4DXヒット作は、ほぼ全て!4DX映画の鍵を握る男・チェ氏インタビュー

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CJ4DPLEX チェ・ヨンスン インタビュー 4DX 演出家

今、映画界で注目を集める新たな映画体験“4DX”。『マッドマックス 怒りのデス・ロード』や『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』など、4DX版で体験した観客たちの声は、映画界でも常々話題となっている。

そんな4DXヒット作の4DX演出が、ほとんど1人の男によって行われていることを知っているだろうか?

それが「マスター・オブ・4DX」と称される、4DXクリエイティブ・ディレクターのチェ・ヨンスン(Young Choi)氏だ。今回、シネマズに、貴重なチェ氏のロング・インタビューが到着した。

2年で約300本!“マスター・オブ・4DX”と呼ばれる男、チェ・ヨンスン氏

現在公開中の『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』4DX版をはじめとして、4DXがもたらす新たな体験は映画界の話題の的だ。韓国のCJ 4D PLEX社が開発した4DXは、映像に合わせて動く座席や、水しぶきや香りといった更なる要素で、映画を遊園地のアトラクションのように体感できることが特徴。邦画では、2015年の秋に公開となったJホラー映画『劇場霊』でも4DX版が公開となり、新たなる恐怖体験が体験が話題となった。

4dx 座席 豊洲 体験 写真

バスは10分で乗り物酔いする筆者が4DX®映画を実際に体験してきた話」より

そんな話題の的の4DX作品のほぼすべての4DX演出を手がけているのが「マスター・オブ・4DX」と呼ばれる、韓国・CJ 4DPLEX 4DX i-Studioの総括クリエイティブ・ディレクターのチェ・ヨンスン氏。チェ氏はこれまでの約2年間で長編商業映画だけで約150本、それら以外も含めると約300本もの作品をディレクションしてきたとのこと。まもなく公開となる日本初の4DX専用映画『ボクソール★ライドショー 恐怖の廃校脱出!』でも4DX演出を担当した彼が、これまでの苦労点や、今後の4DXなどについて語ってくれた。

CJ4DPLEX チェ・ヨンスン インタビュー 4DX 演出家

――どのような経緯で、現在の4DX演出の道を選ばれたのですか?

最初、広告製作からスタートし、ヴィジュアル・エフェクトのプロデューサーとして活動しました。その後、映画製作からの疲れもあり、1年間仕事を休んでいる中、韓国で「ゼロ・グラビティ」の4DX映画が大ヒットし、その時、生まれて初めて4DX映画を経験しました。映画の中に入って体感できる、新たなエンターテイメントのカタチ、と感心していたところ、たまたま偶然に4DXで働いていた友人から提案があリましたので、迷わずyesと答えて、クリエイティブ・ディレクターとして働いております。

――これまでのどんな作品を4DX化してきましたか?

現職について2年目になりますが、毎年75本、今年まで150本の長編商業映画を担当しました。商業映画だけではなく、CMや予告編、オルタナティブ・コンテンツなども手掛けており、全部で累計300本くらいです。
※オルタナティブ・コンテンツ…日本ではODSとも呼ばれ、映画館で上映される映画以外の上映作品のこと。主にスポーツ中継や、コンサートのライブ・ビューイング、演劇やオペラなどのコンテンツなどがある。

――過去に手掛けた4DXで、一番満足している映画は?

ディレクターとして手掛けた全ての作品に愛着を持っていますが、やはり4DXと相性が良いジャンルといえば、アクションです。そこで『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』では、作品のキャラクターを追っていくような新しい企画を試みました。“アイアンマン・スペシャルバージョン”では、まるで自分がアイアンマンになったような体験が、“ハルク・スペシャルバージョン”では、ハルクのほえる瞬間のリアルな振動をバイブレーションで表現など、ユニークなバージョン展開で、とても印象深い作品でした。

–{新しいチャレンジ}–

CJ4DPLEX チェ・ヨンスン インタビュー 4DX 演出家

――逆にこれは難しかった、苦労したという映画は?

