西のスタローン、東のジャッキー!二大アクション・スター対決!

映画コラム

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6月26日から『ランボー ラスト・ブラッド』(19)が公開されます。

シルヴェスター・スタローンが『ロッキー』シリーズに続いて映画スターとしての不滅の地位を築きあげることに大いに貢献したバトル・アクション映画シリーズもいよいよ完結編!(まあ、2008年の前作にも『ランボー/最後の戦場』なんて邦題がつけられていましたが、そのあたりは映画業界の常ということで……)

そのシルヴェスター・スタローンの全盛期といえば、やはり1980年代なわけですが、当時は香港映画界からもジャッキー・チェンがアクション・スターとして一世を風靡しており、まさに東のジャッキー、西のスタローンとでもいうべきお互いの盛況ぶりではありました。

では今回は、両者が傑作珍作含めてどのような作品に取り組み続けていったかを、しばし比較していきましょう。

東西アクション・スターの記念すべき初監督作品

シルヴェスター・スタローンが一躍スターの座を獲得したのは自らが脚本を記した『ロッキー』(76)で、これが大いに評価された彼は、主演第2作『フィスト』(78/昨年話題になった『アイリッシュマン』にも登場した全米長距離トラック協会リーダーの野心を描いたノーマン・ジュイスン監督の社会派大作)を経て、第3作『パラダイス・アレイ』(78)では主演のみならず自ら初監督(おまけに主題歌《天国に近づきすぎて》も歌っています。名曲です!)。

ニューヨークの貧民街で暮らす3兄弟が賭けレスリングを通しての家族愛を描いたヒューマンドラマで、いわば『ロッキー』のレスリング版とでもいうべき快作で、ここでの演出に自信をつけたスタローンは、続編を望む世界中の映画ファンの声にこたえて『ロッキー2』(79)を自ら監督して大ヒットさせ、シリーズ化にも成功するのでした。

かたやジャッキー・チェンは7歳から京劇や武術を学び、10代から20代にかけての1970年代前半は『ドラゴン怒りの鉄拳』(72)『燃えよドラゴン』(73)など数多くの映画のスタントマンやエキストラを務めつつ、72年より俳優デビューしますがなかなか目が出ず、76年に芸名を成龍(ジャッキー・チェン)と改名し、78年『スネーキーモンキー蛇拳』で独自のコミカル・クンフー路線を生み出したところこれが大ヒットし、続く『ドランクモンキー 酔拳』(78)でついにスターダムにのし上がります。

そして『クレージーモンキー 笑拳』(79)では初監督&主演を務めてこれまた大ヒットとなりました。

以後、ジャッキー・チェンもシルヴェスター・スタローン同様に監督&主演を両立させたものから主演オンリーのものまで幅広く活動していくことになるのです。

–{アクション・スターに怪我はつきもの……!}–

アクション・スターに怪我はつきもの……!

アクション・スターは生傷くらいなら良いものの、入院はもちろんのこと時には命の危険にさらされるほどの大怪我を負うこともしばしあります。

たとえばシルヴェスター・スタローンは『ランボー』(82)撮影中にノースタントで木から飛び降りて肋骨を数本折るという大怪我を負いつつ、そのときできた本当の傷口を針と糸で縫うシーンを撮ることで、特殊部隊のエリートとして数々の戦場を渡り歩いていたことを知らしめてくれています。

もっとも怪我ということでは、毎度毎度命がけの撮影を敢行し続け、そのネタバラシを『プロジェクトA』(83)などをはじめとするエンドタイトルで面白おかしく披露し続けるジャッキー・チェン映画にかなうものはないかもしれません。

特に『サンダーアーム/龍兄虎弟』(86)では撮影中にジャッキーが頭蓋骨骨折の大怪我を負い、一時は死亡するのでは? などと世界中のファンを心配させるほどでした(代役としてアラン・タムがオファーされたという説もあったりしましたが、結果としては奇跡的に一命はとりとめて撮影を続行。もっとも、このときの後遺症で彼は左耳がほとんど聞こえなくなっているとのことです)。

–{アクション・スターがSFに手を出すと?}–

アクション・スターがSFに手を出すと?

シルヴェスター・スタローンもジャッキー・チェンもアクション・スターとして世界的地位を築き上げているのは先刻承知の通りですが、彼らも時々変わったことをやろうとして、それが上手くいったりいかなかったりすることもあります。

その意味で両者とも、ごくたまにSFアクションに挑んだりしています。

特にスタローンの場合は、ライバルでもあるアーノルド・シュワルツェネッガーが『ターミネーター』シリーズで大成功を収めた事への対抗心もあったことでしょう。

1993年の『デモリションマン』でスタローンは凶悪犯ともども冷凍睡眠の刑を受け、2032年の未来に目覚める刑事を演じています。

こちらはまあ近未来を舞台としながら背景やアイテムなどの目新しさを狙った(日本の着物が流行したりもしている!? あと肌の接触などが禁じられているあたり、2020年のコロナ社会を先取りしているようですが、製作当時はエイズが世界的に流行していて、その影響で考えられた設定のようです)ヴァイオレンス・アクション映画とみなすこともできるかな? とは思います。

が、1995年に主演した『ジャッジ・ドレッド』はイギリスのコミックを原作とするSFヒーロー・アクションもので、いわば現在隆盛のマーベルやDCヒーローたちのラインを狙ったもの。

舞台は2139年、核戦争後の犯罪都市で、スタローンが演じるのは法を犯した者に容赦なくさばきを下す男ジャッジ・ドレッドが無実の罪で逮捕されたことから始まる復讐譚。

さすがにスタローンのヒーロー・コスプレ姿も含めて公開時は不評で、新たな路線を模索するスタローンの苦渋すら感じられたものですが、今見直すとそれこそマーベル&DCの先駆け的なものとして楽しめます(ちなみに2012年には同コミックを原作にした3D映画も作られています)

ジャッキー・チェンも2003年に超人的パワーをもたらすメダルをめぐっての刑事と悪の組織の攻防戦をVFXもふだんに用いたSFアクション映画『メダリオン』に主演しています。

正直、ジャッキー映画に特撮的要素を感じたことがなかったファンとしては若干の違和感も覚えたりしたものですが、彼としてはやはり新境地を開きたかったのでしょう。

そして2017年の『ポリス・ストーリー/REBORN』は、彼が主演する名物シリーズ『ポリス・ストーリー』とはほぼほぼ関係はなく(なぜか1985年のシリーズ第1作『ポリス・ストーリー/香港国際警察』主題歌《英雄古事》の北京語バージョンがエンドタイトルに流れる)、人工心臓をめぐるSFアクション映画なのでした。

もちろんジャッキー映画ならではのアクションも冒頭から中盤にかけてはふんだんに用意されているのですが、クライマックスは空飛ぶ巨大要塞の中でのレーザー光線銃撃戦といった、まさに荒唐無稽なSFテイストへ突入していく!

おそらくジャッキーとしては巷で人気のマーベル&DC映画群に負けるものかといった気概で新機軸を拓こうとしたものとも思われます。

やはりジャッキーは(スタローンも)SFよりアクション・オンリーのほうがいいよなというファンの声はいろいろ聞こえてきそうではありますが、一方では、大スターになっても新しいことに挑戦し続ける彼らの若々しい心意気こそを汲んであげてもいいのではないか? という気持ちもあったりします。

いずれにしましても東西の両雄、老いてますます映画に熱を入れ続けているのでありました!

(文:増當竜也)