2021年4月3日(土)、東京は丸の内TOEIにて仮面ライダー生誕50周年記念企画発表会見が行われた。当日は朝から同企画の第1弾、第2弾が次々に発表され、SNSには歴代仮面ライダーのキャストを始めとした関係者やファンからのお祝いのメッセージ、そしてベールに隠されたままの第3弾への期待の声が溢れていた。
そんな中、1971年4月3日(土)19:30に仮面ライダーの第一話が放送された正に同日同時刻、会見場の大型モニタに『仮面ライダー』のオープニングから始まるメモリアル映像が映し出され発表会見が幕を開けた。
すべての人類に等しく仮面ライダーを
会見の冒頭では東映株式会社代表取締役社長・手塚治氏が、50周年への思いを込めて挨拶。
「50年前のこの瞬間に仮面ライダーの歴史が始まりました。そして50年、テレビ、映画、ビデオ、DVD、配信とあらゆる形で仮面ライダーのシリーズを皆様に楽しんでいただけたことと思います。
実は人類には3種類が存在します。『仮面ライダーを今も楽しんでいる人たち』『仮面ライダーを楽しんでいたが今はやめてしまった人たち』『仮面ライダーを観たことがない人たち』です。
今日ここに発表会見を開いたのは、このすべての人類に等しく仮面ライダーを楽しんでいただくために新たな時代の新たな仮面ライダーを発信していこうという思いのためです」
続けて東映を代表する3人のプロデューサーからそれぞれの企画が発表された。
–{仮面ライダー史上初のアニメ作品『風都探偵』は日米同時配信}–
仮面ライダー史上初のアニメ作品『風都探偵』は日米同時配信
東映株式会社テレビ企画制作部長・塚田英明氏からは、企画第1弾として当日朝8時に公式サイトで発表のあった漫画『風都探偵』のアニメ化についての説明が。
「『風都探偵』は仮面ライダーWの正統続編として2017年8月から小学館の週刊ビックコミックスピリッツで連載を開始して現在も絶賛連載中の漫画であります。この『風都探偵』が今回アニメとなります。連続もののアニメとしては仮面ライダー50年の歴史の中で初の試みです」
続けて塚田氏は意気込みを語った。
「仮面ライダーWという映像作品から石ノ森章太郎先生の原点である漫画という形にメディアを移して続編をやったことで漫画表現の新たな発見や進化があった。アニメーションという次の形態に移るにあたって同じことが起きるのではないかと考えている。新しい発見と進化をアニメ『風都探偵』で実現させたいと思っている」
また、質疑応答でアニメ『風都探偵』の世界に向けた展開について問われた塚田氏からは日本と同時期の2022年夏頃ファニメーション(FUNimation)による米国内での配信が決定しており、その他の地域についても調整中であることも明かされた。
仮面ライダー生誕50周年記念「仮面ライダーW」の続編、マンガ「風都探偵」アニメ化決定 | cinemas PLUS
–{仮面ライダーの金字塔的作品を映画界の風雲児の手でリブート}–
仮面ライダーの金字塔的作品を映画界の風雲児の手でリブート
東映株式会社取締役コンテンツ事業部門担当・吉村文雄氏からは当日朝10時に企画第2弾として公式サイトで発表された仮面ライダーBLACKのリブート作品『仮面ライダーBLACK SUN』について改めて発表された。
吉村氏からは以下のような説明と監督コメントの読み上げが。
「1987年に放送された仮面ライダーBLACKは原作への原点回帰をコンセプトに、主人公とライバルの戦いなど後の平成仮面ライダーシリーズに繋がる方向性を決定づけた金字塔的作品であり、石ノ森章太郎先生が関わられた最後のテレビシリーズでもあります。
この度、仮面ライダー生誕50周年を記念して仮面ライダーBLACKをリブートし、シリーズ全体の監督に『凶悪』『狐狼の血』など話題作を手掛けてきた映画界の風雲児・白石和彌監督を迎えて新たに『仮面ライダーBLACK SUN』として皆様にお届けすることとなりました」
白石監督起用に至った経緯について吉村氏は以下のようにコメント。
「仮面ライダーBLACKは、主人公と兄弟同然に育った親友がライバル関係になって闘うという、ふたりの関係性にフォーカスしたドラマで、その悲しみや苦しみといった部分も描いた人間性に突っ込んだ作品でした。
ではどういう方にお願いしたら新しい作品として蘇らせることができるのかと考えた中で白石監督にお願いしてはどうかということになりました。
白石監督の作風は皆さんもご存知だと思いますが、その手に掛かることで仮面ライダーBLACKが『仮面ライダーBLACK SUN』としてどういう形で生まれ変わるのかということは私を含め非常に興味のあるところではないでしょうか」
なお、『仮面ライダーBLACK SUN』の詳細については2022年春に発表される予定とのことである。
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–{全人類に向けて放たれる『シン・仮面ライダー』}–
全人類に向けて放たれる『シン・仮面ライダー』
最後に東映株式会社取締役テレビ第二営業部部長・白倉伸一郎氏から、様々な憶測を呼んでいた企画第3弾の発表が行われた。
「本日発表させていただく(仮面ライダー)生誕50周年企画の中で最大級の作品であると自負しております。全人類に向かって放つ作品です。私から説明する前にまずこちらをご覧いただきたいと思います」
会場の大型モニターを示すと会場が暗転し、お馴染みの仮面ライダーのテーマ曲と共に『超特報』の文字が現れると『原作 石ノ森章太郎』に続き『脚本・監督 庵野秀明』の文字が映し出され、『シン・仮面ライダー』のロゴが大写しにされた。
