クリスマス、だからこそ観てほしい映画『ソロモンの偽証』

映画コラム

今日12月25日はクリスマス。映画好きの中には、クリスマスも自宅や劇場で映画を観るという人も少なくないだろう。クリスマスの今日、何を観ようかと迷っている人に、今年の松竹作品の中から1つオススメしたい作品がある。それが、映画『ソロモンの偽証』だ。

クリスマスの朝、その事件の全てがはじまる……

ソロモンの偽証 後篇・裁判

映画『ソロモンの偽証』は、ベストセラー作家・宮部みゆきが、構想15年、執筆に9年を費やした、作家生活25年の集大成にして最高傑作と謳われている同名小説を、日本アカデミー賞ほか、国内主要映画賞を30冠受賞した、成島出監督をはじめとする『八日目の蝉』チームが再結集し、完全映画化した作品だ。

なぜクリスマスに映画『ソロモンの偽証』なのか?という方もいることだろう。まずその理由の1つが、この作品の冒頭は、クリスマスの朝に起きた“とある事件”からはじまるからだ。

ソロモンの偽証 前篇・事件

街が華やぐクリスマス未明。終業式に向かう道中、雪の積もった校庭で中学2年生の藤野涼子はクラスメートの死体を発見する。屋上から転落死した少年の名は、柏木卓也。ひと月ほど前から不登校の状態が続いており、遺書は発見されなかったが、警察は早々に自殺であると結論づけた。しかし、その男子生徒の謎の転落死をきっかけに、次々と起こる不可解な事件。その死は、平穏を装っていた人々の眠れる悪意を呼び覚まし、やがて次なる悲劇を引き寄せる。混乱する生徒たち、揺らぐ警察の捜査、保身に走る教師、騒ぎ立てるマスコミ、そして世間体を気にする大人たち……。賢い者が、権力を持つ者が、そして、正しいことをしようとする者が、嘘をついている。なぜ?どうして?いったい誰が?何の為に?校内裁判の果てに、彼らが目撃した驚愕の真実とは――

ソロモンの偽証 前篇・事件

この作品の軸となる事件は、冒頭いきなり訪れる。クリスマスの日の朝になぜ少年は、その生涯を終えてしまうことになってしまったのか。物語の全てを見終えた時、その理由のすべてがわかる。ただ偶然にその日がクリスマスだったとは言い難い、そんな理由がこの事件には秘められているのだ。

しかし、ミステリー作品であるため、クリスマスのロマンティックなムードには合わないのではないかという方もいることだろう。物語の冒頭がクリスマスだというだけで、後篇では季節は夏になる。そもそもミステリー作品は、クリスマスには不向きだという声もあることだろう。

–{何故クリスマスにソロモンの偽証?}–

しかし、しつこいようだが前篇・後篇の2部構成で作られた本作は、ロマンティックなムードにざわめく今日だからこそ観て欲しい作品なのだ。ミステリーならではの息もつかせぬ前篇に、早く続きが観たいとスタッフロールを見終えることなく後篇を再生したくなるほどだろう。そして、クリスマスだからこそ観て欲しいと薦めるもうひとつの理由が、後篇を見終えた時に感じられる“スッキリ”という感覚だ。

ソロモンの偽証 成島出監督 インタビュー

シネマズ・成島出監督インタビューより

成島出監督は、以前シネマズのインタビューで「みんなが抱えている問題が解決し、全部が見えて解放され、そしてスッキリする」と語っている。これは前篇・後篇を観た人であればわかる感覚であろう。筆者も後篇を見終えたあとの感慨深くも、閉塞していた心が開放された瞬間はまさに“スッキリ”という響きがぴったりであった。

そして成島出監督はさらに続けて「この作品を観てくれる人の中に、作品の中で亡くなってしまう”彼ら”がいると思うんです。彼らに観せたいんです。U2の曲で終わり、そして「生きろ!」と伝えたいんです」と力強く語ってくれている。

この言葉が指し示す意味は、観ていただければわかることだと思う。きらびやかに飾られ、楽しそうににぎやかさな街。そんなクリスマスに、何かしらの心の閉塞感を感じている人がいるとすれば、ぜひこの作品を観て欲しい。

オーディションで選ばれた現役中学生たちが、その全身を捧げて演じきった本作は、ただのミステリーではない、紡がれていくヒューマンストーリーなのだ。聖なる日である今日、その眼で、心で、感じてみてはいかがだろうか。

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(文・黒宮丈治)

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(C)2015「ソロモンの偽証」製作委員会

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