『ハルチカ』が100点満点で8000億点の理由!橋本環奈が佐藤勝利をイジって全ての人が幸せになる大傑作!

映画コラム
ハルチカ ティザー

(C)2017「ハルチカ」製作委員会

3月4日より公開の『ハルチカ』がとんでもなく最高の映画でした!はっきり言って、日本の実写映画の中で、青春音楽映画という枠組みの中で、史上もっとも大好きな作品ですよ!

本作は老若男女分け隔てなくオススメしたい!とにかく劇場に足を運んで欲しい!という気持ちがあまりにも強いので、テンション高めに大絶賛します!大きなネタバレはありません!

1:橋本環奈が佐藤勝利をイジッたり蹴ったり殴ったり命令したりする!みんなが幸せ!

本作の主演は“奇跡の1枚”の写真で話題となり『セーラー服と機関銃ー卒業ー』でスクリーンデビューを果たした橋本環奈、そして映画初出演にして初主演となるSexyZoneの佐藤勝利の2人が務めています。もうこの2人がかわいい!演技力も素晴らしい!この時点で1000億点です!

しかも、橋本環奈が演じるのは“自由奔放で勝気なヒロイン”で、佐藤勝利は“そのヒロインに振り回されるけど実は聡明でやさしい男子”になっているんですよ!具体的には、劇中で橋本環奈は「はやくやれよ?ごらぁ!」などと言いながら佐藤勝利にキックをかましたりするんですよ!

そんな感じで佐藤勝利は橋本環奈にだいたいタジタジなわけですが、ある1点においてはその関係性が……おっとこれは言えない、とにかく、主演2人のファンにとって、これはもう眼福ものだってことです!

本作を観れば、女の子は「イジめられてる佐藤くんかわいい!」と母性本能がくすぐられ、男の子は「橋本環奈ちゃんにイジめられてえ!」とドMになり、みんなが笑顔になることでしょう。これこそ、日本中の全ての人を幸せにする映画ですよ!

2:リアルで佐藤勝利はMになっていた!?

前述の通り、映画の中では橋本環奈がSで佐藤勝利がMという素晴らしい関係性が築かれているわけですが、撮影時にもその橋本環奈のキックやパンチは重要なものと捉えられていたようです。

“気の強いヒロインと、彼女に頭が上がらない優しい男の子”という2人の距離感や関係性をつかむため、橋本環奈は殴り方や蹴り方を工夫し、佐藤勝利も何度も蹴られたり殴られたりする時のリアクションに細かい調整をしていったのだとか。

市井昌秀監督は、そんな橋本環奈に「もっと思いっきり(蹴って)!」と焚き付けており、彼女自身「相手役の佐藤さんが『もっと来てください!』という感じでどんと構えてくださったおかげで、とても助かりました」と語っていたそうです。

もちろん、これは佐藤勝利が積極的に役に入れ込んだということ、賞賛すべきことなのですが、個人的にはなんだか彼がリアルでMっ気を出していたような疑いを持ってしまいます(笑)。うん、まあ、あんなに天使のようなかわいい女の子に蹴られたり殴られたりするのは、特殊な趣味を持つ人にとってはご褒美みたいなものだよね!

なお佐藤勝利は、橋本環奈とチカ(ヒロイン)に“似た色”を感じており、それによって自身も自然な感情で接することができるようになったのだとか。撮影現場での2人の関係性が、映画本編でもしっかり反映されていると言って良さそうですね。

(C)2017「ハルチカ」製作委員会

3:実はミステリーの要素も?原作小説やアニメ版のファンにもおすすめ!

本作の原作は、「退出ゲーム」から連作となった青春小説「ハルチカ」シリーズです。実は原作およびアニメ版は、“日常の謎を解く”という“探偵もの(ミステリー)”の要素が強く、知り合いから謎を解く依頼を受けたり、はたまた身近な人物が“なぜそのような行動をしたのか”を推理する場面が多かったりします。

この映画版で特筆すべきは、その“日常の謎を解く”という原作の要素をしっかりと取り入れながらも、仲間とともに努力するという青春映画としての根幹がまったく揺らいでいないことです。

原作であったミステリー要素は少し形を変えて、しかも「原作よりもこちらのほうがいい!」と思えるほどの工夫が加えられて登場しています。それでいて2時間という時間に収まるように各エピソードが整理されており、それでいて吹奏楽部内での努力や人間関係もしっかり描かれている。1つとして無駄なシーンがないのです。

