「モコミ〜彼女ちょっとヘンだけど〜」全10話のあらすじ&感想 |いちばん成長したのはお母さんかもしれない

国内ドラマ

ドラマ「モコミ〜彼女ちょっとヘンだけど〜」が2021年1月23日(土)より放送開始され、好評となっている。

小芝風花が演じる萌子美(もこみ)の成長、そして彼女を見守る家族の絆と再生を描く物語。しかし萌子美は、ヌイグルミや石や植物など、感情を持たないとされているモノの気持ちがわかってしまうという繊細な“感覚”の持ち主で、周囲から変に思われていた。

もくじ

・第1話あらすじ&感想

・第2話あらすじ&感想

・第3話あらすじ&感想

・第4話あらすじ&感想

・第5話あらすじ&感想

・第6話あらすじ&感想

・第7話あらすじ&感想

・第8話あらすじ&感想

・第9話あらすじ&感想

・第10話あらすじ&感想

・作品情報へ

第1話あらすじ&感想

第1話ストーリー

小さな工場で不良品のチェックをしている清水萌子美(小芝風花)。仕分ける速度が他の従業員に比べて速く、黙々と仕事をしていた。

ある日のこと。萌子美は他の従業員が仕分け終わった部品に不良品があるのを見つけ、思わず「その子、ケガ――」と言いかけてしまう。実は萌子美には、感情を持たないとされているモノの気持ちがわかってしまうという繊細な“感覚”があったのだ。幼い頃はこの感覚を隠すことが出来ず、モノの気持ちを“代弁”することで、周囲との間に波風を立てることも少なくなかった。

工場でもどこか周りから浮く萌子美は、工場内の高い位置にある窓を見て、突然チーフ従業員に、あの窓を掃除した方がいいのではないかと言い出す。しかし清掃業者が当分来ないとの返事に、思わぬ行動に出てしまう。そのことが結局、周囲に迷惑をかけてしまうのだが…。

萌子美の母、千華子(富田靖子)は娘が工場で問題を起こしたと知らされ、頭を痛める。萌子美がほかの子どもたちとどこか違うことに長年悩み、何事もなく暮らしてほしいと願いつつ、それすら叶わないことに不安を抱き続けていた。それでも夫の伸寛(田辺誠一)や、萌子美の兄で長男の俊祐(工藤阿須加)とともに、自分なりに娘をサポートしてきたのだった。

数日後、萌子美は22歳の誕生日を迎えるが、ある理由から工場に行きたくないと言い出す。この日だけ穏便に過ごしたいと、千華子は娘の言うことを聞くことに。その夜、家族揃って萌子美の誕生日のお祝いをしていると、訪問者がやって来る。それは…。

第1話感想

物の声が聞こえる不思議な性質をもった萌子美(モコミ)。小さな頃、お友達の持ち物であるジェルの声が聞こえるなどと口にし、周りから少し遠巻きに見られる存在だった。工場でネジの検品作業を担当している現在も、ネジや窓の声が聞こえるらしい。その性質がなかなか周囲に受け入れられず、苦しむ様子が描かれている。

友人や職場の皆に理解されないのは仕方のないことかもしれない。ただ、家族の理解や支えが得られない現実は、なかなか受け入れがたいものではないだろうか。富田靖子演じる母親はとくに、「どうして嘘をつくの?」「どうして余計なことをするの?」「工場に迷惑をかけることだけはやめてね」などと繰り返すーーモコミがどんどん心を閉ざしていくのも分かる気がする。バイトを辞めてしまったのも、モコミのせめてもの抵抗ではないだろうか。

小芝風花の演技はとても繊細だ。「美食探偵」の小林苺役が記憶に新しいところだが、表情やパッと見たときの印象、どれをとっても「人が違う」ように見える。モコミを演じるときの視線、声色、ちょっとした所作からも目が離せない。少し不器用なモコミが、この先どのように自分や家族と向き合い、自分らしい人生を進んでいくのか見守っていきたい。

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–{第2話あらすじ&感想}–

第2話あらすじ&感想

第2話あらすじ

清水萌子美(小芝風花)は同居を始めた祖父・須田観(橋爪功)にずっと気になっていることを相談。萌子美の母・千華子(富田靖子)は自分の父親とはいえ、わだかまりのある観に萌子美が頼るのを見て複雑な気持ちになる。

