高橋伴明監督が20年ぶりに、エロスに挑んだ最新作『赤い玉、』が、本日2015年9月12日より公開となる。
高橋伴明監督の呼びかけに賛同し、本作で主演を務めた奥田瑛二さんに、作品に関してのお話や、本作の大きなテーマである「エロス」についてお話を伺った。
映画『赤い玉、』主演・奥田瑛二 シネマズ単独インタビュー
―本作では、高橋伴明監督から直々に出演を依頼されたのことですが、本作に出演することになった経緯を教えていただけますか?
ある日、突然携帯電話に監督の高橋伴明から電話があって「ちょっと話があるから時間を作ってくれないか?」ということで、すぐに会うことにしました。
我々の世代というのは、会いたい理由を電話で聞かないというのが男気だと教わってきたので、きっと重要な話だろうというのもわかったし、一体なんだろうと楽しみにしながら会ったんです。そしたら「映画を撮ろうと思うんだ。お前に出演依頼だ」と言ったんです。
彼は「俺たち世代のちょっと悲哀もありながら、男としてどうなんだ?というのを描く話にしたい」と言ったんです。そこで色々話をしていくうちに、今の日本映画には“エロス”が無いよねというとこで、お互い共感しあったんですね。かつては、一部を除いてメジャー映画では散々エロスを撮っていたのに、今はどこもやらなくなってしまった。ヨーロッパにしてもアメリカにしても、どこもちゃんとエロスを撮ってるよなって。
―エロスを演じること、描くことに対して監督や俳優が恐れているということでしょうか?
でも、映画で脱いで仕事がなくなるやつなんていないわけですよね。いい映画だって言われればいいだけで。
(C)「赤い玉、」製作委員会
―映画にどうして“エロス”が必要なのでしょうか?
エロスが一切無い映画はなんなのか?と考えた時に、ロボットばかりの映画を撮ればいいじゃないかと。
人としてのドラマを構築する中で、日常的にエロスに関わることを拒否されると、それはもう生活じゃなくなりますよね?文化文明を謳っている国としてそれを描かなければ、文明は一流であっても、文化は三流以下だと言われても仕方ない。
世界の冠たる映画の国としては、少し恥ずかしい話だよねという憂いがあってじゃあ撮ろうとなったんです。
―つまり、脚本は後から出来たということですか?
そうです。さっきの話の流れがあって「お前が出てくれるなら台本を書く」と監督が言ったんです。監督としては、60すぎた男として、これからの人生で、男として肉体の憂いというものを一緒に表現したかったんじゃないかなと思うし、僕という俳優を使うことで描けることもあったのではないかと思います。
–{濡れ場は普通の生活のこと}–
(C)「赤い玉、」製作委員会
―奥田さんが演じた主人公・時田は、映画監督の役で、奥田さん自身も映画監督でいらっしゃいますよね?
監督にしてみれば鬼に金棒ですよね。絵かきで俳優の人に絵かきの役をさせたら、指導の人が来て「その筆はこういう時使いません」なんて言わなくて済むし、何をやってもそこにリアリティがある。大学で教えた経験もあるし、僕が映画監督で大学の講師役をすれば、それは安心できる。
―そして、なによりもエロスですね。
エロスに関していえば、エロスの俳優としては十二分にやってきましたし、僕は制限なく、肉体をさらけ出すということで臨みましたよ。
(C)「赤い玉、」製作委員会
―本作で奥田さんと濡れ場を演じた不二子さんと村上由規乃さんの2人は、エロスに関してどうでしたでしょうか?
2人とも僕だからある程度覚悟して臨んだんじゃないですかね?主演の僕がさらけ出せば、女優さんもさらけ出さないわけにいかない。それは暗黙のうちにお互いが理解し合えることなので。
―濡れ場を演じる上で苦労される点は?
何もないですね。濡れ場は普通の生活のことだから。気にしてどうするって話です。時田はこういう暮らしなんだなと思ったら、時田として自然に演じるだけです。
(C)「赤い玉、」製作委員会
―今回の現場には若い学生のスタッフたちもいらっしゃったそうですね?若い学生スタッフさんにはなにか“エロス”について教えたのでしょうか?
