『初恋』窪田正孝のナイーヴな魅力をとくと堪能できる『東京喰種トーキョーグール』

映画コラム

(C)2020「初恋」製作委員会 

2020年2月28日から劇場公開されている三池崇史監督の最新作『初恋』は、そのタイトルから醸し出されるイメージとは裏腹のクレイジーなヴァイオレンス映画です(でも、ちゃんと“LOVE”はあります)。

クセモノまみれのキャスト陣を相手取って主演を張るのが窪田正孝。

三池監督は2008年のTVドラマ『ケータイ捜査官7』の主演に窪田を起用した際、「10年後に窪田を選んだ理由がわかる」と宣言。彼もまたその言葉を励みに、10年の月日を待たずして俳優として大きくブレイクしました。

今回は、三池監督の予言からおよそ9年後の2017年に窪田正孝が主演した『東京喰種 トーキョーグール』に注目してみましょう!

半人半喰種と化した若者の苦悩と闘い

映画『東京喰種 トーキョーグール』は石田スイの人気コミックを原作にしたダーク・ファンタジー&ヴァイオレンス作品です。

東京喰種 トーキョーグール 新メイン

 (C)2017「東京喰種」製作委員会

舞台は人間を食料とする怪人・喰種(グール)が蔓延し、社会の闇に紛れ込んでいるトーキョーの街20区。

大学生のカネキ(窪田正孝)は、憧れていた女性リゼ(蒼井優)をグールと知らずにデートし、そこで彼女に襲われて瀕死の重傷を負いますが、その手術の際、先に死亡した彼女の臓器を移植されてしまったことで、半グールと化してしまいます。

人間でありながら人肉以外の食物を受け付けられなくなってしまったカネキは、彷徨の果てに喫茶店“あんていく”の店長ヨシムラ(村井國夫)と従業員トーカ(清水富美加)に助けられ、そこで働くことに。

“あんていく”は何とか人を殺めることなく人肉を入手しながら、己の素性を隠して人間との共存を望もうとする、平和的思考のグールたちの溜まり場でもありました。

しかし、異様なまでの執念でグールの駆逐を目指す喰種対策局(CCG)のアモン(大泉洋)が20区に現れたことで、あんていくに集うグールたちに危機が迫っていきます……。

–{原作者自身が望んだ窪田正孝のキャスティング}–

原作者自身が望んだ窪田正孝のキャスティング

本作は半人半喰種と化してしまった青年の地獄のような苦悩を通して、異なる種族のぶつかりあいを激しいヴァイオレンス・タッチで描いたエンタテインメントです。

東京喰種 トーキョーグール 窪田正孝

 (C)2017「東京喰種」製作委員会

見どころはCGを駆使したバトル・シーンの数々ではありますが、それ以上に人肉を喰らうか喰らわないかに葛藤し続ける窪田正孝のナイーヴかつ鬼気迫るような演技に圧倒されます。

さらには見る側に痛みを伴わせるような、壮絶なバトル・シーンの数々における彼の存在感!

実は彼のキャスティング、原作者の石田スイが希望したもので、つまりは原作のイメージにもっとも即した生身の人間が彼であったということでもあるのでした。

監督は新田真剣佑&北村匠海のW主演による音楽青春映画『サヨナラまでの30分』が今年1月に公開されたばかりの萩原健太郎。

俳優活動を経て映画監督を目指すようになった彼は、アメリカに渡って7年間映画製作を学び、帰国後はCMやTVドラマ、短編映画など精力的に活動していたところ、本作の監督をオファーされ、長編映画デビューを飾ることになったのでした。

また、何とあの『マトリックス』シリーズのドン・ディヴィスが本作の音楽を担当しているのも特筆事項でしょう。

ちなみに本作は好評につき、原作の中でも人気エピソードの“月山編”を映画化した続編『東京喰種トーキョーグール』も2019年に公開されました。

こちらは、ヒロインのトーカ役が清水富美加から山本舞香に、また監督がインディーズ映画界で活躍する川崎拓也&平牧和彦に、音楽が小田朋美&菊地成孔に、などなどスタッフもかなり入れ替えてのお披露目となりましたが、1作目に負けず劣らずのダイナミズムはちゃんと保持されていると思います。

何よりも1作目で自信をつけての窪田正孝は、まさにカネキそのものになり切っての、さらなる好演を示していました。






(文:増當竜也)