千華子はさらに、萌子美の言った「窓が泣いている」という言葉が引っかかっていた。千華子は萌子美が幼い頃から、他の子とは違う言動を見せるたび心配を募らせてきたのだ。

萌子美が観に打ち明けたのは、勤める工場の窓のことだった。窓が泣くのを見たくないという萌子美の気持ちを観はあっさりと受け止め、「俺に任せろ」と孫を安心させる。

萌子美は通勤の行き帰りに、兄・俊祐(工藤阿須加)が父方の祖父から引き継いだ花屋に立ち寄るのを楽しみにしていた。この花屋で花たちとの会話をするのは、学校を休みがちだった小学生の頃から萌子美にとって心安らぐ時間だった。萌子美は俊祐が初めて仕入れたというバラを見て、顔を曇らせる。あまり長くもたないことに気づき、そのことを兄に告げるが…。

ある夜のこと。萌子美は家族に工場でのアルバイトを辞め、以前からやってみたいことに挑戦したいと伝える。しかし千華子は、人と接するのが苦手な萌子美にはいまの仕事が合っていると、娘の話を聞こうとしなかった。萌子美の父・伸寛(田辺誠一)はふたりのやりとりを聞いて、複雑な表情を浮かべる。実は伸寛にも家族に話があって…。

第2話感想

フードデリバリーの仕事をしている岸田佑矢役の加藤清史郎、彼はかつて「こども店長」として一躍有名になった。今で言う寺田心のような存在だったろう。パッと見ただけでは、岸田佑矢役を演じる彼にこども店長の面影は感じられない。すっかり成長し、ひとりの俳優として活躍している。このドラマのひとつの見所かもしれない。

工場の窓がずっと泣いていることが気がかりだったモコミ。急きょ自宅に転がり込んできたおじいちゃん(演:橋爪功)の尽力により、汚れて悲しんでいた窓が綺麗になった。そのおかげで喜ぶ窓の弾んだ声は、モコミにしか聞こえないのだ。それがとても寂しく感じられてしまう。

モコミは花の声も聞くことができる。兄が働く花屋に立ち寄るたび、元気な花と元気のない花それぞれの声を聞けるのだ。見た目にはとても元気で長持ちしそうな花であっても、モコミが丁寧に耳を傾けることで、本来の姿が見えてくる。

そのほか大勢と違う力を持っていたり、ちょっと変わったことを口にしたりするだけで、どこか距離を置かれてしまう世の中だ。少数派は常に肩身の狭い思いをしなくてはならないのだろうか?

せっかくやりたいことを見つけたモコミ。勇気を出して「工場を辞めて違うことをしたい」と家族に伝えるも、遠回しに「あなたには無理ではないか」と諭され落ち込んでしまうーー彼女が自分らしい人生を生きていくには、もう少し勇気を持って自己開示する必要があるのかもしれない。

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–{第3話あらすじ&感想}–

第3話あらすじ&感想

第3話あらすじ

清水萌子美(小芝風花)は念願が叶い、兄・俊祐(工藤阿須加)が経営する花屋で働き始める。しかし、なれない作業が多くて失敗ばかり。1人で店の留守番を頼まれた際も、イヤホンを拾った青年(加藤清史郎)を見かけてつい追いかけ、予約の花を受け取りに来た客の対応が出来ず、迷惑をかけてしまう。
 
俊祐はバイトの依田涼音(水沢エレナ)から、従業員を増やすなら時給を上げてほしいと不満を言われる。それでも、萌子美が自分から初めてやりたいと言い出したことだけに、兄としてその思いを大切にしたかった。一方、母・千華子(富田靖子)は人とコミュニケーションを取るのが苦手な萌子美に客商売が務まるとは思えず、工場のアルバイトに戻ることを内心望んでいた。
 
そんな千華子と夫・伸寛(田辺誠一)の間には微妙な空気が漂ったままだった。千華子は伸寛が相談もなしに経営する税理士事務所を閉め、自宅でのリモートワークに切り替えたことを納得していなかったのだ。伸寛が家にいるようになったのを境に、千華子は夫の昼食を作らないようになる。千華子の父で最近娘一家と同居を始めた須田観(橋爪功)は、千華子のふるまいにあきれてしまう。
 
