(C)2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC
映画『死霊館』の冒頭で存在感を放っていた呪われたアナベル人形。人形にまつわる話も怖いためか、スピンオフとして『アナベル 死霊館の人形』も作られ、どのようにして呪われた人形が誕生したかを描いていました。
さらに今回は人形自体の誕生秘話が語られます。同作の怖さの見せ方や面白さ、過去作との関連性などを説明します。
『アナベル 死霊人形の誕生』はこんな話
12年前に幼い愛娘を亡くしてしまった人形師夫婦が暮らす館。夫婦の元に孤児院の6人の少女ととシスターがやってきます。夫婦は彼女たちに自由に家を使っていいといいますが、娘と奥さんの部屋だけは入らないよう言いつけます。
新生活に胸を踊らせる子供たち。しかし、足の不自由な少女ジャニスだけは、家の不気味な雰囲気を感じてしまいます。
ある晩、ジャニスが目を覚まして廊下にでてみると夫婦の娘の部屋のドアが開いており、入るとそこにアナベル人形がいたのだった。呪いの封印が解かれたアナベルは少女たちを襲い始める、呪われた人形の誕生を描くホラー映画です。
ポイント1:アナベル人形が作られたお話
前作にあたる『アナベル 死霊館の人形』では、アナベル人形がなぜ呪われた人形になったかが描かれていました。
今回は人形自体がどのような経緯で作られたかが描かれています。人形作りの映画が怖いのか否か。そこがミソで、さらに呪われた物語が展開していきます。
人形自体はオープニングでほぼ完成されているので、あれどうなるんだろうと思っていたら、直後に人形師さんの娘さんが事故死。これでもしかしたら……と予想したんですが、当然そんな簡単で単純な話ではなく、いろいろ捻りがきいた展開になっていきます。
ポイント2:直接的なホラ-描写が多め
一口にホラー映画といっても、見せ方・恐怖の演出には様々あります。例えば、大きな音を出して驚かせたり、血を派手に見せたり、殺人描写に凝ってみたり、死体を突然だしたり……などなど。
『死霊館』シリーズはスピンオフを含めて今作で4作目になります。映画が作られるたびに新しい怖さを追求し、観客を恐怖のどん底に落としてくています。特に今回は大きな音や、出るぞ出るぞというタイミングでのクリーチャー出現と結構直接的な恐怖演出が多かったです。
同作の監督は一つ前にもホラー映画を撮っていて、その作品も直接的な脅かし方が多かったです。
また、同作では恐怖を演出するため、小道具が多数使われています。例えば屋敷内で人形師の奥さんの体の調子が良くないことから、階段に沿って電動で登るエレベーターのようなものが着けられています。進むスピードはとてもゆっくりです。足の不自由なジャニスは階段の上り下りでは当然それを使うことになり、中盤恐ろしい目に。
他にも銃型でボールに紐がついていて、撃つとボールが飛び出すのですが、紐で手繰り寄せることができます。それを暗闇に向かって撃って怖い目にあったり…。
(C)2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC
ポイント3:ゆっくり少女たちを恐怖が包む
物語が動くのは、6人の少女たちが人形師の元へ訪れるところ。ほぼ全員は大きなお屋敷だからと喜ぶのですが、足の不自由な少女ジャニスだけは最初からおかしな雰囲気を感じています。
普通の人は、口数が少なく陰鬱な旦那さんと部屋からでてこられない奥さんの家に行くとなると……「行っていいのかな」と考えるのではないでしょうか?さらに家に行ってみると、入ってはいけない部屋があったりとかしたら、不自然だな、と思いますよね。そんなこともあまり気にならないようで、家の噂話で盛り上がる少女たち。しかし、次第に恐怖は彼女たちに忍び寄ってきます。
ターゲットとなるのは数名なので、なかなか信じてもらえないということと、上級生たちは不思議な体験をしても、なかなか認められません。そこはちゃんとシスターに報告して「この家から出よう」という方針を固めるのが一番だと思うのですが、次の受け入れ先が見つかってないからか、家から動こうとしません。
そうこうしているうちに、アナベル人形も自由に家の中をうろつけるようになってしまいます。
(C)2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC
ポイント4:『死霊館』のアナベル人形
『死霊館』では冒頭に呪われた人形の資料として授業で紹介され、死霊館に収められるところから映画がスタートします。死霊館というのは、カトリック教会が唯一公認した心霊研究家ウォーレン夫妻の家で、世界中の呪われた品や悪魔が封印された道具などを集めて展示している倉庫のようなところです。
同作のキービジュアルにもアナベル人形は使われていますが、劇中は最初に封印され、最後の方にちらっと悪霊が使おうとするくらいで、大したことはほとんどしませんでした。
ただ、アナベル人形にまつわる話がなかなか怖いということと、出番自体は少ないのに存在感があるということで、『アナベル 死霊館の人形』というスピンオフ作品が作られることになります。
ポイント5:『アナベル 死霊館の人形』のアナベル人形
こちらアナベル人形の少し前の持ち主の話。出産祝いにとアナベル人形をアンティーク店で見つけて買ってきます。しかし早い段階で呪いについての詳細はさけますが呪いがかけられ、出産直前の夫婦はすぐに捨てて、引越しするのですが、引越し先にも人形が現れるのです。
