9月26日(土)、新宿ピカデリーにて映画『合葬』の公開初日舞台挨拶が開催され、柳楽優弥さん、瀬戸康史さん、岡山天音さん、オダギリ・ジョーさん、小林達夫監督が登壇しました。
今作は鳥羽・伏見の戦いの後に、将軍の護衛と江戸市中の治安維持を目的として有志で結成された「彰義隊」に参加した若者の青春群像を描いた杉浦日向子の同名漫画が原作。
自らの意志で彰義隊に加わった青年・極(柳楽優弥)、養子先から追い出され、行くあてもなく赴くまま入隊した柾之助(瀬戸康史)、彰義隊の存在に異を唱えながらも加わらざるを得なかった悌二郎(岡山天音)を中心に、政治や戦争に運命を翻弄されてしまう幕末に生きた若者たちの姿を映しています。
「時代劇の枠にとらわれない監督の挑戦を感じる作品」
役や作品への思い入れを感じさせる、キャスト・監督による挨拶から舞台挨拶がスタートしました。
柳楽「僕にとって初めての時代劇で、素晴らしい原作の映画に出演させて頂きました。皆さんの心に印象に残るシーンがあればうれしいなと思います」
瀬戸「吉森柾之助は迷い悩んでふわふわしている役です。悩むことは僕にとってネガティブなことだったんですが、柾之助を演じて、その期間こそが大事なんだなと感じました」
岡本「僕はいつも自分の役のことでいっぱいいっぱいになってしまいがちなんですけど、今回初めて台本をもらった段階から、現代を生きる多くの人たちに届くといいなと思えた作品です」
オダギリ「京都で2週間くらいで撮るなんて強行だな、と思いながらもぜひ参加させていただきたいと思って無理矢理入れてもらいました(笑)。今までの時代劇の枠にとらわれない、監督の挑戦を感じる作品です。今日はいろんな世代の人が観に来てくださっていて、それが成功しそうな予感がします」
小林監督「京都の松竹撮影所という伝統あるところでベテランの方に囲まれながら、若いキャストにも力を借りて作りました。伝統的なものと新しい感性が融合したり、せめぎあったりしているのが画面に出ていればいいなと思います」
–{役者の仕事は体調管理…?}–
役者の仕事は体調管理…?
役作りする上で監督とどのようなやり取りがあったのか、MCに尋ねられた柳楽さんは、「カリスマ性が欲しいといわれたんですけど、出そうと思って出るものでもないので…カリスマ性出てました!?」と逆に客席に質問。会場に起こった拍手に、柳楽さんもご満悦のようでした。
ちなみに、困った柳楽さんはインターネットでカリスマと呼ばれる人たちを検索したそうで「いろんな人がいましたけど、誰ひとりとしてカリスマ性を出そうとしている人はいなかったです」とのこと。
「でも、僕ら世代の大スター、オダギリさんがいたんです。撮影が始まったら、実はすごい近くにカリスマがいて。しっかり憧れさせていただきました」と話す柳楽さんに、オダギリさんも照れ笑い(?)を浮かべつつ「だいぶ目が泳いでるけど…」とツッコミを入れていました。
そんなオダギリさんは撮影期間中に風邪をひいてしまっていたそうで、「叫ぶシーンも声が出なくて後でアフレコしたので、そういう姿を見て学んでもらえたかと。風邪をひいちゃいけないなとか、体調管理が役者の仕事なんだと、身を持って教えられたかな」と、淡々と話す姿が笑いを誘っていました。
また、現場での感想を求められると「ベテランのスタッフさんたちとのぶつかり合いもこの映画の良さだと思うし、そういう姿を現場で見て心の中ですごく応援していました」と話し、役者として演じる以上の視点で、オダギリさんが新しい時代劇の誕生を見守っていたことが伝わってきました。
他にも、撮休日に柳楽さん、瀬戸さん、岡山さんの3人で京都を散歩して青春を感じたという話が飛び出したり、柳楽さんはクールに見えて実はボケたがりな一面があって「ギャップにきゅんとする(笑)」と瀬戸さんが明かしたり、岡山さんが芝居に集中しすぎてセットをよく壊すことから“破壊神”というあだ名で呼ばれていたと盛り上がったり、同世代の3人の話は尽きないようでした。
瀬戸さんのお土産センスは…?
今作は「モントリオール世界映画祭 コンペティション部門」へ出品されており、公式上映に参加した瀬戸さんからキャストたちへのお土産がプレゼントされることに。
オダギリさんは「スタッフが買ってきた仕込みじゃなくて、本当に街をあるいて探してきたそうですね」と驚いていました。
オダギリさんにはモントリオール名物の「メープルシロップ」をプレゼント。
「僕、本当に甘いものが苦手で…」と苦笑するオダギリさんに会場から笑いが起こり、「ビンだけでも飾ります」と受け取っていました。
最近料理にハマっているという柳楽さんにはエプロンが渡されますが、やはりただのエプロンではなくマッチョなイラストが。
柳楽さんは「めちゃめちゃうれしいです。こういう身体を目指そうかな」とその場で試着。
岡山さんには、カナダでポピュラーなラクーンをモチーフにした帽子がプレゼントされました。
「これ、かぶる機会がなかなか…」という岡山さんですが、「でも天音くん、そういうの似合うよ」(瀬戸)、「それかぶったらカリスマ性出るよ」(柳楽)と言いたい放題のふたりでした(笑)。
–{現代の人にも通じる“つかみ”を考えた}–
現代の人にも通じる“つかみ”を考えた
また、今作はこれまでの時代劇とは違ってリアルな青春群像が描かれている面でも注目されていますが、時代劇への憧れはあったというものの、自身が撮ることになるとは思っていなかったという小林監督。
制作において苦労した点やこだわった点についての質問に対して、「現場に行くまでに準備していた画も、実際に役者たちの姿を見てみて考え直したり、難しいことはありました。でも、自分にしかできないものを作ろうと思っていて。時代劇は様式があってダイナミックな話の分かりやすさが特徴ではあるけど、雨が降っているときの感情や水たまりを踏んだ時の嫌な感覚など現代の人にも通じるような触覚やにおいが感じられるようなつかみも欲しくて、そういう所にこだわりました」と、これまでの時代劇とは違う、小林監督ならではの作品になったことが語られました。
フレッシュな監督・キャストが一丸となって作り上げた、映画『合葬』は現在全国ロードショー中です。
(文・写真:大谷和美)
映画『合葬』公式サイト http://gassoh.jp/
https://www.youtube.com/watch?t=1&v=QQ1j9Y-wBKo