萌子美は涼音からフラワーアレンジメントのやり方を教わる。常識にとらわれることなく、花が望んだところに配置する萌子美だが、涼音はアレンジメントのルールに従い、手直し。伝えたい思いはあるものの、それを言葉にできない萌子美だった。その矢先、萌子美は配達で手がいっぱいの俊祐や涼音の代わりに、1人で店の戸締りをすることに。閉店の準備をしていると、新規の客が至急フラワーアレンジメントをしてほしいと頼んでくる。店にはほとんど花が残っておらず、萌子美はどうすべきか悩むが…。

第3話感想

晴れて花屋でアルバイトできることになったモコミ。花の声を聞くことのできるモコミにとって、これほどの天職はないんじゃないだろうか?小さな頃から抑圧されることの多かったであろう彼女が、少しずつ自分の気持ちや感情を言葉にし、自分らしく生きていこうと努力する様は見ていて胸にくるものがある。

モコミの母は、なかなかそんな娘の様子を受け入れられないようだ。花屋の仕事自体は応援したいようだが、何かトラブルがあったときのため、元の工場に戻れる手筈を整えているという。見かねたおじいちゃんが「趣味でもなんでも始めれば、いちいち口を出さなくなるんじゃないか?」と諭すシーンがあるのだが、この世のすべての”子離れできない親”に聞いてほしい台詞ではないだろうか。

フードデリバリーの佑矢が落としてしまったイヤホンをたまたま拾っていたモコミ。今度会ったときに渡そうと小袋に入れて準備している様や、彼を見かけるたびに渡そうとしては失敗し落ち込む様を見て、なんとなく体の軸が定まらないような心地にさせられる。このドラマのテーマとは外れるかもしれないが、恋心の芽生えや今後の展開についても期待せざるを得ない。

モコミがはじめてお客様用に作ったフラワーアレンジメントは、それはそれは華やかで、店頭を明るく飾っていた。自分の気持ちや本音を、はっきり言葉にするのが苦手なモコミ。そんな彼女が、花と対話しながら作り上げるアレンジメントには艶があらわれる。彼女の笑顔が見たいがために、次の放送を楽しみに待つ自分がいる。

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–{第4話あらすじ&感想}–

第4話あらすじ&感想

第4話あらすじ

清水萌子美(小芝風花)は店の近くで見かける青年(加藤清史郎)にやっと拾ったイヤホンを渡すことができた。思わずイヤホンが落とし主の元に戻りたがっていたと言ってしまうが、青年は萌子美の発言を何の抵抗もなく受け入れる。清水俊祐(工藤阿須加)は妹がナンパされているのではないかと心配するが、萌子美に「自分から声をかけた」と言われ、驚くのだった。
 
その後も青年は萌子美に会いに来る。萌子美は胸をときめかせながら、名前も知らない彼と交流を重ねていく。
 
そんなある日、萌子美にフラワーアレンジメントを注文した石野伸司(庄野崎謙)が再び店に現れる。店長を務めるドーナツ屋に定期的にアレンジメントを配達してほしいと頼まれ、うれしい萌子美だったが、今後は俊祐がアレンジメントを手がけることに。まだまだ学ぶ身だと兄に言われ、萌子美は納得するが…。
 
一方、萌子美の家では両親の仲がますますこじれていた。伸寛(田辺誠一)は千華子(富田靖子)にお弁当を作ってもらうことを諦め、カップラーメンをコンビニで購入し昼食にしていたが、そのことが思いもよらぬ事態に発展。ついに子どもたちの前で言い争いが始まる。すると、激高した伸寛が千華子の父・須田観(橋爪功)の過去の不祥事を持ち出し、妻を傷つけるようなことを言ってしまう。
 
子どもたちに観の過去を知られ、ショックを受ける千華子をなぐさめる俊祐だったが、その後、意外な一面を見せる行動に出る。
 

第4話感想

やっとイヤフォンを返せてよかったねモコミ……!と、まるで母親か叔母のような目で見守ってしまうモコミ第4話。前話から少しずつ恋の兆しが見えはじめている。人との触れ合いにより心を開き、だんだんと自分の気持ちを素直に表情にあらわすモコミを見ていると、うれしくてたまらない。それにしても、元・こども店長の加藤清史郎くん、本当にカッコよく成長しましたね……。

モコミが少しずつ自分らしい暮らしを見出していくなかで、モコミ以外の家族の綻びや闇が明らかになっていく。父親は息苦しい生活を強いられて着実にストレスを溜めているし、母親はいつだって自己中心的で言葉に気を遣わない。唯一のまともな人であるはずだった兄まで、厄介な闇を抱えていることが明るみに出て……。