2014年に担当した『ニード・フォー・スピード』というレース映画です。4DXの動きや効果を組み立てて行くスタッフは個々の体験があればこそ、よりリアルな4DX表現をすることができます。しかし、映画に登場する4〜5億超えの高価なスポーツカーを運転した経験は誰もありません。それにも関わらず、映画の製作陣より「カーレースに登場する車1つ1つの違いを説明してほしい」と、オーダーが来たので9回にかけて監修作業を行いました。9回という数字は、我々にとってとても大変で苦しかった過程の表れで、車1つ1つ、エンジンの音や動きの特性を勉強するなど、間接的なリサーチを重ね、監督や製作陣に深い感動を与えたことは、とても苦労した映画でもありましたが、記憶に残る、想い出が詰まった作業でした。

新しいチャレンジは嬉しい!日本初の4DX専用映画

――今回日本初となる4DX専用映画『ボクソール★ライドショー 恐怖の廃校脱出!』を手がけられましたが、まず映画についての感想をお聞かせください。

今までは長編映画を主に作業していたので『ボクソール★ライドショー 恐怖の廃校脱出!』のような作品に出会ったことは、特別な経験でした。特にPOVスタイルの映像を4DXで感じ取ってもらうための作業は、すごく楽しい経験でした。
※PDV…Point of View Shot、主観ショットとも言われ、登場人物の視線とカメラの視点を一致させるようなカメラワークで撮影する手法。

ボクソール★ライドショー 恐怖の廃校脱出

映画『ボクソール★ライドショー 恐怖の廃校脱出!』より (C)2016V AUXHALLRIDESHOW

――4DX専用映画という日本の製作陣のチャレンジについてどう思いますか?

そのような試みをされていると聞いて興奮しました。新しいチャレンジは、クリエイティブ・ディレクターとしていつも嬉しいものです。いつもの映画の作業より、もっと企画的で新しいチャレンジの方が、我々がすでに持っているものを試すことができるので、常に楽しく、常に興奮するものです。

――『ボクソール★ライドショー 恐怖の廃校脱出!』の4DX演出についてのコンセプトは?

大きくわけて、4つのコンセプト要素がありました。1つ目は、POVスタイル作品の魅力を活かすべく、4DXの動きや動線をうまく組み合わせて俳優たちとの距離感を自然と共感できるようにすること。2つ目は「はっ!」と驚かせる演出の意図を倍増させるため、4DX的な効果Back Tickler(背面座席が動く)やFace Water(前席から、顔の周辺に水が吹き付けられる)などの効果を重ねました。そして、残りの2つがバランスとエキサイティングです。本作は、日常を描いた作品ではなく、映像も整えてない荒さなど、そもそも追求する表現スタイルがある作品なので、そこに4DXのエンターテイメント(風やバブルなど)を溶け込ませて、4DXとしての魅力もふんだんに味わえるようにしました。
一般的なホラー映画とは違う、独特の企画だったので、スタッフの中では話題になりました。そういったユニークな部分で大きな魅力を感じ、”もっと頑張る!”という意志をスタッフらに与えた作品だと思います。

あの名作を4DXの表現で再誕生させたい

――4DXのことを知り尽くしたクリエイティブ・ディレクターが映画を作ったらすごいことになると思うのですが、そういう野望はありますか?

