実在事件がベースの映画オススメ3選と『日本で一番悪い奴ら』の魅力

映画コラム

日本で一番悪い奴ら

(C)2016「日本で一番悪い奴ら」製作委員会

6月25日から公開中の映画『日本で一番悪い奴ら』。今作は「稲葉事件」と呼ばれる実際に起こった事件とその主犯として逮捕された警察官の手記『恥さらし 北海道警 悪徳刑事の告白』を原作に制作された作品です。

映画への期待を込めつつ原作を読んだ筆者が、今作の紹介と実在の事件を元に作られた映画を3つご紹介したいと思います。

「日本で一番悪い奴ら」とは誰なのか?

ネットの検索で「北海道警」と入れると、検索想定ワードに「不祥事」「裏金」「逮捕」など、物騒な言葉が並びます。
これは日本警察至上最大の不祥事と呼ばれる「稲葉事件」にまつわるキーワードです。

成績至上主義の北海道警では、拳銃や麻薬の摘発・逮捕などが点数制で計上され、競わされていたそうです。その中で成績をあげていたのが、柔道の腕を買われ刑事となり、先輩から刑事のイロハを叩き込まれた稲葉(今作では綾野剛演じる諸星)でした。

しかし、その裏にはヤクザやマフィアとつながりを持つS(スパイ)を使った犯罪ギリギリの捜査や銃の売買が行われており、上司もそのことを黙認という形で推奨していたため、過激な捜査はエスカレートしていきます。

その後、稲葉は逮捕され、手記という形で自身の犯罪行為と道警の裏金を告発します。

この事件はひとりの刑事の暴走ではなく、組織的に行われた犯罪だということ。それが映画化された今作の「悪い奴ら」というタイトルに反映されています。

日本で一番悪い奴ら

(C)2016「日本で一番悪い奴ら」製作委員会

監督は映画『凶悪』の白石和彌

実在の事件とは思いたくないほど残虐な人間の姿を描いた映画『凶悪』を撮った、白石和彌監督が今作のメガホンを取っています。

思わず目をそらしてしまいたくなる描写で狂気を描いた白石監督。映画のイチ観客ながら、とても勇気のいることだったのではないかと思います。

そんな白石監督がまた実在の事件を撮るということで期待が高まるのですが、「東京スカパラダイスオーケストラ feat. Ken Yokoyama」の軽快な主題歌が印象的な予告映像や芸人・植野行雄が登場するということからも、前作とはまた色の違った作品に仕上がっていそうな予感です。

きっと、タブーとされるような内容をしっかりと描きながらも、映画というエンターテイメントに昇華して、ダークな雰囲気の映画が苦手という人でも観られる作風になっているのではないかと思います!

次のページでは実在事件を描いた映画のオススメ3選をお届けします!

–{実在の事件を描いた映画3選}–

実在の事件を描いた映画3選

今作をきっかけに、実在の事件を実写化した映画に興味を持ったという方へおすすめの作品を紹介したいと思います。

映画『凶悪』(2013年)

凶悪


死刑囚・須藤純次(ピエール瀧)が告発した男・木村孝雄(リリー・フランキー)は、周りの人間から先生と慕われていた不動産ブローカー。その正体は、身寄りのない年寄りや借金を抱えた家族に親切を装って近づき、土地や保険金目当てに人を殺して金を手にする死の錬金術師だった。

原案は茨城県で起こった「上申書殺人事件」で、実際に事件を追った記者の著作が原作となっています。その記者をモデルにしたスクープ雑誌記者・藤井修一(山田孝之)の取材から、徐々にその残酷なやり口が明らかになっていきます。
事件部分に関してはほとんど原作と変わらない内容で、観終わったあとに後味の悪さが残ります…。

映画『恋の罪』(2011年)

恋の罪


敏腕刑事の吉田和子(水野美紀)は、雨の夜に渋谷のラブホテル街で起こった殺人事件の現場に急行することに。そこにはマネキンと接合された女の変死体があり、後日その半身の死体も発見される。事件を追っていくと、円山町で体を売る二人の女の奇妙な関係か浮かび上がってきて…。

未解決事件の「東電OL殺人事件」を原案に園子温監督がメガホンをとっています。事件をリアルに描いた作品ではなく、フィクション色強めの作品ですが、夜の世界と人間の闇の部分の毒々しさが際立っています。
また、もう1作、実在の事件を元に園子温監督が手がけた映画『冷たい熱帯魚』についてはこちらで紹介しています。
http://cinema.ne.jp/recommend/realoni2015052407/

映画『クライマーズ・ハイ』(2008年)

クライマーズ・ハイ [DVD]


群馬の地方新聞社に勤める悠木和雅(堤真一)は、群馬の山奥「御巣鷹山」で起こったジ日本史上最大のジャンボ機事故の全権デスクを任されることに。他社との争いのみならず社内の派閥にも圧力を受けたり、報道のあり方に葛藤しながら、いち早く確実なニュースを読者に届けるべく狂奔する。

「日本のいちばん長い日」(2015年)では戦争の史実を映画化した原田眞人監督が「日本航空123便墜落事故」を題材に制作した映画。こちらは事件ではなく事故がベースの作品ですが、報道の現場を通してプライドや嫉妬、対立などリアリティのある人間模様を描いています。
テンポよく描かれるドラマティックな展開に見入ってしまう作品なので、暗い内容が苦手という方にもオススメできる内容だと思います。

それぞれ違うテイストの映画を紹介してみました。『日本で一番悪い奴ら』と併せて、観てみたいと思っていただける作品があればうれしいです!

(文:大谷和美