続きが気になるところだ。今の時点で言えることは、早急にお兄ちゃんへのケアが必要だということ。ネットに吐き出すしかない恨みつらみを腹にもつ人間は、いずれ大爆発を引き起こすものだから。

それにしても、父親が思わず食事の席で不満をぶちまけてしまった時の、あの言葉はよくなかった。「前は俺の言うことをなんでも聞いていたのに」って……いくら妻(モコミの母)の言動や態度が気に食わないからって、モラハラすれすれじゃないでしょうか。この家族はどこに向かっていくのだろう。

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–{第5話あらすじ&感想}–

第5話あらすじ&感想

第5話あらすじ

清水萌子美(小芝風花)はイヤホンを拾ったことで言葉を交わすようになった青年(加藤清史郎)と再会。公園で花たちと“会話”していたと告げても、当たり前のことのように話を続ける彼に、萌子美の心は安らぐ。さらに青年が愛用する自転車に名前を付けていると知り、萌子美も自分の大切な存在に、トミーと名付けていると打ち明ける。いつかトミーに会わせてほしいと言われ、萌子美はうれしさのあまり、仕事中もついニヤけてしまう。

職場でも萌子美にうれしい出来事が起きる。花屋のリニューアル案をアルバイトの依田涼音(水沢エレナ)が提案。彼女も萌子美が花の気持ちがわかるということに理解を示し、店内のインテリアや仕入れる花を任せてみればいいのではないか、と言ってきたのだ。萌子美の兄で店長の俊祐(工藤阿須加)はこの話を受け入れるが…。

一方、萌子美の家ではケンカをした両親の伸寛(田辺誠一)、千華子(富田靖子)の“冷戦状態”が続いていた。といっても、意固地になっているのは千華子で、家事を一切放棄。料理を作らず、部屋も散らかり放題だった。家庭でも花屋のリニューアルのことが話題となり、伸寛や祖父の須田観(橋爪功)は萌子美を応援。ところが千華子は素直に祝福できず、自分がいかに恵まれていないか愚痴を言い出す。

表向きは両親や妹に心を配る俊祐だが、心の中には怒りや不満が渦巻いていた。俊祐はSNSの“裏垢”に、ネガティブな思いを書き込むことで、なんとか自分を抑えていたのだ。

第5話感想

これまで学校や職場で上手くやっていけず、人間関係で悩むことも多かったモコミが、お兄ちゃんの花屋に転職した途端にその才能を発揮する。つくるアレンジメントはどれも好評で、常連さんも増えた。お店のリニューアルに伴い、ディスプレイを任されることにもなった。おまけに、花や物の気持ちがわかる、言葉が理解できるといった特性に理解を示してくれる人も増えて……。まさに、順風満帆だ。

自分らしく生き生きと、表情に明るさが戻ったモコミに安心する反面、ほかの家族たちの動向が気にかかる。

長年の不満をぶちまけてしまったことにより、関係がぎくしゃくしつつある両親。「どうせ全部わたしが悪いんでしょう」と拗ねるように内にこもってしまった母。モコミの一番の理解者であるが、家族関係にヒビを入れかねない悩みのタネを放り込む厄介者でもあるおじいちゃん、そして、もっとも厄介な心の闇を抱える兄……。

SNSの裏アカウントにせっせと日頃のグチを投下し、抱えきれないモヤモヤを車中でヘドバンしながら発散させる兄の姿は、ちょっとモコミには見せられない。次回予告を見る限り、いち早く兄の裏アカウントを発見してしまうのはモコミのようだが……。

「ちょっと、お兄ちゃんのスマホ、重いかも」と口にしたモコミはさすがだ。たっぷりと怨念が詰まったスマホは、物理的な重量以外の重みをも感じさせることだろう。外に発散できない兄のような性格こそが厄介なのかもしれない。

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–{第6話あらすじ&感想}–

第6話あらすじ&感想

第6話あらすじ

清水萌子美(小芝風花)が家族と一緒に、リニューアルした「清水生花店」で記念写真を撮っていると、デリバリーのアルバイトをする佑矢(加藤清史郎)が現れる。人見知りな萌子美が異性と親しげに話す姿に、母の千華子(富田靖子)も父の伸寛(田辺誠一)も驚くばかり。いつ知り合ったのか、何をしている人なのか、どういう関係なのか…。つい根掘り葉掘り聞いてしまう。

