■オジンオズボーンオジンオズボーン・篠宮暁の“特撮”向上委員会
2018年8月4日(土)より公開中の映画『劇場版 仮面ライダービルド Be The One』は、現在放送中の特撮番組「仮面ライダービルド」の劇場版。今作は、2017年12月公開の映画『平成ジェネレーションズ FINAL』で劇場作品デビューを飾った上堀内佳寿也監督が、引き続きメガホンを取っています。
そこで、シネマズby松竹で特撮コラムを連載中のオジンオズボーン・篠宮暁が、上堀内監督と「ビルド」のプロデュースを手掛け、前作で監督を抜擢した大森敬仁プロデューサーに直撃! 劇場版に加え、テレビシリーズについての話題、さらにお二人に迫ったお話をファン目線で伺い、最終回目前でよりいっそう盛り上がりをみせる「仮面ライダービルド」の魅力に迫ります。
オジンオズボーン・篠宮暁(以下、篠宮):「平ジェネ」はファンから大好評でしたが、その声は耳に入ってきてたんですか?
上堀内佳寿也監督(以下、上堀内監督):そうですね。僕と同世代の地元の友達は、子供がちょうど見てくれる世代なので、結構連絡はもらいました。「あの映画をきっかけに他の作品も見てみようと思ったよ」と本当に言ってくれていたので、ありがたいなと思いましたね。
篠宮:「平ジェネ」と今作、2作連続で上堀内監督を抜擢した理由は?
大森敬仁プロデューサー(以下、大森P):信頼しているからというのがひとつと、「平ジェネ」で結果を出したので、「数字持ってるんじゃないか?」と(笑)。
篠宮:確かに、「平ジェネ」の成績はすごかったですよね。
上堀内監督:「信頼」って言ったとき、目を見てくれてなかったですけどね(笑)。
篠宮:大森さんからみた上堀内監督の魅力はどういったところですか?
大森:ドラマをきちんと撮ってくれるというか、ひと作品の中のドラマのエッセンスを汲み取ってくれる。こういう風にすればこうしてくれるよな、ここが欲しい、というところにちゃんと緩急をつけてくれるところですね。
篠宮:では、監督から見た大森プロデューサーの魅力は?
上堀内監督:大森さんは、いろんなことをうまいことかわしていきそうな雰囲気をかもしてるんですけど、芯がすごく熱い方。僕は割といつも熱々な感じで、さらに脚本家の武藤将吾さんも熱い方なので、二人でああでもない、こうでもない、ってなるんですね。大森さんはそれを静かに聞いてるだけかと思いきや、すごくいろんなことを考えてくれていて、二人の意見を合わせた案とご自身の意見を、最終的にガチッと言ってくれるんですよ。そこがありがたいです。言ってもらったことはできるだけ全部受けとめたいと思っていますし、こんな若手をこういう風に使ってくれる方もなかなかいないので、本当に信頼してます。
大森P:ありがとうございます。
篠宮:夏映画も上堀内監督で、というのは「平ジェネ」のあとにすぐ決まったんですか?
大森P:全然すぐじゃないです。「平ジェネ」のあとは2回、テレビの方に入ってもらったんで、その間はそっちしか考えず。僕も武藤さんも、もうテレビに必死でそんな余裕はないので。
上堀内監督:(笑)。
大森P:それで、「夏の映画どうします?」という時期になり、いきなり上堀内さんに。ドラマがどうなるかっていうのも、そのときは決まってなかったんです。ひとまず監督を信頼してお願いさせてもらって、そこから一緒にお話を考えていって。
上堀内監督:いっつも、ギリギリですよね、オファーがくるのは(笑)。確かアフレコルームの控え室でお話をいただきました。
大森P:ということは、29〜31話が終わったあとですね。
劇場版「ビルド・ルパパト」製作委員会 (C)石森プロ・テレビ朝日・ADK・ 東映
篠宮:夏映画のオファーがきたときの気持ちは?
