どうも橋本淳です。12回目の更新です。
12回目ということは、開始して半年が経ったという事か。という事は今年も下半期に入ったという事か。とういう事で2018年残り半分もよろしくお願い致します。
『レディ・バード』
(C)2017 InterActiveCorp Films, LLC.
今年注目作のひとつですね。
いやー今年は勝手に豊作だと思っているんですが、そのため作品選びも大変です。(うれしい悲鳴)
2017年に封切られ、口コミで徐々に広がり、全米4館から始まった公開も1557館まで拡大し、見事なスマッシュヒットを見せた作品。ゴールデングローブ賞で作品賞、主演女優賞を獲得、アカデミー賞では5部門ノミネートという快挙。
日本でも話題沸騰の本作、橋本も遅ればせながらようやく見て参りました。予告編のレディバードが車から飛び出すシーンを観てから、早く行かねば!と思い始めてからようやくです。まずは簡単にストーリーなど。
2002年、カリフォルニア州サクラメント。高校生のクリスティンは、母マリオンとともに大学見学のために出掛けていた。その帰途、車中で2人は口論になる。都会の大学に進学したいと言うクリスティンと、地元に残らせたい母の喧嘩。そしてクリスティンは口論の末、癇癪を起こし突然、走行中の車のドアを開け、飛び降りる。(ここです! 観たかった飛び降りシーン!)クリスティンは右腕を骨折、ピンク色のギブスに一言書く。「くたばれママ」。
クリスティンは自分に「レディ・バード」と名付け周りにもそう呼ばせる。さらに、親友ジュリーと参加することになったミュージカルで知り合った男子生徒のダニーと付き合うことに。母との関係は相変わらずだが、学校生活や、ダニーとの関係は順調そのもの、、、だったが、ダニーが男の子とキスしているところを目撃してしまい、レディバードはショック受け、2人は別れてしまう。
そして、アルバイト先で知り合ったバンドをやっている美少年カイルと出会う。カイルは学校の中でも人気のグループにいるような子、そんな彼らとつるむようになり、親友のジュリーとは疎遠になっていく。
カイルと初体験を済ますレディバードだったが、彼が童貞でなかったことにショックを受け傷ついてしまう。泣き出すレディバードを心配する母。2人は久々に穏やかな時間を過ごした。高校卒業が近づいてくる。そんな時に、こっそり父にお願いし、ずっと志願をしていた東部の大学から補欠合格の通知が。レディバードの出した答えは。。
(C)2017 InterActiveCorp Films, LLC.
2002年に高校3年生。ということは、あの時代に戻るなら、僕はレディバードとほとんど同じ年ということになる。(正確には僕は2004年に高校3年だったので2つ上ということになる、一応)
だからなのか、女子の話ですが、やたら共感というか、“分かる分かる”“あるある”と思うシーンが多かったです。家族との衝突、現状の無限に思えるループからの脱出、学校ヒエラルキーの呪縛、よく見せるために無理な背伸び、細々したことがいちいちビビッときました。
本作の監督は(やはり同年代くらい)、単独初監督のグレタ・ガーウィグ。
女優としても多くの作品に出演しております。
『フランシス・ハ』『20センチュリー・ウーマン』『ジャッキー』『犬ヶ島』など。ノア・バームバック監督やジョー。スワンバーグ監督と共に共同脚本を務めながら、さらに女優としても参加し多方面で活躍。本作で“単独”初監督。
インタビューを読むと、彼女のバイタリティ満ち溢れている姿に影響を受けます。
女優として参加していた現場では、自分の出演シーンが終わっていてもセットに残り、照明やセットの技術的細部をノートにとっていたそうです。俳優として参加しているとセットから追い出されることがない、その恩恵を最大限に利用する、と彼女は述べています。さらには現場で、あらゆるスタッフからアドバイスを求め、指導者になってくれるよう頼んだともあります。(パンフ 大寺眞輔さんの文 参照)
その準備の姿勢たるや、、、自分が映画を撮るための助走を最大限に利用する彼女の精神と頭の良さに、刺激を受けます。同年代と知ると刺激を越して、焦りになってかます。(自分は何やってるんだ、、時間を無駄にするな、と、、)
そんな彼女だからか、細かい所まで気を配ってあり、なおかつやり過ぎていないステキな映画が生まれたのでしょうか。
–{次ページではネタバレを含みつつ本作の魅力を語ります}–
キャラクター設定、衣装、セット、照明、どれもが主張しすぎず役に寄り添っているような、見事なバランスを保っているように感じました。
なにより台詞がいい。
(C)2017 InterActiveCorp Films, LLC.
監督が演劇が好きなこともあるかもしれませんが、丁寧かつ無駄な説明を省いたことが効果的でした。時に家族の説明なしな部分。観ていたら自然と「ああ、なるほど養子かな」と分かっていく観客心理も、自然とシームレスに操られている感じがするほどでした。(レディバードと兄ミゲルの関係。)
出演は、クリスティン(レディ・バード)役にシアーシャ・ローナン。レディ・バードと口論を重ねながらも、深い愛を感じる母マリオンにローリー・メトカーフ。母娘の間に挟まれながらも中立を保ちつつ、優しげな眼差しを送る父にトレイシー・レッツ。親と喧嘩せずに過ごしているが、大学卒業後に陥りがちな闇の中にいる兄ミゲルにジョーダン・ロドリゲス。最初の彼氏ダニー役にルーカス・ヘッジ。知的なイケメンバンドマン・カイル役に、ティモシー・シャラメ。親友ジュリー役に、ビーニー・フェルドスタイン。
個性豊かで実力派な面々です。監督自ら直談判したりオーディションで選んだこの配役は、それぞれの個性にピッタリはまっていて、どの役者も魅力的に映っていました。我ら(誰らだ?)がティモシー・シャラメは、知的な雰囲気は『君の名前で僕を呼んで』同様ふんだんに醸し出し、今作はちょっぴりプレイボーイな青年を好演。
レディバードと母。レディバードと父。レディバードと親友。
これらのシーンは何度も観たいと思えるほどのシーンでした。
特にプロム当日のカイルの元から去り、親友ジュリーの所へ戻り、2人で会場に向かう流れ、胸が熱くならない筈がありません。涙を流すより上の感情を味わわせてもらいました。
間違いなく傑作。
間違いなく心に残る1本になることでしょう。
レディ・バードを是非映画館で。
以上、今回も橋本淳が、おこがましくも紹介させていただきました。
(サントラを聴きながら)
(文:橋本淳)