乃木坂46、櫻坂46、日向坂46が共演していることで話題となっているひかりTVオリジナルドラマ「ボーダレス」は2021年3月7日より配信が開始された。
本記事の目次
『ボーダレス』とは?
『ストロベリーナイト』シリーズの誉田哲也による小説が原作の同作は、物語の内容はある事件をきっかけに交わるはずのない4つの物語が最終的に交錯し、ひとつの物語として収斂していくというミステリードラマ。企画段階では欅坂46とけやき坂46のメンバーが出演することが想定されていたが、グループの改名などもあり、最終的に坂道グループの垣根を超えたドラマ作品となった。
乃木坂46からは遠藤さくらと早川聖来、櫻坂46からは小林由依と渡邉理佐、森田ひかる、日向坂46からは齊藤京子と濱岸ひよりの計7人の坂道グループのメンバーがメインキャストを務めている。他にも、国生さゆり、押田岳、宮川一朗太、紺野彩夏、手塚とおる、濱津隆之、近藤雄介、阿部力、粟田麗、陽月華、尾崎明日香、アキラ100%、休日課長といった豪華俳優陣が出演。
坂道グループが共同で作り上げる初の本格ミステリーということで、アイドルファンのみならず、ミステリードラマ好きも観てほしい作品だ。
ストーリー
自称“何もかもが普通”な人生を送る奈緒(森田ひかる)は、進路希望用紙が書けずにいた。そんなとき、図書室でミステリアスなクラスメイトの希莉(齊藤京子)と急接近。密かにノートに小説を書いている彼女に誘われ、近所で起きた殺人事件の現場に足を運ぶことに。
山荘で働く父親が何者かに暴行される現場を目撃した芭留(渡邉理佐)と圭(濱岸ひより)の姉妹は、犯人に追われ裸足のまま暗い山道を逃げている。果たして、自分たちを追いかけているのは誰なのか。
音大受験に失敗した琴音(小林由依)だが、父の経営する喫茶店で働きながら、コーヒー豆屋で幼なじみの和志ともいい雰囲気。大学受験を控える妹の叶音(早川聖来)だけが気がかりだが、妹は反発してバンド活動に明け暮れる日々を送る。
雨の降りしきるなか、堅牢な屋敷のバルコニーに佇む結樹(遠藤さくら)。彼女が眺める庭門の先にあるものとは?
4つの平行した物語は、次第に交錯していく……。
(公式サイトより引用)
–{第1話・第2話のあらすじ&感想}–
第1話&第2話のあらすじ&感想
第1話のあらすじ
ある日、街の外れにある廃プール場で男性の遺体が発見されたところから物語は始まる。 平凡な人生を送ることに辟易していた奈緒(森田ひかる)は、図書室でクラスメイトの希莉(齊藤京子)と出会う。ミステリアスな希莉に惹かれた奈緒は、希莉から「放課後、一緒に行きたいところがあるんだけど」と誘われ、殺人現場を訪れるのだが──。
第2話のあらすじ
山荘の管理人をしている父親のもとを訪れた芭留(渡邉理佐)と圭(濱岸ひより)の姉妹。その日の夜、物音が聞こえ芭留が目を覚ますと、父親が謎の男に暴行されている現場を目撃する。しばらくは息を潜めていた2人だったが、男に見つかってしまい山荘を脱出し山道へと逃げることを決意。一方で悪趣味な落書きを教科書にされた奈緒は、その犯人が希莉ではないかと疑いをかける。果たして落書きの犯人は希莉なのか──。
第1話&第2話の感想
第1話では奈緒と希莉の関係性を中心として、ある殺人事件をきっかけに、奈緒のありきたりな日常に小さな歪みが生じ始めていることが作中を通して描き出される。そして14日放送された第2話でもまた奈緒と希莉を中心に描かれていくが、新たに芭留と八辻圭の姉妹がメインパートとして大きく割かれており、じわじわと4つの物語の繋がりが明らかとなっていく。
坂道グループはこれまでも密室ミステリーや学園ドラマなど多くのドラマに出演してきたが、ここまで緻密に描かれた本格ミステリー作品は初めて。初回から森田や齊藤の演技を中心に、アイドル主演映画らしからぬクオリティの作品に仕上がっていたというのが率直な感想だ。
