シリーズとはほぼほぼ無関係なSFアクション『ポリス・ストーリー/REBORN』

映画コラム

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最初にお断りしておかなければいけないのは、ジャッキー・チェン主演の2017年度アクション大作『ポリス・ストーリー/REBORN』(17)は、ジャッキーの代表作でもある本家『ポリス・ストーリー』シリーズ(85~)とはほぼほぼ関係のない作品です。

なぜ“ほぼほぼ”かというと、エンドタイトルの主題歌がシリーズ第1作『ポリス・ストーリー/香港国際警察』(85)の主題歌《英雄故事》の北京語ヴァージョンだからです。

さらにこの作品、実はSF仕立てになっていて、その意味でも『ポリス・ストーリー』シリーズのノリを期待して接すると、はっきりいって面食らうこと必至。

では面白くないのかと問われると決してそうでもなく、いろいろな視点から見ていくことで結構楽しめるエンタメ作品には成り得ています。

人工心臓をめぐる13年越しの攻防戦!

『ポリス・ストーリー/REBORN』は2007年の香港から始まります。

白血病で危篤状態の幼い愛娘シーシーのもとに向かっていた国際捜査官リン・トン(ジャッキー・チェン)は、上司の命令で遺伝学者ジェームズ博士を軍の基地まで護送するS.W.A.T.のミッションに急遽駆り出されることになってしまいました。

ジェームズ博士は武器商人のために生化学兵器を研究していましたが、そんな彼の実験体だったアンドレ(カラン・マルヴェイ)が研究員を殺害し、武器商人も殺してその資産を我が物にしたというのです。

アンドレはジェームスが開発した人工心臓の実験データを奪うべく犯罪組織を率いて急襲し、警官隊は壊滅。

しかし残されたリンの決死の行動でアンドレは爆死、それと共にリンも行方不明となりました……。

そして舞台は13年後のオーストラリア、シドニーへ、一気に移ります。

かつての事件を元ネタにした小説「ブリーディング・スチール」が出版されることになったことで、著者のリック・ロジャーズはいかにして元ネタを入手したのかを知るべく、女装した男と女殺し屋(テス・ハウブリック)と覆面の男が、それぞれ別々にロジャースの部屋に侵入。

女と覆面男との格闘の果てにロジャースは命を落としますが、元ネタのデータは女装男のハッカー、リ・スン(ショウ・ルオ)がゲット。

ちなみに女は、13年前の事件の爆破後も実は生きのびていたアンドレの手下でした……。

そして覆面男の正体はリン……。

リ・スンはデータの中にあった写真の女子大生ナンシー(オーヤン・ナナ)が何か鍵を握っているとにらみ、彼女に接近しようとします。

ナンシーは夜ごと悪夢にうなされては“魔女”と呼ばれる心霊術者の治療を受けていました。

そしてその悪夢とは、かつてジェームズ博士がアンドレに施していた人体実験の模様だったのです……。

–{マーベル&D.C.ヒーロー映画に挑戦したジャッキー・チェン}–

マーベル&D.C.ヒーロー映画に挑戦したジャッキー・チェン

冒頭に記したように、本作はほぼほぼ『ポリス・ストーリー』とは無関係なSFアクション映画です。

(まあ、実は本作以外にも“ポリス・ストーリー”の邦題がついているけど本家と無関係といった作品は数本ありますけど……。ちなみに本家としてのシリーズは4本で、スピンオフが1本あります)

要はスティーヴン・セガール主演映画の邦題に“沈黙の”、チャック・ノリス主演映画に“地獄の”といったワードがよく使われているのと同じようなラフな感覚で接したほうが精神的に得策ではあるでしょう。

また主題歌《英雄故事》が広東語ではなく北京語で歌われているところから、本作が“香港”よりも“中国”映画としての色を強めたいことが明白ですが、一方では“台湾”の若手スター、ショウ・ルオとオーヤン・ナナをキャスティングしているあたりの“目配せ”も感じられます(ちなみにオーヤン・ナナの伯母は日本でも歌手として知られた欧陽菲菲!)。

映画の構造でいくと、冒頭はS.W.A.T.対バイオロイドの壮絶なバトルを描きこみ、中盤はシドニーのオペラハウスにてジャッキー・チェンならではの壮絶アクションを展開、そしてクライマックスは『スター・ウォーズ』か『ターミネーター』か? といった、かなり荒唐無稽なSFマインドへ発展していきます。

おそらく世の大半のジャッキー・ファンが見たいのは冒頭と中盤のノリであり、クライマックスは「?」「?」「?」となることでしょう。

もっとも、今回はマーベルやD.C.などのSFヒーロー・アクション・シリーズのノリをジャッキー映画に組み入れてみようという試みだったようにも思えてなりません。

また、そのことであまりSFマインドに作品が引きずり込まれず、あくまでもアクション主体であることを作る側の戒めとして忘れないために、主題歌を《英雄故事》にしたのだと捉えることも可能でしょう。

実際、本作で輝いているのは、主人公の部下スー役のエリカ・シアホウと、女殺し屋役のテス・ハウブリックで、両者が繰り広げる壮絶かつ華麗なヒロイン・アクションの数々には、そのSFチックなコスチュームも功を奏して非常に魅力的です。
(クライマックスに至っては、ほとんどエリカ・シアホウのためにシーンが用意されているとしか思えないほど!)

またショウ・ルオとオーヤン・ナナのさわやかな初々しさも特筆しておくべきでしょう。

そういえばショウ・ルオが劇中ジャッキー・チェンやブルース・リーの下手な物真似をして「ジャッキー・チェンのつもりか?」とチンピラたちに呆れられるくだりがありますが、本作はハリウッドSFも含めた映画パロディともオマージュとも取れる要素がてんこもりで、そういった部分を楽しめるかどうかでも評価は変わるかもしれません。

そして1980年代から90年代にかけてアクション映画のジャンルに革命をもたらし、香港のみならず世界中にその名を轟かせたジャッキー・チェン。

1954年4月7日生まれで現在66歳になったばかりの彼ですが(本作が公開されたときは63歳くらい)、今回は白髪交じりの老けた風貌で“父性”を醸し出しているあたり、アクションだけでなくその存在感を通してアクション・スターとしてのみならず、いぶし銀の魅力を発するアクターとしても評価したいところ。

エンドタイトルはジャッキー映画おなじみNGシーンの羅列となりますが、それらを見るとやはり「ジャッキー・チェンの映画を見た!」といった安堵感に包まれます。

何度も繰り返しますが、『ポリス・ストーリー』のことはあまり意識せず、ジャッキー・チェンがマーベルのりのSFアクションに挑戦した意欲作として接してみてください!

(文:増當竜也)