映画『赤い玉、』の公開初日舞台挨拶が、東京・テアトル新宿で行われ、主演の奥田瑛二をはじめ主要キャスト、そして高橋伴明監督が登壇した。
高橋伴明監督が今だからこそと描いたエロス作品
映画『赤い玉、』は、日本初のヘアヌードで話題を集めた『愛の新世界』から約20年、高橋伴明監督があらたに“エロス”に挑んだ意欲作。主演に奥田瑛二を迎え、誰しも経験する“老い”と“性”をテーマにし、人生の半分を過ぎようとする男たちが、葛藤と焦燥感にさいなまれつつながらも不確かなものを求め続けるさまを描いた作品。
舞台挨拶冒頭、高橋伴明監督は「大学の教員になって長いんですが、学生がつくる映画をずいぶん見てきて、エロス表現から逃げているなとずっと感じていました。それをちょっと授業で煽ったんですが、シナリオは出来てくるんですけど、書いているのにそれを撮らないという。だったらこっちでこういう現場を作って、スタッフ・キャストともに学生をそういう現場に呼びたいなと思ったのがきっかけです」と本作を撮るにいたった経緯を語った。
続けて挨拶した主人公・時田演じた奥田瑛二は「学生諸君がたくさん居る、これが大変でした。しかし、3回にわけてきちっと時間を取って映画をつくる中で、歌にもありますけど、“一夏の経験”ってすごいなって思ったんです。夏を経験して、秋にまた2週間くらい撮ったんですが、その時の学生諸君の成長ぶりたるや、もうプロといってもおかしくないくらい、将来的にはこの40人くらいいる中で何人かは、プロとしてこの道に携わることが出来るだろうという諸君がおりました」と、本作で関わった学生スタッフ・キャストの成長ぶりについて語った。
–{エロスがあるから出演できる…}–
MCにエロス作品の意義について聞かれた不二子は「エロス作品がある意義というのは、私が出演できる作品があるということで、わたしにとってはとても嬉しいです。65にもなる奥田さんが体当たりで、やってらっしゃるので、わたしも負けないように60過ぎても頑張りたいです」と色気たっぷりにコメント。
また同様にエロス作品の意義について聞かれた柄本佑は「ベッドシーンで、あんまり隠れてたりしていると、僕も観客としてがっかりしてしまう。そういう作品もあって、さわやかな作品もあってということだと思うんですけど、あまりにエロス作品が少ないような気がするので、むしろ僕なんかは本作のほうがさわやかな作品に見えてしまうというのはあります」と答えた。
奥田瑛二も不二子も“前貼り”無しで挑んだエロス
本作で奥田瑛二が追いかける女子高生役を演じた村上由規乃は「はじめて脚本を読んだ時は、大学でこういう作品をやるんだというのを最初に思って、ぜひやりたいなと参加しました」とオーディションに参加した理由を答え「学生で関わったスタッフとかも、映画を作る上での制約、不自由さもありながら自分のしたい表現とか自由な表現とかをする過程を受け止めているのではないかなと思います」と本作を振り返った。
濡れ場を演じたもうひとりの女優、土居志央梨は「こういう映画に学生が大勢参加できたというのは、すごくいいなと思いましたし、そういうところにいれてすごく幸せな撮影でした」と感慨深くコメント。思い出に残るシーンについて「線路のシーンで上川くんが着ている衣装がTMレボリューションみたいなんですよね。そこが私はツボだったんで。注目して欲しいです」と語り、会場の笑いを誘った。
–{俺も不二子もすっぽんぽん…}–
高橋伴明監督のゼミの授業に参加し、学生スタッフ・キャストの中では一番最初に脚本を読んだという花岡翔太は、脚本を読んだ時に自身の役を「これは自分だな」と思ったと語り「この役は自分がやることで一緒に成長できるものであろうと思って演じさせてもらいました」と役への思いを語る。