上堀内監督:「マジか」って思いました(笑)。やりたいなとは思ってたんです。「ビルド」は大森さんが最初から僕を入れてくれてて、「平ジェネ」も担当させてもらっていましたし、演出回への思い入れも強かったので。だからこそ単独映画もやってみたいなとは思っていましたけど、さすがに2本連続はないかなと…。
篠宮:まれですよね。
上堀内監督:そうですね。なかなか無いことだと思うので、「やった!」と思って。それに、どんな話になるかわからない状態だったので、ワクワクしましたね。映画でどこまで描いて、どんな話になるんだろう、って。
篠宮:大森さんはどうでした? 上堀内監督に決まってから、周りの反応は。
大森P:あるWEB媒体から監督と脚本をニュースで出したい、ってお話がありましたね。それで発表させてもらうことになって。さすが、上堀内佳寿也(笑)。
上堀内監督:(笑)。Twitterをやらせてもらってるんですけど、自分が監督することは許可をいただかないとアップできなくて。なので、エキストラさんの募集とかをすごく微妙なニュアンスで、「あるよ」って感じでリツイートだけとかしてました。
篠宮:気付いてるファンはいました?
上堀内監督:“やるのか…?”って、リプライがくるときはありましたけど、返信できないので…。でも、ありがたかったですね。それだけ思うところがあるということだろうし。
大森P:うん。
–{劇場版のタイトル秘話…?}–
劇場版「ビルド・ルパパト」製作委員会 (C)石森プロ・テレビ朝日・ADK・ 東映
篠宮:「Be The One」というタイトルもファンが盛り上がったポイントですが、そこに込めた思いは?
大森P:候補はたくさん考えていたんですが、あんまりしっくりくるものがなかったんですね。まぁ、映画を見ていただければわかると思いますが、「Be The One」というのがすべてを象徴する言葉だなと思って。ちゃんと小室哲哉さんにも許可を得て(笑)。
篠宮:あはは! 小室さんの許可も得たんですね!
大森P:許可、待ってました。担当者に「本気で聞きます?」って言われて、「本気で聞いてもらっていいですか?」って(笑)。
篠宮:それでOKが出たんですね(笑)。5月に行われた北九州ロケは、仮面ライダー史上最大規模ということでしたが、なぜ北九州だったんですか?
大森P:監督が、「道路を封鎖したい」って言い出したんで(笑)。
上堀内監督:僕がわがままを言ったんです。
篠宮:じゃあ、それありきでロケ地を探して、北九州ならできるってなったんですね! 3000人のエキストラってかなり大規模ですよね。やっぱり大変でした?
大森P:周りの人が大変だったでしょうね(笑)。
上堀内監督:僕も大変ではありましたけど、楽しさが勝ってました。純粋に楽しんでやれてたのは僕だけじゃないかっていうくらい、スタッフは大変だったと思います(笑)。
劇場版「ビルド・ルパパト」製作委員会 (C)石森プロ・テレビ朝日・ADK・ 東映
篠宮:大森さんも行かれたんですよね。ロケの雰囲気はどんなでしたか?
大森P:コミッションの方々が本当に職人みたいで、もはや役所の人たちとは思えないくらい(笑)。とにかく撮影のことをいちばんに考えてくれるような人たちが集まっていて、本当にプロフェッショナルでした。僕は時間がまったくないことにいちばんドキドキしてたんですけど、そんななかで希望を叶えてくださって本当にありがたかったし、今作の現場の熱を生み出してくれていたような気がしますね。
上堀内監督:北九州自体、いいところでしたね。プライベートで来ても楽しそうだなって。
大森P:住みたい。
上堀内監督:いいですね! 北九州の人間の気質が好きですね。面白かったです。
篠宮:映画に「クローズビルドフォーム」が出てくるっていうのは雑誌などで明かされてますけど、「クローズビルド」は映画のためにとっておいてたフォームなんですか? それとも、テレビシリーズでも話は出たけれど、尺的に映画に、とか。
大森P:今回の映画の話が動き始めて、「ビルド」でいちばん美味しいところってなんだろうということを考えたんですね。劇場版はテレビシリーズのおいしさを全部凝縮したものだと毎回意識してやっているので、今作でいうとやっぱり戦兎と万丈の共闘であり、戦っている国がひとつになろうとしていること。そこがいちばんお客さんが見たいところかな、と思えたので、こういう展開になりました。
篠宮:見たいところでいうと、監督は「平ジェネ」のバイクシーンを撮りたかったって言ってましたよね。ファンも絶賛のシーンになりましたけど、今回もこだわったシーンというのは。
劇場版「ビルド・ルパパト」製作委員会 (C)石森プロ・テレビ朝日・ADK・ 東映
上堀内監督:ありますよ。大きくいうと前半戦は逃走劇があって、バイクがずっと出てきてますし、やりたい放題のアクションになってます。
篠宮:それは楽しみです! この記事が出るころには映画も公開になり、テレビシリーズももうすぐ最終回ですね。監督は3、4話を担当されたときと比べて、キャストたちの変化を感じることはありますか?
