5月16日の公開以来、のべ70万人の方がすでに鑑賞している大ヒット映画『駆込み女と駆出し男』の続・大ヒット舞台挨拶が2015年6月16日、東京の新宿ピカデリーで行われ、原田眞人監督とご用宿「柏屋」の主人・柏屋源兵衛役の樹木希林さんが喜びを語りました。
大きな拍手で迎えられた原田監督と樹木希林さん。まずは二人から冒頭のあいさつです。最初のひとことです。
樹木さんは
「公開から1ヶ月経ちました。大盛況ということはとりもなおさず監督の力だと思います。ありがとうございました」
と挨拶。
原田監督は
「続・大ヒット舞台挨拶にとどまらず、続々とできるようにして、200万人の動員にこぎ着けたいですね。今は100万人が目標です。もっと見てください」
と語りました。
–{トークを仕切る樹木希林!}–
樹木希林さん、トークセッションを仕切る
会場には進行役の方もいらっしゃったのですが、舞台挨拶はほぼ樹木希林さんが主導権を取っていました。原田監督に向けて
「この映画はリピーターがおられるとききます。なんでだと思います?」
と”代表質問”。
原田監督が「江戸時代、歴史の背景がよくわからないとか、言葉じゃないですかね」と語ると、
樹木さんも「そこだと思うんですね。あまりの早口でまた観ないと分らない」と同じ感想を述べます。
ここで原田監督は観客席に向かって「今日リピーターの方ってどのくらいいらっしゃいます?」と尋ね、以前の舞台挨拶では9割を超えるリピーターが居たことを語りました。
樹木さんから
「監督はトロントから昨日帰られていてそのお話も聞かせていただければと思います」
と、ここまで司会不要の進行を見せます。
また、司会の方が「マスコミのみなさん、ここからはフラッシュを使わない撮影をお願いします」と進行を入れますと樹木さんがすかさず
「フラッシュ、全然かまわないのよ。あとね、なんで一般の方、写真撮っちゃいけないっていうの?あたし悪用されても全然かまわない(笑)」と語り、ここで観客席からは大きな拍手。次いで樹木さんが
「今日は、監督と私だけですから。いい男がいると事務所的に駄目といわれるかもしれないけれど、私と監督だけだから大丈夫です」と押し切り、報道陣だけでなく観客席からも撮影ができる異例の舞台挨拶となりました。
–{駆込み?いえ”KAKEKOMI”です!}–
海外上映の報告
樹木さんが原田監督へ
「どういう理由でトロントへ行かれていたんですか?」
と尋ねました。
原田監督が
「トロントで日本映画祭というものがありまして。これが4回目になるんですけれど、オープニング作品として『駆込み女と駆出し男』を上映してもらったんですよ。」
と説明。
樹木さん「タイトルはどのようにしたんですか?」
原田監督「ポスターにある通り、”KAKEKOMI”です」
※トロントで掲示されたポスターは国内ではほとんど発表になっていませんでしたが、今回原田監督の脇にはずっとこのポスターが掲示されていました。
樹木さん「日本でもそのくらい(タイトルを簡単)にしてもらわないと(笑) 私も全然覚えられなくって。」
原田監督「凱旋上映をするときに、今年暮れや来年頭で大泉さんや戸田さん、満島さんが賞を取ってくれれば凱旋上映ができて、その時にはこのポスターをベースにして”KAKEKOMI”にしようと思います。 樹木さんに主演女優賞持っていかれちゃいそうですけれどね(樹木さんは主演映画『あん』が好評)。」
樹木さん「向こうの評価はどうだったんですか?」
原田監督「すごく良かったです。500人入ってくれたんですけれど。日本人・日系人がその半分くらいで、残りはトロントの人種構成と同じような感じで。」
樹木さん「内容はわかってもらえたんですか?」
原田監督「分かってもらえましたね。感動したという声もあとですごかったし、字幕の場合はストレートに入ってきやすいし、僕の挨拶の中で映画を観るコツとして「この映画はマトリョーシカのような構造で、アラビアンナイトのように劇中劇がありますよ、という構造を説明したんです。」
–{カバンひとつでカンヌ!?}–
キャリーカートと江戸時代
ここで樹木さんが旅行鞄の話をします。
樹木さん「監督はどんなトランクを持っていかれたんですか?何泊で?」
原田監督「4泊5日で、スーツケース1つにパソコン用のカバンを1つもっていきましたよ」
樹木さん「私この間、カンヌというところに初めて行ったんですけれど、そのあとイギリスにも行って、このかばん1つだけで済みました。杖替わりにもなっているんですね。今日もこれに着物入れて来てさっき着替えて。これを皆さんにお知らせしたいと思って持ってきたんです。ヘアメイク・スタイリスト無しで、マネージャーも無しで、これ1つで動いたんですよ。
なんでこんな話をしているかというと、江戸時代ってみんな、こんな車のついたカートなんて持って歩いてないですよね?やじさんきたさんだって肩に担いで。私、あれをみて今回、”自分は荷物が多すぎるな”と思って。それで挑戦してみたら、案外いけるんですよ。それだけなんです(笑)」
