いよいよ明日公開となった世界的人気シリーズ第7弾『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』ですが、そこに至るまでのシリーズのマコトかウソかの噂も含めたトリビア(というほどでもない小ネタ)のいくつかをご紹介……。
《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街~vol.79》
おヒマつぶしにどーぞPART3。
今回は新3部作(エピソード1~3)です!
久々にシリーズ再開『エピソード1/ファントム・メナス』
『スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還』(83)の製作で燃え尽きてしまい、一方で87年に離婚するなど私生活のトラブルに見舞われたジョージ・ルーカスは、『スター・ウォーズ』エピソード4~6の前の時代を描く新3部作の制作に対する情熱を久しく失っていました。
しかし90年代に入り、スピンオフ・コミックや小説などで『スター・ウォーズ』人気が再燃していき、そのあたりから創作意欲を取り戻していったルーカスは、特撮技術の進歩も目の当たりにしたこともプラスに作用して、若き日のジェダイ騎士オビ=ワン・ケノービを主人公に、その仲間だったアナキン・スカイウォーカーが暗黒面に堕ちてダース・ベイダーと化す悲劇を軸に描けば、エピソード1~3の新3部作を魅力的に構築できるという結論に達しました。
かくして『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』(77)を最後に監督業から撤退していたルーカスは、16年ぶりにシリーズを再開するにあたり、22年ぶりに監督業に復帰しました。
やはりそれだけダース・ベイダーに対する思い入れは深かったものと思われます。
なお、後のダース・ベイダーとなるアナキン・スカイウォーカーの名前は、ルーカスの友人でもあった『史上最大の作戦』『バルジ大作戦」などイギリス映画界の名匠ケン・アナキン監督から採られています。
(ただし、彼の名は“ANNAKIN”で、本シリーズのスカイウォーカーは“ANAKIN”と、スペルは異なります)
サブ・タイトルの『ファントム・メナス』“PHANTOM MENACE”とは「見えざる脅威」という意味で、具体的には善良な議員パルパティーンを装うシスの暗黒卿ダース・シディアスのことを指しています。
豪華キャストの布陣となった新3部作
かつて第1作『エピソード4/新たなる希望』を制作したときは、まだスターとは呼べない新人若手俳優を起用していましたが、今回の新シリーズにあたってはオビ=ワン・ケノビ役のユアン・マクレガーや、その師クアイ=ガン・ジン役にリーアム・ニーソン、悲劇の姫アミダラ役のナタリー・ポートマンなど豪華キャストが実現しています。
その中で、大の映画ヲタクでも知られるサミュエル・L・ジャクソンは「ノーギャラでもいいから、俺はヨーダと共演したいんだ!」と、製作サイドに頼みこんでジェダイ評議会の長メイス・ウィンドウ役を手に入れたとのことです。
(実際にノーギャラだったかどうかは不明です⁉)
また、本来ライトセーバーは青、緑、赤の3色しかない設定だったのですが(後のスピンオフ作品では黄色も存在しています)、「俺は違う色がいい!」とサミュエルが強く望んだことから、メイスのライトセイバーの色は紫になったとの噂もあります⁉
アミダラの影武者・侍女サーベを演じたのは、何とキーラ・ナイトレイで、彼女はこの後一気に躍進し、『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズ(03~07)のヒロイン、エリザベス・スワンの役を手に入れることいなるのです。
『ファントム・メナス』では『エピソード6/ジェダイの帰還』(83)やTVムービー『イウォーク・アドベンチャー』2部作(84・85)でイウォ-ク族ウィケット・W・ウォリングを演じたワーウィック・デイヴィスが、ヨーダの歩くシーンを務めていますが、こういった演技を基にしてヨーダは、これまでのパペットから『エピソード2/クローンの攻撃』(02)以降はフルCGで描かれるようになっていきます。(現在発売中のブルーレイでは『ファントムメナス』のヨーダもすべてCGに置き換えられています)
本作で目を引く悪役ダース・モ-ルですが、演じたレイ・パークはもともとスタントマンで、キャメラテストでダースモールを演じたところをルーカスらに気に入られ、正式にモール役に起用されました。
彼はオビ=ワン・ケノビに斬られるまで一度もまばたきをせずにダース・モールを演じきっています。
ダース・モールの登場は今のところ映画では『ファントムメナス』のみですが、スピンオフTVアニメーション・シリーズ『クローンウォーズ』(シーズン3)にも登場します。
