10月22日(木)から31日(土)までの10日間、六本木をベースに都内各所で開催される第28回東京国際映画祭のラインナップ発表会が29日、都内で行われた。
コンペティション部門は世界中から集められた16作品。うち3本が日本映画となる。
会場にはその3本、日本人画家・藤田嗣治の波乱の生涯を描いた『FOUJITA』の小栗康平監督、小野不由美のミステリ小説を原作とする『残穢【ざんえ】-住んではいけない部屋』の中村義洋監督と主演の竹内結子、放射能で汚染された日本を舞台に人間と本物のアンドロイドの交流を描く『さようなら』の深田晃司監督と主演のブライアリー・ロングが登壇。
写真左から小栗康平監督 中村義洋監督 竹内結子 ブライアリー・ロング 深田晃司監督
「1940年代のパリに生きた藤田の複雑な人生を通して、2015年の今、何が見えてくるのか? を意識して撮りました。コンペで競うことよりも、みなさんがどんな風に見てくださるかと、期待を持ち続けるだけです」(小栗)
「ホラー映画を撮っていると怖いものに慣れてくるものですが、今回は本当に怖い小説が原作で、撮影中も怖かった。コンペの審査員の方々が怖くて見られなかった元も子もないですよね(笑)」(中村)
「原作も脚本も、いただいてからしばらくは怖くて読めませんでした。撮影中も一刻も早く家に帰りたかった(笑)。今回は映画“祭”ということで、いろんなかたがたにお祭りとして楽しんでいただきたいですね」(竹内)
「原作は20分弱で、余白が多かった分、いろいろ膨らませていく感覚でした。コンペといってもスポーツではないし、審査員さんとのご縁やタイミングもありますので、どう見ていただけるか楽しみにしています」(深田)
「撮影前に福島に行って被災者の方々と出会い、心を動かされるとともに大きな責任を感じました。私のデビューは東京国際映画祭なので、本当に私を育ててくださり、深く感謝しております」(ロング)
–{アフリカ、アラブ地域の作品がラインナップされていない理由は?}–
コンペ部門の審査委員はブライアン・シンガー(審査委員長)、トラン・アン・ユン、ベント・ハーメル、ナンサン・シー、スサンネ・ビア、大森一樹。
アフリカ、アラブ地域の作品が今回ラインナップされていないという海外記者からの質問に対して、
「限られた上映枠の中で、たまたまそうなっただけ。毎年『監督の個性』を重視していくと、その年によって、どうしてもバラツキが出てしまうところはありますね。
ただし、意識こそしていないまでも、毎年作品を選出していくたびに、結果として難民であったり戦争であったり、世界中の映画作家たちが現実に向き合った結果、そういった問題などが反映されたラインナップになっているのは必然とも思います。映画を見て、世界を知る。これが映画祭の役割でもあります」
と、矢田部吉彦プログラミングディレクター。
その他、「アジアの未来」部門、「日本映画スプラッシュ」部門、「特別招待作品」などのショーケースセクション、「日本映画クラシックス」などクローズアップセクション、さらには特集企画上映として「ガンダムとの世界」「Jホラー特集」「高倉健と生きた時代」「寺山修司生誕80年」「生誕100年オーソン・ウェルズ」、Japan Now監督特集「原田眞人の世界」などの発表や見どころなどが紹介された。
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また今回のフェスティバル・ナビゲーターにはモデルの季葉、映画専門番組DJなどで知られる野村雅夫を迎え、若い世代に映画の魅力を発信していく。
ディレクター・ジェネラルとして3年目を迎える椎名保は「日本映画を海外に紹介していくことを念頭に置き、今年を成功させて次のステップにしてアジア、ヨーロッパ、中南米の作品を多く上映できる映画祭にしたい」と明言。
最後に、昨年度より設立された、比類なき感性でサムライのごとく常に時代を切り開く革新的な映画を世界に発信し続けてきた映画人の功績をたたえる「サムライ賞」を、今年は山田洋次監督とジョン・ウー監督に授与することが決定。授賞式は10月26日の「歌舞伎座スペシャルナイト」の中で行われる予定である。
山田洋次監督
ジョン・ウー監督
(文・増當竜也)