武田鉄矢の初主演映画『俺たちの交響楽』初DVD化!

音楽

■「キネマニア共和国」

海援隊として歌の活動のみならず、『幸福(しあわせ)の黄色いハンカチ』(77)で映画デビューし、TV『3年B組金八先生』シリーズ(79~11)や映画『刑事物語』シリーズ(82~87)で俳優としても大いに飛躍し、今やベテラン・エンターテイナーの貫録に満ちた大スター、武田鉄矢ではありますが……。

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街~vol.80》

このたび、ようやく彼の初主演映画『俺たちの交響楽』(79)がDVD化されました!

俺たちの交響楽

(C) 1979 松竹株式会社

川崎で『第九』を歌うべく集った若者たちの青春群像映画

俺たちの交響楽

(C) 1979 松竹株式会社

『俺たちの交響楽』は、1970年代末の川崎を舞台に、クリスマス・イヴに『第九』を歌おうと励む合唱団の若き面々の青春群像を描いたヒューマン音楽映画で、これまで『男はつらいよ』シリーズをはじめ、数々の山田洋次監督作品の脚本を手がけてきた朝間義隆の初監督作品でもあります。

山田作品『幸福の黄色いハンカチ』で映画デビューを果たし、俳優としてブレイクしたばかりの武田鉄矢は、『男はつらいよ 寅次郎わが道をゆく』(78)に助演した、後、これで記念すべき映画初主演を果たし、この直後の同年秋に『3年B組金八先生』に主演することになるのです。

物語は、川崎で工員を務める新田徳次郎(武田鉄矢)は、街角で「ベートーベンの『第九』を歌いましょう!」と勧誘活動をしていた京子(友里千賀子)をナンパしてやれといった冷やかし半分の気持ちで、先輩の安男(伊東達広)や後輩の保(永島敏行)を伴い、エゴラド合唱団に入団します。

しかし合唱の指導は厳しく、おまけに京子が団長の勝彦(山本圭)に惹かれていることを知った徳次郎は、幾度も団を抜けようとしますが、京子が勝彦と衝突して故郷の信州へ帰ったことを知った彼は……。

本作のモデルとなったのは川崎労音合唱団「エゴラド」で、クライマックスの『第九』合唱シーンは、同合唱団を招いての大迫力で迫りくるものがあります。

(指揮は本作の音楽も担当している外山雄三。演奏は日本フィルハーモニー交響楽団)

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–{朝間監督&武田コンビの他作品もせびDVD化を!}–

朝間監督&武田コンビの他作品もせびDVD化を!

俺たちの交響楽

(C) 1979 松竹株式会社

本作は70年代末の川崎を舞台にした昭和チックな下町ノスタルジーと、大船調をベースとした普遍的な青春群像劇としての要素を巧みに融合させながら、『第九』に挑む若者たちの笑いと涙、そして恋の行方などを感動的に描出していきます。

主演の武田鉄矢、友里千賀子だけでなく、永島敏行、熊谷真実、岡本茉莉など、当時の青春スターも大挙出演していますが、中でも森下愛子は当時『サード』(78)『ダブルクラッチ』(78)『十代 恵子の場合』(79)『もっとしなやかにもっとしたたかに』(79)『十八歳、海へ』(79)など鮮烈な青春映画に続々出演し続けていた時期だっただけに、このときのさわやかで清純な佇まいは個人的にひときわ輝いてみえるものがありました。

俺たちの交響楽

(C) 1979 松竹株式会社

また、監督に昇進した朝間監督にエールを送るべく、渥美清や倍賞千恵子など『男はつらいよ』キャスト陣も応援出演しています。

俺たちの交響楽

(C) 1979 松竹株式会社

ここでの武田鉄矢は、どこまで演技でどこまでアドリブかわからないほどの自然体で、地方出身の若者を等身大的に微笑ましく演じていますが、当時の彼は九州出身というキャリアをユーモラスに強調した一見軽薄短小ながらもその実純情といったイメージが強く、本作はそんな彼がいかに『第九』に取り組むようになるかが一つの大きな醍醐味でもありました。

また、朝間監督と武田鉄矢はこの後もコンビを組んで、『思えば遠くへ来たもんだ』(80)『俺とあいつの物語』(81)『えきすとら』(82)と、当時の『男はつらいよ』シリーズ夏の同時上映作品を撮り続けていきましたが、いずれも珠玉のプログラムピクチュアであり、これらもぜひDVD化していただきたいものです。

(本当はさらなる高画質のブルーレイのほうが嬉しいのですが)。

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(文:増當竜也)

商品情報
あの頃映画 松竹DVDコレクション 俺たちの交響楽

DVD ¥2,800+税
2015/12/02発売

発売元:松竹
販売元:松竹
(C) 1979 松竹株式会社

■スタッフ:
原案:山田洋次
監督:朝間義隆
脚本:朝間義隆・梶浦政男
撮影:吉川憲一
音楽:外山雄三
■キャスト:
武田鉄矢、友里千賀子、永島敏行、森下愛子、山本圭、田村高廣
■公開日:1979/03/03