上堀内監督:最初の段階から、ある程度、言えば響く役者さんたちだったので、逆にいうと、そこからどれだけ伸びしろがあるかというのを心配してはいました。でも、きっちり伸びてくれたなって感じがしますね。
篠宮:最初からうまかったですもんね。みんな。
上堀内監督:よくいうと、うまい。悪い言い方をするとこなしてしまうというか。でも、一番心配していた伸びしろをちゃんと出せたのは、みんなが1年間しっかりこの作品にかけてくれたということだと感じています。みんながそれぞれの伸び方をしてくれたのが面白かったですね。
–{監督、プロデューサーから見た犬飼貴丈という俳優}–
大森P:お芝居は最初からなるべく成立するキャストで組んだんですね。そのうえで芝居の成長はもちろん感じてるんですけど、現場に対する姿勢というのはかなり向上したと思います。
篠宮:おお〜!
大森P:特に犬飼くんは1年間、すっごくつらい現場だったと思います(笑)。タフなことが多かったんで。まぁ、弱音を吐くなって言うのが無理な現場なんですが、彼には芯があるんですよ。
上堀内監督:そうですね。
大森P:主演として現場を引っ張っていく自覚もありつつ、バランスの取り方みたいな部分が優れていた気がして。今までの主役にまったくいないタイプだったなと思いますね。
篠宮:すごかったですか、犬飼さんは。
劇場版「ビルド・ルパパト」製作委員会 (C)石森プロ・テレビ朝日・ADK・ 東映
大森P:うーん。すごいってひと言でいうと悔しいから、あんまり言いたくない…(笑)。
上堀内監督:普段の飄々とした雰囲気からは、芯があるかどうかわらからない?
大森P:うん。捉えどころがない、って本人に言ったら、「ショックです」って言われたんだけど(笑)。
篠宮:(爆笑)
大森P:でも、それって悪い意味ではなくて。さっきまで冗談を言ってたかと思うと、急に素直になるところもある。それでいて話していると芯がある。つまり天性の役者さんなのかもしれません。
篠宮:「平ジェネ」も「ビルド」本編も面白いって声をよく聞くんですけど、ズバリ、勝利の法則ありますか?
大森P:勝利してるかどうか…。
篠宮:勝利、めちゃめちゃしてますよ! 『仮面ライダーエグゼイド』もすごかったのに、そこから「ビルド」も面白いっていうのはすごいことだと。
大森P:必死にやってるだけです(笑)。
篠宮:じゃあ、ご自身の決めごとはありますか?
大森P:うーん、「エグゼイド」と「ビルド」は、僕のスタンスが全然違うんです。「エグゼイド」のときは企画の最初の段階から、ゲームと医療を絡めようというところから始まっているので、能動的に2話ごとに話を作っていったんですね。「こういう話にしましょう」というのを最初から脚本家の高橋悠也さんに投げるかたちで。「ビルド」はどちらかというと逆で、武藤さんがやりたいことを先にもらって、それができるように交通整理してるって感じですね。
篠宮:へぇ〜! そこを徹底されてる感じ?
大森P:そうですね、「エグゼイド」の時は僕が先を歩いてたつもりだけれど、今回は後ろから見ながら口出ししているような。
上堀内監督:それは感じますね。
篠宮:大森さんにアイディアが浮かんでも、武藤さんが発進するまでは待っとこう、って感じ?