今回が初の演技となる森田は、「私は物語の主人公になんてなれない」と作中で語るようにいわゆる平凡な学生生活を送る女子高生の奈緒を演じている。第1話と第2話では物語の中核を担う役どころだが、日常の中で見せる些細な表情の機敏や、奈緒が教科書に落書きがされているのを発見した際の恐怖に怯える演技は実に自然体。初演技ということで少々心配していたのだが、2回の放送を見てその不安はすでに払拭された。女優としてのポテンシャルの高さを感じさせられたとは大げさではないだろう。
また、物語のキーとなっている希莉役の齊藤の演技は見ていて非常に安定感があった。希莉と奈緒が殺人現場へと訪れた際、「犯人はどういう気持ちだったんだろう」「皮膚がめくれて肉が飛び散って骨が砕けて」と狂気的なセリフを言いながら奈緒に詰め寄る希莉の演技力には、「Re:Mind」(テレビ東京)や」「DASADA」(日本テレビ)での豊富な経験が活かされていたように思う。
今回から芭留と圭の姉妹の過去も徐々に明かされ、謎の男から逃げる緊張感を抱えながらも、随所で姉妹愛が感じられた回でもあった。演技経験のある渡邉が、未経験の濱岸をリードするという関係性が劇中の登場人物にも反映されており、姉御肌な渡邉には適任な役柄だったのではないだろうか。
第3話では喫茶店で働く琴音(小林由依)とバンド活動をしている叶音(早川聖来)の姉妹の関係性が明かされていくようだ。そして、第1話冒頭血まみれで映し出された結樹(遠藤さくら)が物語とどう関わってくるのかということも気になるところである。
–{第3話のあらすじ&感想}–
第3話のあらすじ&感想
第3話のあらすじ
音大受験に失敗し、父の経営する喫茶店で働く琴音(小林由依)は、高校卒業を控える妹の叶音(早川聖来)が気がかり。姉に反発しバンド活動に明け暮れる叶音は、ある日、ガールズバーに入っていくところを姉妹の幼なじみの和志に目撃されてしまい……。
学校では希莉が行方不明になり、警察を巻き込む大騒動。そんなとき、奈緒の携帯に「今から言う所にひとりで来れる?」と希莉からの連絡が入る。
第3話の感想
これまで毎週物語が大きく動いてきたが、第3話ではそれぞれのストーリーが少しずつ進展していく形で、第2話のラストで犯人にから追われていた希莉のその後が明かされた。実はその希莉のエピソードがあまりにも衝撃的であり、本話のハイライトとなっている。
今回話のメインとなったのは奈緒(森田ひかる)&希莉(齊藤京子)と琴音(小林由依)&叶音(早川聖来)の2組。何者かに捕まり行方不明となった希莉は、奈緒に今いる場所へ1人でくるように伝える。奈緒は指示された場所へ向かうと、そこはあるアパートの1室だった。そこで待ち受けていたのは奈緒と希莉の担任の木下先生(阿部力)だった。木下先生から明かされた衝撃の事実。実は木下は希莉のストーカーをしており、「オマエヲコロス」と教科書に書いていた犯人も彼であることが明かされた。涙ながらに「僕のことは嫌いにならないで」と希莉に懇願してくる先生に対して一切の感情の揺れを見せず、淡々と見つめている希莉。無事に開放された彼女は小説のためストーカーの心理と警察の事情聴取を知ることができたと一連の事件を楽観的に振り返る。希莉の純粋なまでの好奇心はときどき恐怖すら覚えるが、それだけ小説にかける思いが強いということだろう。
そして、琴音&叶音姉妹の関係が崩れ始めた過去のエピソードも明かされた。音大受験に2度も失敗した琴音。それを見かねた叶音はピアノを辞めることを決心し、「音楽に苦しめられたくない」「お姉ちゃんみたいになりたくない」と琴音に対してキツイ言葉を投げかける。しかし、それは家族のことを思うからこその叶音なりの優しさでもあった。2人の関係は修復されるのか、この姉妹が殺人事件とどのようなつながりがあるのだろうか。
グループとして「徳山大五郎を誰が殺したか?」(テレビ東京)や「残酷な観客達」(日本テレビ)、個人としても「女子高生の無駄づかい」(テレビ朝日)や映画『さくら』など多数の作品に出演してきた小林。自然な演技で物語へも溶け込んでおり、姉役もぴったりだ。