さらに、赤ちゃんの魂を奪おうと夫婦(特に奥さんの方中心)に襲い始めます。『死霊館』では存在アピールだけでしたが、こちらではアナベル人形がある意味主人公なので、ぐいぐいと襲ってきます。本来のアナベル人形につけられた呪いはこんなにすごいことができるのか、と感じられるでしょう。
ホラー映画のパターンによくあるのですが、序盤は呪いや心霊現象も物が動いたりする程度なのですが、終盤に行くとどんどん本気を出してくるというか、攻撃パターンが変わってきます。それこそ最初は影や霊らしきもの見せて精神的に驚かせる程度なのですが、終盤は物理的な攻撃もしてきます。
ポイント6:実際のアナベル人形
『死霊館』のパンフレットの中に実物のアナベル人形の写真が掲載されているのですが、陶器っぽい素材ではなく、ぬいぐるみです。
あまり迫力がなく、むしろ「これがアナベル人形??」と思ってしまうでしょう。だからより怖く見える今のデザインを作り上げたのでしょう。確かにこの人形を夜に見かけたら怖いだろうな……。
主役を張れるくらい秀逸なデザインになっていますね。しかし、実際に心霊現象は起こったようで、友達に襲いかかって怪我をさせたりしたそうです。あまりに危険なので現在も死霊館に置いてあり、月に2回、教会が清めにきているとか。
それでも完全に封印できているということもないようで、ガラスケースに「触るな危険」と張り紙がついているそうです。ちなみに、ガラスケースを叩きながら挑発した若い男性もいたそうですが……。どんなことになったかは少し調べればわかるので興味のある方は調べてみてはいかがでしょう。
なかなか怖い話をベースにしていますよね。人形にまつわる怪談も多いですが、ここまで危険なのも珍しいです。
–{次のページでは秀逸なストーリーテリングなどをご紹介!}–
ポイント7:秀逸なストーリーテリング
『死霊館』シリーズの魅力というとホラー要素以外に、ストーリーテリングがとても上手いです。今回の上手さは話のつなげ方です。すべての作品を巧妙に繋いで見事にユニバースを作り上げています。
特に秀逸なのが前作である『アナベル 死霊館の人形』とのつなげ方。前作があるのにさらに以前に時間軸を戻すとどうなるのだろう?という思いがありました。というのも、前作でアナベル人形に呪いをかけるというか、術を施すようなシーンがあり、それゆえ人間を襲うようになったということが判明しています。
そういう理由から、これ以上どう呪いやら悪霊やらを関わらせるんだろうと思っていたら、初期段階からというようにしたか……。
今回の作品は時間軸的に一番最初の時間になるため、すべての始まりになるようなストーリー展開になっています。さらに、今後作られるであろう『死霊館エンフィールド事件』ででてきたシスター幽霊のスピンオフとの関連もチラホラ見えてきたり……。
とにかく色々なところに関連してくるのは間違いないです。また人形になぜ「アナベル」という名前がつけられたか、というのも判明します。
(C)2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC
ポイント8:ホラーだけじゃない、ミステリーにドラマ要素も
娘さんが亡くなってからシスターたちが屋敷に来るまでに12年間経っており、その間に奥さんの様子もかなり変わってしまっています。12年の間になにがあったのか?それを探るミステリー要素。
さらに娘を亡くした夫婦が癒されるためにあることをします。シスターたちは家族を持つために、人形師夫婦の屋敷を訪れます。そして襲い来る恐怖体験の中で、シスターたちは絆を強めていき、より家族らしくなっていきます。
人形師夫婦もどれだけ娘のことを愛していたか、そんな感動的な描写もあります。ただ怖いだけではなく、こういうヒューマンドラマがしっかり描かれているところが面白いところで、『死霊館』シリーズ全般の魅力です。
ホラー映画が苦手でも、このシリーズは好きという人もいます。それは恐怖の演出が上手く、ホラー以外の要素も面白いからではないでしょうか。
(C)2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC
ポイント9:今後の展開
さらに、今後のユニバースにも繋がっていきそうで、アナベル人形の話もまだまだ作られそうです。できるかどうかは不明ですが、某殺人人形との共演の企画もあったりするとか。
ホラーファンにはたまらない企画、実現しない可能性もありますが、実現するとどんな話になるか、期待半分、不安半分です。
まとめ
アナベル人形の生誕の話ですが、『アナベル 死霊館の人形』にもきちんと繋がっています。もちろんツッコミどころは細かく見ていけばあるといえばあるのですが、めちゃくちゃ無理のある繋げ方ではありません。
むしろ上手く繋がっていると思います。なるほど、こういう風に続いていくんだ~って。確かにできたものの、話がぷっつりと切れていては関連がなくなって、同型で別の人形ってことになってしまいますからね。
最近ホラー映画自体の上映が少なくなってきました。ホラーファンは悲しい思いをしていることが多いので、『死霊館』シリーズが日本のスクリーンで見られるのはとても嬉しいことです。
怖いのは苦手という人も、ストーリーが面白いし、ミステリー要素、家族愛などなど、いろいろ他の要素もあるので、一度は映画館で見てもらいたいところです。
もちろん、しっかり怖いのでそこはホラー映画ということでご了承いただきたいところですね。しかし『死霊館』シリーズはそれを超えて面白い映画なので、一度は見て欲しいホラー映画です。
もしかしたらすごく気に入ってシリーズのファンになるかもしれませんよ?それだけの魅力がある作品です。
(文:波江智)