上堀内監督:割と、「いってらっしゃい」みたいな感じでしたね(笑)。
大森P:前半は武藤さんがどこまで考えているのかというのを確認しないと、僕らも手探りでした。でも、前半と後半でまた違ってて。思うに、武藤さんがやりたいことは前半に結構な部分が凝縮されたんじゃないか、と(笑)。武藤さんのストーリーのスピード感が早くて。
篠宮:確かに、伏線とかも最初の方で全部回収してましたし。
大森P:エボルトが宇宙からきた人で、構図としては仮面ライダーVS地球外生命体にしましょうというのはもともと武藤さんがおっしゃっていたんですが、後半はそこへどう運ぶかということがあり。それを聞かれてこちらから提案することはありました。
上堀内監督:僕らは脚本をもらうまで、こういう話なんだ、こういう展開になるんだっていうのが見えない部分があったので、ある意味面白かったですけどね。純粋に、読んだ瞬間の興奮があったので。
篠宮:監督と武藤さんで、テレビシリーズでもディスカッションをされたりしたんですか?
上堀内監督:自分の組ではありますね。21話「ハザードは止まらない」で、戦兎が青羽を殺してしまったときの感情表現とかは延々と二人で喋ってました。最終的には、大森さんに「二人とも、行き着く先は一緒だよ!」って言われたんですけど(笑)。
大森P:僕からすると、二人とも想いは一緒で、内容としては同じことを言ってたんですよ。
篠宮:あれは名シーンでしたね。
監督:これだけ演出家と向き合ってくれる脚本家さんもありがたいです。「こういう気持ちで書いてるんですけど、これだったら表現できますか?」「そういう気持ちなのはわかるんですけど、もっとこうしてみたいっていうのもあるんですよ」って(笑)。
篠宮:行くつく先は一緒だけれども、過程が違うわけですね。では、監督の勝利の法則は?
上堀内監督:いやいや、勝利してるかどうかわからないですよ。
大森P:完全に型にはまった質問を…(笑)。
篠宮:「これは絶対聞こう!」と思ってたんです! 決めてることでいいです。これはしよう、これは絶対避けよう、とか。
上堀内監督:え〜。テレビとか映画とかに限らず、表情や身振りだけで感情を表現できるように、というのはいつも目指してるところではあります。
篠宮:セリフ以外のところで。
上堀内監督:そこで「今、この人こう思ってるんだろうな」ってことを表現したり、逆にどういう気持ちでいるのかわからない、って思わせることをやると、見てる人がいろんな捉え方をできるんだろうなって。それを役者と一緒に目指していますね。
–{「“父親”は僕の趣味ではない(笑)」}–
篠宮:では、面白い作品を作る上での強みだと思うところはありますか?
大森P:面白い作品作ってる前提の…(笑)。
篠宮:そこは自信持ってください! 面白い作品ですから。
上堀内監督:これ、文面になったら「あいつら、なんなんだ!」ってなるでしょう(笑)。
篠宮:そこは僕が悪者になりますんで(笑)。
上堀内監督:じゃあ、大森さんからどうぞ(笑)。
大森P:強み…。
篠宮:強みというか、得意というか、こういう持っていき方が好き、でもいいですし。
大森P:またか、っていわれるんですけど…「また、父親か」って。あれは僕の趣味ではない(笑)。父親は僕の中で全然キーポイントじゃないんですけど…。
上堀内監督・篠宮:あはは!
大森P:やっぱり『仮面ライダードライブ』とかを経て…今回、「ビルド」はもう武藤さんの世界ではあるんですけど、基本的には仮面ライダーって変身ものだし、いろんなギミックやフォームがいっぱい出てくるんですけど、人の感情でシーンを組みたいと考えていますね。感情に対して、後付けでフォームチェンジとかが乗るべきだと思っているんで。
篠宮:う〜ん!
