11月のとある日、池波正太郎さん原作の大人気作「鬼平犯科帳」のファンが集い、都内の「鬼平」にちなんだ土地を訪問するイベント「梶芽衣子と巡る「鬼平犯科帳」ゆかりの地バスツアー」(主催:CS放送局「ホームドラマチャンネル」)に参加してきました。
当日はあいにくの荒天。予定していた散歩エリアなど複数いけない所があったのですが、上野から本所などのエリアでゆかりのあるスポット回ることができました!
中央図書館 池波正太郎記念文庫で梶さんと出会う
最初に訪れたのは中央図書館・池波正太郎記念文庫(URL:https://www.taitocity.net/tai-lib/ikenami/)。
ここでは小説内の地理関係が一目でわかる大江戸絵図の展示や、池波さんの書斎を再現では、本物の机や取材メモや原稿のコピーが展示されています。
また出版された書籍に関しては初版本がずらりと並び、これはコアなマニア垂涎でしょう。
一つ一つの資料をぐっと覗き込むファンの姿勢が印象的でした。
ツアーの最初ですし記念写真を撮りましょうか、といったところでざわめきが。
ドラマ「鬼平犯科帳」では長谷川平蔵を助ける密偵・おまさ、ドラマ「剣客商売」では料亭「不二楼」の元女中で小料理屋「元長」の女将・おもとを演じられている梶芽衣子さんです。
喜ぶファンとまずは集合写真を。
バスに乗り込むところでは、建物とバスが離れていて雨の降る中「雨でぬれちゃうから急いでね!」と心遣いを見せる梶さん。とても優しい、そして「おまさ」よりも明るい仕草に、すでに参加者の皆さんが魅了され始めているようです。
バスの中では梶さんと観光ガイドさんの解説が楽しい
あいにくの雨天、しかもかなりの雨で、ところどころに予定されていた散策予定がキャンセルとなりました。でもその代わり、バスの中では梶さんと「すみだ観光ガイドの会」副会長の松嵜せつ子さんの息の合った掛け合いが盛り上げます。
池波正太郎さんの幼少期のエピソードが長谷川平蔵の口から語られるなど、池波さんの人生観は長谷川平蔵の人生観に重なっていること、池波さんの気持ちが密偵の気持ちとして小説内で語られることがあるなど、松嵜さんの分析した池波小説の人気の秘密を披露。これには梶さんも
「私が話すことが無い(笑)」
と脱帽していました。
–{おまさとしてのエピソード}–
おまさとしてのエピソード
また、話題はおまさが初登場した鬼平犯科帳第1シリーズ5話「血闘」に。梶さんがおまさ役になったときのことなどを語られました。
中村吉右衛門さんの鬼平犯科帳シリーズが始まった際、梶さんは放送していたフジテレビの別のドラマに出演されていたそうなのですが、鬼平に出たいということを梶さんが直訴。そこでまだ俳優の決まっていなかったおまさ役を射止めたのだそうです。
おまさの設定年齢より6つ年上の梶さん、初登場以来26年間ずっとおまさ役をさせてもらっていることにとても感謝しているそうで、俳優としてのキャリアの半分ほどの間おまさ役を演じていると語りました。
「ドラマ中でそのようなセリフはありませんが、おまさが平蔵に好意を寄せているという気持ちをもって演技していますよ」
と演技の秘密も話してくださいました。
松嵜さんも、平蔵もおまさへ気持ちがあったのではないか?と、おまさの昔の恋人であり本格のお頭・狐火の勇五郎を捕らえた後に左腕を落としつつも赦免する平蔵の対応を例に説明。参加したファンはおよそストーリーが頭に入っているようで、話が出るたびに大きくうなずいて感心していました。
平蔵と左馬之助にゆかり深い法恩寺
太田道灌が開基した法恩寺は、長谷川平蔵と平蔵の友人・岸井左馬之助が若き日に剣の腕を磨いた「高杉道場」のすぐそばにあったお寺。二人が心を寄せた娘は法恩寺からほど近い屋敷に住んでいた、といった形でドラマにも欠かせないお寺です。
「尻毛の長右衛門」という話では盗賊仲間の、布目の半太郎とおすみが連絡を取り合う場所がこの法恩寺でした。
ここでも松嵜さんの軽妙な鬼平トークに梶さんと参加者は大うけ。小説のエピソードを独自の解釈や感想を交えて語る松嵜さんは後ほど梶さんが
「監督に迎えたい」
とおっしゃるほどの知識と理解力でした。
–{「五鉄」はここにあった?}–
「五鉄」はここにあった?