失われた下半身の代わりに6本足のクモに似た疑似生態装置を手に入れた彼は、その後も生き続け、記憶を失いながらもオビ=ワン・ケノビやジェダイに足を奪われた憎しみの念だけは忘れずにいたのです。
また彼を主人公にしたスピンオフ小説『ダース・モール闇の狩人』もあります。
–{ナント!『ファントム・メナス』には〇〇も登場していた!}–
E.T.まで登場した『ファントム・メナス』
さて、ジェダイは本来結婚してはいけない規則になっていますが、本作から登場するキ=アディ=ムンディは例外的に結婚を認められています。
これは彼の出身惑星スリアの男性が極端に少ないためで、彼は数人の妻と数人の子どもがいるという設定。
どうやらこの惑星は一夫多妻制まで認められているようですね。
同じく本作から初登場した惑星ナブーの原住民グンガン人のジャージャービンクスですが、その空気を読まないキャラが世界的にも大不評で、アメリカ本国でも毎年最低映画に贈られる不名誉なラズベリー賞の2000年度最低助演男優賞を受賞するなど、シリーズ史上もっとも不愉快な嫌われキャラクターとなってしまいました。
このせいか、続く『エピソード2/クローンの攻撃』での出番は大幅に減らされ、『エピソード3/シスの復讐』ではわずか一瞬の出演となりました。ここまでくると、ちょっと可哀想かなという気もしないではありませんが……。
ジェダイは本来死んだら消えてなくなるという設定なのですが、『ファントム・メナス』のクワイ=ガン・ジンの体は消えずにそのまま残ります。
これはルーカスのうっかりミスで、後に映像を見たプロデューサーのリック・マッカラムから「これは何かの伏線なの?」と素朴に問われ、そこで初めて気がついたものの、既に後の祭りではありました⁉
『ファントム・メナス』のお遊びとしては、会議場のシーンで一瞬だけ『E.T.』が映りますが、これはルーカスとスティーヴン・スピルバーグの仲だからこそ実現したショットともいえるでしょう。
(82年のスピルバーグ監督作品『E.T.』の中には『スター・ウォーズ』関連のフィギュアなどが映されたり、またヨーダのコスプレをしている子どもも登場しました)
『ファントム・メナス』は2012年に3D版が公開されましたが、正直技術的に未熟な部分もあり、ファンからも不評を買い、シリーズ6作全てを3D化するという計画は現在のところ中断したままです。
もっとも今回のエピソード7『フォースの覚醒』は2D/3D仕様となっていますので、いずれは最新技術をもって計画が再開されることでしょう。
長編映画初のフルデジタル撮影作品『エピソード2/クローンの攻撃』
『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』(02)からは青年になったアナキン・スカイウォーカーが登場します。
アナキンを演じるヘイデン・クリステンセンは、ジョージ・ルーカス曰く「ダークな雰囲気を持っている」という理由で抜擢されたとのことですが、ダース・ベイダーの闇にこだわり続けるルーカスもまた、どこかしら闇に魅せられてきた人間なのかもしれません。
『クローンの攻撃』のキャスティングでもっとも目を見張るのは、ドゥクー伯爵役のクリストファー・リーでしょう。
数々のドラキュラ映画で知られる名優の彼ですが、『エピソード4/新たなる希望』(77)にもドラキュラを追い続けるヘルシング教授役で知られるピーター・カッシングが出演していました。
旧3部作のピーター・カッシングと、新3部作のクリストファー・リー、ふたりのドラキュラ映画の名優の存在は、『スター・ウォーズ』サーガの闇の魅力をいっそう際立たせることになりました。
本作に登場する賞金稼ぎジャンゴ・フェットのエピソードは旧3部作ファンにとってはニンマリさせられるものがあります。
彼の息子ボバ・フェット少年は、やがて『エピソード5/帝国の逆襲』(80)『エピソード6/ジェダイの帰還』(83)でダース・ベイダーの信頼も厚い賞金稼ぎとしてお目見えし、『エピソード4/新たなる希望・特別篇』(97)にも合成で登場シーンが加えられたほどのひそかな人気キャラなのです。
本作では『5』『6』につながるボバの因縁などもさりげなく描かれています。
なお本作は、長編映画で初めて全編HD24Pによるデジタル撮影が行われたことでも記念すべき作品で、生身の人間が出演しているシーンはすべてグリーンバック合成が行われています。
–{新3部作の完結編『シスの復讐』そしてエピソード7『フォースの覚醒』へ}–
新3部作の完結編『シスの復讐』そしてエピソード7『フォースの覚醒』へ