大森:「エグゼイド」では、特に後半のあたりからそこを意識して高橋さんとやってたのがうまくいった気がしてました。「ビルド」はもともと武藤さんのドラマありきで始まってはいますが、その辺はうまくいって、1クールくらいで落ち着いてと思ってたら、どんどんアイテムが増えていって、感情で組むことに苦労しましたね。
篠宮:フォームチェンジありきにはならないように、ということですね。監督はどうですか?
上堀内監督:なんですかねぇ。最初に大森さんがいってくれてましたけど、もらった脚本に対してテーマをきっちりさせたい、というのはあります。ずっと緊張させたくはないので抜くとこは抜きたいですが、一切笑いがない話があってもいいと思うんです。必ず笑いとか泣きを入れてバランスよく、とはせず、その回のテーマに沿ったものを正味21分ほどの短い時間の中で感じてもらいたい。だから、見ている人間に人間の感情を伝えるというテーマの絞り方は、映画だろうとテレビだろうとやっています。強みというか、それを芯としているところはあるかもしれないですね。
篠宮:上堀内監督のオンエア後には、「やっぱ神だな」みたいなツイートがタイムラインにわぁ〜って!
上堀内監督:ちょっと…やめてもらっていいですか(笑)。
篠宮:他の方の演出もすごくいいんですけど、なんですかね、音を消してみたりとか、今までなかったようなシーンが見られるのが、ファンはうれしい。
大森:音ね(笑)。46、47話を撮ってもらったんですけど、武藤さんが書いた最後のシーンが完全にカミホリさん向けのシーン(笑)。
上堀内監督:脚本を読んでて自分で笑うくらい、僕は、武藤さんと大森さんに操られてるんですよ。
大森P:「上堀内演出を脚本にしてきた」っていう。
篠宮:「カミホリ監督はこう撮るやろ!」と。
上堀内監督:これぐらいやらないと、多分「この前で切る」って言い始めるだろう、と書かれたのが見える。その前のシーンがまたよかったので、それを上回る何かを入れないと、僕が絶対にそのシーンの前で切るだろうという武藤さんの思いが(笑)。その結果、本当にすばらしい、僕の趣味にどハマりする感じのシーンになっていて。
篠宮:え〜! 楽しみだなぁ。
上堀内監督:でも、脚本家さんにそこまでさせてしまうのは申し訳ないですけどね。
大森:武藤さんが言ってましたけど、「監督ごとにこんなに違うのか」って。連ドラだったら、最初に撮った人に合わせて演出していくのに、「仮面ライダー」の監督たちは自己主張が強すぎて、どうやっていいかわからない、って(笑)。それが結構ショックだったらしくて、監督ごとにちょこちょこ書き変えてるんですよ。
篠宮:そうなんですね!
上堀内監督:だから、武藤さんにごめんなさいしないとです。
篠宮:そうしてカミホリさん用の台本がきて、それを撮ったんですか?
上堀内監督:まんまと(笑)。そういう感じで書いてくださると、試されてる気がして。「どうだ、これでやってみぃや」ときた感じで、じゃあ、これを上回って映像で送り出すには…ってなるわけです。やっていて楽しかったですけど。
篠宮:めっちゃ楽しみ! 「ビルド」に限らず、作品を作っていく上で、影響を受けているものってあるんですか?