「ハルチカ」シリーズはアニメ版も放送され、ファン層が拡大していたおかげか、「実写映画化して欲しくなかった」、「設定を変えないで欲しかった」という声も耳にします。しかし、実際の映画は、“原作からの取捨選択がうまくできている”、“それでいて青春映画としての完成度を高めている”という点において、完璧と思えるほどの“調整”が行われていました。原作およびアニメ版のファンも満足できるのではないでしょうか。

きっと、「ハルチカ」シリーズの原作およびアニメ版のファンには「この要素をこんな風に描いてくれたのか!」という感動があることでしょう。もちろん、「ハルチカ」シリーズをまったく知らなくても楽しめますよ。

4:各キャラクターが魅力的!フレッシュな若手俳優たちの演技も要チェック!

主演の2人が魅力的なのは前述の通りですが、脇を固める俳優陣も負けてはいない、いや、それどころが全てのキャラクターが主役になってもおかしくないほどの存在感を示していました。

2時間の尺に収めるために、それぞれのキャラの描き方が“ほんの少し”になってしまうところもあるにはあるのですが、それでもその人物のことがすぐに理解でき、大好きになることができるのです(説明的なセリフがないのにもかかわらず)!もちろん、たっぷりの時間を使って描かれるキャラも主役2人と同じくらい愛おしくてしょうがない。映画が終わるころには、「ああ、こいつらともっと同じ時間を過ごしたかった……」と寂しくなってしまうほどでした。

もちろん、これはそれぞれのキャラを演じた若手俳優陣の熱演のおかげでもあるのでしょう。『ちはやふる 上の句/下の句』や『渇き。』の清水尋也、『くちびるに歌を』の恒松祐里、『ソロモンの偽証 前篇・事件/後篇・裁判』の前田航基、『中学生円山』の平岡拓真、『君の名は。』の上白石萌音の妹であり『金メダル男』などに出演している上白石萌歌、そのふくよかな体型などの特徴をすぐに覚えられる、オーディションで抜擢された新鋭の二階堂姫瑠など、10代のフレッシュな役者が揃い踏み、今後のさらなる活躍を期待したくなりました。

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–{あの『君の名は。』に似ている要素も!?}–

5:クランクインの4ヶ月前から猛特訓!キャストの気持ちと映画本編がシンクロしている!

前述の通り、キャストのほとんどが10代の同世代の男女であったおかげもあり、撮影中はお互いに名前で呼び合うなど、和気あいあいとした雰囲気だったのだそうです。

しかし、音楽の指導は劇中と同様、優しいものではありませんでした。キャスト一同はクランクインの4ヶ月前から音楽プロデューサーの濱野睦美と、各楽器のプロの先生の指導のもと、猛特訓をしたのだそうです。特に役の設定がホルン経験者である佐藤勝利は、コンサートの間を縫って週に複数回のレッスンに通い、撮影が始まってからも夜ごとに個別練習や合同練習を繰り返し、空き時間にも誰からともなく集まって演奏をしていたのだとか。

コンクール地区大会の撮影当日、キャストたちは初心者からスタートしたとは思えないレベルまでに上達していましたが、関係者以外(エキストラたち)
の人前で演奏を披露するのは、その時が初めてだったそうです。いわば、みんなが一緒に(時には1人で)練習し、短い期間であっても上達していき、そしてコンクールで緊張感にいっぱいになるということが、映画の撮影をしているキャストの気持ちと、実際の映画の内容とシンクロしているのです。

この“みんなで築き上げた音楽”をないがしろにしない作品作りのおかげで、劇中の音楽には実際にコンサートを聴きに行った時と同じようなリアリティがあり、音楽そのものの魅力をより感じられ、かつキャラそれぞれが持つ感情もより伝わるようになっています。音楽映画というジャンルにおいて、“音楽”そのものへのこだわりを大切にしたい人にとっても、大納得ができる作品と言えるでしょう。

(C)2017「ハルチカ」製作委員会

6:すべてのセリフやシーンに意味がある!伏線が回収される快感にいっぱいになる!