例えば風呂から出てきてビールを飲むシーンなんて、当然風呂あがりだからすっぽんぽんですよね?そういうのを最初から見せておけば、現場の若いスタッフも、俳優が身を挺してやっていることで、そこに尊厳、つまり演じる人へのリスペクトが生まれるんだよね。
少しだけ教えたのは、濡れ場が終わって2人ともすっぽんぽんだから、カットがかかったらすっと来てタオルをかけてあげるんだと。そういったことが彼らにとってはいい経験だったと思います。
–{赤い玉の瞬間とは?}–
奥田瑛二が考える“赤い玉”の瞬間とは
―本作のタイトルにもなっている、男性器の使い終わり、つまり打ち止めとして出てくる伝説の“赤い玉”ですが、奥田さんにとって“赤い玉”が出る瞬間というのはどういった時でしょうか?
それは人それぞれ千差万別だと思うけど、女性に対する執着心と日常生活のバランス…そのバランスが崩れた瞬間に赤い玉がでるのかな。情緒が失われた瞬間なんだろうと。
100歳になっても、持続はしなくても「おー!きたきた!いまだ!」とやれる男は素敵だよね。男も女も心の潤滑油がなくなったら潤うことも、勃つこともないから、やっぱり情緒感を持って常に生きていかないといけないと思うし、それができなくなった時が、その瞬間なのかもしれないと思う。
―奥田さん自身、これまで自分の“赤い玉”というのを意識したことがありますか?
この映画に出るまでは考えたことなんてなかったんだけど、映画で時田を演じてから「いずれ、そういうのが来るのかな?」と考えると同時に、生きることに対しての執着心というか、真剣に考えるようになった。信号渡るだけでも左右をちゃんと見て、用心深く渡るようになったし。そして、大事なものはたくさんもっていたほうがいいなと改めて思った。
―大事なものですか?
お金じゃない、優しい自分を作り上げるもの。それは家族だったり、恋人だったり、友達だったり、ペットかもしれない。そういうものをたくさんもっていた方がいいと思う。
そして、僕は酒が好きだから、酒はこのままどこまで飲めるのか?というのは、制限していないでおこうと。タバコも食事も。それはイコール、日常の情緒感だから。風の音を聴いて「ああ、素敵な風だな」とか、鳥の鳴き声を聴いて「素敵な鳥のささやきだ」とか、そういうものがわからなくなったら人はもう終わりだと思う。車のクラクションを「うるせーな」と思う人にはなりたくないなと。いつもそういう周りのことに敏感にいながら、優しくいられるようにいたいなと思う。
–{綾瀬はるかを剥いてみたい}–
エロスを撮ってみたいのは女優・綾瀬はるか
―少し話が変わりますが、今エロスの相手にしたいと思う女優さんはいらっしゃいますか?
プラベートではいないな。監督として撮ってみたいのは、綾瀬はるかさん。彼女は一皮剥いてみたいと思う。
―違う一面を引き出したいということでしょうか?
違う一面を引き出したいということじゃなく、剥いてみたいんだ。ただ、そこにあるものを撮ってみたい。むき出しにならざるを得ないようにしたい。そうしたら今以上にすごい女優になると思う。
興味本位で観にきてもらえばいい、そうはいかない。
表情で「野郎ども観に来い!」をとの声に応じて頂いた奥田瑛二さん
―本作の話に戻るのですが、特にどんな人に観て頂きたいとおもいますか?
同世代の野郎どもに観て欲しい。男性本来持っている周りにあるものを、忘れようとか、逃げようとか、関わらないようにしようとかしている人。
―「周りにあるものから逃げている」とは?
欲情の無駄遣いしている人もいるよね?お金で付き合っている人もいるだろうし。そういうことじゃないよなって。リタイアした後に社会に正面から向きあうということから逃げている人だね。
見た目は優しく見えるけど、本質的な優しさってもっと他にあるんじゃないかなと。この映画を観てもらえば、自ずと関わらざるをえなくなるから、同世代の団塊の世代の人には特に観て欲しいと思うよね。
―本作を観れば、そうなるということですね。
自分をもう一回振り返るきっかけにしてもらえればいいなと思います。僕が撮り終えた時に、色々考えたぐらいですから。興味本位で観に来てもらえればいいです。帰る時はそうはいかないですから。
高橋伴明監督と奥田瑛二さんが今の時代にこそ“エロス”を復活させると挑んだ本作。
誰しも経験する“老い”と“性”をテーマにし、人生の半分を過ぎようとする男が、葛藤と焦燥感にさいなまれながらも不確かなものを求め続けるさまを描いた作品となっています。奥田瑛二さんの体当たりの演技と、それに呼応するかのように艶やかに演じた女優たちが紡ぐ、最高のエロス。映画『赤い玉、』は、本日2015年9月12日より全国順次公開です。
(取材・文/黒宮丈治)
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