新3部作の完結編『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』(05)では、何とスティーヴン・スピルバーグがアシスタント・ディレクターとしてクレジットされています。
実は彼、ムスタファーでのアクション・シーンの一部構成を担当していました。
本作や『クローンウォーズ』などに登場する冷酷無比なサイボーグ将軍グリーヴァスの声は、サウンドエディターのマシュー・ウッドが務めていますが、これは彼が別名であてた将軍のサンプルの声が非常に評判がよかったことが理由だそうです。
また、将軍の咳の声だけは、当時気管支炎を患っていたルーカス監督の咳を加工して使用しています。
彼はジェダイ狩りを趣味としており、そのため彼が持っているライトセーバーは狩られたジェダイのものであり、そのため青や緑といった光の色を放っています。
本作は『エピソード4/新たなる希望』(77)へとつながる重要な回なだけに、『4』で使われたジョン・ウィリアムスの映画音楽のいくつかを使用し、『3』から時代を経て『4』へ繫がっていく雰囲気を巧みに形成しています。
『シスの復讐』は全米公開初日が平日だったため、当日は仮病などで仕事や学校をさぼって映画館に駆けつけた観客が多数いたということですが、マコトかウソかこれによってアメリカ経済は6億2000万ドルの損失を被ったそうです⁉
さて、ようやく6部まで完成させたジョージ・ルーカスは、もう精根尽き果てていたようで、エピソード7~9に関しての製作も否定します。
彼は会社経営からも手を引いて、今後は小さな実験的作品を撮りたいと思うようになっていきました。
そして2012年、ルーカスフィルムは40億5000万ドル(およそ320億円)でディズニーに買収され、同時に『スター・ウォーズ』シリーズに関する権利も取得し、ここでようやくエピソード7『フォースの覚醒』の企画が動き出すことになったのです。
今回ル-カスは制作に直接関わってはおらず、名前がクレジットされるかどうかも現時点では不明ですが、「私が死んだ後も『スター・ウォーズ』は永遠に生き続けていくべきだから、元気なうちに次の世代へバトンタッチしたかった」とコメントしています。
そして完成した『フォースの覚醒』に関しても、ルーカス・フィルムの新たなプレジデント、キャサリーン・ケネディ曰く「彼は出来上がりに非常に満足しています」と好評されました。
スピンオフ作品の正史(カノン)と非正史(レジェンズ)
なお、『スター・ウォーズ』サーガは、映画以外にも“Expanded Universe”(拡張世界)と呼ばれるさまざまなスピンオフ作品が小説やアニメ、コミック、ゲームなどで展開されていきましたが、その中にはハン・ソロとレイアの間に生まれた双子の姉ジェイナと弟ジェイセン、次男アナキンと、3人の子どもたちの数奇な運命を描いたスピンオフ小説“The New Jedi Order”シリーズもあります。
双子の姉・長女のジェイナは幼い頃からジェダイの訓練を受けた美少女で(実際にフィギュア化されました)、成長してローグ中隊に所属し、後にジェダイ騎士となります。
双子の弟・長男ジェイセンもジェダイ騎士となり、ルークの息子ベン・スカイウォーカーを弟子にしたりもしますが、その後何とダース・ベイダーと同じようにダーク・サイドに堕ちてシスの暗黒卿ダース・カイダスと化し、やがては銀河同盟大戦を引き起こし、姉のジェイナと敵対するようになります……。
次男アナキンは、兄弟の中でもっとも強いフォースを持って生まれてきてジェダイの教えにも忠実でしたが、銀河系外から来たエイリアン、ユージャン・ヴォングとの戦いの果てに戦死しました。
もっとも、エピソード7『フォースの覚醒』の製作におよび、ルーカス・フィルムは2014年にエピソード1~6、映画&TVアニメの『クローン・ウォーズ』および『反乱者たち』シリーズ、ディズニー版小説を正史(カノン)とみなし、それ以外のスピンオフ作品はすべて非正史(レジェンズ)と決定しましたので、こうした3兄弟の物語も今後はあくまでも異世界(パラレルワールド)の物語として接して楽しむのが得策のようですね。
(文:増當竜也)
『スター・ウォーズ』サーガのほんのちょっとしたトリビア①
『スター・ウォーズ』サーガのほんのちょっとしたトリビア②
映画『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』は2015年12月12月18日(金)18時30分、全国一斉公開。
予告編
公式サイト
http://starwars.disney.co.jp/movie/force.html配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
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