本作でようやくクローズアップされた早川にも注目したい。「Out of the blue」でセンターを務めるなど4期生のなかでも活躍目覚ましい彼女だが、ミュージカル「美少女戦士セーラームーン2019」や舞台「スマホを落としただけなのに」、dTVオリジナルドラマ「サムのこと」など実はすでに演技経験が豊富な彼女。琴音に対して涙を滲ませながら言い返すシーンでは普段の元気一杯な彼女からは想像できないシリアス空気感を演出していた。
本編は偶然店を訪れた中島和志(押田岳)に叶音がガールズバーで働いているところを見つかってしまうところでエンディングを迎えた。叶音はどうなってしまうのか、そして事件の真相へと着実に近づいている奈緒と希莉の運命は。
–{第4話のあらすじ&感想}–
第4話のあらすじ&感想
第4話のあらすじ
父親を襲ったある男から逃げていた芭留と圭は、父の安否を確認するため山荘へと戻る。一方、叶音がアルバイト先であるガールズバーに偶然和志が訪れ、その帰り道叶音がアルバイトをする理由を明かす。奈緒と希莉は事件現場で拾ったカフスボタンが犯人の狙いだと気づき……。
第4話の感想
希莉(齊藤京子)が事件現場で拾ったカフスボタンを犯人が探していることはすでに分かっていたが、ここでようやくそのカフスボタンの模様が、松宮製薬と呼ばれる会社のものであることに気づく。2人は調査のために会社を訪れるのだが、アポイントがないという理由で警備員に追い払われてしまう。しかし、そこで警備員と揉めている2人に視線を向ける怪しい女性がいた。希莉はその女性が同社の社長秘書であることを突き止める。
事件の真相へ着々と近づいている一方で、奈緒(森田ひかる)への思いを独白するという2人の友情関係が醸造されていることを感じさせる描写が印象的だったラストシーン。作中で友情関係が育まれていくのと同時に、あどけなさが残っていた第1話から回を経て演技面でも2人の成長を感じさせた。
一方で芭留(渡邉理佐)と圭(濱岸ひより)の姉妹山荘へと戻り、あの夜の出来事を思い出す。父親を襲ったある男が口にしていた屋敷に何かあるのではないかと疑いをかける。ここにきて「松宮」と「屋敷」という今後へと繋がる重要なキーワードが出そろった。第5話以降一気に物語が進展していくことだろう。第4話時点では渡邉理佐と濱岸ひよりに与えられたセリフ量はまだまだ少ないが、微細な表情の変化を通じて、シリアスな空気感を上手に作り出しており、特に濱岸の絶妙な表情には思わずシビレてしまった。日向坂46での笑顔が印象的な妹キャラという立ち位置も加味されて、表情だけで魅せる演技はより新鮮に感じられる。
さらに今回、叶音(早川聖来)がガールズバーで働いている理由が明らかとなった。これまであまり口を開かない叶音が和志(押田岳)に対しては東京に行ってプロを目指すと本心を打ち明ける。それは家族にお金の面で迷惑をかけたくないがゆえの行動でもあった。それぞれ何らかの事件が起こっているが、琴音(小林由依)&叶音パートでは家族間のしがらみにフォーカスされるばかりでいまだ平穏なのが少々不気味ではある。
ついに第5話では遠藤さくら演じる松宮結樹が登場。4つの物語が交錯するその先には何が待っているのだろうか。次回からは大きく物語が進展していきそうで楽しみだ。
–{第5話のあらすじ&感想}–
第5話のあらすじ&感想
第5話のあらすじ
体が弱く屋敷の外に出ることができない松宮結樹(遠藤さくら)には、密かな楽しみがあった。それは、夕刻に決まって庭先を通りかかる、美しい女性・篠塚麻耶(ルウト)を眺めること。いつしかふたりは言葉を交わし、束の間の逢瀬を楽しむようになるが、母・寛子(国生さゆり)から「あの方と会うことは金輪際許しません」と叱りつけられてしまう。果たして、麻耶は何者なのか……?
