見逃してませんか?2016年劇場公開作品の中で埋もれてしまった傑作2本!

映画コラム

激動の2016年が、ようやく終わろうとしている中、思い返せば今年の映画界は数々の大ヒット作・話題作が続出!中でも邦画界の盛り上がりは凄かったと言えます。
しかし、年々増えていく公開本数に比例して、良作・傑作でありながら公開状況に恵まれず、ヒット作の影で密かに忘れ去られていく作品が多いのも事実。

そこで今回は、2016年にちゃんと劇場公開、或いはDVDリリースされながらも、単館での短期間ロードショーだったりで、完成度が高く面白いのに全く知られていない「実力者」たちを紹介することにしよう。幸い今回紹介する2本は、現在DVD化されているので、年末年始でお目当ての作品がレンタル中だった時には、是非騙されたと思ってこれらの映画を選んで頂ければ幸いです。

懐かしのあいつらが帰って来た!今度の敵は溶岩を吐く巨大グモ!

今回紹介する2本の、まずは1本目。それがこの「ラバランチュラ・全員出動!」だ!

ラバランチュラ 全員出動! [DVD]

「未体験ゾーンの映画たち2016」の中の1本として公開され、現在はDVDリリースされている本作。小規模の公開ながら、ネットでの評価も4点以上と非常に高い評価を得ているこの映画、一体どんな内容だったのか?

予告編

ストーリー

かつて主演映画「レッドロケット」の大ヒットにより、一世を風靡した俳優のコルトン。しかし今では、冴えない中年男としてB級映画専門の俳優となっていた。
かつての栄光とあまりに違う毎日を過ごす中、突如ロサンゼルスを襲う未曾有の大危機!突如として起きた地割れから、なんと溶岩を吐く巨大クモ軍団が現れたのだった。地獄の炎に包まれる街、紅蓮の怪物から逃げ惑う家族。愛する者たちを守るため、みじめな自分の境遇から立ち直るため、今コルトンは仲間たちと立ちあがる!果たして彼は映画の中と同様に、ヒーローとしてこの危機を救えるのか?

溶岩を吐く巨大クモ軍団!迎え撃つのは、何とあのポリスアカデミー出演者たち!

突如として地割れから出現した、巨大グモの大群!溶岩を吐きながらロサンゼルスを攻撃する、巨大クモ軍団に立ち向かうのは、何とあの懐かしの人気コメディ映画「ポリスアカデミー」シリーズの出演者たちだ!

ポリスアカデミー 特別版 [DVD]

主演のスティーブ・グッテンバーグを始め、あらゆる音を自分の口で物まね出来る元祖ヒューマンビートBOXこと、マイケル・ウィンスロー、普段は気が弱くて蚊の泣くような声しか出せないが、怒らせると一番コワい女性警官役のマリオン・ラムジー、更には巨乳の鬼教官キャラハン役のレスリー・イースターブルックも登場!
以上の4人が30年の時を越えて、再び俺たちの前に帰って来た!それだけでも、アラフォー以上の世代にとっては見る価値がある!そう断言出来るだろう。適度にグロい描写とギャグを交えつつ、最後には感動のラストが待っている本作こそ、全ての映画ファンにオススメ出来る作品だと言える。

最後に

出演俳優の実生活と同様、昔の栄光から遠ざかってしまった元映画スターの主人公が、愛する家族を守るため仲間達と巨大クモ軍団に立ち向かう姿は、見る物に勇気と感動を与えてくれる!
本作は主人公たちの自信と尊厳の復活と、自身のキャリアや家族の再生という、普遍的テーマを描いた物語であり、昔自分が主演した映画のヒーロー「レッドロケット」の衣装と装備で、巨大クモのボスである女王グモに空中戦を挑む主人公の姿は、まさに「アイアンマン」を思い起こさせる。
更には、この手の「動物パニック物」映画が好きな人へのサプライズとして、なんとあの人気サメ物映画シリーズである「シャークネード」の主人公、フェイン・シェパードがカメオ出演!見事に楽屋オチのギャグを決めてくれるのも、ファンには嬉しいところだ。

「ポリスアカデミー」シリーズを知らない世代でも、とにかく見せ場の連続で大いに楽しめることは確実!娯楽映画の見本の様なこの作品、是非一度ご鑑賞を!

次のページでは、超1級のサスペンス映画「暴走車・ランナウェイカー」を紹介します!