もちろん、野望はあります(笑)今はすでに完成された映画に効果や動きを加えて製作していますが、車や飛行機など、主役がどんな形になるだろうと、最も4DXの魅力を発散できる演出をふんだんに入れ込んだ企画やカメラアングルなどをまとめて1つの映画にすることが最終目標です。そうなった時、”すごい!この4DX映画、今まで経験したことない最高の映画だ!”と賛辞を頂戴できたら本当にうれしいですね、私の野望、野心です。

–{迷惑にならないのであれば…}–

CJ4DPLEX チェ・ヨンスン インタビュー 4DX 演出家

――韓国では4DXの他にもスクリーンXのような上映形態があると聞きました。多様化する視聴方法ですが、未来の映画館、映画の楽しみ方はどのようになっていくと思いますか?
※スクリーンX…通常1面しかない映画館に、左右2面のスクリーンを追加し、3面にて上映する形態。

みなさんご存知の通り、2Dが進化して3Dに発展し、IMAXやVRが誕生しての4DX。さらに映画館に足を運ばなくても、VODサービスのようなホームエンターテイメントで映像を楽しむことができる時代になりました。こういった多様化する視聴方法やそれを取り巻く背景の中、4DXは観客に映画の世界への没入感を与えることができますし、今後4DXが将来の映画業界を牽引していくリーダーになれるよう努力をし続けなければならないでしょう。そうなって行くと、自然と観客らのニーズも増えて、映画館も増えて、観客動員数も増えて、映画業界全体の成長にもつながるのではないかという期待をしています。

――4DXが商業化されたのは、2009年。もし、過去作の中で4DXにしたらもっと面白くなると思う作品は?

4DX初体験だった『ゼロ・グラビティ』や、『インターステラー』のような宇宙の無重力状態の動きを表現したくて、70〜80年代に大学生活を送りながら20代の黄金期を過ごしました私なので、憧れの巨匠スタンリー・キューブリック監督の『2001年宇宙の旅』です。4DXとの相性が良い作品でもありますが、その静的な映画の美しさを4DXの表現で再誕生させたい。一度は挑戦してみたいです。また、スタンリー・キューブリック監督といえば『シャイニング』。ジャック・ニコルソンの狂気に満ち満ちた最後のシーンを、サプライズ効果をふんだんに取り入れて表現したいです。ご迷惑にならないのであれば、そんなクラシックな映画を4DXにしてみたいです。

チェ氏の4DX演出『ボクソール★ライドショー 恐怖の廃校脱出!』

2015年作品では『マッドマックス 怒りのデス・ロード』『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』や、邦画では『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』『劇場霊』『ドラゴンボールZ 復活の「F」』など、ここ最近の4DX作品のほぼ全てがチェ氏の4DX演出によって公開され、話題となった。

ボクソール★ライドショー 恐怖の廃校脱出

そんなチェ氏による4DX演出の最新作の1つ、日本初の4DX専用ムービー『ボクソール★ライドショー 恐怖の廃校脱出!』が2016年1月16日より公開となる。『戦慄怪奇ファイル コワすぎ!』シリーズや『シロメ』で知られるホラー界の鬼才・白石晃士監督が監督・脚本さらに出演と1人3役をこなした本作は、4DXの様々な効果をフルに体験できる作品だ。まだ4DX未体験の人も、既に体験済みの人も映画館に足を運んで、日本初の4DX専用映画を体験してみてはいかがだろうか?

映画『ボクソール★ライドショー 恐怖の廃校脱出!』は2016年1月16日より、ユナイテッド・シネマ他にて全国ロードショー。

CJ4DPLEX チェ・ヨンスン インタビュー 4DX 演出家

Young Choi(チェ・ヨンスン)

CJ 4DPLEX 4DX i-Studio

総括クリエイティブ・ディレクター

1971年7月生まれ。広告製作会社、ヴィジュアル・エフェクトのプロデューサーなどを経て2014年に CJ 4DPLEX 4DX i-Studioに入社。同年1月総括クリエイティブ・ディレクターに就任。主に4DXコンテンツの品質管理及び4DX最終演出の方向性を打ち立て2015年現在150本以上の長編商業映画を4DX化。映画のほか、CMや予告編、オルタナティブ・コンテンツなど含め、2年間累計300本以上のコンテンツを手がけるという驚異的な仕事量をこなし、精力的に活動中。

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