さらに本作で濡れ場を演じた際に“前貼り”と呼ばれる、自身の男性器を隠す処理に関して「撮影が終わって1人で前貼りを処理するって時に、すごく切ない気持ちになったんですよね」と話し、奥田瑛二に前貼りについて投げかけると奥田瑛二は「前貼りをするとそういう風になるんですね。僕も不二子もすっぽんぽんで演じた」と本作での体当たりでの演技についても明かし、今後は前貼りをせずにすっぽんぽんで演技することを勧めると、花岡翔太も「体当たりでがんばります」と笑顔で答えた。
予告動画の冒頭でも濡れ場を演じている上川周作は、そのシーンについて「映画の中では途中で、監督(主人公・時田)に止められるんですが、実際はもっと濡れ場できますというのだけは言っておこうと思います」と、濡れ場の演技に自信をみせた。
高橋伴明「あれ、本音だったんじゃないの?」
続けて印象的セリフについて聞かれた土居志央梨は「『大学で先生やっているなんて、映画監督としてもう賞味期限切れだよね』みたいなセリフがあって、それを脚本をみて、自分がそれを言うってわかった瞬間からもうワクワクが止まらなくなってしまいました。これを胸張って言っていいんだって思って、すごく楽しみで、本番に監督の目の前でそれを言ったんですけど『おお、殴りたくなるね』と言われました。嬉しかったです」と小悪魔な笑顔で語ると、高橋伴明監督がすかさず「あれ、本音だったんじゃないの?」とツッコミを入れ、会場からは笑いが巻き起こった。
–{2人に見られて思わず…}–
義理の親子の共演。そして柄本佑が明かす心境
本作で義理の息子でもある柄本佑との共演について聞かれた奥田瑛二は「家でちょこちょこ一緒にご飯を食べたり、酒を飲んだりするんですね。そこで『今度伴明の映画に出るんだよ』と言ったら『伴明さん、僕大好きです』と言ったので、じゃあ、出るかってことになって、伴明に後日話をしたら『それは嬉しいな』てことになった」と共演することに至った経緯を明かす。
さらに本作での共演シーンについて「私の描いた台本を映画の中でゴミ箱に捨てる役だったんですが、面と向かって芝居した後に、台本を捨てられた時は本当にせつなくてむなしい思いをしたわけですが、そう思わせる芝居をしたってことはとてもとても嬉しかったですね。いい緊張のある現場でした」とコメント。
それを受けて柄本佑は「奥田さんの映画には、役者として共演したというよりは、一番最初に監督として現場に一緒に呼んでいただいたので、僕としては現場に入っても監督・奥田瑛二というところが、やっぱどっか拭い去れない」と語り「憧れの伴明監督と、超怖い奥田瑛二監督のダブル監督に見られているっていう状態だったので、すごく“いいーっ!”となりました」と、撮影時の心境を語った。
舞台挨拶の終盤では、本作のために奥田瑛二が描いた画が披露された。イメージポスターにも使われることとなったこちらの絵について「木を女体に思い、そして男を感じさせるもの、それをなぞらえて描いた」とコンセプトを語った。また絵の実物は高橋伴明監督にプレゼントされることになっているとのことでどこに飾られるかとの質問に「ベッドルームに飾ります」と高橋伴明監督が答えると、奥田瑛二は思わず親指を立て満面の笑みを浮かべた。
舞台挨拶の最後に高橋伴明監督から締めくくりの挨拶が行われ「エロスと向き合う映画が本当に少なくっているんで、こういう映画をぜひ指示していただきたいと思う」と訴えかけながら、観客へのお礼の気持ちをつげ、詰めかけた満員の観客たちの拍手の中、舞台挨拶が終了となった。
奥田瑛二をはじめとするキャスト陣が、高橋伴明監督とともに本気で作り上げた今だからこその“エロス”。映画『赤い玉、』は現在公開中。
(取材・文/黒宮丈治)
関連リンク
同世代に向けたエロスと情緒―映画『赤い玉、』奥田瑛二・単独インタビュー
女人禁制!50代以上でエロスを語る『赤い玉、』トークイベント
みんな汗だくになって…高橋伴明×奥田瑛二が描くエロス『赤い玉、』舞台挨拶
高橋伴明監督20年ぶりのエロス!奥田瑛二主演『赤い玉、』公開決定