『ライブリポート』レビュー:警官とメディアが組んで驚異の捜査生配信!

映画コラム

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SNSの発達が今や日常社会を変え、ニュースのありようから現代を描くドラマツルギーまで大きく変えていっていることは周知の事実です。

誰もがスマホを持ち、誰もがスクープを撮影して発信できてしまう現代社会の中、そこから有名になろうとする者もいれば、そういう人々を利用しようとする者、さらには迷惑をこうむる者もいることでしょう。

本作『ライブリポート』もまたポリス・サスペンス・アクションというジャンルにSNSを導入しての新風を吹かせ得たプログラムピクチュア的な作品です。

ここでは誘拐された少女の命を救うためのタイムリミット64分を……

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街477》

何とSNS生配信しながら描いていくという、秀逸なアイデアで綴っていくノンストップ・アクションなのでした!

誘拐された少女を救うための追跡調査が何とSNS生配信!

『ライブリポート』の主人公警官ペニー(アーロン・エッカート)は正義感が強く、人当りも良さげなタフガイですが、ある日たまたま、ひとりの男の大捕り物に出食わして、執拗な追跡の果て、抵抗する男をやむなく射殺してしまいました。

しかしこの男、実は警察署長の愛娘クローディアを誘拐した犯人だったのです。

娘の居場所は分からずじまいのまま焦る警察に対し、もうひとりの犯人から連絡。

何と彼は仲間を殺された復讐として、クローディアをあるところに閉じ込めて水責めを始めたのでした。

水が溜まって溺れ死ぬまで、64分。

捜査から外され、しかも発砲した警官は2日間の停職となり、その間は銃を所持できないという規則によって丸腰となったペニーは、孤軍奮闘して少女の居場所を突き止めようとします……が、そこでたまたま出会ったのが、配信サイト“ザ・ピープル.com”の新米熱血レポーターのエイヴァ(コートニー・イートン)。

何とかスクープをものにしようと張り切るエイヴァは、なかば強引にペニーと取引し、追跡捜査の生配信を許可させてしまいます。

しかしこのことによってSNS配信されていく映像の数々は、漁夫の利を得ようとするTV局によってどんどん拡散されていき、同時に虚実ないまぜの情報が次々と飛び交い、すぐさま野次馬は集まり、さらにはそこに犯人がショットガンをもって単身現れて街は修羅場と化していき……と、もうハチャメチャな状況へと追い込まれていくのでした。

果たしてペニーは全米が興味と興奮のまなざしで見守る中、たった64分のタイムリミットで少女を救出できるのか?

–{主演ふたりの魅力を引き出しつつ現代SNS社会を巧みに描出}–

主演ふたりの魅力を引き出しつつ現代SNS社会を巧みに描出

本作はまずペニーのキャラクターをさりげなくも魅力的に見せこんでいきます。

白人警官による黒人迫害が深刻な問題となって過激化していく今のアメリカ警察界隈の中、黒人の少年にも温かく接するペニーは、より好もしく映えます。

しかし、どこかしら影を落とす彼の憂いは、伏線とまではいかないものの、後々のフック的な要素にもなっていきます。

一方で、スクープを求めて外へ飛び出したエイヴァの、どこか危なっかしくも応援したくなる風情。

アーロン・エッカートとコートニー・イートンのデコボコ・コンビが織り成す魅力が、そのまま64分で少女を救出できるか否かのサスペンスと直結していくのが本作の本領ともいえるでしょう。

本作のランニングタイムはおよそ99分ですが、少女の水責め映像が映し出されてからは(ここまではおよそ24分)、上映時間がそのままリアルタイムとなって描かれていきます。

正直、ここからの展開を今語るのも野暮というか、ばりばりのネタバレになってしまうので避けておきますが、多少乱暴で荒々しい展開もあったりはするものの、それでも手を変え品を変え、見せ場の構築に怠りなくあれよあれよとクライマックスに突入していく手腕は大いに買いたいところです。

監督のスティーヴン・C・ミラーは『エクストラクション』(16)などでブルース・ウイリスと、『キング・ホステージ』(17)でニコラス・ケイジと、『大脱出2』(19)でシルヴェスター・スタローンと仕事をし、サスペンス・アクションの中からスターの魅力を引き出す術を心得ているようで、今回も主演ふたりの魅力を大いに引き出しながら64分を一気に駆け抜けていくのでした。

また、何よりもSNS時代の今に呼応した配信そのものがもたらす良くも悪くもの脅威をエンタテインメント性豊かに描いていくあたり、今の映画ならではのものと納得させられます。

現代性とプログラムピクチュア的気さくさを両立させた作品です。ぜひ智主演ふたりとともに64分の決死の捜査にお付き合いください!

(文:増當竜也)