–{超1級のサスペンス映画「暴走車・ランナウェイカー」}–

スペイン映画の傑作「暴走車・ランナウェイカー」!絶体絶命の危機からの反撃に注目!

2本目に紹介するこの作品、実は2015年11月の公開なのだが、DVD発売が2016年1月であるのと、どうしても紹介したい程の傑作であるため、敢えてここに入れさせて頂いた。
それだけの価値がある1級のサスペンス映画、それがこの「暴走車・ランナウエイカー」だ!

暴走車 ランナウェイ・カー [DVD]

予告編

ストーリー

ある朝、子供たちを学校に送るため車を走らせていた、銀行支店長のカルロス。やがて彼の携帯電話に、見知らぬ男から1本の電話がかかってくる。
その内容は、カルロスが運転している車のシートに爆弾を仕掛けたというもので、生きて帰りたければ42万ユーロを指定の口座に振り込め、という要求だった。やがて、同じ爆弾を仕掛けられた部下の車が爆発し、その破片で息子が大怪我を負う。犯人に監視される中、警察に通報することもできず車を走らせ続けるカルロス。出血多量で今すぐ手当てが必要な息子、包囲する警察、更にいつ爆発するとも知れぬ爆弾!果たして犯人の目的と正体は?そして、彼はこの絶体絶命の危機をどう乗り切るのか?

座席の下に爆弾、車を降りたり警察に助けを求めたら爆発!さあ、どうする!

出勤前、息子と娘を学校に送る主人公の車に、見知らぬ男の声で電話。なんと座席の下に爆弾が!
時間内に犯人の指定口座に大金を振り込め、車を止めたり、車から降りたら、爆発する。
車の後部シートには息子と娘。実は後部シートにも、爆弾が!
妻に電話をかけて振り込んでもらうように頼む中、実は会社の同僚も同じ目に会っていると知る主人公。
道でその同僚の車と同じ車線に。携帯で同僚と連絡を取り合う中、耐え切れず外に出ようとした同僚の車が爆発!
しかも、その破片が後部座席の息子の足を直撃!息子の足から大量の出血!だが、犯人が遠くから監視しているため、医者には行けない。
助けも呼べない中、車を止められ警察に包囲される主人公!爆弾と息子の命へのタイムリミットが刻々と迫る。
誰にも言えない、頼れない。警察を振り切って逃走を続ける主人公!果たして犯人の目的と意外なその正体は?

はい!ここまで読んで頂いて「まあ、そんな内容の映画は珍しく無いし、この程度の展開は余裕で読める」、皆さんそう思われたと思います。

しかし、これ、映画の序盤わずか30分の出来事です!
そこから更に、極限まで主人公が追い込まれ、文字通り「絶体絶命」からの反撃とラストの感動まで、マジでお腹一杯大満足の映画、それがこのスペイン映画「暴走車・ランナウェイカー」なのです。

特に、父親に対して反抗的で憎まれ口を叩いてばかりいた娘が、危機的状況の中で取る「ある行動」には、本気で胸を打たれます!
人間、口から出る言葉ではウソをつけても、咄嗟の行動はウソがつけない。そんな大事な事を思い出させてくれる本作の親子関係!そこだけでも本作が単純な凡百のサスペンス映画とは違い、優れた脚本によって作られた傑作であることの証明だと言えるでしょう。
ただ欲を言えば、ラストがあまりに「あっさり」しているので、確かに多少物足りない気はするのだが、そこに至るまでの展開は正に面白さの連続なので、是非レンタルでご確認を!

最後に

では最後に2016年の締めくくりとして、個人的2016年のベスト10を紹介させて頂くことにします。
是非こちらの方も、レンタルや劇場鑑賞での参考にして頂ければ幸いです。(残念ながら、洋画を10本選ぶのは困難だったので、5本とさせて頂きました)

2016年邦画ベスト10

1位:「湯を沸かすほどの熱い愛」
2位:「KINBAKU−華の章」
3位:「変態だ」
4位:「ディストラクション・ベイビーズ」
5位:「怒り」
6位:「クリーピー」
7位:「貞子vs伽椰子」
8位:「セーラー服と機関銃ー卒業」
9位:「クズとブスとゲス」
10位:「過激派オペラ」

2016年洋画ベスト5

1位:「私の少女時代」
2位:「バットマンvsスーパーマン」
3位:「死霊館:エンフィールド事件」
4位:「ドラゴンブレイド」
5位:「ラバランチュラ」

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(文:滝口アキラ)