上堀内監督:漫画もアニメも好きですし、洋画も邦画も。もともと邦画大好きですし。合間があったら映画を見たり、本を大量に買ったりとかいろんなものを見てますけど。ひとつに、僕の世代は深夜アニメが一般化してきた時代の人間なんですよね。「仮面ライダー」は、実写だけどSF部分などの特撮の要素があるので、実写じゃありえないようなアニメの描写やポーズなんかをちょっと入れてみるのもアリだと思っているんです。実写の世界観、アニメの世界観というのをいいとこ取りできる作品なのかなって。だからこそ、いろんなものを見たいなっていう思いはあります。
篠宮:反映するしないは別として、とりあえず見る。
上堀内監督:そうですね。すごいなこの構図、このカメラワークっていう、アニメだからできるものもあれば、実写は実写なりのすごさもあるわけで。そういう意味で、観るジャンルが増えているというのは身になっているかもしれない。アニメが進化した時代を一緒に生きてきてたんで、その要素も受け入れられることがある意味強みかもしれないですね。
大森P:僕はもう、学生時代に見たハリウッド映画ですね。メジャーな作品が多かったですけど、中学、高校で見たハリウッド映画に影響されているところが大きい。あの頃は、ハッピーエンドで大団円みたいなハリウッドのメジャー系作品に対抗した流れがあって。いわゆる悲劇的なエンディングのような作品が多かった時期だと思うんですけど、学生時代にそういうものを好んでよく見てた気がします。それを経て、東映に就職したときに『仮面ライダー555』をやってたんですが、まさに“そういう”感じだったんです。
篠宮:そうですね。悲劇もありつつ。
大森P:それが面白いなって思ったのは、よく覚えてますね。
–{二人でクラウドファンディングしてるかもしれない!?}–
篠宮:作品をつくる上での原動力みたいなものって、どこにあるんですか?
上堀内監督:なんでしょうね…。最終的にやりたい、漠然としたもの…それは「仮面ライダー」だけじゃなく、監督人生としてこうありたいっていう像はあるにしても、まず一個一個の目の前の目標をたてるようにしています。「平ジェネ」であれば、初めての劇場映画ですごい企画をいただいたので、このくらい多くの人たちに見てもらいたいとか。テレビシリーズもですが、小さい目標に向かって、それが達成できたかどうかが見える楽しさがあって。そこをモチベーションにやってる部分もありますね。漠然としちゃうと、どこかで折れちゃいそうだなって。
大森P:難しい質問ですけど、まずは自分が楽しむことですかね(笑)。
上堀内監督:そうですよね〜。
篠宮:「エグゼイド」も「ビルド」も存分に楽しまれてる感じですか?
大森P:楽しいですし、自分はこういうことが好きなんだろうなっていうのもありますね。それに、いつか「これを作ったら死んでもいい」みたいな映画を作って死にたいと思ってるんですけど、そのために今、いろんな経験を積んでるんだろうと思いますね。
篠宮:最後にどうしても聞きたいんですが、次担当されるときに、こんな作品をというビジョンはもうあります?
大森P:…言いづらいですね。実はあるんですよ。でもまだ言えないです。
篠宮:ざっくりでいいんで…!
大森P:次は決まってませんから、いいません! 半年後にはプロデューサーをやってない可能性だってあるので…(笑)。
篠宮:じゃあ、次に担当された作品を見たら、「大森さん、これやりたかったんだな」って。
大森P:そうですね。
篠宮:監督はどうですか?
上堀内監督:こういうジャンルの作品を取りたいというのが溢れてるので、一概に真っ先にこれをやりたいというのはないんですよ。いろんなものがやりたいので。でも僕も、大森さんと一緒で、次がまったく決まってないので…。
篠宮:もう、なんやねん(笑)!
上堀内監督:半年後には僕も監督やってないかもしれないですもん。
大森P:ねぇ(笑)。それでも諦めきれず二人でクラウドファンディングしてるかもしれない。
全員:(笑)。
篠宮:まぁ、二人ともやりたいものがあるということで、ファンはこれからも期待してもいいですよね?
上堀内監督:…皆さんから出資を募って。
大森P:クラウドファンディングをしたときはお願いします(笑)。
上堀内監督:お願いします(笑)。
篠宮:僕も、1万円までなら出します!
インタビュー後記
『平成ジェネレーションズFINAL』のときに、上堀内監督と大森プロデューサーにインタビューしたいと言っていたのを、今回の「Be The One」で叶えていただきました。二人一緒の機会じゃないと聞けなかったんじゃないか、という話を聞けて幸せでした。
このインタビュー後に映画を見たんですが、やはり予想をはるかに上回る出来で、「上堀内監督の撮りたいのここだったんだな」などと思いながら見させてもらいました。もう映画を見られた方も、このインタビューを読んでからもう一回見に行ってみると、また新たな発見があるかと思います。
(写真:八木英里奈、インタビュー、インタビュー後記:篠宮暁、文:大谷和美)
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