第5話の感想
『ボーダレス』第5話では、これまで謎に包まれていた遠藤さくら演じる結樹が主軸となって物語が展開していった。
乃木坂46ファンはようやくといった感情だろうか。乃木坂46の次世代エースとして女優・モデルなど多方面で活躍し続ける遠藤がどのような演技を見せてくれるのか、放送前から注目を集め、放送開始時にはラジオ番組『らじらー!』への出演したことも影響しTwitterにて「#さくちゃん」がトレンド入りを果たすなど盛り上がりを見せていた。
遠藤が演じるのは生まれながらにして身体が弱く外出をしたことがない令嬢の結樹。父親役に手塚とおる、母親役には国生さゆりと非常に豪華な俳優陣が脇を固めていることでも話題となっていた。
遠藤が初主演を果たしたdTVオリジナルドラマ『サムのこと』でも感じたことだが、彼女には人を惹きつける魅力があるように思う。今回もまた彼女が纏う空気感にどんどん引き込まれていき、放送が終了するまで一挙一動に夢中になっていた自分に気づいた。
なかでも麻耶との愛を確かめ合うシーンは、美しくも官能的であり、遠藤の新たな一面を引き出していた。また、麻耶が真相を告白し、結樹の父親にナイフによって刺される第1話の冒頭へとつながる印象的なシーンでは、感情を爆発させ叫喚する演技を披露。令嬢という役どころを演じる遠藤は新鮮だったが、控えめで独特の空気感を持った遠藤のイメージとぴったり重なっていて、これ以上の適役はないだろうとそう思わされた。
これから彼女はどのような演技を見せてくれるのか、非常に楽しみな存在だ。
–{第6話のあらすじ&感想}–
第6話のあらすじ&感想
第6話のあらすじ
叶音のガールズバー勤務を知った琴音は、姉妹の関係に悩みながら久々にふたりきりで会話をすることに。
圭と芭留は山を降りる決意をしたが、芭留が突然の高熱で倒れ込んでしまう。
カフスボタンが松宮製薬のロゴだと突き止めた奈緒と希莉のもとには、脅すような尾行写真が送られていた。
再び松宮製薬に足を運んだふたりの前に、秘書の宮部真知(陽月華)と副社長の松宮寛子が立ちはだかる……。
第6話の感想
松宮結樹(遠藤さくら)の物語が描かれた第5話。続く第6話ではこれまで通り3つの物語が少しずつ進んでいった。
今回の見どころは何と言っても琴音と叶音の市原姉妹のわだかまりの原因が示されたことだろう。叶音がピアノを辞めると琴音に伝えてから、2人の関係は微妙になってしまっていた。叶音が「なぜピアノを辞めたのか」「なぜ東京へ行きたいと願うのかということがこれまでは不明のままだったが、ようやく明かされる。その理由はというと和志(押田岳)への恋心だった。
いつも琴音ばかりで、和志に振り向いてもらえない叶音。決して手に入らないものを側に抱えながら生きていくことはいつも難しいものだ。「お姉ちゃん、羨ましいのは私のほうだよ」と叶音がひとり涙を浮かべるシーンはジンと来るものがあった。姉妹の関係、それも恋愛という日常的な要素が描かれた今回は登場人物の内面に迫る重要な回だったように思う。
さらに、奈緒と希莉の2人にも大きな進展がみられた。寛子によって松宮製薬に呼び出された2人は、大きな手がかりと言えるものは得られずも、地道に犯人へと近づいていく。そこでたどり着いたのが松宮製薬社長の重信だった。しかし、重信は犯人に殺された被害者であることが判明する。
「もし私達がもっと近づける場所があるなら行ってみたい」ーー奈緒のこの言葉には第1話からの大きな変化が見られた。奈緒がここまで大胆な思考でいられるのも希莉との出会いがそうさせているのだろう。
