R-18、R-15、PG-12などはどうやって決められている?映画レイティングの深いお話

映画ビジネスコラム

achassignon via VisualHunt / CC BY-SA

映画のレイティングというのは、いわゆる年齢による鑑賞制限のことです。今回はそれらの区分がどのようにされているか。そんなお話をしてみたいと思います。

日本のレーティングはどうなっているか。

日本では4種類、厳密にいうと6種類あります。

日本では映画倫理機構という組織が作品を見て決定しています。行き過ぎた表現はないかをチェックする組織で、国からは独立した組織です。ここに国が入ると“検閲”になってしまうので、とても大切なところです。

G

まず最初がG、これは誰でも見ることができます。だから、あえて映画会社から言うことはありません。

PG-12

次がPG-12、PGはParental Guidanceの頭文字で保護者の助言があったほうがいいと言われています。あくまでもあったほうがいいってことで、結果的にこれもまた誰でも見ることができます。意味合いとしては“刺激が強いですよ!”というぐらいです。

R-15とR-18

この後からが入場規制・鑑賞規制があるR-15とR-18。R指定とか15禁、18禁なんて言われているものです。

これはそれぞれ15歳未満、18歳未満は見られません。ただ、中学卒業~高校入学までの期間や留年した高校生などなどグレーゾーンがあって、映画館によって多少対応が異なります。

例を最近のものであげると、深作欣二監督の『バトルロワイアル』です。中学生の1クラスが最後の一人になるまで殺しあうというショッキングな内容で当然のようにR15が付きました。

ただ主人公たちは全員中学生ということで監督側が猛抗議をしました。結果R-15で公開となったのですが、映画は大ヒット。同年4月に“祝中学卒業 中学三年生だったばかりにこの映画を見られなかった皆様へ”という痛烈な皮肉を交えたキャッチコピーをつけて特別篇を公開したことがありました。まぁ監督側がうまく一本取ったなという感じですね。

–{R-18映画にはどんなものがある?}–

R-18になるとほとんどが成人映画、つまりピンク映画です。壇蜜主演の『私の奴隷になりなさい』や、劇団ポツドール主催の三浦大輔が自身の岸田國士戯曲賞受賞作を池松壮亮や門脇麦など豪華キャストで映画化した『愛の渦』です。内容をご存知の方はさもありなんと思われるでしょう。

できるだけ多くの人に見てもらえるようにするためにR-18にまで達する映画というのは邦画ではごくわずかです。海外の映画では『お嬢さん』『グリーン・インフェルノ』などで年に数本ですね。

他にもある2つの分類

実はさらに2つ分類があって、「審査適応区分外」というのと「映倫未審査」というものがあります。適応区分外というのは何歳であっても推奨できないという意味のものですが、こんな作品はめったにありません。

逆に最近増えてきたのが未審査の作品、いわゆるインディーズ映画がこれにあたりますが、一昔前までは自主映画といえば中・短編どまりで、一般的な劇場公開はあまりされませんでした。しかし最近のデジタル技術の向上し、高クオリティかつ低コストで映画を撮ることができるようになって、結果的に60分以上の長編映画が一部の劇場でロードーショー公開されるようになりました。

映画館の番組編成責任者が公開を決めるぐらいですから、相応のクオリティですが、何分自主映画ということもあって表現の部分では結構キワドいものもあります。実例が増えてきているのでいずれ何かしらのルールができるかもしれませんね。

海外のレーティングは?

海外の映画のレイティングも年齢の部分が多少変わりますがほぼ同じで、一番上が大抵18歳です。日本で海外の映画のレイティングをするときはその映画の母国のレイティングが参考になったりもします。

–{レーティングはどこをチェックしている?}–

どこをチェックしている?