萌子美は清水生花店がSNSを始めたのをきっかけに、自分専用のアカウントを作る。すると、SNS上でも佑矢と繋がることが出来た上、初めてちゃんと名前を教えてもらう。

仕事の合間、萌子美はたまたま、兄・俊祐(工藤阿須加)のスマホを見てしまう。画面には“いい人”という人物のアカウントが映し出され、人を非難する投稿が目に入ってくる。萌子美が改めて“いい人”の投稿を確認すると、自分たち家族への悪口が羅列されていた。兄の“裏の顔”を知ってしまい、萌子美は衝撃を受ける。

その直後、萌子美は佑矢から「リアルで話しませんか?」と誘われ、会いに行く。そこに、偶然2人が一緒にいるのを目撃した俊祐がやって来る。佑矢を警戒する俊祐は、妹の周りをうろつかないよう警告の意味を込めて、自宅に来ないか誘う。しかし佑矢はひるむことなく、俊祐の申し出を受ける。

連絡を受けた千華子たちは、萌子美が初めて男の子を家に連れて来ることに大慌て。さらに佑矢の訪問が、予想もしない事態を引き起こしてしまう。

第6話感想

ついに、お兄ちゃんが爆発してしまったーー前々話ほどから少しずつ垣間見えていたお兄ちゃんの闇が明るみに出てしまい、とうとう家族へ向けて直接発散する展開となってしまった第6話。インターネットに鬱々とグチを置いておくよりは、いささか健全では?と思う反面、これまで鬱屈を溜めていた様を見せつけられ、モコミたちは複雑な心境だろう。

この結果は、お兄ちゃん自身の性格が災いしたのだろうか?

物心つき、妹が産まれた頃から家族はモコミにつきっきり。何をしてもどこにいても「モコミ、モコミ」ばかりで、少しも自分に構ってもらえない……。”優等生”として勉強も運動も人並み以上に頑張ってきたであろうお兄ちゃんは、周りが想像するよりも小さな頃から、その身体に鬱屈を溜めてきたのではないだろうか。その発散方法さえもわからない、幼い頃から。

テストで良い点をとっても、運動会で1位をとっても、両親は振り向いてくれない。いつもモコミのことばかり……。ドラマでは描かれていない部分ではあるが、「やっと見つけたと思っていた花屋という居場所さえモコミに奪われた」というセリフからも、お兄ちゃんが”自分だけの居場所”を求めてきたことだけは想像できるだろう。

これは、家族の物語だ。それぞれが闇を抱えながら、その健全な発散方法や表現の仕方を模索しているーーお兄ちゃんも、少々不格好ではあるが、初めて自分の本当の顔を表に出せたわけだ。モコミも成長している。その姿を見て、お兄ちゃんも一歩踏み出すときなのだろう。ただの”良い人”から”自分自身”へと。

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–{第7話あらすじ&感想}–

第7話あらすじ&感想

第7話あらすじ

清水萌子美(小芝風花)は兄の俊祐(工藤阿須加)の本心を知り、衝撃を受ける。子どもの頃から父の伸寛(田辺誠一)も母の千華子(富田靖子)も、“変わり者”として周囲から浮いていた萌子美のことしか見ていないと感じていたのだ。それでも何とか優等生のふりをして妹を助けてきたが、一人で守ってきた「清水生花店」を萌子美の感性でリニューアルされたことで我慢の限界に。「いいお兄ちゃんの役は、今日で降板させていただいます」と言って家を出て行ってしまう。

萌子美は家族に、俊祐が“いい人”の名でSNSに投稿していた書き込みを見せる。乱暴な言葉で書かれた俊祐の本音を千華子は受け止めきれず、自分を責めるばかり。そんな中でも萌子美は気丈に花屋の仕事を続けようとする。

俊祐が店を休むと知り、アルバイトの依田涼音(水沢エレナ)は自分が原因だと言い出す。俊祐と涼音はつき合っていたが、いつまでもその関係を公にしない俊祐に腹を立てた涼音は、勢いで別れると宣言。そのことで俊祐が落ち込んでいると思ったのだ。萌子美は涼音やもう一人のアルバイト・桜井真由(内藤理沙)と力を合わせて店を開くものの、配達など俊祐の力が必要な業務が発生する。そこに、萌子美の様子を見るため祖父の須田観(橋爪功)が現れて…。

