みなさん、こんにちは歴女子会の磯部深雪です。
本日2015年9月26日より公開となった映画『合葬』は、幕末を語る上では避けて通れない「彰義隊」のお話です。幕末といえば「新選組」や「白虎隊」を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、本作で描かれる「彰義隊」は歴史好きにとっては、同時代に活躍した他のグループと比べても切ない…ちょっと悲しい存在なんです。
そこで、今回は映画『合葬』を観る前にちょっと知っておきたい彰義隊の基礎知識や、実際に『合葬』観た感想をお伝えいたします。
そもそも彰義隊とはどんな団体なの?
これを見ている方の中には「彰義隊って何ですか?」という方もいらっしゃることでしょう。
彰義隊とは、江戸幕府最後の将軍徳川慶喜公をお護りするために結成された、上は幕臣、下は町人達までが参加する団体です。彰義隊という名前は「大義を彰(あきら)かにする」という意味でつけられました。時は幕末、それまで幕府中心だった世の中が徐々に異変を帯び始めた中で「江戸を護るんだ!」と、若者たちが我も我もと参加した江戸の治安維持グループでした。
もちろん誰でも彼でもではありませんでしたが、新選組のように剣豪たちの集まりということではなく、刀すら握ったことのないような若者たちまで所属していたんです。
冒頭で少し悲しい存在だとお伝えしましたが、本来なら争いごとに巻き込まれることもなく、平和に過ごしていたかもしれない若者たちが、江戸という舞台で気軽に参加できてしまったことで、平穏な日々が一変してしまうんですね。若者たちにとっては「これが大儀だ!」と集っただけに過ぎないのです。いつの時代も若者たちパワ―というのは大きいなと思います。
–{彰義隊の最後の良心}–
上野動物園&東京証券取引所との彰義隊の意外なつながり
上野動物園や東京国立歴史博物館があり賑わう上野公園。彰義隊が最後に戦ったのがまさにそこになります。じつは、彰義隊の本陣は上野動物園の中なんです。そして新政府軍が陣を敷いた場所が、今の松坂屋の辺りになります。
東京・上野にある彰義隊の墓
現在、西郷さんの銅像の真後ろにある、彰義隊の隊士の墓が建っている辺りから松坂屋方面を見ると、その近さや戦いの様子が思い浮かびます。
余談ですが、彰義隊トップであった渋沢成一郎はという人物は、東京株式取引所…のちの東京証券取引所の設立に関った人物なのです。普段なにげにニュースなどで見かける東京証券取引所が、彰義隊と関わりがあるなんて意外ですよね。
歴女・磯部が注目して欲しい彰義隊の人物
わたくし磯部深雪は、歴史大好き女子=歴女たちの集まり「歴女子会」の主宰です。わたくしたち歴女は、日頃から歴史上の人物たちを女子目線から語っています。
今回の映画『合葬』は、杉浦日向子さんが原作のコミックで、日本漫画家協会賞優秀賞受賞した代表作のひとつです。杉浦日向子さんといえば『百日紅』が今年映画として公開されました。没後10年となる今年は、例年よりも話題にあがることも多く、わたくしたち歴女にも大変人気の作家さんです。
杉浦日向子さんの作品には独特の空気感がありますね。歴史を作っているのは有名な人達ばかりではない、名もなき人達の色々な動きが、物語の大きな波の一部となっていく…そこを、ふつりと切り取って見せてくれる作品が多いと思います。
映画『合葬』の中でも注目して欲しい人物が、オダギリジョーさんが演じる森篤乃進です。彼の役柄の立ち位置や台詞が、歴女として彰義隊を説明する意味では一番の推しどころだと思います。彰義隊にとって、彼は最後の良心だったと言っていいでしょう。彼の存在がどう影響して、そして彰義隊はどうなっていくのか、ぜひ本作で注目してください。
–{堅い時代物ではなく}–
まるで現代ドラマを見ているような作品
さて、本作が公開になる前に一足先に試写を拝見させていただいいて感じたことは、一般的な時代劇とは違う現代ドラマを見ているようだと思ったことです。
柳楽優弥さんや瀬戸康史さん、そして岡山天音さんたちが演じた人物たちは、歴史上には名前が出てこない3人の若者たち。3人の演技力もありましたが、渡辺あやさんの脚本、そして小林達夫監督の描き方がとても素晴らしく、まるで今そこで起きているように感じられるような映像でした。そして「青春だなぁ…」と共感していると、ふと時代の不安感が垣間見える演出にドキッとしたりと、一筋縄ではいかない素晴らしい作品に仕上がっています。
堅い時代物ではなくさらりと観られる歴史もの
ここまで語ってきましたが、歴女として映画『合葬』は、堅い時代物ではなくさらりと観られる歴史ものとして是非オススメしたい作品。主演の2人の表情や、爽やかでちょっと可愛いやりとりなども見どころです!
映画『合葬』オフィシャルサイト
http://gassoh.jp/
(C)2015 杉浦日向子・MS.HS/「合葬」製作委員会
磯部深雪 Miyuki Isobe
武蔵守歴女会代表、歴☆女子会主宰。
毎月女性限定の歴史トーク懇親会を開催し、各地の歴史系イベントの司会を務める。
長州出身でありながら生粋の伊達政宗ファン。かつ刀剣女子。
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