映倫がチェックする項目は実は非常にシンプルで映画内の描写の暴力的な度合と性的な度合いです。簡単に言えば“刺激の度合い”ですが、最近の傾向として犯罪やそれに類する行動を助長したり誤解をさせたりしないか?という部分も重視されています。

暴力から派生して犯罪行為を助長・誘発させるようなシーンがあると制限が強化されます。描写がきつい割には最後にこういうことをすると罰を受けますよ、身を滅ぼしますよという終わり方だとちょっと緩くなることもあります。昨年の李相日監督『怒り』がR-15ではなくPG-12だったりするのを見ると少しは伝わるでしょうか。

ここでいう犯罪には殺人や強盗はもちろん、暴行や破壊、薬物乱用、人身売買、詐欺、ペドフィリア、売買春、密入国、援助交際、裏社会への利益提供など多岐にわたります。

中には岩井俊二監督の『スワロウテイル』が紙幣偽造を扱ったということでR指定を受けたなんて言う変化球まであります。性的描写については犯罪性は低くてもヌードシーンの多さ、SEXシーンの多さなどがそのまま反映されています。

いよいよシリーズ完結の北野武監督映画『アウトレイジ』シリーズなんかはR-15指定と言われても納得ですが、例えば今年のオスカー受賞作『ムーンライト』が薬物描写などでR-15になったりすると“あれ?そこまで?”と思ったりもしますね。

まぁ、人形劇(?)の『テッド』やアニメの『ソーセージ・パーティー』R-15なので……。

–{レーティングの境目を10本の映画を例に解説}–

境目はどこに?

近年の邦画の話題作・ヒット作で一般的に暴力性・犯罪性の度合いの強い作品を10本ピックアップしてみます。

『東京喰種 トーキョーグール』
『ミュージアム』
『寄生獣』
『クローズZERO』
『脳男』
『闇金ウシジマくん』
『アイ・アム・ア・ヒーロー』
『神さまの言うとおり』
『告白』
『悪の教典』

作品をご存知の方からすると「どれもR-15相当では?」と思われるかもしれませんが、ある部分で線引きがされます。

Photo credit: _Krikke_ via VisualHunt / CC BY-NC-ND

 

PG-12作品
『東京喰種 トーキョーグール』
『ミュージアム』
『寄生獣』
『クローズZERO』
『脳男』
『闇金ウシジマくん』

R-15作品
『アイ・アム・ア・ヒーロー』
『神さまの言うとおり』
『告白』
『悪の教典』

特に『寄生獣』はR-15指定を受けないように映倫と綿密にやり取りをしたとのこと。そこでよく言われたことが“過程”を綿密に描く指摘を受けやすいということだそうです。

とんでもないことが“起こるぞ!起こるぞ!”という前振りのところから一気に“起きた!”に持っていくとPG-12で納まることが多々あるそうです。

『寄生獣』の場合は、胴体が切断される直前までを描きながらも切断の描写はなし。次のカットでは既に切り離されているというかなり高度な調整が図られています。切り離された後であれば内臓が出ていてもR-15指定とならないということが『寄生獣』で証明されました。

レイティングのメリット・デメリットとは?

レイティングのメリットってなに?と思われる方も多いでしょう。ここまでの話を見れば、そもそもその映画を見ることができる人が減り、さらに作品についてネガティブなイメージがついてしまいます。さらにソフト販売・レンタルの制限やテレビ放映、海外上映などの際に指定を受けているばっかりに支障が出ることもあります。

しかし、指定はあくまでも公開前に受けるものであって、公開前に修正することも可能なわけです。それでもなお指定を受けたまま公開するということは、裏を返すと作品のテーマに真摯に向き合った結果、審査に引っかかるような表現を削るわけにはいかなかったという作り手の意思表示でもあるのです。

例えば『凶悪』や『さよなら渓谷』『虐殺機関』はその根幹の部分の表現を弱めたりすれば映画の本質が大きく下がってしまいます。

ブラジルの犯罪多発地帯のストリートチルドレンの姿をリアルに描くことを目的にした『シティ・オブ・ゴッド』にはR-15の暴力描写が必要だったのです。

映画レーティングは普段映画を見る側からすると既に決まっているものでしかありませんが、その裏にはこのように様々な決まりや区分、そしてドラマが存在するのです。

(文:村松健太郎)