本作でさらに素晴らしいのは、何気のないセリフのほぼすべてが、意味のある“伏線”として回収されること!物語が進むにつれ、「あのセリフはこういうことだったのか!」、「そうくるとは思わなかった!」という、時には“本当の事実が判明する”喜びがあり、時には“まったく予想と違う!”というサプライズも満載なのです。

本作の監督と脚本を務めたのは『箱入り息子の恋』や『僕らのごはんは明日で待ってる』の市井昌秀。前々から話運びが上手い方だなあと思っていたら、本作での脚本の上手さはもはや“超絶技巧”なんて言葉でも足りません。言葉でベラベラと語らずとも、登場人物の気持ちが手に取るようにわかり、何気ないシーンで“関係性の変化”もわかる。映画としての理想の形が、ここにありました。

ぜひ、(何となく観ていても楽しめる映画ではありますが)1つ1つのセリフやシーンをよく覚えながら、集中して観てみることをおすすめします。映画の初めの“ナレーション”にも重要な意味がありますよ。

7:あらゆる日本映画の魅力が詰まっている!この映画が好きな人にとってもおすすめ!

本作はたくさんの日本映画(邦画)の名作をほうふつとさせるところがあります。具体的には、以下の映画に似ているのです。

・特に似ている3本!……『さんかく』、『ハッシュ!』、『湯を沸かすほどの熱い愛』。

・この映画っぽいところもある!……『ちはやふる 上の句/下の句』、『青空エール』、『くちびるに歌を』、『桐島、部活やめるってよ』、『君の名は。』、『聲の形』、『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』

“特に似ている3本”のどれかが好きなら『ハルチカ』を気に入ることはほぼ間違いないでしょう。この3本のどういう点が似ているかはネタバレになるので書けませんが、それぞれの作品を観ていれば「あっ!」と気付けるはずですよ。

そして、偶然にもあの『君の名は。』にそっくり(そのまんま)な、とあるモチーフが背景に登場していたりもします。そのモチーフが示しているものも『君の名は。』に似ているかも……。

もちろん、これらの日本映画を観たことがない人にとっても、『ハルチカ』は楽しめます。この映画を機に、もっと多くの日本の名作が観られるようになるとうれしいですね。

ハルチカ WEBポスター

(C)2017「ハルチカ」製作委員会

8:『セッション』にも似ている!?“音楽映画”として最高のクライマックスを見逃すな!

「おおげさだ」と言われるかもしれませんが、本作のクライマックスからラストにかけての展開は、今までに観たこの世の全ての映画の中で、一番大好きになりました。詳しくはネタバレになるので書けないのですが、このクライマックスは、あるポイントにおいては鬼教師と偏狭的な考えを持つ学生の関係を描いた映画『セッション』にも似ているのです。

正直に言うと、このクライマックスからラストにかけては、全ての人が絶賛するわけではないかもしれない、賛否がわかれるかもしれない。そのような予想もしてしまいます。それでも、このことを“やってのける”本作のことが、筆者は大好きで、大好きで仕方がないのです。

クライマックスとラストに納得がいかなかった、という人は、今までのセリフやシーンを思い出してみてください。きっと、気づけること、わかることがあり、好きになれるかもしれませんから。

このクライマックスとラストで、筆者は「こういうのが観たくて今まで映画を観てきたんだ」とまで思うことができました。しかもこれは、(これも詳しくは書けませんが)“音楽”を描いた作品としても最高のラストなんです。映画でしかできない、映画ならではの感動を、劇場で体験しようではありませんか!

おまけ:たった1つの欠点はこれだ!

そんなわけで、筆者にとって本作は控えめに言って100点満点で8000億点、2016年の豊作揃いだった邦画のさらにその上をいく存在、音楽映画としても青春映画としても完璧。「素晴らしい映画を観た」と高揚感でいっぱいになれるという大傑作中の大傑作なのですが、たった1つだけ欠点があります。

それは……橋本環奈ちゃんがかわいすぎて「必死にビラを配っても誰にも受け取ってもらえない」という展開に説得力がないこと!あんな美少女に「吹奏楽部に入ってください」と言われたら全員入るだろ!しかも佐藤勝利も配っているし!

まあそんなことを言ったところでどないせいという話であるし、8000億点が7999億9999万9999点になったくらいのことなので、気にする必要はありません。観る人を選ばない、老若男女問わずに楽しめる作品です。ぜひぜひ、日本映画史に残る、青春映画、音楽映画の大傑作を、劇場で見届けてください!

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(文:ヒナタカ)