常連客に注文されたフラワーアレンジメントを萌子美が作るが、客が望んでいるのは俊祐のオーソドックスなアレンジメントだった。タイミング悪く、常連客からのアレンジメントの注文が殺到していることが判明する。

一方、店の車に寝泊まりしていた俊祐を岸田佑矢(加藤清史郎)が見つけ出す。萌子美から兄が店を休んでいる間は会えないと告げられた佑矢は、萌子美の奮闘を俊祐に伝える。それでも強がる俊祐だが…。

萌子美はいよいよ、俊祐に似せたアレンジメントを作らなければいけなくなる。すると萌子美は、ある道具に目をつける。

第7話感想

ようやく自分を開放できたお兄ちゃん。幼少期からひとり寂しさを抱えるも、両親は妹のモコミにつきっきり。自分も”いい人”や”いいお兄ちゃん”としての役割をまっとうせねばならず、プレッシャーや重圧に耐えきれずにいたのだろう。発散の仕方は少々独特だが、家族全員の前で「本当の自分で生きていきます!」宣言ができて、結果よかったのではないだろうか。

長らく自分らしい生き方ができずに悩んでいたモコミが、ようやく自分のやりたいことを見つけ、自身の不思議な特性を認めてくれる人にも囲まれつつある。父親、母親もそれぞれ悩みを抱え葛藤していたが、バランスのいい落とし所をみつけ、折り合いをつけられたようだ。家族全員の調子が良好に向かうなか、入れ違いのようにしてお兄ちゃんだけが右肩下がりに……。

小さな頃から、弱音や本音を伝え合える人がひとりでもいれば、違ったのだろうか。責任感や正義感ゆえに、「本当はこうしたいのに」といった気持ちを表に出せずにここまできてしまった。家族や友人など周りにいる人や環境のせいもあるのかもしれない。しかし、つらいときはつらい、しんどいときはしんどい、寂しいときは寂しいと一言でも口にする勇気さえあれば、少なくともSNS上につらつらとネガティブな言葉を放出する羽目にはならなかっただろう。

最終回が近い。お兄ちゃんもお兄ちゃんで、しっかり自分の気持ちと折り合いをつけられるだろうか。

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–{第8話あらすじ&感想}–

第8話あらすじ&感想

第8話あらすじ

清水萌子美(小芝風花)は兄・俊祐(工藤阿須加)のハサミで、兄のようなフラワーアレンジメントを作って以来、花やモノたち、さらにぬいぐるみのトミーとも話せなくなってしまう。たまらず岸田佑矢(加藤清史郎)に相談すると、萌子美の苦しい心情を理解し、モノと話せない分、自分といっぱい話そうと励ましてくれる。

一方、萌子美の両親・伸寛(田辺誠一)と千華子(富田靖子)に、新たな問題が起こる。伸寛が突然、「田舎暮らしを始めたい」と言い出したのだ。千華子が昼食用に弁当を作ってくれたことで、今が打ち明けるチャンスと話した伸寛だったが、千華子は「調子に乗らないで」と一喝。伸寛は夫婦のやりとりを見ていた千華子の父・須田観(橋爪功)から、励ましにも皮肉にも取れる言葉をかけられる。

その日の夜、千華子は萌子美に、佑矢を夕食に招いていいか聞かれる。やがて佑矢がやって来ると、萌子美から自分たちの部屋で夕食を食べると言われ、千華子や伸寛を驚かせる。年頃の娘の部屋に異性と二人きりにしていいのか…。千華子たちが悩んでいると、俊祐が仕事から帰宅。萌子美が不思議な力で店のピンチを救ったことを伝え、調子に乗っているのだと腹立たしげに話す。

佑矢が帰ったあと、俊祐は萌子美をとがめるが、萌子美は家族に花やモノたちと話せなくなったと告白。千華子はそれが”普通”なのだと娘を慰めるが、俊祐は自分の行動が妹を追い詰めたのではないかと内心、ショックを受ける。

その後、萌子美はこれまでと変わらない様子で仕事に打ち込むが…。

第8話感想

これまで全編とおして気づきを与えてくれる影のキーパーソン、橋爪功演じる須田観。今回はとくに光っていた。これまで聞こえていた花やモノの声が聞こえなくなり、途方に暮れ始めるモコミに対して、繰り返し「普通ってなんだ?」と問いかける。