その後も「お熊と茂平」という話で茂平という老人が下男をしていた弥勒寺を見学したり、バスの中から鬼平犯科帳にゆかりのあるところを数か所巡りました。長谷川平蔵の役宅は本所の菊川にあるのですが、この場所は後に時代劇「遠山の金さん」で知られる北町奉行・遠山左衛門少尉景元(金四郎)も下屋敷として使っていたそうですよ。都営新宿線菊川駅の出口すぐそばです。
さて、本所の二つ目橋へ。ここは平蔵と墨つぼの又八との出会い・別れがあった場所です。かつての仲間に裏切られ用心棒に命を狙われている老盗賊・墨つぼの又八をひょんなことから助けることになった鬼平一行。大滝の五郎蔵、おまさらも又八の配下として「お勤め」しようとしたところで又八が病死してしまうという少し寂しい話ではあったのですが、やっぱりおまさに縁のある土地だったのですね。
移動中の徒歩区間中でもファンの方と親しげに話す梶さんのやさしさがとても印象的でした。
そしていよいよ五鉄跡へ。
軍鶏なべ屋五鉄といえば鬼平犯科帳で最も有名なお店です。密偵と平蔵の打ち合わせや事件解決後の打ち上げなどにも使われてもおり、また現代の飲食店で時代劇や鶏料理の好きな方が店名に「五鉄」とつけることもあるくらい日本人にはなじみのある「店名」なんですね。
清澄通りの二之橋北側にあるといわれている五鉄。もちろん架空のお店なのでそのゆかりもありませんが、高札が立てられておりました。
この場所で平蔵が密偵と酒を酌み交わしながら鍋をつついたのか・・・。ついつい思いを馳せてしまいますよね。
–{これからも良い作品を}–
これからも良い作品を
ツアーも最後、お別れに近い時間にバスの中で梶さんが話されます。
「私がおまさとして参加してからの間、鬼平のスタッフ・俳優は39人も亡くなっています。大切な方々を失って大変ショックです。時代劇のスタッフは簡単ではありません。結髪も衣装も修行と経験が必要です。そんなプロの方たちが結集し、素晴らしい映像作品を作り出しています。そして、池波作品を愛しているスタッフ達の熱い思いが詰め込まれ製作されているのが、鬼平犯科帳なのです。
これからも、亡くなられた39人の分も私たちはいい作品を作っていきたいです。」
「来年の3月で俳優として50周年になります。これからも応援をよろしくお願いします。今日は雨の中長い時間ありがとうございました。」
鬼平を守り通してきた誇りと、ファンの方が楽しんでくださるためにという気遣いをしてくださる梶さんに参加者の皆さんから花束と大きな拍手を贈り、ツアーがお開きになりました。
ファンと楽しむ心配りを見せた梶さん
ツアーの最後は、参加者はバスを降り、ゴールとなった東京スカイツリー内のJ:COMワンダースタジオでお土産をもらい解散となりました。梶さんはそのままバスに乗ってお別れです。参加者が全員下りてからバスが出るときにも梶さんは参加者に手を振り、ファンとのコミュニケーションを楽しんでおられました。
俳優歴50年を迎える梶芽衣子さんが気さくに接してくれるイベントに参加し、これもまた池波正太郎さん・鬼平犯科帳という作品が結んでくれたご縁なのかなと思いました。
主人公の長谷川平蔵も密偵も、もちろん梶さん演じるおまさも、人の強さ・弱さを知り、情けを知るからこそ強い絆で結ばれていたのだと思います。
このままファンと梶さんが一緒にいたら、それと同じくらいの絆が結ばれたんじゃないか。
そう思えるくらいの心温まるひと時を過ごすことができました。
(取材/奥野大児)
梶芽衣子と巡る「鬼平犯科帳ゆかりの地」バスツアー 訪問先
バスツアーでは以下の地を廻りました。
・台東区中央図書館
・法恩寺
・弥勒寺
・二の橋
・二の橋際 軍鶏鍋屋五鉄
・四の橋 盗人酒屋
・煙草屋、壺屋また、荒天のためバスの中からでしたが、以下の地を廻りました。
・池波正太郎生誕地碑
・侍乳山聖天・山谷堀
・三囲の土手
・枕橋(源兵衛橋)
・さなだや
・名主・田坂直右衛門屋敷
・大横川親水公園
・法恩寺橋
・法恩寺門前茶店ひしや
・高杉銀平道場
・長谷川平蔵旧邸(小説内での設定)
・長谷川平蔵旧邸(史実上の場所)
・弥勒寺門前茶屋
・笹や
・鳥料理かど屋
・四の橋・盗人酒屋
鬼平犯科帳 放送情報
CS放送「ホームドラマチャンネル」では鬼平犯科帳がいつでも楽しめます!
◆「鬼平犯科帳」いつでもみられるレギュラ-放送中!
鬼平犯科帳第2シリーズ(全21話)[HD]放送中!
毎週(金) 前9:45~10:45 他◆2016年1月1日(金)は池波正太郎原作ドラマを24時間放送します!
放送タイトル:「剣客商売5」全10話、
「鬼平犯科帳スペシャル 計6作品」を一挙放送!
「山吹屋お勝」「兇賊」「一本眉」「引き込み女」「雨引の文五郎」「高萩の捨五郎」(C)松竹
CS放送「ホームドラマチャンネル」はスカパー!、ひかりTV、J:COM他、全国のケーブルTVでご覧いただけます。
詳しくはHPまで http://www.homedrama-ch.com/