なお、こちらの超特報映像は公式Youtubeで公開の他、一部を除く全国の映画館で上映されるとのことである。
庵野監督が実写映画のメガホンを取るのは2016年公開の『シン・ゴジラ』以来ということで、超特報映像を受けて白倉氏は喜びと作品への期待をコメント。
「仮面ライダーシリーズの原点である1971年に放送された『仮面ライダー』をもとに脚本・監督に庵野秀明さんを迎えて完全新作のオリジナル作品『シン・仮面ライダー』を制作させていただく運びとなりました。
(生誕50周年を迎えた)今日この日にこの作品を発表できることを大変嬉しく思っております。公開は2023年3月を予定しており撮影はこれからですが、どのような作品になるのか私自身も好奇心のエンジンがブルンブルンでございます。」
質疑応答で『シン・仮面ライダー』へ至る経緯を聞かれた白倉氏は、こう振り返った。
「庵野監督のコメントにありました通り6年も前に遡ります。弊社プロデューサーの紀伊(紀伊宗之氏)が『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』に携わった際に庵野監督と密な関係を構築させていただき、庵野監督からこういうものはどうかという企画メモを頂戴しました。そこから6年準備を重ねて本日を迎えることができました」
続けて現在の制作状況について聞かれた白倉氏は自信を見せた。
「正直なところ、50周年イヤー中に公開まで漕ぎつけられたらいいなと思って準備をしてきましたが、コロナ禍などの諸事情によりドミノ式に色んな作品の制作がズレて2023年3月公開を目指している状況です。撮影もこれからとなりますが、準備は充分にできていると思っております」
さらに、『シン・仮面ライダー』制作に併せて庵野監督企画による(初代)仮面ライダーの出版企画も検討されていることも発表された。こちらも仮面ライダーファンの期待が膨らむ展開である。
コメント
株式会社石森プロ代表取締役社長 小野寺章氏
ライダーの歴史は革新の歴史でもあります。
「どんな仮面ライダーがあってもいい」と父・石ノ森章太郎は常々語っていました。人類の自由のために戦いを続けてきたたくさんのライダーたちの歴史はついに50年を迎えました。
一方で父は「真」「Black」など仮面ライダーの原点の再生にも常に熱い目を向けていました。
庵野監督の「シン・仮面ライダー」は最新でありながら同時にこの原点でもあるという作品です。この2つが50年と言う節目の年にもう一度混ざり合う。それは勿論、父にとっても非常に嬉しいことだろうと思います。監督の挑戦に期待しております。
株式会社石森プロ 代表取締役社長 小野寺章
庵野秀明氏
50年前、当時の小学生男子のほとんどが仮面ライダーという等身大ヒーローに憧れ熱中しました。
自分もその一人でした。
50年前にテレビ番組から受けた多大な恩恵を、50年後に映画作品という形で少しでも恩返しをしたいという想いから本企画を始めました。
本企画は、
子供の頃から続いている大人の夢を叶える作品を、
大人になっても心に遺る子供の夢を描く作品を、
石ノ森章太郎先生と東映生田スタジオが描いていたエポックメイキングな仮面の世界を現代に置き換えた作品を、
そして、オリジナル映像を知らなくても楽しめるエンターテインメント作品を、
目指し、頑張ります。
最初の企画メモから足掛け6年。
コロナ禍の影響による制作スケジュールの変更から公開はほぼ2年先となりましたが、
何卒よろしくお待ち願います。
脚本・監督 庵野秀明
作品紹介
作品名 :『シン・仮面ライダー』
脚本・監督:庵野秀明
公開予定:2023年3月
詳細 :『シン・仮面ライダー』公式サイト
–{50周年の祭りはこの1年では終わらない}–
50周年の祭りはこの1年では終わらない
また、白倉氏は本日発表の3作品を総括した。
「仮面ライダー生誕50周年記念として本日発表した3作品だけということはありません。
今年の夏公開予定の映画にも現行作品の仮面ライダーセイバーや次回作の新たな仮面ライダーにも『50周年』という冠は付いていくものだと思います。ただ現行シリーズに基づかない3作品ということで本日発表させていただきました。
なぜこの3作品なのかというと、仮面ライダーの原作者・石ノ森章太郎先生が残された(仮面ライダーの)漫画作品は初代の仮面ライダー、そして仮面ライダーBLACKの2作品しかありません。
50周年を飾るにふさわしい作品として石ノ森先生が描かれた漫画に基づく仮面ライダーを完全オリジナルで描く『シン・仮面ライダー』、白石和彌監督による『仮面ライダーBLACK SUN』、そして石ノ森章太郎先生の原点に戻っての漫画化である『風都探偵』、この3本こそ50周年記念にふさわしいとチョイスさせていただきました。
コロナ禍等もありまして今日発表されたものだけでも随分先のことになってしまいましたが、逆に言いますと50周年というお祭りがこの1年では終わらないということです。
この3作品をきっかけとして益々仮面ライダーシリーズが盛り上がっていけるように心を尽くし手を尽くして参ります」
朝からのお祝いムード、そして次々と明かされる記念企画。
仮面ライダーファンにとって仮面ライダー生誕50周年にふさわしい驚きと喜びに溢れた1日、そして発表会見となったが、白倉氏の言葉どおりこの大きな祭りはまだまだ終わらない。
仮面ライダー大好きオジさん、特撮大好きオジさんとして活動する筆者としては今後の展開にも充分に注目していきたい。
(撮影・取材・文:いぢま。)