と語り、樹木希林さんがリードしたトークセッションが終了しました。
–{必見!ファンとの一問一答!}–
参加者からの一問一答
今回の舞台挨拶ではファンの方からの質問が受け付けられました。
素晴らしいキャストが揃っていた、という感想を聞いた原田監督は
「理想の法秀尼は若尾文子さんだったんですけれどね。武術で動いていただかないといけなかったので・・・。
続編をやるようでしたら法秀尼の上の立場の方として若尾さんにも出ていただければと思っています」
と続編への気合いを見せます。
次回作は考えていますか?との問いに原田監督は
「DVDの売れ行きも含めて200万人越えればいいんじゃないですかね」と語りました。
次いで
「本作の最後のシーン、信次郎の表情とじょごの表情が違うんですよ。二人が見ている方向が違うんです。『卒業』(1967年)のラストシーンのダスティン・ホフマンみたいなもんでしてね。次の時には信次郎は馬琴さんに苦しめられて大変なことになって、彼は駆け込まなければいけないんですよね、柏屋さんにね。
お勝さんには駆け込んでもらいたいとかね(笑)。ミドリ子さんには色々やっていただきたいです。そういう可能性が色々あります。皆さんからのアイディアを募集しています。」
原田監督の続編のアイディアはたくさん湧き出ているようです。
樹木希林さんへの質問もありました。
樹木さんの大ファンなのです。お仕事や人生を楽しむ秘訣があったらお聞きしたいです。
の問いに樹木さんは
「人と比較しない。世間と比較しないことですかねぇ・・・。比較すると這い上がれないので、挫折しますから(笑)」
と人生のベテランならではのアドバイス。
原田監督が
「作品を録っているときは体調あまり良くなかったんですよね?」
と気遣いを見せると樹木さんは
「今でも良くないんですよ。ですから(急に咳き込みながら)はやく帰らせていただきたいのですが(ごほっ、ごほっ)」と笑いを誘っていました。
映画を観込んでいるファンからもコアな質問がありました。
作品の中で日傘をさしているシーンがあったのですが、現代的でハイカラなイメージがあってすこし気になりました。
との感想に原田監督は
「メリケンサック(序盤に登場)もそうですけれど、あの時代とにかく、西洋にあった物は五年後には日本にあったんですよね。
日傘を差した法秀尼が信次郎のところにくるのは東慶寺の裏側の近いところ、という設定なんですね。
メリケンサックにしても、堀切屋は唐物問屋ですからオランダ関係の船員とのつきあいもあるんですね。だから武器を仕入れることもできる。メリケンサックはもっと強調したかったんですけれど、編集で落としちゃったんですよね。
いくつか出てくる現代的な言葉は意識して入れたのもありますけれど
「わけわかんねぇのど真ん中だ!」というのは当時の言葉です。
1840年代の日本には結構西洋の文化が入っていたんですよ。」
と解説。ファンも納得の様子でした。
多くのファンの印象に残った言葉の1つ「べったべった だんだん」についても質問が飛びました。
カナダで上映した際に、(終盤の印象的なセリフの)「べったべった だんだん」はどのように字幕スーパーで表したんですか?
という質問には原田監督が
「英語の字幕でもそのままにしましたよ。お吟が聞くでしょ?”Thank you very much”ってどういうの?って。
オリジナルの言葉のニュアンスを活かせる言葉はそのままにしました。」
と回答します。字幕版の『駆込み女と駆出し男』も観たくなってしまう質疑応答でした。
–{その時代を生き抜いてきた人間の力を感じることができた作品}–
江戸時代の良さを世界に広げる
最後に原田監督は
「英語字幕の事も出たので、先日の舞台挨拶の時に大泉さんともそういう話をしていたんですけれども、字幕の速度が速すぎるということは無かったです。
字幕に関しても受けていたので、これからいろいろな形で世界中に広がっていくと思います。日本でも字幕版の上映をできたらと思っていますので、ぜひまたいらしてください。」
と挨拶、樹木希林さんが
「江戸時代にこのように駆込む場所がある。これが世の中だなあと思います。江戸時代の何か華やかな天真爛漫な。過酷な人生を送ってる人もいたと思いますが、逆に今置かれている時代の良さも感じられたり。時代時代で、その時代を生き抜いてきた人間の力を感じることができました。」
と挨拶して詰めかけたファンと共に大ヒット成就を喜びながら和やかに終了しました。
まとめ 楽しい舞台挨拶
樹木希林さん、さすがの存在感でした。司会の方が要らないのではないかと思うほどの奔放な進行も楽しく、またファンへ撮影を許可するといったサービス精神も旺盛です。
また質問も受け付けられたことから、聞くだけではない舞台挨拶を堪能できたのではないかと思います。
(文・写真 奥野大児)
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