「モノの声が聞こえなくなっちゃった、花の声も聞こえない、トミーとも話せない」と打ち明けるモコミに対し、慰めようとして「それが普通なんだから、大丈夫」と声をかける母……。しかし、モコミにとっての普通は”モノの声が聞こえる世界”だったのだ。大多数の人たちにとってはそれが聞こえない世界が”普通”なのかもしれない。それでも、人の数だけ”普通”は在るのだと教えてくれる。須田観の言葉によって。

普通って、なんだろう。おそらく誰もが一度は考えたことのある事柄に違いない。大多数の人が思いつくこと、マジョリティ側が考えることが”普通”で”善”なのか?私たちはいつの間にか、数が多いほうを正義とし、善とし、その逆側を悪として考える思考が見についてしまっている。

モコミを見ながら考えた。もう一度、”普通”の定義について原点に立って考えたほうがいいのかもしれない。インターネットやSNSが普及し、マイノリティ側の声も丁寧に掬われ広められる時代になった今。”普通”なんて言葉を軽々しく使ってもいいものかどうか、あらためて考える起点に私たちは立っているのだ。

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–{第9話あらすじ&感想}–

第9話あらすじ&感想

第9話あらすじ

モノと話せなくなった清水萌子美(小芝風花)は平気なふりをしつつ、内心では不安が大きくなるばかりだった。岸田佑矢(加藤清史郎)に支えられて何とか気持ちを落ち着かせるが、家族は自分にとって”普通のこと”が出来なくなった萌子美を心配する。兄・俊祐(工藤阿須加)は自分を責めながらも素直になれず、ぶっきらぼうに当分仕事を休むことを妹に提案。萌子美もそれを受け入れる。

萌子美は祖父・須田観(橋爪功)に、もし再びモノと話せるようになったら、その力を何に使いたいか問われる。今まで、自分に与えられた力の使い道など考えたことのなかった萌子美だが…。

観がまたしても、娘の千華子(富田靖子)を怒らせる。ボヤ騒ぎを起こして、借りていた部屋を追い出されたと語っていたが、その発言が嘘と判明したのだ。なぜ観は長い間、音信不通だった娘家族の前に現れたのか? まったく見当がつかない千華子や伸寛(田辺誠一)だった。

千華子が腹を立てているのを気にすることなく帰宅した観は、伸寛に田舎への移住計画の進展を尋ねる。萌子美が落ち着くまでは先送りにするつもりだという伸寛に、観は意外なことを語り始める。そんな観に俊祐が、かつて起こした不倫騒動について聞いてくる。「後悔はしていない」という観だったが、その場にいないと思っていた千華子が立ち聞きしていて、ヒステリックに騒ぎ出す。そんな中、伸寛が山梨に行くと宣言して…。

第9話感想

「あなたは、あなたのままでいい」と言ってほしいのが、人間なのかもしれない。モコミは生まれながらにしてモノや花と話せる気質を持っている。それがモコミにとっての”普通”で”当たり前にできること”だった。ほかの大多数とは違うからって、排除されたり下に見られたり、ましてや正そうとされたりすること自体、考えてみればおかしなことだ。

部屋でボヤが出たから移り住んできた、とこれまで言っていた観の言葉は、嘘だった。住む部屋があるのにわざわざモコミ家へ越してきた理由は明かされていないが、おそらくモコミを助けるためではないだろうか。自分らしく生きられず、家族のなかでさえ居場所を見失いかけていたモコミにとって、祖父の存在がどれだけ頼りになったことだろう。

たとえ一般的には”普通”ではなくとも、モコミはモコミのままでいい。そう言ってくれる人が身近にいるだけで、モコミは少しずつ自分を取り戻していける。自分は自分として生きていい、「やりたい」と思うことがあれば行動に移していいのだと、自信を回復させられる。

モノや花と話せなくなってしまったモコミ。それは一般的に見たら”普通”で”当たり前”のことだけれど、モコミにとっては違う。たったひとりで「世界が変わってしまったような」感覚にとらわれていたところを、祖父と、異性の友人である佑矢が救ってくれたのだ。