それにしても、寛子演じる国生さゆりの演技は格別だった。寛子の絶妙な嫌らしさは、彼女の丁寧な演技によって引き出せされたものだろう。同じアイドルを出自に持つ国生との共演は、坂道メンバーにとって刺激となっているに違いない。
最終話が迫ってきた『ボーダレス』。重信が犯人ではないとするのならば、一体誰が犯人なのだろうか。次回も見逃せない。
–{第7話のあらすじ&感想}–
第7話のあらすじ&感想
第7話のあらすじ
殺人遺体は松宮製薬の社長・松宮重信(手塚とおる)と判明した。
ネットでは妻の寛子(国生さゆり)が真犯人ではないかと噂が流れるなかで、奈緒(森田ひかる)と希莉(齊藤京子)は松宮家の屋敷の調査を開始する。
叶音(早川聖来)は、思いを寄せる和志(押田岳)から、ある日ショッピングに誘われ、姉の琴音(小林由依)に誕生日プレゼントを渡すことになるのだがーー。
再び山道を下る、芭留(渡邉理佐)と圭(濱岸ひより)のもとに近付く車のエンジン音に気づく。それは殺人犯なのか、それとも……。
第7話の感想
全10回を予定しているボーダレスは第7話を迎え佳境を迎えようとしている。今回はこれまで別々の世界軸として描かれていた4つの物語がついに交錯することとなった。待ちわびた坂道メンバーの集結にSNSでも盛り上がりを見せていた。
叶音の和志への思いが明らかになった前回。今回は叶音が和志へ直接気持ちを伝える場面が描かれた。間接的には好きアピールをしていた叶音に対して、まったく気付く気配のない和志に歯がゆさを感じながらも、叶音のモヤモヤが少しでも晴れたのかと思うとこれで良かったのかなと思える。
そんな最中、帰宅した叶音の父親が連れてきた芭留と圭の姉妹。山中を下っていた2人は叶音の父親と出会い助けられていたのだった。近づいてくる車のエンジン音を察知し、圭が姉を守るため気丈に振る舞う場面。視力が悪いながらも、意を決し特技の空手で対抗しようとする圭の強さとともに、圭にとって芭留がどれだけ大切な存在であるかが示された回でもあった。
松宮家の屋敷を訪れていた奈緒と希莉は、その帰り道に偶然犯人の姿を見つけ追いかける。行き着いた先はなんと琴音と叶音の父親が経営する「カフェ・ドミナン」だった。これまで別々の物語として描かれていたものが全て一直線上に繋がっていく。「ボーダレス」、つまりは境界がないということだが、4つの物語がひとつの物語へと収斂していく展開はまさにタイトルの意味するところである。
坂道メンバーの集結に盛り上がりを見せた第7話。犯人を目の前にして、彼女たちはどう行動をとるのか。早くも次話が待ち遠しい。
最後に少し余談を。ここにきて今更ではあるのだが、本作は本編の後に放送されているメイキング映像がおすすめだ。撮影の合間や共演者との会話など、坂道ファンならば見ておきたい映像が目白押しとなっている。坂道グループ同士の共演はそうあるものではないので、ぜひチェックしてみては。
–{第8話のあらすじ&感想}–
第8話のあらすじ&感想
第8話のあらすじ
山道で市原姉妹の父親である静男(宮川一朗太)に助けられた芭留(渡邉理佐)と圭(濱岸ひより)は、喫茶ドミナンの居住スペースで琴音(小林由依)の手当てを受けていた。それと時を同じくして、ふたりを追いかけてきた黒ずくめの男が店に侵入し、叶音(早川聖来)の首筋にナイフを突き立てながら「女を出せ」と声を上げる。奈緒(森田ひかる)と希莉(齊藤京子)が追い求めてきた黒ずくめの男の目的とは果たして何なのだろうか……。これまで明かされなかった犯人の正体とその目的が明らかとなるーー。
第8話の感想
