢れた悪役、敵役に対して『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』の敵役は自分の弱さを認めたうえで“ファブル”に用心深く対峙していきます。

ヒロイン

前作『ザ・ファブル』ではその薄幸さが全開だった山本美月演じるミサキ。今回もまたバイト先の同僚として登場します。“ファブル”=佐藤アキラにほのかに恋心を抱いているようですが、“ファブル”はなんともそっけない態度をとられています。

今回は物語の緩急の“緩”の部分に登場することもあって、佐藤二朗演じる社長と共に笑いのパートを担当しています。

とは言え、持ち前の(?)薄幸さは健在で間接的とはいえある事件に関わってしまったりもします。

物語の緩急の“急”の部分のヒロインのヒナコは“ファブル”を“ファブル”だとわかったうえでなお一層関わってくるキャラクターという、特異な立ち位置にいます。

宇津帆や鈴木との関係性も一言では言い表せない複雑な形になっていて『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』はヒナコの物語としても見ることができます。

笑い

『ザ・ファブル』『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』共にダークサイドの住人が大挙して登場します。いわゆる堅気ではない人たちばかりです。

自然と物語は殺伐としてきて、実は結構エグイ展開もいっぱいあります。
見せ方、撮り方が上手いのでR指定やPG-12になっていませんが、全部ありのままに描いてしまったら結構大変なことになると思われます。

そんな映画ですが、緩急の“緩”の部分での笑いは今回も健在です。

もともと“ファブル”が一般的な日常とは全く縁のない生活をしてきているので、自然と“ズレ”が生じて、そこがなんとも言えない笑いを誘います。

ちなみに“ファブル”がはまっているお笑い芸人ジャッカル富岡は今回も健在、この場面でやるか!?というところで、滑りギャグが炸裂しています。

岡田准一の持つ瞬発力がいい意味で笑いに繋がっています。ジャッキー・チェンなんかに通じる部分を感じることができます。

全体を通して

『ザ・ファブル』と比べて『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』は“ファブル”のエピソードゼロの部分を描かなくて済んだりするので、物語としてはシンプルになっています。

群像劇で盛沢山だった『ザ・ファブル』から、『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』はメインの登場人物を絞った形でアクションの激しさを残しながらも、ドラマの部分でかなり深いものになりました。

続編というのは映画においてはなかなか難しいものですが、今回の『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』は“前作を超えた続編”の一本となったと言えると思います。

最後に(ネタバレにはならないネタバレ)

『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』を見たときには最後の最後まで席を離れないでください。最後の最後でボスが営む整体院のシーンが登場、ここの壁にかかる人体図の頭蓋骨の中のある部分がアップになって映画は終わります。
これは原作シリーズについて多少調べている方なら“ニヤリ”とする場面です。

映画は“生もの”でヒットしなくては次はないものですが、その次を感じさせるうまい布石になっています。原作と照らし合わせても“3度目のファブル”はあり得るのではないかと思います。

(文:村松健太郎)

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–{『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』作品情報}–

『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』作品情報

【あらすじ】
どんな相手も6秒以内に仕留める伝説の殺し屋“ファブル”(岡田准一)はある日、ボス(佐藤浩市)から「一年間、誰も殺すな。一般人として“普通”に生きろ」と命じられる。猫舌で変わり者の彼は、佐藤アキラという偽名で、相棒・ヨウコ(木村文乃)と普通の兄妹のフリをして暮らし始め、バイト先の社長(佐藤二朗)と同僚のミサキ(山本美月)と関わりながら、プロの普通を極めるため奮闘していた。一方、この街では、表向きは子供を守るNPO団体・子供たちを危険から守る会の代表だが、裏では緻密な計画で若者を殺す最狂の男・宇津帆(堤真一)が暗躍していた。彼は凄腕の殺し屋・鈴木(安藤政信)と共に、かつて弟を殺したファブルへの復讐に燃えていた。そのころアキラは、4年前のある事件で自分が救えなかった車椅子の少女・ヒナコ(平手友梨奈)と偶然再会するが、これが後に大騒動を引き起こすことに……。 

【予告編】

【基本情報】
出演:岡田准一/木村文乃/堤真一/平手友梨奈/安藤政信/山本美月/佐藤二朗/井之脇海/安田顕/佐藤浩市/宮川大輔/橋本マナミ/黒瀬純(パンクブーブー)/好井まさお(井下好井)

監督:江口カン

ジャンル:ドラマ/アクション

製作国:日本