『AVA/エヴァ』レビュー:殺し屋ヒロインの家族との確執&クールなガン・アクションの妙味!

映画コラム

■増當竜也連載「ニューシネマ・アナリティクス」SHORT

“エヴァ”といっても、もちろん今大ヒット中のあのアニメ映画とは全然関係ありません(スペルのEとAの違いもあるし)。

本作は『ゼロ・ダーク・サーティ』(12)『女神の見えざる手』(16)などで知られるクール・ビューティ、ジェシカ・チャスティンが殺し屋エヴァに扮したハードボイルド・アクション映画。

監督は、彼女がアカデミー賞助演女優賞候補にもなった『ヘルプ~心がつなぐストーリー』(11)のテイト・テイラーが務めています。

殺し屋ヒロイン映画そのものはさほど珍しいジャンルではありませんが、本作はエヴァが相手を始末する際、標的にされた理由を本人から問いただそうとする習性があるのがユニークな点ではあるでしょう。

また彼女を巡る母や妹、その恋人といった家族関係にも大きく焦点を当てているあたり、単なるアクション映画ではなくヒロインの心の奥底に秘められた深い傷跡を通しての人間ドラマにしていきたいという企画意図もあったかと思われます。
(もっとも、それによって少しまだるっこしくなった感もあり、個人的にはもっとストレートなアクション路線に邁進しても良かったとは思っていますが)。

ジョン・マルコヴィッチ、コリン・ファレル、ジーナ・デイヴィス、ジョアン・チェンといった往年のスター勢を脇に配したキャスティングも一見贅沢には見えますが、逆にこういった布陣のアクション映画ほど、意外にB級テイストが強まるのも映画ファンであればあるほどご承知の通例。

その伝でも本作、なかなかクールな佇まいが妖艶で粋なエヴァ=ジェシカ・チャスティンの魅力とガン・アクションの妙味を、97分という程良い上映時間の間とくと堪能する姿勢で接するのが一番得策な映画であるともいえるでしょう。

母親役ジーナ・デイヴィスが登場してきた際に「デヴィ夫人に何か似てきたな……」などと思った瞬間、『ザ・フライ』(86)や『ビートルジュース』(88)『偶然の旅行者』(88)『テルマ&ルイーズ』(91)『プリティ・リーグ』(92)などなど彼女に夢中になっていた頃からおよそ30年の歳月が過ぎていることに気づかされるとともに、万感の想いを胸に馳せつつ……。

(文:増當竜也)

–{AVA/エヴァ作品情報}–

AVA/エヴァ作品情報

ストーリー
完璧な容姿と知性、そして圧倒的な戦闘能力を兼ね備えた暗殺者エヴァ(ジェシカ・チャステイン)。組織に命じられるまま完璧に任務をこなしてゆくが、常に「なぜ標的たちは殺されるのだろうか」と自問自答を繰り返していた。そんなある日、エヴァは全組織員が注目する極秘ミッションに臨む。だが、組織から事前に与えられた情報に誤りがあり、そのことでエヴァの正体に気づいた敵と銃撃戦になってしまう。辛くも生き延びたエヴァは、関係者の中に自分を陥れようとしている存在を疑い、次第に組織への激しい不信感を募らせていく。やがて、組織にとって危険因子となった彼女を秘密裏に始末しようする殺し屋サイモン(コリン・ファレル)の魔の手がエヴァに迫る。暗殺者VS暗殺者、血で血を洗う戦いの火蓋が今、切って落とされた……。 

予告編

         

基本情報
監督:テイト・テイラー

キャスト:ジェシカ・チャステイン/コモン/ジョン・マルコヴィッチ/コリン・ファレル
 
製作国:アメリカ

公開日:2021年4月16日

上映時間:97分