奈緒と希莉、芭留と圭、琴音と叶音、そして結樹(遠藤さくら)……これまで分断されていたそれぞれの物語が黒ずくめの男という共通の人物を通じて交わり始めた第8話。犯人の正体は第5話で結樹と恋仲になっていたことが描かれていた篠崎麻耶(ルウト)であることが判明した。
ある女を探し回っていた黒ずくめの男は、芭留と圭を追いかけ喫茶ドミナンにたどり着く。そこで男は叶音を人質にとり、首元にナイフを突き立てる。いつ殺されるや分からない緊張感のある展開に固唾を呑んで見守ることしかできない。またもう一方で展開されている芭留と圭の姉妹愛のエピソードとの対比がより緊張感を増幅させていた。
そんな中、少しの動揺も見せず堂々たる佇まいの希莉。男の正体が女であったことを見破り、目的を明らかにしたのも彼女だった。ナイフを持っている相手に対しても冷静かつ饒舌に話を進めていく希莉の姿は探偵ドラマを見ているようでもあった。齊藤京子といえば声質が魅力のひとつだが、セリフが多い役どころは非常に適任のように感じる。
今回は濱岸ひよりの活躍が目立った回でもあった。店での異変に気づくやいなや、自分の責任だと感じた圭は「私が行く」と男と対峙することを決意。父親と姉をバカにされ涙ぐみながら男に反論するシーンはこれまでにない長台詞となっていたが、濱岸の感極まる演技に心を打たれてしまった。
和志(押田岳)と琴音が男に傷つけられ絶望を極めるなか、芭留と圭がある作戦を立てていた。「消せーっ!」 圭の掛け声を合図に店の電気が消え暗闇に包まれる。芭留と圭はこの状況をどう打破するのだろうか。次回は2人が父親から教わった武士道が活かされる回となりそうだ。
–{第9話のあらすじ&感想}–
第9話のあらすじ&感想
第9話のあらすじ
黒ずくめの男の正体は松宮結樹のかつての恋人・篠塚麻耶(ルウト)であることが明らかとなった。圭(濱岸ひより)は父から教わった空手を駆使してひと蹴で犯人を気絶させることに成功。叶音(早川聖来)をかばう形で背中を刺され意識を失っていた琴音(小林由依)は病院へと搬送される。芭留(渡邉理佐)と圭は警察から父親の居場所を聞き、入院している病院を訪れることに。犯人は逮捕され事件は解決したかに思われたが、奈緒(森田ひかる)と希莉(齊藤京子)はこの事件に少しの違和感を覚えていた。松宮社長を巡る一連の事件の真相とはーー。
第9話の感想
4つの物語がそれぞれオムニバス形式で進行していった坂道グループ主演の本格ミステリードラマ「ボーダレス」がついに佳境。最終回手前となる第9話では家族の絆が改めて再確認させられると同時に事件の真相が明かされた。
犯人によって背中を刺され意識不明の琴音、同じく気絶させられた和志……状況は悪くなっていく一方だったが、芭留と圭の姉妹はある作戦を立てていた。圭の「消せーっ!」の掛け声を合図に電気が消える。その合図とともに父親から教えられた空手道を駆使して、犯人相手に立ち向かっていく圭。犯人の攻撃を交わすと顔面に蹴りを食らわせ、犯人は気絶してしまうのだった。なんともあっさりな結末ではあったのものの、濱岸ひよりの空手を駆使しした圧巻のアクションは非常に見応えのあるシーンになっていた。犯人を気絶させた後に笑顔で見せた「楽勝!」の一言は日向坂46ファンにはニヤッとしてしまうカットだったのではないだろうか。
これまで琴音との不仲が続いていた叶音は、自分を庇ってくれた姉に責任を感じていた。「お姉ちゃんだけが私のために命使うのはおかしいじゃん!」と涙を滲ませながら話す叶音に対して、「しょうがないじゃん。そういう風に身体が動いちゃったんだから」と返す琴音。家族が家族を助けるのに特別な理由はいらないという琴音の言葉は胸にくるものがあった。
