2016年公開映画『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』で映画初出演を果たした山田杏奈。その後、テレビ朝日ドラマ「幸色のワンルーム」で主演、TBS系ドラマ「MIU404」やテレビ朝日ドラマ「書けないッ!?~脚本家 吉丸圭佑の筋書きのない生活~」などにも間を置かず出演するなど、着実にキャリアを積んでいる。
2019年公開映画『屍人荘の殺人』や2021年公開映画『名も無き世界のエンドロール』 『哀愁しんでれら』などドラマ・映画問わず活躍の幅を広げ続けており、『樹海村』では主演を務めた。
元は「賞品のニンテンドー3DSが欲しかったから」といった理由で応募した「ちゃおガール☆2011オーディション」でグランプリを獲得したことが、芸能界入りのきっかけ。弱冠20歳の彼女が、少しずつ、しかし確実に人気女優の道を歩んでいる理由をご紹介したい。
ちゃおガールから女優へ。話題映画に山田杏奈あり
元はちゃおガールとして芸能界入りした山田杏奈。アミューズに所属して以降もしばらくはちゃおガールとしての活動を続けていた。ドラマ初出演となったのは2013年TBS系「刑事のまなざし」。その後2016年には映画『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』で映画初出演を果たし、2018年テレビ朝日ドラマ「幸色のワンルーム」でドラマ初主演となった。
「幸色のワンルーム」は漫画家・はくりによるWeb発信の漫画作品。2018年に山田杏奈・上杉柊平のW主演でドラマ化された。山田杏奈が演じるのは、両親から虐待を受け、学校でもいじめや性的被害を受けている主人公・幸(作中でつけられた偽名)である。
逃げ場のない生活で、自ら命を絶とうと川に入った瞬間に通称・お兄さんに助けられた。そのまま誘拐に近い形でふたりは共に暮らすことになる。かねてより幸の写真を撮り続けていたお兄さんは、瞬く間にストーカー&誘拐犯として世間を騒がすことに。しかし一転、家庭からも学校からも逃げられるワンルームを手に入れた幸は、さらにお兄さんに好かれることで生きる道を確保しようとする。
序盤で注目したいのは、第3話と第5話。前者では、幸が戸塚純貴演じる教師に拘束されてしまう展開となる。それまで、どこか本心を隠し空元気を見せていた幸が、隠し持っていた包丁で反対に教師を脅し返す様は迫真に迫っていた。山田杏奈がドラマ、映画ともに主演を務めるようになったのは、本作が放送された2018年頃から。それまで脇役やゲスト出演が多かった中で、少しずつ積まれた経験と磨かれた感性が一気に花開いたのだろう。
第5話では、廃業したホテルに幸とお兄さんで忍び込み、「ここで結婚式をしよう!」と持ちかける展開に。苦しいことから距離を置き、本当にふたりで逃げ切って一緒に暮らすことができたらーー当人同士、どこまで本気でそれを考えているか確信が持てない中で、たとえ”ごっこ遊び”でも幸せを誓い合うのは勇気が必要だろう。その気持ちを察知したのか、お兄さんは幸せを誓ってはくれない。溌剌と元気な少女から笑顔が失せ、瞳に暗い光を宿し全身で裏切られた悲壮感を表現する演技は、その後『哀愁しんでれら』や『樹海村』に続く布石を感じさせた。
2021年はテレビ朝日ドラマ「書けないッ!?〜脚本家 吉丸圭佑の筋書きのない生活〜」で娘の絵里花役を演じたほか、4月から放送のテレビ東京ドラマ「珈琲いかがでしょう」にも出演予定。映画では『名も無き世界のエンドロール』『哀愁しんでれら』『樹海村』など豊作で、2021年秋公開予定の「ひらいて」ではまたもや主演である。
–{次々と話題作に引っ張りだこ、山田杏奈の魅力}–
次々と話題作に引っ張りだこ、山田杏奈の魅力
映画『名も無き世界のエンドロール』で演じたのは、主演・新田真剣佑や岩田剛典の幼馴染であるヨッチ役。クラスや家庭になじめない3人が、ファミレスや海岸に集まってとりとめのない話をする。タバスコを大量にかけたスパゲティが好物だと言って美味しそうに食べる様子や、はたまた唐突に「忘れられるのが怖い、自分を覚えていてほしい」と語りだす迫真の演技など、妙にハマっていたのが記憶に新しい。
最後は悲しい運命をたどることになってしまうヒロイン・ヨッチ役とは対象的に、映画『哀愁しんでれら』で演じたのは主演・土屋太鳳の妹にあたる福浦千夏役。物語の大筋に絡むことはない、台詞も少なめの役だったが、反抗期に片足を入れつつも「家計大変なんでしょう、受験諦めるよ」と家族を気遣う様もみせるバランス感覚が絶妙だった。次第に狂気をみせるようになる田中圭演じる泉澤大悟に対し、「あの人、怖い」と恐怖を滲ませる演技についても、姿や表情なしに声色のみで表現しきってみせた。地に足ついた演技力とも言えるものが備わっており、制作陣も安心して任せている空気が感じ取れる。
主役を務めることとなった映画『樹海村』は、『呪怨』や『輪廻』など数多くの日本ホラー映画を手がけてきた監督・清水崇による作品。ホラー映画の主演とあって、これまでとは違った演技を求められる場面も多かったことだろう。とあるインタビューでは、「見えない力で壁に叩きつけられる時の声の演技が難しかった」と語っていた。納得のいく声がなかなか出ず、最後には「監督に無理やりお腹を押してもらった」と。女優としての根性やプロ意識が早くも根付いている証拠なのかもしれない。
2021年秋には、主演を務める映画「ひらいて」の公開も予定されている。今後ますますドラマや映画で見る機会が増えることだろう。次はどんな表情や演技を見せてくれるのだろうか。
(文:北村有)