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–{第10話あらすじ&感想}–

第10話あらすじ&感想

第10話あらすじ

行方がわからなくなったぬいぐるみのトミーを捜すため、清水萌子美(小芝風花)は木々たちに居場所を知らないか問いかける。すると、萌子美の祈りが通じたのか、再びモノたちの声が聞こえるように。木々たちに導かれ、萌子美はついにトミーとの再会を果たす。

帰宅した萌子美は以前にも増して積極的になる。職場に復帰し、仕事に行く前に岸田佑矢(加藤清史郎)とジョギングを開始。そこにはある思いが秘められていて…。父の伸寛(田辺誠一)も山梨への移住に向け、不要なものを処分し始める。千華子(富田靖子)はいまだ東京から離れる気はなく、伸寛は1人でも田舎暮らしを始めるという。「もちろん、一緒に来てほしい」そんな夫の言葉に心揺れる千華子だった。

そして役者志望の佑矢は夢を叶えるため、新たな挑戦を始めることにする。これまでのように頻繁に会えなくなるとわかるが、夢に向かって頑張る佑矢を萌子美は応援する。当の萌子美は新たな目標ができたことを家族に報告。萌子美の決意を伸寛や祖父の須田観(橋爪功)は応援するが、千華子はいつもの癖で萌子美を不安がらせることを言ってしまう。兄の俊祐(工藤阿須加)も妹の成長を目の当たりにして、複雑な思いを抱く。

そんな中、千華子は少しずつ父・観との関係を改善していく。娘に優しくされた観はなぜ音信不通だった千華子たちの前に現れたのか、真相を明かす。一方、萌子美や伸寛の前向きな姿に感化された俊祐も自分の本当の夢と向き合い始める。萌子美たちが大きく進化していく。

第10話感想

モコミの成長物語だと思って見守ってきたこのドラマ。本当の意味で精神的な成長を遂げたのは、父であり兄であり、そして母だったのかもしれない。モコミが頑張る姿、自分と向き合い本当にやりたいことを見極める過程を見守るなかで、家族も共に成長したのだ。とくに、母親が。

子どもが何か新しいことを始めようとするとき、「大丈夫なの?」「そんな甘い考えで平気?」「簡単じゃないんだよ」とまさに親心から助言する母親は珍しくないだろう。すべては心配だから、失敗してほしくないから、安全で安心に過ごしてほしいから。

子ども自身は、たとえそれが愛情からの言葉であったとしても、決して嬉しくはない。実際のところモコミも「結局、お母さんは何も変わってない」「私だって不安でたまらないのに、どうしてそれを助長するようなことを言うの?」と母親を非難していた。

最終話にしてお母さんが救われないじゃないか……と不憫に思ったが、樹木医になるため家を出ることになったモコミが歩み寄りの姿勢を示すと、泣き笑いの笑顔を見せた。まだまだ時間はかかるかもしれないが、考え方の癖を直すには相応の時間が必要ということだろう。

家族間の関係に悩む人、今まさに悩んでいる人にはぜひ見てほしい。配信サイト「TELASA」で全話配信中だ。

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–{作品情報}–

作品情報

小芝風花が演じる主人公・清水萌子美は、ヌイグルミや石や植物など、感情を持たないとされているモノの気持ちがわかってしまうという繊細な“感覚”の持ち主。

そんな不思議な感覚を持っているがゆえ、他人との関わりを極力持たないようにして生きてきた。ところがあることをきっかけに、自分自身を狭い世界に閉じ込めていた彼女が広い世界に踏み出すことを決意。さまざまな経験を重ねながら、成長していく姿を綴っていく。

さらに、萌子美が自分の足で歩み出したことから、「一見平穏だけれど、実はバラバラだった家族」も影響を受け、それぞれが本音をぶつけ合い、自分自身と向き合うことに。このドラマは萌子美だけでなく、家族の再生をも描いた物語となっている。

キャスト
小芝風花
工藤阿須加
田辺誠一
富田靖子
橋爪功
加藤清史郎

脚本
橋部敦子

演出
竹園元(テレビ朝日)
常廣丈太(テレビ朝日)
鎌田敏明

音楽プロデュース
S.E.N.S. Company

音楽
森英治

主題歌
GENERATIONS from EXILE TRIBE
「雨のち晴れ」

エグゼクティブプロデューサー
内山聖子(テレビ朝日)

プロデューサー
竹園元(テレビ朝日)
中込卓也(テレビ朝日)
布施等(MMJ)

制作
テレビ朝日
メディアミックス・ジャパン(MMJ)

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