松宮製薬のビルの無機質な部屋に監禁されている結樹の姿が映し出されると、過去へと時間は過去へと巻き戻される。そこで明かされる衝撃の事実。松宮社長を殺した犯人が篠塚麻耶ではなく結樹だったことが明らかとなる。かつて愛し合っていた麻耶と結樹。摩耶は祐樹を愛するがゆえに、自ら犯人となることで祐樹を助けることを選んだのだった。2人はお互いに心から愛し合っていただけなのに、なぜ悲しい結末を辿ることとなったのだろうか。愛しながらもすれ違い続ける2人の恋模様に心が痛くなった。
「私は、私たちは、みんなそれぞれが境目のない無数の物語のなかに生まれた主人公だ。だから、前を向いて先へと進もう。物語は続いていく」
奈緒が最後に語ったこの言葉は「ボーダレス」という作品の面白さであり本質が表われている部分だろう。それぞれが小説の中の主人公のようであるからこそ、前を向いて進んでいこうというポジティブなメッセージ(というより視点)は、先行き不安な現代を明るく照らしてくれる一筋の光のようにも感じられた。
次回予告を見る限りでは、第10話では結樹メインの物語が展開していくとのこと。麻耶が犯人となったことを知った彼女はどう行動するのか。過去の過ちを悔やみ生きていく結樹の苦悩が描かれることとなりそうだ。
–{第10話のあらすじ&感想}–
第10話のあらすじ&感想
第10話のあらすじ
とある田舎の児童養護施設で働く松宮結樹は、いつもひとりで本を読んでいる少女・千里に昔の自分の姿を重ね合わせていた。
そんなある時、施設にへやってきた新任調理師の井川。千里は井川に対して徐々に心をひらいていく。
結樹は井川の自分への気持ちに心が揺れるが、過去に犯した過ちと麻耶への思いに葛藤する。交錯した少女たちの物語はどのような結末を迎えるのか。衝撃のエピローグが開幕する。
第10話の感想
第9話で本作の物語は一応の完結を迎えたが、エピローグとして松宮結樹(遠藤さくら)のその後の物語が描かれた第10話。結樹は過去をどう乗り越え、成長をしていくのか。遠藤さくらメインのエピソードとあって、予告段階から楽しみにしていた。
あの事件の後、田舎の児童養護施設で働くことになった結樹。あれから何年の月日が経過したのか分からないが、彼女の心のなかにはあの日自らの手で犯した過ちが心の中に染み付いている。過去の過ちをひとりで背負いながらも、必死に今を生きようとする結樹の姿は見ていて心が苦しい。
本話で遠藤さくらは2度目の本格出演。母親に麻耶が犠牲になったことを明かされた際に見せた迫真の演技には思わず見入ってしまった。乃木坂46の新シングル「ごめんねFingers crossed」では2度目のセンターに選ばれ注目を集めている遠藤。今後、女優として活躍する機会が増えていくことは確実だろう。
結樹の物語は麻耶と出会うところで終了となるのだが、実はこの物語は希莉が作り上げた舞台「初恋」の中の物語というオチ。まさかの展開に驚かされた視聴者も多かったのではないだろうか。結樹があのあとどのような人生を歩むことになるのかは誰にも分からないが、希莉が言うようにハッピーエンドで締めくくる人生であってほしいと切に願う。
全10話が終了し完結した「ボーダレス」。坂道グループ合同のドラマということでも大きく注目を集めたが、驚くべきはストーリーや映像面でのクオリティの高さ。過去にも坂道グループとして数々の主演ドラマに出演してきたが、ここまで本格的なドラマ作品は今までなかった。それによって普段は見ることができないメンバーの演技や表情が引き出されたのも大きな収穫だったのではないだろうか。アイドルドラマと思うなかれ、むしろ坂道ファン以外の方に積極的におすすめしたいドラマだ。
(文:川崎龍也)